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2022年3月8日火曜日

ヘレン・ケラーが生涯にわたり愛用した触時計。

Helen Keller's Watch.

画像引用元


この触時計は1892年、ヘレン・ケラーが12歳のときにアレキサンダー・グラハム・ベルの家で開かれた誕生日パーティーで、元外交官であるジョン・ヒッツからプレゼントされたものです。ヒッツはグラハム・ベルがワシントンに設立した聴覚障害者支援施設「the Volta Bureau」の管理人でもありました。


1860年頃にスイスで製造されたこの機械式の懐中触時計。ケースの外周には、文字盤の時刻の位置に対応したピンが配置されています。時針・分針とピンに触れることで、時計の盤面を見ることなく、おおよその時刻を知ることができるという仕組みです。

触時計と聞くと視覚障害者専用というイメージがありますが、外交官や大使の間では、重要人物との謁見やスピーチの最中でも、視線を時計に移したり音を鳴らしたりすることなく時刻を確認できるため、しばしばこのような触時計が用いられていたそうです。

ケラーはこの触時計をとても大切にし、生涯にわたり愛用しました。

現在この時計は、米国ワシントンにあるスミソニアン博物館の一部である国立アメリカ歴史博物館へ収蔵されており、オンライン・ギャラリーで展示されています。


さて、この時計には一つのエピソードがあります。

1952年1月17日、ニューヨークを訪問した71歳のケラーは、コスモポリタン・クラブから利用したタクシーの中にこの時計を入れたスーツケースを置き忘れてしまいました。同日付けで届出された紛失通知が、American Foundation for the Blindが運営するHelen Keller Archive保存されています。

(抜粋訳)ヘレン・ケラーより。グリーン・アリゲーターのスーツケース(レインカバー付き)。衣類と貴重な時計(家宝)が入っています。木曜日の午後、グランド・ジェニアルのタクシー内で紛失。(抜粋訳ここまで)


この出来事はニューヨーク・タイムズをはじめ様々なメディアで取り上げられ、報道をみたニューヨーク質店組合の協力により、紛失の数日後にニューヨーク市内にある店舗へ20ドル(現在の価値で役211ドル/計算元)で質入れされていたことがわかったそうです。

他の紛失物は見つかりませんでしたが、時計はめでたくケラーの手元に戻りました。


この顛末を報じた新聞記事もHelen Keller Archiveで公開されているほか、ニューヨーク・タイムズのアーカイブ記事や当時のニュース音声も残されています。

紛失届に「heirloom)(家宝)」と表現していることからも、ケラーにとって長年の間使い続けてきたこの触時計が、いかに大切なものであったかが分かるエピソードです。


近年では視覚障害者の間でも振動で時刻を知らせてくれるスマートウォッチやボール式の触時計などが人気ですが、針に触れるタイプの触時計も趣がありまだまだ魅力的に感じます。もっといろいろなデザインから選べるといいんですけどね。

このケラーの触時計、復刻されれば視覚障害者に限らず、結構人気が出るような気もします。一生使い続けたくなるような時計に、一度は出会ってみたいものです。


2021年5月19日水曜日

米Mattel、ヘレン・ケラーをモデルにしたバービー人形をリリース。(5/27追記)

Barbie Inspiring Women Helen Keller

Barbie Inspiring Women Helen Keller(画像引用元


米Mattelは現地時間2021年5月18日、同社のコレクターズドールブランドであるBarbie Signatureの「Inspiring Women Series」の第12段として、盲ろうの活動家であり教育者、作家であるヘレン・ケラー(Helen Keller)をラインナップに加えたと発表しました。


同社が2018年から展開しているInspiring Women Seriesは、ロールモデルとして世界に大きな影響を与えた女性の功績にスポットライトを当て、ドールを通じ、多くの人々にその人物について学ぶきっかけを与えるものとして規格されました。今回加わったヘレン・ケラー以外のラインナップは以下の通りです。


  • Amelia Earhart(飛行士)
  • Billie Jean King(テニス選手)
  • Eleanor Roosevelt(婦人活動家・作家)
  • Ella Fitzgerald(ジャズシンガー)
  • Florence Nightingale(看護師・統計学者)
  • Frida Kahlo(画家)
  • Katherine Johnson(数学家)
  • Maya Angelou(活動家・詩人・俳優)
  • Rosa Parks(公民権運動家)
  • Sally Ride(宇宙飛行士)
  • Susan B. Anthony(公民権運動家)


Helen Keller Dollの外見は、1900年代初頭、ケラーがラドクリフ大学の学生だった頃をイメージしてデザインされています。デザイナーであるCarlyle Nuera氏はその頃の彼女の写真を参考に、エドワード朝時代の女性のスタイルに関する研究と組み合わせ、落ち着いた配色のストライプ柄スカートと、袖とボディスにフリルレースのディテールが施されたブラウスをデザインしました。ドールフェイスもこの時代に似せて作られ、髪型は低い位置でお団子にし、カールを顔に沿わせたスタイルとなっています。


ドールにはアクセサリーとして表紙に点字があしらわれた本とドールスタンドが付属するほか、視覚障害者でも内容を理解できるよう、パッケージにも点字がつけられています。Mattelはこの製品をより正確にデザインするため、全米盲人連盟(NFB)と提携しました。

Barbie Inspiring Women Helen Keller Dollは、オンラインショップ、Barbie.comおよび米国の小売店などで、29.99ドルで販売中です。


参考:Helen Keller Joins the Barbie® Inspiring Women™ Series! - News - Mattel's Barbie Community


(5/27追記)

一部の障害者活動家から、このバービー人形について批判の声が挙がっているようです。

Disability Activists Slam Mattel's Helen Keller Barbie Doll (dailydot.com)

彼らは左右対照でデザインされている人形のフェイスが、片目が義眼だったケラーのありのままの姿を表現していないと指摘しています。障害者の負のイメージ(と健常者が考える)部分を覆い隠すことが、結果的に差別を助長することとなり、ロールモデルとしてのケラーの存在を軽視すると受け取られかねず、詰まるところこの製品は障害のない人々のためのものに過ぎない、と主張しています。

確かにケラーのバービー人形が、もし非対称の造形を実現していたとしたら、同じ状況に悩む子供たちに力を与えていたのかもしれません。

一方今回の人形はケラーが義眼となる以前の写真をもとにデザインされたものであるため、Mattel側に指摘されたような意識があったのかはわかりません。ただ同じ障害のある子供が手に取ることを想定していれば、もう少し配慮の余地はあったのかもしれませんね。


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