macOS標準のスクリーンリーダーであるVoiceoverにはスピーチ(読み上げ音声)をオフにする機能が備えられています。おそらくこの機能は晴眼ユーザーがテストなどで用いる状況を想定して用意されているものと考えられます。だって視覚障害者にとっては「音がでない」なんて意味ないですもんね。
この機能はVoiceOverユーティリティの「スピーチ」カテゴリにある「スピーチを消音」にチェックを入れることで有効になります。この機能が有効になるとVoiceoverはスピーチ音声を出力しません。
ただこの設定切り替えにはなぜかVoiceoverのショートカットキーが割り当てられていません。見えないユーザーがうっかり消音しないための配慮なのかな。真偽は不明です。
でもパソコンっていつ何が起こるかわからないものですよね。
何かの拍子にスピーチが消音されてしまったら?
見えないユーザーにはかなり厄介な状態に落ちいいることは火を見るよりも明らかです。実は先日、そのようなトラブルに遭遇してしまったのですよね。その時は近くに見てもらう人がいたので大事には至りませんでした。でも精神衛生上、見えないユーザーでも一人でスピーチ消音を切り替える方法は知っておいた方がよろしいのではないでしょうか。
ということで画面が見えなくてもスピーチ消音を切り替える手段を紹介しましょう。
スピーチが消音されているか、確認する方法
まずVoiceoverが黙ってしまった場合、その原因がスピーチ消音であるかどうかを確認する必要があります。
スピーチが消音されている場合、Command + F5でVoiceoverをオンにした直後、「読み上げオフ」とアナウンスされます。もしVoiceoverのオン/オフのアナウンスが聞こえない場合は別の原因で音声が聞こえなくなっている可能性が考えられます。
なお一旦スピーチが消音されてしまうとVoiceoverをしつこくオン/オフしようがMacを再起動使用がずっと消音されたままになります。大抵はここでパニックになります。
トラックパッドコマンダーでスピーチ消音を切り替える
実は普段からトラックパッドコマンダーを使っている場合、スピーチ消音はかなり簡単に切り替えることができます。
ジェスチャは3本指ダブルタップ」。
これでスピーチの消音をオン/オフすることができるのです。このジェスチャはiOSやipadOSと同じですね。
ただトラックパッドコマンダーのオン/オフにはVoiceoverショートカットキーが割り当てられていません。そのため普段からトラックパッドコマンダーを活用していない場合はこの方法を使うことは難しいと思われます。
コマンドヘルプからスピーチ消音を切り替える
先述の通りスピーチ消音にはVoiceoverのショートカットキーが割り当てられていません。
そこでVoiceoverのコマンドヘルプを呼び出してスピーチ消音を切り替えます。2通りの方法があります。Voiceoverをオンにした状態で以下の操作をゆっくり確実に行います。
Voiceoverキーを押しながら「H」を2回押します。
キーボードから半角英数で「Voice」と入力します。
下矢印キーを12回押します。
Returnキーを押します。
もしくは
Voiceoverキーを押しながら「H」を2回押します。
下矢印キーを9回押します。
右矢印キーを1回押します。
下矢印キーを1回押します。
Returnキーを押します。
この操作はCatalinaでの手順です。
macOSのバージョンによっては矢印キーを押す回数が異なる可能性がありますので、スピーチが出力されている状態でシミュレーションし、キーストロークの回数を確認しておくことをお勧めします。その際はうっかりReturnキーを押してスピーチを消音させないように気を付けてください。
間違えて消音してしまった時に備え、以下の手順でコマンダーにスピーチ消音切り替えを登録しておくと安心です。
キーボードコマンダー、テンキーコマンダーを使う方法
Voiceoverのショートカットキーではスピーチ消音を切り替えることはできませんが、キーボードコマンダーもしくはテンキーコマンダーにスピーチ消音切り替え機能を割り当てることで対処することができるようになります。
コマンダーを設定したら必ず事前にテストしておくことも忘れずに。あと設定したことを忘れてうっかり消音、みたいなトラブルに備えスマホにメモするなどしておきましょう。
なおテンキーコマンダーはテンキーが使える環境でのみ設定できます。筆者はWindows用フルキーボードを接続して使っているのでテンキーコマンダーを活用しています。
キーボードコマンダーを使う場合の手順
VoiceOverユーティリティを開きます
「コマンダー」カテゴリにある「キーボード」を選択します
修飾キーを選択します(デフォルトは右Option)※筆者の環境では修飾キーを左Optionに設定した場合うまく動作しませんでした。
「追加」をクリックして任意のキーボードキーを入力します
右項目に移動して「コマンド」メニューを操作し「オーディオ」>「VoiceOverの消音の切り替え」を選びます
登録したコマンドを実行するには
「VO + Shift + K」でキーボードコマンダーをオンにします
設定した修飾キーを押しながら登録したキーを押します
テンキーコマンダーを使う場合の手順
VoiceOverユーティリティを開きます
「コマンダー」カテゴリにある「テンキー」を選択します
修飾キーを選択します(任意)
「テンキーコマンダー」表を操作して割り当てたいキーまで移動します。
右項目に移動して「コマンド」メニューを操作し「オーディオ」>「VoiceOverの消音の切り替え」を選びます
登録したコマンドを実行するには
「VO + Clear」でテンキーコマンダーをオンにします。ちなみにClearキーはテンキーの「7」の上のキーです
指定した修飾キーを押しながら設定したキーを押します
万が一の「消音」に備えておきましょう
それにしても今回、なぜ勝手にスピーチが消音されてしまったのか謎です。
普通に操作していていきなり音声が聞こえなくなったんですよね。その時はスピーチと操作音が同時に消音されてしまったので本当に青ざめました。見えないユーザーにとって音声が聞こえない状態は見える人で置き換えれば「画面が真っ暗」になったのと同じ。手も足もでません。
万が一のトラブルに備えておくことはほんとに重要と実感した次第です。