2021年11月15日月曜日

デンマーク。高精度位置情報を活用した視覚障害者向けナビゲーションサービス「NaviBlind」。アンテナ内蔵キャップをかぶってお出かけ。

GNSSアンテナを内蔵したキャップ「NaviCap」。

画像引用元:NaviBlind


Google MapsやApple Mapなどの地図アプリには歩行者むけナビゲーション機能が備えられており、画面が見えない視覚障害者でも音声読み上げを活用して目的地までのルートを確認し、ターンバイターンによるナビゲーションが利用できます。

しかし視覚障害者にとってスマートフォンによるナビゲーションには2つの大きな問題があります。

一つはアプリから指示されるルートが必ずしも視覚障害者には安全とは限らないということ。アプリは基本的に最短距離でルートを計算するため、狭い歩道や段差、障害物といった危険要素はほとんど考慮されません。もう一つはその精度。スマートフォンのGPS測位機能には10メートル程度の誤差があるため、曲がり角や目的地の近くまではたどり着けるものの、そこから正確なポイントを特定することはかなり困難です。

このようにスマートフォンで視覚障害者が自由に移動するためにはまだ技術的な課題が残されています。それを解決している(かもしれない)サービスが北欧デンマークで実用化されているようです。


NaviBlindは、従来のアプリによるナビゲーションの欠点を払拭し高精度かつ最適なルートを実現した、ユニークな視覚障害者向けナビゲーションサービスです。

利用者はまず専用アプリから、訪問したい場所をリクエストします。NaviBlindは出発地から目的地までの歩行ルートを専門スタッフの手によって作成し、72時間以内に送信します。ルート作成にあたってはマップだけでなく高解像度衛星写真を参考にし、モビリティ・インストラクションの原則に従い視覚障害者の歩行に最適なルートを1メートル精度で構築します、これには横断歩道や段差といった気をつけるべきポイントも含まれます。

人力によるルート作成のため、マッピングされていない場所、例えば公園の中や森林の散策道などの移動にも利用できるとのこと。NaviBlindはこのルートを「バーチャルガイドライン」と呼んでいます。


ナビゲーションにあたっては、NaviBlindアプリがインストールされたスマートフォンとキャップ方の専用アクセサリ「NaviCap」をBluetooth接続して利用します。NaviCapには測位衛星からの信号を受信するためのアンテナが内蔵されており、これを頭に装着することでスマートフォン単体と比べ圧倒的な精度のナビゲーションが実現するというわけです。

NaviCapのアンテナには、スイスのu-blox社によるGNSSモジュール「ZED-F9P」が採用されています。これは5種類のGNSS衛星(GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS(みちびき))からの信号を受信できる低消費電力型マルチバンドレシーバーで、受信状況が厳しい都市部でも数秒でセンチメートル級の測位を達成可能とのこと。


歩行中はNaviCapが受信した位置情報とバーチャルガイドラインを称号し、進むべき方向や横断歩道などの情報を音声で通知し安全かつ正確にユーザーを誘導します。最終的には建物の入り口などかなり細かいターゲットまで連れて行ってくれるようです。

またナビゲーション中は、不測の事態やルート変更に対応するためのビデオ通和を用いたライブサポートも提供されます。


NaviBlindは現在デンマーク国内限定で提供されており、年間サブスクリプション(30ルートとライブサポート)で15,000 DKK(約26万円)の料金がかかります。ちょっとお高いような気もしますが、必要な人にはそれだけの価値があるのかもしれません。

キャップを被らなければならない、ルート作成までタイムラグがある、屋外でしか使えないなどデメリットはありますし、ガチガチのルートをたどらされるだけのナビは個人的に窮屈な印象もありますが、本格的にGNSSの高精度測位を採用したナビゲーションシステムがどの程度実用的であるのかは興味深いところです。

気になるのはNaviCapのデザインですね。正確な測位を実現するためにはアンテナが必要であることは納得できるのですが、服装によっては違和感ありそうです。将来的にモジュールが小型化されれば、好みの帽子に取り付けるタイプのようなものが可能になるのかもしれません。


そういえば数年前のサイトワールドで外付けの、QZSSレシーバーを用いたナビゲーションシステムの話を聞いたことがあるのですが、あれからどうなったのでしょうか。QZSSはすでに稼働しているし、レシーバーの状況によっては日本でも同様のサービスが実現可能であるようにも思えます。


2021年11月10日水曜日

画像認識AIにより、写真やビデオからプライバシー情報を消去するアルゴリズムを開発。視覚障害者の安全なSNS利用の実現を目指す。

スマートフォンの普及により、視覚障害者の間でもSNSの利用は特別なことではなくなりました。日常的な風景やスクリーンショットを撮影し共有することも当たり前のように行われています。

しかし視覚障害者、とりわけロービジョンの人々には、撮影した写真の細かい部分を確認することが難しいという問題があります。そのため自分では確認したつもりでも、気付かずに他人には見られたくない物や個人情報が写り込んでしまい、そのまま共有してしまった……なんて経験、視覚障害者には結構あるあるであるような気がします。

カフェのテーブルを撮影したらおいてある名刺が隅っこに写り込んでしまったり、スクリーンショットをキャプチャしたらバックグラウンドで開いていたメールのウィンドウが見切れていたり。とある研究で行われた調査では撮影された写真の65枚に1枚以上の割合で、処方薬や自宅住所、タトゥーなどのプライベートな情報が意図せずに含まれていたとのこと。視覚障害者にとって、画像からの偶発的なプライバシー漏洩は常にそこにあるリスクと言えるでしょう。

当人が気付かないまま個人情報が発信されているこの状況は大きなトラブルの元となるのはもちろん、見せられる側としても戸惑うはず。そして何より恥ずかしい。しかし現状、視覚障害者がこれを独力で防ぐ手段は、ほぼ存在しません。


イリノイ大学情報科学部(The iSchool at Illinois)とパートナー機関の共同研究チームは、視覚障害者が撮影した写真やビデオを解析し、プライバシーに関する部分を特定する新しい画像認識AIアルゴリズムを開発しています。

New project helps people who are blind safeguard private visual content (illinois.edu)


撮影した写真やビデオを共有したい視覚障害者はこのアルゴリズムを導入したアプリを通じ、プライベートなコンテンツが写り込んでいないかをスクリーニングすることができます。もし何かしらセンシティブなコンテンツが発見された場合、その内容を通知し、ユーザーは写真を共有する前に、必要に応じその部分を隠すことができるとのことです。


現時点ではまだアプリもリリースされておらず日本で使えるのかすらも全く不明ではありますが、視覚障害者による情報発信が盛んになる中で、プライバシー保護という問題をAIによって解決するという発想は一つの気づきを与えてくれるものです。

といいますかこれ、視覚障害者にとどまらず、あらゆる人々にとって「うっかり情報漏洩」を防ぐ万人に有益な技術であるように思えます。むしろOS標準のセキュリティ機能として実装していただきたいレベルではないかと。


それにしてもSNSの写真に限らず、視覚障害者が自身のプライバシーをいかにして保護するのかは常に悩みのタネです。ヘルパーや家族にすら見せたくないものも少なからずありますからね(私にはありませんけど)。

この辺り、AIの力に頼らざるを得ない分野なのかもしれません。そうなると何を隠して何を隠さないのかをどのように判断するのかなど、考えることは多そうです。


2021年11月4日木曜日

米Mastercard、触覚で識別できるノッチを備えた「Touch Card」発表。カードのエンボスレス化が進む中、視覚障害者に対するアクセシビリティを確保。

Touch Card

画像引用元:WSJ


視覚障害者の経済活動には様々なハードルが立ちはだかります。

カード類の識別もその一つ。視覚障害者のカード判別については以前にも記事にしましたし、アプリを使って判別する記事なんかも書いてますのでご興味があればどうぞ。

ここで大きな手がかりとなるのがカード表面の「エンボス」。触れた瞬間に裏表や上下方向を判別できるあの凸凹には、結構な情報が詰まっているのです。


ですがしかし、近年、カードのデザインのトレンドとして「エンボスレス」が加速しているとのこと。つまりカード番号などが浮き出していない、ツルツル表面のカードが増えているらしいのです。これは触覚でカードを判別している視覚障害者にとって由々しき事態と言わざるを得ません。エンボスレスカードのアクセシビリティをいかにして確保していくのか、カード発行会社には早急な対応が求められているのです。


この問題に対処する一つの答えとして、米国Mastercardは「ノッチ(切り欠き)」によってプラスチックカードの種類を判別することができる新しいカードデザイン「Touch Card」を発表しました。

Touch Cardのクレジットカードには丸いノッチ、デビットカードは正方形のノッチ、そしてプリペイドカードには三角形のノッチが側面に付けられています。このノッチに触れることで、視覚に障害があってもカードを識別し決済端末に挿入する方向を簡単に判別することができるようになるとのことです。

この仕組みは視覚障害者に限らず、暗い場所などカードを目で確認することが難しいシチュエーションなどにおいても多くの顧客に対してメリットがあるといえます。これはいわゆるユニバーサル・デザインのわかりやすい例といえますね。


Touch Cardは英国the Royal National Institute of Blind People(RNIB)、及び米国VISIONS/Services for the Blind and Visually Impairedなどの視覚障害関連団体とのコラボレーションによってデザインされました。2022年以降、まずは米国で発行されるカードから順次導入されていく予定とのことです。


カードのエンボスレス化はコスト削減やお財布のスリム化などメリットも多く、普及していくことは間違いないでしょう。そうなるとノッチ付きカードが業界全体に広がることも考えられます。今後はノッチの位置や形状が被らないよう、業界全体でのルール作りが必要となってくるかもしれません。


参考:Mastercard Introduces Accessible Card Design for Blind Users - WSJ


2021年11月3日水曜日

マレーシア。視覚障害者にも利用しやすい、アクセシブルな自動販売機が登場。

Atlas Vending, MAB present first braille-enabled vending machines

画像引用元:The Vibes


視覚障害者にとって自動販売機はバリアの塊のようなもの。まずどこに設置されているのかわからない。そしてコインを入れる場所がわからない。挙げ句の果てには商品が選べない(3ない運動)。

結局見える人に手伝ってもらうか、運を天に任せロシアンルーレットをするくらいしか策がないわけです。スマホのOCRアプリを使うというてもありますが確実性に欠けるし。いずれにせよ厳しい戦いを強いられることになります。

自販機ってこんなに不便だったっけ?


個人的には「Coke ON]などのアプリと連携できるIOT自販機にちょっとだけ期待しているのですが、今のところアプリがアクセシブルでないなどまともに利用できるようにはなってはいません。

「すべての人にやさしい」と謳うユニバーサルデザイン自販機ですら、視覚障害者の利用はほとんど考慮されていないというのが、日本における自販機の現状なのです。

視覚に障害があっても自由に喉が潤せる日は、一体いつになったらくるのでしょうか。自販機大国・日本でアンニュイに更ける中、南国マレーシアから気になるニュースが飛び込んできました。


マレーシア、シンガポール地域最大の自動販売機メーカーであるAtlas Vending社は、マレーシア盲人協会と提携し、視覚に障害があっても簡単に好みの飲み物を購入することができるアクセシブルな自動販売機を開発しました。(プロモーション動画

この自販機には飲み物の種類や決済方法を判別するための点字パネル、ロービジョンの操作を支援するLEDイルミネーションとカラーリング、そしてモーションセンサーで反応する音声ガイド機能が備えられています。これらの機能により、視覚に障害があっても自販機の場所を特定し、飲みたい商品を選び、コインや電子マネーで支払うという一連の作業を誰の助けも借りずに実行することができるようになります。

マレーシア盲人協会はこれらの支援機能の設計からアクセシビリティ・テスト、そして設置場所の選定に至るまで、開発の初期段階から全面的に協力しているとのこと。現在クアラルンプール市内の視覚障害者の利用が多いLRT停留所などを中心に、11台ほどが試験的に設置されています。


点字が読めない視覚障害者への対応やメンテナンスの問題など課題も考えられますが、大手メーカーがこのような製品開発に取り組む姿勢は、日本のメーカーにも大いに参考にしていただきたいところです。


参考:Atlas Vending, MAB present first braille-enabled vending machines  | Community | The Vibes


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