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2022年8月7日日曜日

[メモ] 全盲的:日本科学未来館見学記(2022-7-10)

ランチでいただいた「NEXTメンチカツサンド」の写真です。代替ミートで作られたメンチカツと千切りキャベツがパンに挟まれてお皿の上に鎮座しています。


※このエントリーは「AIスーツケース体験記@日本科学未来館」の続きです。


AIスーツケース体験会も午前中のうちに無事終了。せっかくなので日本科学未来館の中を一通りうろうろしてみることにしました。

この日は日曜日ということもあり、館内は大勢のチビッ子たちで大賑わい。圧倒的な場違い感の中で全盲のおじさんがどこまで楽しめるものなのか。気がついた点など記憶の限りメモして見ます。


まずは3Fと5Fにある常設展示エリアを見学。

一部の常設展示では主に視覚障害者向けに「触れられる展示」が用意されているとのことで、未来館のサイエンスコミュニケーターの方に案内していただきました。私がこの日に体験できたものは以下の通りです。


  • (5F)子宮内の胎児が成長する過程を原寸大のレリーフモデルに触れて学べる展示。これはAIスーツケース体験会のコースに含まれていました。
  • (3F)細菌やウィルスの大きさを触れて比較できるレリーフ展示。
  • (3F)さまざまな細菌の形を確認できる3dモデル。
  • (3F)人間の臓器に存在する細菌の分布を表現した点図触覚グラフ。


いずれも視覚情報を触図や3Dモデルとして表現したもので、視覚障害者にとっては馴染み深いフォーマットです。子供や車椅子ユーザーなどでも触れやすいよう、少し低い位置に展示されているという配慮もありました。

点字などテキストによる解説は用意されておらず、コミュニケーターの方から説明を受けながら触れるという見学スタイルです。ちなみに3Fで触れられた細菌の3Dモデルですが、ふわふわの可愛いマスコットとして1Fミュージアムショップで販売されているので、最近、細菌が気になる人は要チェック。


全体から見れば視覚障害者向けの触れられる展示はまだごく一部です。ただ他の展示が全く楽しめないかといえばさにあらず、他にも結構いろいろ面白いものがありました。

例えば国際宇宙ステーションを模した展示では反響音で展示ブースの独特の狭さを感じたり、無重力空間ならではの場所、例えば低い天井などについている手すりに触れられたりします。また3Fのとある場所では、空調の効いた空間の中から突然土の匂いがふわりと感じられました。この不意打ち感、これはどうやら自然界に存在する細菌についての展示だったようです。土の感触も確かめられました。

触図や模型による情報提供は重要ですしさらなる充実を望みますが、上記のような手で触れたり音声による説明以外の感覚(空間の響き、床の完食、匂いや温度など)で体験できる仕掛けが充実すれば、視覚障害の有無にかかわらず楽しめるのではと思ったりしました。


他にもデモしているロボット君に触れさせてもらったり、ネットワークの仕組みを表現したピタゴラ装置的な展示から発せられる音に耳を傾けるなど、あちらこちらに興味をそそるものがありました。ガラス越しの展示も少なくはありませんが、触れたり音が出る仕掛けも多いため、見えなくても比較的退屈しません。

ただやはり体系的に展示内容を理解しようとすると補足説明は必要で、視覚障害者向けにポイントを抑えたツアーのようなものがあると良いのになとも思いました。


ひとつ残念というかもったいないなと感じたのがアプリを使った音声ガイドについて。

未来館の各エリアでは、公式アプリ「Miraikanノート」を用いた音声ガイドが提供されています。展示コーナーにあるマーカーにアプリをインストールしたスマートフォンをかざすと音声ガイドが流れる仕組みなのですが、このアプリ、ボタンに的確なラベルが付けられておらずスクリーンリーダーでは使いにくいのです。

この件をアクセシビリティ・ラボの方へお伝えしたところ、どうもこのアプリ、現在はメンテされていないようで、代わりとなる新しいアプリを鋭意検討中とのことでした。

またアプリといえば未来館では「インクルーシブ・ナビ」も利用することができます。これは目的地を指定すると利用者の状況に応じた道案内を提供してくれる屋内ナビゲーションアプリ。現時点で視覚障害者モードには対応していないため私には使えませんでしたが、車椅子ユーザーやベビーカー利用者には便利かもしれません。

ちなみにインクルーシブ・ナビについては2019年末に書いた私のレポート

がありますのでご参考まで。ただし仕様変更などあるかもしれませんので、その辺りあしからずです。


見学の合間には、7Fの未来館キッチンへ突撃。

どうせならそれっぽいものをとオーダーしたのは「NEXTメンチカツサンド」。原材料に大豆ミートなど植物性の食材のみを使っているという、この日の一押しメニューです。

ちなみに未来館キッチンのシステムは基本アナログ的。印刷されたメニューを見て有人カウンターからオーダーすると無線端末が渡されます(ここは少しだけハイテク)。あとは端末に通知が届いたらウケトリカウンターから食事をピックアップするという流れです。飲み物もセルフサーブなので全盲だけだとちょっと苦戦するかもしれません。食べ物の持ち込みは可能なので、お弁当持参の方が無難かも?

さて話は戻りNEXTメンチカツサンド、率直に申し上げれば「代替肉だなあ」というよりは「大豆ミートだなあ」という感想です。おいしくなくはないのですが独特のクセが微妙にあり、ちょっと濃いめのソースでなにかを突破しようとしている意志を感じました。

ここでふと代替食品と視覚情報の関係について思いを巡らせて見ます。例えば今回のような代替肉の場合、みためがお肉に近ければ近いほど味覚に対してポジティブな影響があるのではないかと思うわけです。 そう考えると代替食品って、外観から影響を受けにくい視覚障害者にはハードルが高いのではないか……直感として視覚と味覚の間には密接な関係があるような気がします。


さて全盲の視覚障害者のひとりとして日本科学未来館は、若干物足りなさを感じつつも楽しめる博物館でした。

少なくとも見えなくなってから訪問した場所の中では体験できるコンテンツも多く、わくわくする独特な雰囲気も良かった。何より全盲の浅川氏が館長というのは気後れせずに訪問できた要因の一つであるのは間違い無いでしょう。ただその分ハードルが上がっていたため細かいところが気になったりもしたわけですが。

個人的に自然科学系の博物館には、単純に展示物をみるというだけでなく実際に経験して学習する楽しみを求めているので、今後のアクセシブルな展示の充実に期待したいところです。特に映像コンテンツにはぜひ音声解説をつけて欲しいなあ。

また展示をアクセシブルにするだけではなく、むしろそれを実現するためのテクノロジーそのものを目的に障害者が集まる、最新支援技術のショーケース的な場所になるのも面白いのではないかと妄想したりもしたのでした。


ただ現状では全盲が一人でふらっと遊びに行くためには交通アクセスを含めまだ障壁が多いようにも感じます。単独で得られる情報がちょっと少ない。見える人と一緒に行った方が安心だし楽しめるかもしれません。

現在日本科学未来館ではアクセシビリティの向上について継続的に取り組まれているとのこと。今後は展示やイベントにおけるアクセシビリティはもちろんのことですが、同時にアクセスの改善やWebなどを通じた情報提供など、包括的なバリアフリー環境の整備が望まれます。


ともかく日本科学未来館は全盲のおじさんの記憶にさまざまな印象を残した良い施設でした。やっぱりミュージアムは楽しいなというのが最終的な感想です。展示のアップデートや興味のあるイベントがあればまた訪問したいと思います。

それにしても、ゆりかもめにノルト、なぜか一気にピクニック気分になりますね。ちょっとした大人の遠足的な、夏の1日でした。

2022年7月28日木曜日

[メモ] AIスーツケース体験記@日本科学未来館(2022-7-10)

おのぼりさん気分で未来館7Fからお台場を撮影した写真、のはず。レインボーブリッジとかフジテレビ社屋とかそれっぽい風景が写っているらしいです。


去る2022年7月8日から10日までの3日間、東京・お台場にある日本科学未来館において「ミライキャンフェス」が開催され、その中で実施された「AIスーツケース体験会」へ参加してきました。

せっかくなので中途全盲中年の視点から感想などメモしておきます。やや記憶が曖昧かつ不正確な部分もあるかと思いますがご容赦ください。


AIスーツケースは自律走行するスーツケース型ロボットを用いて視覚障害者を誘導しつつ、スマートフォンやウェアラブルデバイスと合わせ様々な情報を提供する、統合ナビゲーションシステムです。

この技術の原型ともいえる、現日本科学未来館長・浅川智恵子氏率いる米カーネギーメロン大学の研究チームによる2019年の実証実験については、このブログでも書きました

その後スーツケースへ自律走行技術を採用した「CaBot(Carry-on roBot)」を経て、現在は2020年に発足した次世代移動支援技術開発コンソーシアムにより実用化へ向け開発が進められています。


さて日本科学未来館の5Fに設けられた未来館アクセシビリティラボで開催された体験会では、まず3Dプリンターで制作された未来館の立体モデルに触れる体験を行いました。独特な構造を持つ未来館の建築を触察しつつ、AIスーツケース体験で巡るルートを確認します。

この模型には重箱のようにフロアを分割させるギミックが仕込まれており、パカッと屋根を持ち上げるとフロアごとの3Dモデルが出現。これをiPadの上に乗せることでタッチによる音声説明を再生させるという、多感覚的な仕掛けも試すことができました。

視覚障害者にとって触察は重要な情報伝達手段のひとつではあるのですが、ただ触れただけではそれが何であるかすぐに理解することは困難です。未来館では触察の際、同時にどのような情報提供が効果的であるのかに関しても研究が進められているようです。


触察タイムが終わると、続いてAIスーツケース体験へ進みます。会場である常設展示エリアまで誘導していただき、いよいよご対面と相成りました。

まず確認したかったのが外観。手で触れて形を確かめさせていただくと、それは「想像以上にスーツケース」でした。普通にハンドルを伸ばして縦置きしたスーツケースそのものという佇まいです。

資料によるとケース部分は英国の老舗スーツケースメーカー、グローブ・トロッター社の「007 リミテッドエディション キャリーオン カーボン」を採用しているとのこと。ケース本体の寸法は幅390mm x 高さ550mm x 奥行き180mm。機内へ持ち込めるサイズのスーツケースを想像するとおおよその姿をイメージできるのではと思います。

一般的なスーツケースの見た目と大きく異なるのは、ケースの上面に2つのセンサーが設置されているという点です。まず人物認識に用いられる3Dカメラが収められたお弁当箱くらいのボックスが置かれ、その上に障害物検知および位置推定などに用いられる全方位3D Lidarセンサー(直径10cm程度の円柱体)が重ねて乗せられています。


また外観とともに「AIスーツケースがどのように動くのか?」という点も疑問でした。

結論から言いますと「直立したまま横方向へ動く」が正解。

スーツケースはハンドルが据え付けられている方向から見て、右方向へ進むので、左手でハンドルを握り、進行方向へ体を向けた状態がユーザーの基本的なポジションとなります。

ハンドルの上面には親指で操作するAIスーツケースを制御するための物理ボタン群、手のひらが当たる部分の左右側面には曲がる方向を通知する振動素子、底面にはハンドルを握っているかを検知するためのタッチセンサーが備えられています。ちなみにハンドルは固定されており収納することはできないようです。

この日は走行を開始するのに用いるスタートボタンと速度を調節する2つのボタンのみを使うよう説明を受けました。あと絶対に持ち上げないでとも言われました。


今回の体験では未来館5Fの常設展示エリアの入り口をスタートし、いくつかの展示を経由しつつ元の場所へ戻ってくるという、あらかじめ固定されたルートを巡ります。いわばAIスーツケースによるミュージアム・ツアーといったところでしょうか。

ウェアラブルデバイスやスマートフォンは用いず、AIスーツケースから送られる音声アナウンスを聞くためのネックスピーカーのみを装着。右手には念のため白杖を持ちました。


準備が整ったところでスタートボタンを押すと、AIスーツケースが動き始めます。

ゆっくりソローリ動くと言う感じではなく、ハンドルを通じて結構クイックな加速と力強い手応えが伝わってきます。動作は大きくガタつくこともなく非常に安定かつスムーズ。これはスーツケースの重量とホイールのグリップ力によるものと思われます。

体を持っていかれるほどではありませんが、想像していたよりもひっぱる力を感じました。ただハンドルからの力に対し無理に抵抗せずついていくことはさほど難しくはなく、結構自然な感じ(空港的な場所を優雅に移動する旅人気分)で歩くことができたと思います。端から見ていてどうであったかは知る由もありませんが……体感として。


デフォルトでのスピードはかなりゆっくり目。ハンドルのボタンで調節可能ですが、最高速度でも「気持ち早歩き」くらいでした。体験会向けにリミッターがかけられているのかもしれません。なおAIスーツケースはハンドルから手を離すとその場でピタリと停止するため、置いてけぼりを食らう心配はありません。

しばらく導かられるままついていくと左手に軽い振動を感じ、その後ゆっくりとカーブするのが分かります。これがなかなか絶妙なタイミングでした。また進行方向に何かしらの障害物が見つかると走行を停止します。危険が無いことを確認すると自動的に動き始めるのですが、混雑した場所では固まってしまうのではと思ったりしました。

なおAIスーツケースは基本的に段差を乗り越えることはできませんが、点字ブロック程度の凹凸であれば問題なく走行できるとのことです。


さて経由ポイントへ到着するとAIスーツケースが停止し、ネックスピーカーから目の前の展示に関する音声ガイドが流れます。このときAIスーツケースがその場でくるっと展示ブースの方向へ向くという芸の細かさも披露してくれました。賢い。

今回の体験中、ルートを外れたり到着地点を間違うと言った様子はなく、ナビゲーションの精度はかなり高いという印象です。

ここでスタートボタンを押すと、AIスーツケースは次の経由ポイントへ向けて動き始めます(この時展示ブースからスーツケースに戻るのにちょっと迷ったのは内緒)。

これを数回繰り返し、スタート地点へ戻ればゴール。時間にして数分間でしたが大きなトラブルもなく今回の体験は無事終了しました


ちなみにAIスーツケースのフィーリングについては体験した当事者から盲導犬に近い、または手引き誘導に近いという2つの意見が挙がっているようです。個人的にはハンドルから感じられるフィードバックは(私の数少ない)盲導犬体験に近いもののように思えました。これは動きのクイックさや重心の低さなどからきているのかもしれません。

常に緊張感を強いられるスマートフォンアプリやウェアラブルデバイスなどによるナビゲーションと比較すると、導かれるまま歩くだけで目的地につけると言うのは非常にストレスフリー。何も考えず余裕を持って単独移動できるのは、ロボット誘導ならではの経験ではないかと思います。短い時間でしたがスーツケースそのものの大きさや重量感からは、なぜか頼もしさのような感情すら覚えました笑。

ただ今回は固定されたルートを回るだけという限定された体験であったため、歩行支援というよりは「スーツケースに連れ回されている」という感じが若干醸し出されていたような気がしました。

歩行を支援するデバイスというよりも、目的地まで運んでくれる交通手段に近いような感覚でしょうか。自動運転車の技術も使われてますしね。これはこれでラクではあるのですが、せっかくならもっと自由に歩き回れたらさらに楽しいのではと思いました。

今後ユーザーの指示でスーツケースをコントロールする体験ができるようになれば、この印象は変わってくるかもしれません。この安定した運動性能のまま「自分の意志で移動している」感覚が得られれば、これまで経験したことのない自立性を感じられるのではないかと思うのですがどうでしょうか。


振り返りますとこのブログでも視覚障害者を誘導する様々なロボット技術について紹介してきました(白杖型人間型犬型ドローン型)。ただ書いておいてアレなのですが、いずれも興味深いけれど、実現性は……というのが率直な感想だったりします。

AIスーツケースは大手技術メーカーがこぞって開発に取り組んでいるということもあり、実用化へ向けた熱意のようなものを感じます。そして何より視覚障害当事者である浅川氏がこのプロジェクトを率いているという点は「Nothing About Us Without Us」の原則からも重要であるように思います。

正直なところ今回の体験の範囲ではAIスーツケースが本当に視覚障害者の役に立つものであるのか、判断するのは難しいと思う一方、ロボットを用いた誘導がここまで実現していることには素直にびっくりしたのも事実。実用化にはまだまだ超えなければならないハードルは多いようですが、期待を持ちつつ今後の開発の行方を見届けてみたいと思いました。

一般向けの体験会はこれからも開かれるとのことですので、チャンスがあればぜひ体験をおすすめします。普通に未来的アトラクション感覚で面白いですよ。当事者からどんどんフィードバックして未来のモビリティを実現させましょう。


最後に、体験の後にあーだこーだ質問していたら、このおじさん変わってると思われたのでしょうか……AIスーツケースの中身をちょっとだけ触らせていただきました。

ぱかりとケースの蓋が開けられると、その中にはメインの処理を担当するノートPC(UbuntuをベースにカスタムROSが動作)、センサーとインターフェイス類を制御するArduino(多分…?)、そして一際存在感を主張するバッテリーなどが所狭しと詰め込まれていました。

なるほど、あの安定感はこのバッテリー由来なのかと妙に納得。モーターやホイールといった駆動部分にはロボット向けの部品が使われているとのことで、ああ見た目は高級スーツケースでもこれは立派なロボットなのだな、と改めて思ったのでした。


さてと、情報が多かったのでダラダラな文章にな理ました。

とにかく今回は貴重な体験ができ、大変面白かったです。

日本科学未来館の関係者の皆様、ありがとうございました。


2022年3月23日水曜日

[メモ] #CSUNATC22で気になったガジェットなど10選。

   

Dot Pad

画像引用元


2022年3月15日から19日まで開催された題37回CSUN支援技術カンファレンスで気になったものなどのメモです。


1. Dot Pad by Dot Incorporation


BluetoothもしくはUSB-CでiPhone、iPadと接続し利用する点図/点字ディスプレイ。グラフィックス用として30x10セル、テキスト用として20x1セルの、リアルタイムでリフレッシュ可能な8点セルを備えています。iOSおよびipadOSのアクセシビリティAPIであるAxBrailleMapと連携し、Voiceoverが検出したイメージを点図としてグラフィックス領域へレンダリングします。テキスト情報はグラフィックスとは別にテキスト領域へ出力されます。

The Dot Pad: The Full Screen Tactile Display for the Blind - CSUN Conference 2022 Session Details

Dot Pad ― The first tactile graphics display for the visually impaired. (dotincorp.com)

Dot Pad Developer Center (dotincorp.com)


02. Graphiti Plus by Orbit Research


60×40、合計2,400の触角ピクセルを備えた点図ディスプレイ。リアルタイムにリフレッシュ可能なそれぞれの触角ピクセルの高さは調節可能でグラフィックスの微妙なトーンを触角として表現できます。スタンドアロンの点字メモ機として動作するほか、パソコンやスマートフォンなどと接続し対応するスクリーンリーダーと連携したり、HDMIで入力した映像を触覚グラフィックスへ変換することも可能です。タッチインターフェイスによりグラフィックスの描画などにも対応しているようです。

Graphiti Plus® – Interactive Tactile Graphics and Braille Computer – Orbit Research

Orbit Research Introduces the Graphiti Plus Interactive Tactile Graphic and Braille Display - EIN Presswire (einnews.com)


03. Orbit Speak by Orbit Research


コンパクトな合成音声ベースの点字メモ機。パーキンススタイルの点字入力キーボードを備え、内蔵アプリケーションを用いたメモの読み書きに加え、パソコンやスマートフォンとの接続機能も持ちます。

Orbit Speak – Speech-based Braille Notetaker – Orbit Research

Orbit Research Introduces the Orbit Speak Notetaker – Orbit Research


04. Polly by American Printing House


Annie(過去記事)で知られるインドThinkerbell Labsと共同開発された点字学習デバイス。標準サイズの6つの点字セルと大きなサイズの2つの点字セル、そしてパーキンススタイルの点字入力キーボード、音声出力などを備え、ゲーム感覚で点字を学ぶことができます。

Polly: Gaming the Way to a Braille Display - CSUN Conference 2022 Session Details

Introducing Polly! | American Printing House (aph.org)


05. electronic braille-ready format(EBRF) by American Printing House


APHとHumanwareが共同で開発中の新しいファイルフォーマット。点図ディスプレイの登場を見据え、主に教育分野において触覚グラフィックスや複数行の点字表示を含んだインタラクティブな視覚障害者向け電子教科書の標準形式を目指しています。

Braille Dots Serving 21st Century Needs - CSUN Conference 2022 Session Details

Research in Braille and Tactile Graphics | National Network for Equitable Library Service (NNELS)


06. Versa Slate by Overflow Biz, Inc.


紙を使わない点字板。20セル×4列の点字セルを備えており、通常の点字板と同じ感覚で点字を打ち、ボタンのプッシュで簡単に消去することができます。点字の読み書き練習や一時的なメモなどでの活用が主な用途として考えられているようです。

Versa Slate Paperless, Erasesable Braille Slate & Stylus : A. T. Guys, Your Access Technology Experts (atguys.com)

overflow (imweb.me)


07. Braille PAD by4Blind


1,850の触角ピクセルを搭載した、Linuxベースの8インチ触角タブレットです。フラッシュカードに保存された画像やテキストを点図および点字としてレンダリングするほか、内蔵されているカメラで撮影した写真を瞬時に触角グラフィックスへ変換します。

Braille PAD (4blind.com)


08. insideONE + by Insidevision Inc


Windows 11を搭載した点字タブレット。タッチパネルと32セルの点字ディスプレイを備えています。Windows 11で動作するデバイスとしては他にもElBrailleという点字メモ機もあるようです。

insideONE + - Windows 11 Braille Tablet - Power is in Your Hands - CSUN Conference 2022 Session Details

insidevision | Produits Braille


09. Bonocle by Bonocle Inc.


かなり前から話題になっていたBonocleが今春発売されるようです。これは単一の点字セルを備えたスマートフォン向け周辺機器で、バンドルされたアプリケーションと組み合わせて活用するようです。単一点字セルでどのような体験ができるのか興味津々です。

Explore Bonocle: One Braille Cell, Endless Functionalities - CSUN Conference 2022 Session Details

Bonocle – The Braille Entertainment Platform


10. Envision Glass by Envision


Envision Glass(過去記事)が大幅なアップデートを発表しました。OCRによるテキスト認識精度と文脈解釈によるドキュメント読み取りの向上、追加言語のサポート、Cash Readerとの提携による通過認識機能などが追加されています。またサードパーティー製アプリの組み込みが容易になり、例えばナビゲーションなどの用途への活用も検討されているようです。個人的にはnavilensが使えるようになって欲しいですね。

#CSUNATC22: Envision's Glasses Gain New Smarts with OCR Improvements, New Languages, Currency Recognition - Blind Bargains

Updated Envision smart glasses add improved OCR, new languages, third-party app support | ZDNet

Assistive smart glasses boast improved accuracy recognition and document guidance - AT Today - Assistive Technology


2021年7月22日木曜日

「夢見る指先」:フィリップ・クロデ氏講演会@世田谷美術館(2019年のお話)。

ぼんやりタイムラインを眺めていたら、触察本(触れて楽しむ絵本や書籍)を扱った講演会に関する横須賀美術館のアーカイブページが流れてきました。

そういえば私も2019年の夏、この講演を聞きに行ったことを思い出したのです。

フランスを拠点に触れる絵本などを制作している絵本工房「Les Doigts Qui Rêvent(夢見る指先)」。その創設者であるフィリップ・クロデ氏を招き、世田谷美術館で開催された講演会です。とても暑いひだったことを覚えています。


さて、講演では触察本の歴史に始まり、工房の制作活動に至るまで様々な話題を聞くことができました。印象的だったのは、目の見えない子供が触図からどのように情報を受け取っているのかというお話。視覚と触覚との認知メカニズムの違いが具体的な例を挙げながら解説され、普段無意識だった感覚が言語化される面白さがありました。

特に指先から得られる情報は「テクスチャ、形、大きさ、位置、方向、、関係性」という6つの要素から構成されるというお話は、触図を製作する側のみならず私のような視覚障害者としても意識しておくと触図に対する感覚も変わってくるような気がします。


そしてもう一つ、この講演会で強く印象に残っているのが、夢見る指先工房が製作した触察本の数々。講演が始まる前の短い時間でしたが、さまざまな工夫が凝らされた絵本に触れることができました。その中でも個人的にインパクトがあったのがこれ。


Le Petit Chaperon Rouge(赤頭巾ちゃん)

画像引用元:Les Doigts Qui Rêvent


「赤頭巾ちゃん」の触察本です。

この本の登場人物は、赤頭巾ちゃんはフワフワな赤い円、狼はざらっとした黒い円、といったように、具体的な姿としては描かれていません。

物語の全ての要素が抽象的な記号として解釈され、テクスチャが与えられ、ページに配置され、ストーリーが紡がれているのです。そしてさらにこの本には一切のテキスト(点字)もありません(凡例を除く)。驚くほどミニマルなデザインなのです。

でも不思議、単純な図形に触れているだけなのに赤頭巾ちゃんはキュートだし、狼は憎たらしい。おそらく複雑な形をトレースする工程が省ける分、想像力が自由に膨らみ物語に没入しやすいつくりとなっているのでしょう。

この本には他にも狼のお腹がジッパー付きの袋になっている場面など、触察本ならではの楽しい仕掛けが、ふんだんに盛り込まれています。


まるで前衛アート作品のようなこの本に触れていると、触察本とは印刷本の単なる代替品ではなく、触覚体験を追求したオリジナリティに溢れる表現であることに気がつきます。

この本に触れていた時間はせいぜい数分間程度だったでしょう。しかし指先には2年経った今でも、この本の強烈な印象が残っているのです。私が触察本や触図に興味を持つ一つのきっかけともなった体験でした。


余談ですが緑に囲まれた世田谷美術館は居心地の良い空間でした。床の感触がよかった。気候が良ければ砧公園を散策するもよし、二子玉川でお買い物するもよしですね。この日は帰りタクシーが掴まらず、猛暑のなかガイドさんと用賀の駅まで歩く羽目になりましたけど……。


参考:フランス さわる絵本出版社創立者 フィリップ・クロデ氏来日講演 | バリアフリー絵本



2021年4月26日月曜日

[ゲーム] #GAconf Europe 2021開催。アーカイブ公開されたトークセッション概要の粗訳。

2021年4月5日からの2日間、ゲームアクセシビリティに関して様々な視点からトークセッションが繰り広げられるイベント#GAconf Europe 2021が開催されました。

#GAconfはアクセシビリティ専門家からゲーム開発者、障害当事者などが世界各地から集結し、2017年から毎年2回、米国とヨーロッパで行われてきました。今年は昨年に引き続きCovid-19感染防止のため、完全オンライン形式で実施されました。

レポート記事もいくつか公開されています。



以下は#GAconf Europe 2021で配信されたトークセッション(20本)のアーカイブ映像のYouTubeリンクと概要の粗訳です。それぞれの動画には文字起こしテキストがキャプションとして用意されており「C」キーで有効にすることができます。筆者のように英語が苦手な方は設定から自動翻訳を日本語に指定することでざっくりとですが内容を把握することができるでしょう。またVoiceoverユーザーはブラウザで視聴することでキャプションを読み上げることができます。

なお次回の#GAconfは2021年秋、オンラインで開催される予定です。


01.News Update

by Ian Hamilton

この半年間のゲームアクセシビリティに関する大きな進歩について解説します。


02.ScourgeBringer: an indie accessibility post-mortem

by Thomas Altenburger, Flying Oak Games

「ScourgeBringer」はアクセシビリティを考慮して設計された、チャレンジングでスピーディなインディーゲームです。このトークでは、何が良かったのか、何が悪かったのか、どうすれば改善できるのかを紹介します。


03.The Usability of Accessibility

by Mark Friend, PlayStation

あなたがアクセシビリティを提案し、開発チームが賛同し、ゲームにアクセシビリティ機能を追加し始めたとします。ではそれから、開発チームに対してどのようにして価値のある実用的なフィードバックを提供すればよいのでしょうか。また、どのようなアプローチが最適なのでしょうか。このトークでは、PlayStation Studiosのユーザーリサーチチームが、チェックリスト形式のアクセシビリティレビューを導入し、アクセシビリティがユーザー体験全体に与える影響を総合的に評価することに重点を置くようになった経緯と理由、そしてこの3年間でプロセスを形成する上での課題と成功例をご紹介します。


04.Developers and Disabilities

by Chris Goodyear, Felicia Prehn, Laura Francis, Brain Marquez

障害のある開発者にとってゲーム業界の現状はどのようなものなのでしょうか?パネリストのLaura、Licia、Brian、Chrisが、採用から職場の文化に至るまでゲーム業界における障害のある開発者の状況についてディスカッションします。


05.MAVIS and The Tomorrow People

by Barrie Ellis, OneSwitch

できたばかりのAccessible Gaming Museumからのストーリー。初期の多目的アクセシブルコンピュータ「MAVIS」と、それを使った先進的な人々について紹介します。


06.Mental Maps and the Mind’s Eye – Gaming with Aphantasia

by Laura Kate Dale, LauraKBuzz

Laura Kate Dale氏は、視覚的な記憶を欠く「アファンタジア」のある自閉症ゲーマーです。このトークではアファンタジアのゲーマーにとって問題を引き起こす可能性のあるゲームデザインの領域と、ゲームをよりアクセシブルにするための様々なソリューション、そして、この点でうまくいっているゲーム、うまくいっていないゲームについて解説します。さらにアファンタジアのゲーマーに対するアクセシビリティのサポートが、特定の症状を持つ人々以外の幅広いゲーマーにとっても有益であることを解説します。


07.Gaming for Good – Exploring the barriers faced by disabled people

by Molly White and Emily Gordon, Scope

Scopeが実施した、障害者ゲーマーの行動、モチベーション、障壁に関する調査結果のポイントを解説します


08.Big Brain Plays: Gaming with Cognitive Differences

by Stacey Jenkins

Stacey Jenkins氏は、障害者向けコンテンツのクリエイターであり、ゲームにおけるアクセシビリティ向上の熱心な提唱者です。今回のトークでは、認知機能に障害のあるゲーマーがどのような存在であるか、また、彼らのお気に入りのゲームがどのようにしてその障壁を取り除くツールとなったかについて解説します。


09.Driving Accessibility Advancements in Watch Dogs: Legion

by Maksym Horban, Ubisoft

Watch Dogs: Legion」のシニアゲームデザイナーであるMaksym Horban氏は、彼のチームがどのようにアクセシビリティの改善でWatch Dogsブランドを次のレベルに押し上げたのか、そして「Can I Play That」から「Most Improvement in Accessibility in a Series」の認定を受けるに至ったのかを解説します。


10.Accessible Game Design – Infinite Play & Infinite Time

by Rory Steel, Digital Jersey

アクセシビリティはハードウェアだけではなく、ゲームデザインにも組み込まれるべきものです。私の家には障害のある二人の子供がいますが、娘が反応ベースのタイミングが必要なゲームを進めるのに苦労しているのを目の当たりにしてきました。また下の息子には負けないアドベンチャーを提供することで自信をつけさせることができました。私たちは、ゲームデザインがどのようにアクセシブルであるべきかを再考する必要があります。


11.Bridging the Gap Between Academia and Industry: Recent Trends in Academic Research

by Kathrin Gerling, KU Leuven

このトークでは学術研究の概要と、それがどのようにゲーム開発に貢献できるかを紹介し、ゲームと障害に焦点を当てたHCIおよびゲーム研究の最近のトレンドをまとめます。そしてこれらのプロジェクトから何が学べるのか(学べないのか)、また、研究者とゲーム開発者が力を合わせ、理論と実践のギャップを埋め、どうすればすべてのプレイヤーにとって意味のある体験を提供するゲームを作るることができるのかを考察します。


12.Accessibility and agile game development as a micro-sized indie

by Dr. Jim Sellmeijer, Raskal Games

このプレゼンテーションでは、インディーゲーム開発者としてのJim氏の経歴と、Raskal Games社のアクセス可能なインディーパズルゲーム「Ekstase」を作るためにagileソフトウェア開発の基本がどのように活用されたのかを語ります。


13.Growing a tree out of a wall – the CapGame odyssey

by Gwendolyn Garan, CapGame

このセッションでは、フランスのゲームアクセシビリティ専門非営利団体であるCapGameについて、2013年の設立から現在に至るまでの、多様で学際的なアクセシビリティへの取り組みについて紹介します。


14.Deafness/HoH: The State of Accessibility, Culture and Community.

by Anni Pekie, Ben Bayliss, Chris Goodyear, Nickie Harper Williams

聴覚に障害のあるパネリスト、Ben、Chris、Anni、Nickiの4人が、彼らを取り巻くゲームに関する文化や出来事について、それぞれの体験を語ります。


15.DysTrophy gaming

by Vivek Gohil

筋力が低下した状態でゲームをプレイする場合、どのようなアクセシビリティ機能が必要なのか、またそのようなアクセシビリティ機能を搭載したゲームについての理解を深めます。これによりゲーム開発者は、筋力低下や運動能力に問題のあるプレイヤーのためにゲームをどのようにデザインしたら良いのか、理解を深めることができます。


16.Connecting with Players with Disabilities

by Emilio Jéldrez, King

「Candy Crush Friends Saga」」にアクセシビリティメニューを追加したことで、プレイヤーとのつながりができ、アクセシビリティに関するフィードバックを直接受けられるチャンネルを作る機会を得ることができたというエピソードを紹介します。


17.Where do I go? The joys and frustrations of navigating as a blind gamer

by Dr. Amy Kavanagh

私は「Blind Button Masher」として仮想空間において失われた時間を過ごしています。残念ながら私の信頼する盲導犬Avaを、9世紀のイギリスやディストピアのシアトル、マーベルのニューヨークに連れて行くことはできません。このトークでは、ナビゲーションと経路探索を改善するために何ができるかを探求します。マップ、カメラアングル、HUDなど、迷える私たちのためにゲームをデザインする方法を探りましょう。

参考:Designed For Easier Navigation - Family Video Game Database (taminggaming.com)


18.Putting the Assist Mode in Control

by Vida Starčević, Remedy Entertainment

このトークでは、Remedy Entertainment社の受賞作「Control」において、発売後にプレイヤーからのフィードバックがどのようにアクセシビリティオプションの追加に影響を与えたのか、またアシストモードの搭載がプレイヤーの定着に良い影響を与えたのかについて紹介します。


19.Updates from Xbox: The Xbox Accessibility Guidelines & Microsoft Game Accessibility Testing Service

by Kaitlyn Jones & Brannon Zahand, Xbox

昨年、Microsoftのゲームアクセシビリティ製品にいくつかの変更と追加が行われました。このトークでは、Xbox Accessibility Guidelinesの更新について、更新の経緯や理由、新コンテンツの概要などを解説します。また、新たに導入された「Microsoft Game Accessibility Testing Service」について紹介し、このプログラムが誕生した経緯や、これが開発者にとってより包括的で楽しいゲームを作成するためにどのように活用できるサービスであるかについて解説します。

参考:Xbox accessibility guidelines updated, testing program announced - Can I Play That?

参考:マイクロソフトがXboxやPC用ゲームのアクセシビリティをテストする開発者向けサービスを開始 | TechCrunch Japan


20.Game Accessibility For Eye Gaze Users

by Becky Tyler

このトークでは様々なコンピュータゲームを視線でプレイした経験を紹介し、ビデオゲームが、視線を利用するユーザーにとってアクセシブルであることがなぜ重要であるのかを解説します。マインクラフト向けの「EyeMine」インターフェイスの開発に携わった経験から、ゲームを視線でアクセスできるようにするにはどうしたらよいかを考え、ゲームをデザインする際に開発者が考えなければならないポイントを解説します。

参考:Eye Gaze Games (specialeffect.org.uk)

参考:Eye-tracking software for Minecraft makes big accessibility improvements | Rock Paper Shotgun


支援技術関連記事まとめ(2022年11月)※お知らせあり。

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