米国現地時間2019年7月3日、Facebookとその傘下サービスであるInstagram、、WhatsAppで世界規模のシステム障害が発生した。障害が報告されてからおよそ9時間後に復旧し、現在は正常に戻っている。この障害ではアプリが起動しなかったり、写真や動画のアップロードができ無い、投稿された写真や動画がみられ無いといった状態が続いた。特に写真による情報がメインのInstagramは使い物にならないということで世界中のユーザーから阿鼻叫喚の声が続々とTwitterに寄せられたという。特に北米、南米、ヨーロッパのユーザーへの影響が大きかったようだ。
今回の障害で、非常に興味深い現象が見られた。
障害発生中にFacebookやInstagramのタイムラインを閲覧しようとしたユーザーは、写真や動画のサムネイル画像の代わりに、壊れたアイコンとともに奇妙な文字列を見ることになった。拙ブログをご覧の方ならお分かりと思うが、これはFacebookがAI画像認識を用いてタグつけした「自動代替テキスト」である。この代替テキストはスクリーンリーダーを用いなければ基本的に目にすることはなく、今回画像がローディングされないというトラブルによって、一般のユーザーの目に止まることとなった。反応を見る限り、おそらくこれを見たユーザーの多くは、この自動代替テキストを初めて知ったと想像される。
写真をAIで解析し、何が写っているのかをテキストとしてアウトプットする技術は、目で写真を確認でき無い視覚障害者向けの支援技術としてFacebookを始め、MicrosoftやGoogle、Apple、IBMなどのハイテク大手が現在も開発を進めている。だが、現状では必ずしも写真を的確に説明できるまでの精度には達してい無い。顔認識技術は比較的進歩しているが、オブジェクト認識に関してはまだまだざっくりとした情報しか返してくれない状態だし、間違いも多い。だがそのような情報でも、視覚障害者にとっては、これまで一切の情報を得られなかった写真を「見る」ことができる革命的な技術だ。
その現状を知ってか知らずか、今回のFacebook障害に直面したユーザーの一部が、自動代替テキストを揶揄するようなメッセージをTwitterに続々と投稿し始めた。まあ半分はなかなか障害に関する情報を公開しないFacebookへの当てつけが入っているのかもしれない。
中には、この自動代替テキストを「Facebookがターゲット広告に使っているのでは?」といったような論調で語る向きもあった。確かに知ら無い間に自分の写真が解析され、トンチンカンな代替テキストがつけられていたら、びっくりしてそのような気持ちになるのも理解できる。日頃のFacebookの行いを思い返せば致し方のないところかもしれ無い。
むろん写真の解析が何かしらのマーケティングに応用されるなど、プライバシーの問題を引き起こす可能性はゼロではないが、現状ではあくまでもアクセシビリティのための技術、というのが個人的な認識である。うーん、ちょっと自信なくなってきた。
一つ残念だったのが、結局この騒動で自動代替テキストが単なるネタ的な扱いしかされていなかったという点。いや、ネタにすること事態は何の問題もないし、むしろ面白いのでどんどん突っ込んで欲しいくらいなのだが。
ただ、この貧弱な代替テキストを知ることで、視覚障害者との「情報のギャップ」にも思いを馳せてくれるきっかけになってくれると良かったのに、とは思う。加えて手動で代替テキストを設定する方法の周知もネジ込めれば、ちょっとは世界がアクセシブルになったかもしれない。
むしろしばらく画像がローディングされない方が、少しは視覚障害者の気持ちがわかるのではないかな。なんてね。
でもまあ、プロのコンテンツ提供者ですら多くがまともな代替テキストを提供できていない状況で、ユーザーにそこまでのリテラシーを求めるのも現実的ではないのかもしれないね。
それにしても、もう導入から3年経過しているのに、Facebookの自動代替テキストがここまで認知されていなかった事実には、正直ガッカリしてしまった出来事でもあった。