PS4最後の対策とも言われる「The Last of Us Part II」の発売やUbisoftのアクセシビリティ に対する積極的な動き、大幅なアクセシビリティ向上が見られたPlayStation 5やXbox Series Xの登場など、2020年はビデオゲームのアクセシビリティにおいて大きな変化が見られた一年だった。
それを象徴するかのように、年末に向け各地で開催されるゲーム関連イベントにおいてもアクセシビリティが扱われるようになってきている。
アクセシビリティ専門の年次イベント「VGAA」初開催。
2020年11月15日、障害を持つゲーマーを支援する米国の非営利団体AbleGamers charityは、今年リリースされたビデオゲームの中からアクセシビリティに優れた作品を表彰するオンラインイベント「Video Game Accessibility Awards(VGAA)」を開催した。
このイベントはAbleGamersのYouTubeチャンネルおよびTwitchでライブ配信され、イベントの主催者であるAbleGamers代表のSteven Spohn氏をはじめ、ゲームアクセシビリティ擁護者や有名ストリーマーらが参加、障害を持つゲーマーからの投票により、アクセシビリティを念頭に開発されている作品が10の部門に渡って表彰された。
この賞のユニークなところは、部門名がそのままゲームアクセシビリティにおける重要な要素を表現している点にある。受賞リストを眺めることで、ゲームをアクセシブルにするためにはどのような機能を含めなければならないのか、その一端を垣間見ることができる。つまりこの賞そのものが業界に対するメッセージとなっていると言えるだろう。
各部門が示す意味と受賞作品は以下の通り。
Same Controls But Different あらゆる方法でゲームを操作できるようにすること。受賞作品:Assassin’s Creed Valhalla
Second Channel より多くの手段でゲームからの情報を提供すること。受賞作品:The Last of Us Part II
Improved Precision プレイヤーが思い通りの精度でゲームを操作し体験できるようにすること。受賞作品:Apex Legends
Clear Text ゲーム内に表示されるテキストを読みやすくカスタマイズできること。受賞作品:The Outer Worlds
Do More With Less 複雑なプロセスを簡略化しプレイヤーの負担を軽減するオプションを提供すること。受賞作品:Ghost of Tsushima
Play Alongside ゲームを進められなくなった場合に他のプレイヤーがサポートできること。受賞作品:Borderlands 3
Bypass ゲーム上の障壁をスキップする機能を提供すること。受賞作品:Fuser
Training Ground ゲームに慣れるための充実した練習モードを提供すること。受賞作品:Madden NFL 2020
House Rules スキルや好みにあったプレイヤーをマッチングできること。受賞作品:Among Us
Helping Hand ゲーム内で充実したヘルプ情報を提供すること。受賞作品:The Last of Us Part II
またこの配信においてTwitchからAblegamersに対し100万ドルが寄付されたことも発表されている。AblegamersはAPXプログラムを通じてゲーム開発者にアクセシビリティの意識を向上させる活動も行っており、来年以降もその動きに期待が集まっている。
参考:2020 Video Game Accessibility Awards Announced - GameSpot
The Game Awards、アクセシビリティ部門を含めたノミネート作品を発表。
今年初めてアクセシビリティ部門が設立されたことでも話題となっているThe Game Awards。ゲーム関連の年次イベントの中でも世界的に注目度の高いものであり、今年は12月10日にオンラインで開催されることが発表されている。そして11月18日、全ての部門におけるノミネート作品が発表された。
アクセシビリティ部門であるInnovation in Accessibilityにノミネートされたのは以下の5作品(アルファベット順)。作品名をクリックすると各作品のアクセシビリティ情報を参照できる。
Assassin's Creed Valhalla (Ubisoft)
Grounded (Obsidian/Xbox Game Studios)
HyperDot (Tribe Games)
The Last of Us Part II (Naughty Dog/SIE)
Watch Dogs Legion (Ubisoft)
やはり本命は10部門にノミネートされた「The Last of Us Part II」だろうか。Ubisoftの作品がInnovation in Accessibilityに複数ノミネートされている点も興味深い。Ghost of TsushimaやMarvel's Avengersはアクセシビリティ的にも注目度が高かったがノミネートからは外れてしまったようだ。そう考えるとゲームのアクセシビリティは少しずつ底上げされてきているのかもしれない。
現在一般からの投票を受け付け中。受賞作品は12月10日開催のイベントで発表される。
どの作品が受賞するのかはもちろんだが、ビッグイベントだけにアクセシビリティがいかに扱われ、どのようなメッセージが発信されるのかにも注目したい。
参考:The Game Awards 2020: Why THESE Games Were Nominated for Innovation in Accessibility