※一週間で見つけた支援技術、主に視覚リハに関する記事のメモ書き。基本月曜更新。努力義務。
※乱文・誤変換ご容赦です。
※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。
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○英国。9月23日から公的機関に対しWebアクセシビリティの準拠を全面的に義務化。
Digital accessibility: Transforming government
2020年9月23日、英国の公的機関は2018年9月23日に施行されたPublic Sector Bodies Accessibility Regulations 2018に基づき、そのWebをアクセシブルにする義務を負うことになる。対象は中央政府と地方自治体および一部の慈善団体と非政府組織。公的放送局など一部例外もある。
対象となる組織は所有するWebサイトをWCAG 2.1 Level AAに準拠させ、同時にアクセシビリティステートメントの公開とアクセシビリティの問題に対処するための窓口を設けなければならない。そして政府機関であるGovernment Digital Service(GDS)はこれら組織のWebを監視し、必要に応じて改善を指導する義務を負う。
2018年9月23日以降に公開されたWebは、GDSの定めたアクセシビリティルールに従う義務を持っていたが、これに加え2018年9月23日以前に作成されたWebに関しても、新しいルールに準拠させなければならない。なお同法は2021年6月までにモバイルアプリケーションのアクセシビリティのルール準拠も義務付けている。
一方で民間の調査によると、2年間という準備機関が設けられていたにもかかわらずいまだに多くの公的機関のWebには代償さまざまなアクセシビリティの問題があるという(参考調査)。英国の視覚障害者支援組織RNIBは、アクセスできないWebに対しユーザーから改善を求めるためのツールキットを公開している。情報発信側のアクセシビリティに対する意識向上とともに、この新しいルールに基づいたユーザーからの声も積極的に伝える必要があるのだろう。
○AIRAとWayAroundが提携。電視タグへの情報登録をAIRAエージェントが支援。
Aira + WayAround
WayAroundは、WayTagsと呼ばれる電子タグに情報を書き込み、衣服や書類ケース、調味料いれなどに貼り付けることで視覚障害者の生活を便利にしてくれるサービス。ユーザーはスマートフォンを用いてWayTagsをスキャンすれば、書き込まれた情報を音声で確認することができる。日本でも同様のサービスとして「Tag of Things ものタグ」がある。
ただこのようなサービスは、タグに情報を書き込むためにどうしても晴眼者のサポートが必要だった。この問題を解決するため、WayAroundは遠隔サポートサービスであるAIRAとパートナーシップを締結。タグへの情報登録をAIRAのエージェントの助けを借りて行えるようにした。
ユーザーはタグに登録したい物をカメラを通じて見てもらい、エージェントはそれをもとにタグに登録する内容を記述してメールで送信する。あとは受け取った内容をタグにコピペして識別したい物に貼り付ければ完了だ。一人暮らしなどすぐに誰かに見てもらえない視覚障害者でも、使いたい時すぐにタグを登録できるのはQOLを向上させるしWayAroundにとってもその利便性を大きくアピールできるだろう。
電子タグは工夫次第で視覚障害者の生活を劇的に便利にしてくれる。情報の登録というハードルを超える仕組みが普及すれば、もっと広く使われるのではないだろうか。あともう少しタグを手軽に入手できるといいな。
○選挙支援団体がBe My Eyesと提携。視覚障害者の投票をサポート。
Vote.org joins Be My Eyes to Support Visually Impaired Americans in 2020
米国で選挙に関するあらゆる情報提供と投票支援を行う非営利団体Vote.orgは、11月に実施される大統領選挙に向け視覚障害者を支援するマイクロボランティアサービスBe My Eyesと提携。アプリのビデオ通話を通じて目の不自由な有権者の投票を支援する。
Be My Eyesに登録している視覚障害者は、スペシャライズドヘルプからVote.orgを呼び出し、有権者登録のサポートや確認のほか、投票に関するさまざまな情報提供を受けることができる。
いまだ沈静化の目処も立たないCovid-19感染拡大の中実施されるこの選挙では、視覚障害者への対応も州によって大きく異なっており、必ずしもアクセシビリティが確保されているわけではないようだ。視覚障害者の安全を保ちつつ選挙権を正当に行使するためにも、このような支援が役立つだろう。
○文化施設をアクセシブルにする取り組み2つ。
The UniDescription Project Breaks Down Common Barriers to Media Accessibility – American Alliance of Museums
The UniDescription Projectは、2014年にハワイ大学マノア校とNational Park Service(NPS)が共同で開始した、自然公園や文化施設に関するメディアのアクセシビリティの向上を支援するプロジェクト。米国の100を超える施設でパンフレットの音声バージョンの製作やWeb上にあるメディアの画像説明文の整備などを行っている。8月には2020 Gold Media & Technology MUSE Award for Research & Innovationを受賞している。
近年、AIを用いて画像説明文を生成するSNSなどが登場しているが、The UniDescription Projectはあくまでも人の力によるオーディオ記述にこだわっている。そして5年間の活動で蓄積されたノウハウをもとに、オーディオ記述の製作と普及を促進するためのオンラインツールを公開している。公園や文化施設のアクセシビリティ向上だけでなく、広く視覚障害者に対する情報保証を目指す人々にとっても貴重な情報源となるかもしれない。
Tunisian Museums Develop Special Apps For The Visually-Impaired | Al Bawaba
チュニジア、チュニスにあるバルド国立博物館は、施設や展示品を視覚障害者にもアクセス可能にする総合的なイニシアチブを発表した。これらには点字に翻訳されたパンフレットや展示物の音声解説を提供するモバイルアプリケーションと専用デバイス、さらに一部の展示品を3D印刷したレプリカなどの製作が含まれる。加えて博物館のWebサイトのアクセシビリティ改善も行う。最近任命され、自らも視覚障害者であるチュニジア文化大臣は、国内の他の文化施設に対しても同様の取り組みを行うよう要請している。
○今週見つけた視覚障害者支援デバイス。
UAE invention wins James Dyson Award 2020
UAEの学生によって開発された「Touch」は、視覚障害者の生活をサポートするスマートリング。この指輪型デバイスには「色の識別」と「テキスト読み上げ」という2つの機能が搭載されている。識別した色の名前や認識されたテキストは振動やBluetooth接続したイヤホンを介して装着者に伝達される仕組みだ。このデバイスはUAEとしては初めてJames Dyson Awardを受賞している。将来的にはこのリングを中心に、リストバンドやネックレスといったウェアラブルデバイスと連携させるアイデアもあるようだ。
This Indian startup is giving an artificial vision to visually impaired people using AI and Deep Learning | SME Futures:
インドのスタートアップNexartは、「Eyewey」と名付けられた視覚障害者向け学習型AI画像認識フレームワークを開発している。物体を識別したりテキストを読み上げることで視覚障害者を支援するほか、様々な用途への応用も考えられているようだ。同社はEyeweyソリューションの一環として、識別した物体や障害物を振動で伝えるスマートグローブも合わせて開発中。同社はこれらの製品をできる限り手に入りやすい価格で提供することを目指しているという。
This Smart Contact Lens Is Already In Clinical Trials At Ghent University In Belgium
ベルギーのゲント大学では、視覚障害者を対象とした医療用スマートコンタクトレンズの臨床試験が始まっている。このレンズには超小型のバッテリーと各種センサー、液晶ディスプレイが内蔵されており、レンズに入り込む光の量を自動的に調節することで光過敏を持つユーザーの見えにくさを改善する。ディスプレイは濃淡を変化させるだけのシンプルなものだが、将来的に光を感じられる視覚障害者に対し矢印などを表示させ、ナビゲーションや障害物の警告などにも応用する計画もあるという。
○今週のゲーム関連トピックス。
The Game Awards arrives December 10 with new accessibility honor | VentureBeat
The Game Awards(TGA)は毎年12月に米国で開催される、その年における各ゲームジャンルにおいて最も功績のあった作品や人物・団体を表彰する年次イベント。今年はCovid-19感染拡大防止のため12月10日にオンラインで開催されることが決定している。
そしてTGAの主催者でありイベントの進行役を務めるジェフ・キーリー氏は、今年新たにゲームアクセシビリティに焦点を当てた賞が設けられることを明らかにした。
「TLOU2」を筆頭に、近年ではゲームに包括的なアクセシビリティオプションを導入する作品が見られるようになってきた。またMicrosoftのXbox Adaptive Controllerのようなユニバーサルな周辺機器の開発や障害者ゲーマー支援団体との連携の動きも活発かしてきている。ただゲーム業界全体から見れば、これらはまだごく一部の動きであることも否めない。
TGAではおそらくTLOU2もしくはその関係者が初の受賞者となる可能性が高いが、実際にどのような雰囲気になるのか注目したい。アクセシビリティが特別なものではなく、全ての開発者が取り組むべき課題であ理、障害当事者にとって切実な問題であるというメッセージが発疹されて欲しいものだ。
TGAのようなメジャーイベントがアクセシビリティを扱うことで、このムーブメントを一過性のものにせず、未来に向け定着させる効果を期待したい。願わくば他のイベントやゲームメディアへの波及も望まれるところだ。
All-Digital PS5 And Xbox Series S Pose Unique Accessibility Challenges - GameSpot
視覚障害を持つゲーマーであり、ゲームアクセシビリティ情報サイト「Can I Play That?」の執筆者の一人であるSteve Saylor氏のGameSpotによるインタビュー。PS5やXbox Series Sで広がるメディアレス時代におけるアクセシビリティの問題が提起されている。
根本にあるのは、ゲームのアクセシビリティに関する情報がメーカーやゲームメディアからほとんど公開されていないという問題。障害を持つゲーマーは、購入前にそのゲームが自分にプレイ可能かどうかを判断できず、ギャンブル覚悟で購入するか、もしくは諦めるかの2択を迫られているという。従来の物理メディアの場合は購入店のキャンセルポリシーに従い返品することができたが、ダウンロード購入したゲームの場合プラットホームにより返品が不可能なケースもある。情報も得られず返品も制限されるとなると、障害を持つゲーマーにとってはより障壁が高まる懸念が出てくる。
アクセシビリティ不備による返品という問題は複雑な要素を孕んでおり、すぐには解決しないかもしれない。だが少なくともメーカーやゲーム媒体から詳細なアクセシビリティ情報が提供され、障害を持つゲーマーが購入を判断できる環境が整えば、トラブルはゼロにはならなくとも減少はするだろう。個人的にはとにかく情報不足が最大の問題と思う。これ、AppStoreなどのアプリストアでも同じことが言えるよね。