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2019年11月8日金曜日

サイトワールド2019・見学メモ。


今年もサイトワールドの季節がやってきた。
世界的に珍しい、視覚障害を専門に扱う総合イベントである。
2019年も、11/1から11/3までの3日間、東京・錦糸町にある「すみだ産業会館サンライズホール」にて開催された。筆者は11/1と11/2に訪問。これで3回目の参加である。

前回、前々回は、とにかくひたすら展示ブースを必死に回る感じだったが、今年は主にイベントへの出席と、Twitterなどで知り合った方々との交流をメインに据えることで、体力を温存しようという作戦。普段引きこもっているわりにイベントが集中していたので……。
その甲斐あってか、なんとか参加した2日間、乗り切ることができた。体力なさすぎ。

というわけで、サイトワールド2019で印象に残ったイベントと展示について、個人的に思ったことなどをメモ代わりに書いていこう。
記憶を頼りにしているので、若干の間違いはご容赦ください。
若干でない間違いは、ご指摘ください。

ではまず、イベントから。

・ICTを活用した視覚障害者移動支援システムの社会実装

11/1開催。昨年も参加したワークショップ。主にスマートフォンを用いた視覚障害者のナビゲーション技術の最新動向が発表されるとともに、体験もできるという、実に私好みのワークショップである。

今年印象的だったのは、国土交通省の交通バリアフリー関連のガイドラインに、Webアクセシビリティの要件が明記されるという話。確かに近年ではWebやアプリは公共交通機関を利用する上では欠かせない要素になっている一方、Webはともかくアプリのアクセシビリティには不満を感じることも多かった。。アプリを通じた情報提供は視覚障害者にとっても有益だけに、ガイドラインの早期策定に期待したいところ。

他にも、コレド室町で公開された「インクルーシブ・ナビ」を用いた屋内ナビゲーションの話題や、東京メトロで実証実験中の「Shikai」プロジェクトの報告、筑波大によるコンピュータビジョンを用いたナビゲーションシステムなど、さまざまなアプローチから視覚障害者のナビゲーション技術の研究が進められていることがわかる。
また質疑応答の中で、今後これらの技術が社会実装されていく場合、場所によってアプリを使い分けるのは不便なのではないか、という意見があった。これに対し、将来的には統一規格的なものが必要、という認識も示された。まだ先の話ではあると思うが、単一のアプリでシームレスなドアツードアのナビができるようになれば最高ではないだろうか。

面白かったのは、筑波大が開発中のアプリ「オタスケマップ」。
開発メンバーの松尾さん(全盲)にレクチャーしていただきながら体験させてもらった。これはスマートフォン(iPhoneで動作していた)のマップ上に表示された歩行ルートを指で辿りながら、事前に歩く道順を確認できるというアプリ。タッチによる効果音と方向しじ音声、振動の組み合わせで、画面が見えなくても目的地までのルートを脳内にイメージできるようになっている。
歩行ナビアプリを用いて移動する場合でも、このようなアプリで事前にルートを確認することができれば、不慣れな場所でもより確実に目的地まで到達できるかもしれない。道順を知る手段としては、すでに「ことばの道案内」というサービスが提供されているが、マップから道順を生成できれば利用する場所を選ばないし、ルートを指でたどることで、文字情報よりも距離感や方向を直感的にイメージできると感じた。リリースに期待。

・今更ですが歩行訓練を知るシンポジウム

こちらは11/2に開催されたシンポジウム。4人のパネリスト(2人は視覚障害当事者)が登壇し、歩行訓練の体験談や訓練を提供する側の現状などが語られた。

特に中途で見えにくい・見えなくなった視覚障害者が、安全に歩行するためには、白杖の使い方と歩行のセオリーを知ることが重要となってくる。だが歩行訓練を実際に受ける視覚障害者はまだまだ少なく、精度の認知度も低いとのこと。合わせて訓練士の不足や地域による格差など、多くの課題が話し合われた。

個人的な経験を言えば、歩行訓練を受けたことで、外出時の不安が軽減されたし、ガイドヘルパーや駅員の誘導を受ける場合でも、よりスムーズで安全な移動ができるようになったと感じている。また先述のようなICTを用いたナビゲーションが実用化されても「歩く」というアクションが伴う以上、歩行のスキルは必要不可欠だろう。
そのような意味でも、歩行訓練の重要性がもっと知られる必要があるし、それに対応できる訓練システムやセルフトレーニングなど、多角的なアプローチを考える余地もありそうだ。あと「訓練」という言葉のイメージが、何かしらの影響を与えているのかもしれない。
健全なフィジカルがあってこそのテクノロジー、そう思うのだった。

ここからは展示ブースのお話。

・新潟大学 工学部 福祉人間工学科

触地図や立体模型で世界の建築物に触れられる展示を行っていた。
お気に入りは、京都中心部の触地図。国土地理院による3D測量データにより、周囲を囲む山々がリアルにモデリングされ、盆地である京都の地形を感じられた。マグネットで配置されていた寺社や新幹線、京都タワーもキュート。
久しぶりに京都行きたいなあ。人多いんだろうなあ。
また、こちらではオンデマンドでの触地図作成もしてくれるとのこと。

・NextVPU (Shanghai) Co.,Ltd.

メガネのテンプルに装着するタイプのスマートデバイス「AngelEye Smart Reader」を展示。スマートグラスタイプのものもあったようだが見逃してしまった。
一見すると「OrCam MyEye 2」にそっくり(禁句?)。日本語の書類をかざすと読み上げてくれた。基本的にはOCR機能がメインだが、比較的低価格との噂。機能・価格帯的には「Oton Glass」に近いかな? 認識精度はもちろん、サポート体制も気になるところ。
余談だが対応していただいた方が日本語が通じなかったので、あまり突っ込んだ質問は断念したのだった。

・株式会社ドット

韓国発のスタートアップ。世界初の点字表示可能な腕時計「Dot Watch」と、新製品の点字書籍リーダー「Dot mini」を展示。
「Dot mini」は随分前から海外でニュースになっていたが、ようやくお披露目といった感じ。基本的には点字データを読むシンプルなリーダーといったデバイスのようだ。これまでの情報では価格の安さが特徴的だったのだが、その点ではちょっと残念かな?
点字デバイスとしては、位置付けが難しい製品と感じなくもない。

・社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 (旧:日本盲人会連合)

展示は見ることはできなかったが、名称が変わったのでチェック。
略称は「日視連」で良いのかな?

・プログレス・テクノロジーズ株式会社

昨年のサイトワールドと東京メトロ辰巳駅で体験した、点字ブロックとQRコードを用いたナビゲーションシステム「Shikai」を今年も展示。改めて体験してみた。

基本的には大きな変化は感じなかったが、次のポイントまでの指示音声がシンプルになっていたり(誘導ブロックの左右どちらを辿る、みたいな情報が省かれていた)、説明によればQRコードのスキャン精度が向上し、多少早歩きでも認識できるようになったとのこと。全体的にブラッシュアップされているようだ。

「Shikai」は現在、東京メトロ・新木場駅でも実験中。実際に駅の点字ブロックにQRコードが設置されているらしい。まあ、アプリがないから試せないけどね。

・株式会社システムギアビジョン

すっかりおなじみになった「オーカムマイアイ 2」を展示。
ハードウェア的には変化はないが、ファームウェアのバージョンアップでBluetoothイヤホンへの出力対応やレスポンスの向上などが図られている。また認識される商品バーコードも、順調に増えているとのことだった。

・株式会社キザキ

製品名を失念してしまったが、ホールド感の高いグリップの白杖が印象的だった。
独特の形状を持つグリップは手のひらにしっかりと密着するので、白杖からのフィードバックを感じ取る面積が広く、路面の情報をより細かく得られる感じ。試したのは3段折り畳みタイプだったが、直杖ならさらにセンシティブになるのではなかろうか。一方で、手引き中にエンピツ持ちするのはちょっと違和感ありかも。

この白杖にはもう一つ秘密があった。それはストラップ。
一般的に、白杖のグリップから出ているひも(折り畳みならセンターラバーを調節するためのもの)は、手首に通すのは危険と言われている。白杖が電車などのドアに挟まってしまうと、巻き込まれてしまう危険性があるためだ。
だが、うっかり白杖を電車とホームの間に落とさないように、ストラップ代わりにこの紐を手首に通してしまうユーザーも少なくない。

体験した白杖には特別なストラップが装着されている。このストラップは、一定の強さで引っ張られると自動的にロックが外れ、巻き込まれ事故を防ぐ仕組みだ。
介助されたロックを戻すのも簡単。これ、普及して欲しいなあ。

・株式会社KOSUGE

こちらの主力商品は白杖だが、個人的に興味があったのが、スマートフォンを用いたナビゲーションシステム「MYみちびき」。
準天頂衛星「みちびき」を用いた高精度なナビを目指している。
昨年はまだ「みちびき」がサービス開始したばかりでコンセプトを聞いただけだったが、今年はどうだろう。

説明して頂いたのは、KOSUGEの社長さま。昨年同様、熱心に開発状況を話ていただいた。お話によれば、現状はまだ「みちびき」が全記揃っておらず、受診川の機材もサイズやコスト的に未成熟。ただ電波を受信するアンテナの小型化などは進んでおり、開発は進められているとのことだった。実現まではまだ時間がかかりそうだが、ぜひ来年もお話を伺いたい。

そしてもう一つ見せていただいたのは「信号機カメラ」。
これは機械学習を用いて歩行者用信号をiPhoneアプリで判別してくれるというもの。デモしていただいたものでは、赤信号と青信号、それぞれの確率をパーセントで表示していた。今後、明るさなど様々な条件でさらなる学習を進めていき、実用化したいとのことだった。
信号をアクセシブルにする技術には音響装置やビーコンなどいくつかの技術が存在するが、スマホで判別できるように慣れば、低コストで安全を確保できるようになるかもしれない。個人的には信号に向かって真っ直ぐ歩くような機能があるといいなあ。

あとこちらのブースでは「Nail Le Braille」さんの白杖デコレーションも展示されており、スワロフスキーがふんだんに盛られたキラキラ(であろう)デコ白杖に触れることができた。グリップには白杖用リングもひかる。
さすがにここまでデコるのはアラフィフおじさん的にどうかと思うが、ワンポイントでつけるくらいならいいかも、とか思ったりした。。結構、光モノは好きなのだ。

・株式会社マクロス

こちらでは、素材削り出しによる3Dプリンター「MODELA MDX-50」と、UVによる浮き出し印
刷が可能なカラープリンター「Versa UVシリーズ」を展示。

MDX-50で削り出された木製の人物像に触ってみたが、まるで人が削ったような自然な触感。さすがにお値段もそれなりだが、3Dプリンターのイメージを変えてくれる製品だろう。
またVersaUVを用いて、様々な素材に印刷されたサンプルにも触れることができたが、しっかりとした触感を感じられた。これは重ね刷りもできるとのことなので、いろいろな表現が楽しめそう。
こちらの2製品は、視覚障害者向けというよりも、幅広い層、特にクリエイティブな分野に訴える魅力があると思う。

・ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ株式会社

Google アシスタント搭載テレビ「BRAVIA A9Gシリーズ」など、オーディオ&ビジュアル製品を展示していた。
人気のネックスピーカーも試したが、これがなかなか迫力があって良かった。遅延もかなり少ないらしく、スクリーンリーダーの音声用にも使えそう。贅沢かな。

そして、やはり注目はAndroid TVを搭載したテレビ「BRAVIA」。
視覚障害者的には、画面上の文字情報を音声で読み上げてくれるのはもちろん、音声読み上げのオン/オフをリモコンから簡単に切り替えられるのが魅力。リビングのテレビなど、音声読み上げを切って使いたい家族のためにも有用だろう。音声アシスタントによる各種操作も便利そうだった。テレビもしっかりアクセシブルになってきたなあ、としみじみ。これでもっと副音声が充実してくれればね。

余談だが、個人的にテレビに付いて欲しい機能がある。
それは、スピーカーから主音声を出力したまま副音声(もしくは副音声+主音声)を、ヘッドホンまたはBluetoothイヤホンに出力して欲しいのだ。理由は先述と同じで、家族への配慮である。
以前(というか昨年のサイトワールドで)某家電メーカーの説明員にこのことを話たら、半笑いで却下されたが、今回ソニーの説明担当者さんは、しっかり聞いてくれた。これだけでも好印象である。応援してるよソニーさん。PS4に日本語TTS入れてください。

・まとめ

というわけで、サイトワールド2019で印象に残ったイベントと展示の感想でした。

前回はスマートグラスやOrCam Myeye 2といった注目の製品が目白押しで新鮮味があったが、今年はそのような意味では)個人的には)目玉といえるものが少なかったかな? 今後は国産スタートアップの登場にも期待したい。
また聞くところによると、スマートスピーカーのイベントが盛況だったとのこと。音声アシスタントは視覚障害者の間で着実に浸透しつつあるようだ。確かに別のイベントでも、スマートスピーカーに対するリアクションは結構大きかったような。機械に話しかけるなんて、日本人には向かないんじゃない?などと言われていたが、少なくとも視覚障害者の注目度は高いようだ。

そして改めてサイトワールド全体を見てみると、やはりこのイベントは「点字」が基本なのだなあと感じる。点字機器を開発・販売するブースは相変わらず盛況だったし、点字資料を配布するイベントやブースもあった。ただ一方で点字が読める視覚障害者の割合は減少しているという事実があるわけで、このギャップをいかにして埋めていくのか、考える必要がありそう。
その「点字が読めない視覚障害者」の一人である筆者。今回は日本展示図書館のブースで、展示器と点字を打てるテープをゲット。これを使って、少しでも点字が使えるよう努力したい所存である……!

さて、なんやかんやで今年も満喫したサイトワールド。
今年は初めて、ネットで交流のあった方々とお会いし名刺と情報交換できたのが楽しかった。人と会うのって大事だね。
改めて、お世話になった方々に感謝いたします。

来年もまた良い出会いがありますように。

2018年11月12日月曜日

サイトワールド2018見学記 その(2)移動支援技術編


Myみちびき
「Myみちびき」@Kosugeブース。

サイトワールド2018の過去記事はこちら。


サイトワールド2018では、視覚障碍者の移動支援に関するセミナーや展示も目を引いたジャンルの一つだった。
重度の視覚障碍者にとって、移動は大きな障壁の一つである。歩行訓練を受けたり、場数を踏むことで脳内マップを構築すれば、単独でもある程度歩行することは可能だが、未知の場所を自由自在に移動するのは困難を極める。結局ガイドヘルパーなど人手に頼らねばならず、物理的・精神的にも不自由と言わざるを得ない。
そのような現状をテクノロジーで解決すべく様々な開発・研究が進められており、今回のサイトワールドではその成果の一端を体験することができた。


波及力に期待したい産総研の成果


2日目に開催されたセミナー「ICTを活用した視覚障碍者移動支援システムの社会実装」では、産業技術総合研究所が主導する視覚障碍者のナビゲーションに関する2つの実証実験について報告が行われた。

・RISTEXプロジェクト
神戸市・岡本商店街で実施された実証実験についての報告。障害物などを含む詳細なマップデータの作成や、動的地図提示システムなどについて解説があった。

・HULOP(NavCog開発プロジェクト
NavCogの日本橋・コレド室町での実証実験についての報告。BLEビーコンを用いたターンバイターンのナビゲーションを提供。参加者の反応も概ね良好だったという。

報告を聞く限り、技術的にはかなり実用に近づいているといった印象を持った。コストなど乗り越える問題は多々あるとは思うが、このような仕組みが都市インフラに組み込まれれば、視覚障害者が気軽に外出できる場所は一気に増えるのではないだろうか。
これらの技術が民間へ波及し、スマホを活用したナビゲーションが促進される可能性にも期待したい。この技術は障

害者だけでなく、高齢者や外国人観光客、方向オンチの人々にも応用できるはずだ。バリアフリーだけにとどまらず、情報提供やマーケティングに応用することで、一般にもコンセンサスを得られやすくなるのではないだろうか。

ほかにも、ハイエンドなスマートフォンに搭載されているカメラの深度センサー(顔認証などに用いられているもの?)を用いて地面の凹凸や段差を検知する技術や、特定のルートを映像として記録しておき、その映像と実際の風景を比較してナビゲーションする技術の話題も興味深かった。

今後の展望として、バリアフリー新法のガイドラインに視覚障碍者のナビゲーションに関する何らかの規定を追加するという動きもあるという。実現すれば、これまで音響のみだった視覚障害者の誘導に、ICTの波がやってくるきっかけになるかもしれない。公的機関である産総研だからこその活動に期待が高まるばかりである。
機会があれば実験など参加したいなあ。

なお発表後、実際にこれらのシステムを体験するワークショップが設けられたが時間の都合上、ここで退席した。残念無念。


QRコードを用いた「Shikai」プロジェクト


プログレス・テクノロジーズ株式会社のブース。この展示では、現在東京メトロ・辰巳駅で実証実験が行われている「Shikaiプロジェクト」の歩行ナビゲーションを実際に体験することができた。
これは駅構内の警告ブロックに設置されたQRコードをスマートフォンのカメラでスキャンし、指定した目的地までナビゲーションしてくれるというもの。サイトワールド会場の8F~9Fに点字ブロックのコースが敷設されており、説明を受けながら歩行体験でき流とのこと。なので早速お願いすることに。

出発点の警告ブロックまで移動したら、体験用のiPhoneが渡され、まず目的地を指定する。なおアプリの操作は終始Voiceoverオンの状態でおこなう。
目的地を指定するとすぐにナビゲーション開始。警告ブロックにiPhoneをかざすとQRコードが読み込まれ、次のQRコードのある警告ブロックの場所までの方向と距離がVoiceoverによる音声で指示される。その際、点字ブロックの左右どちらを辿るかといった情報も提供される。

あとはその音声の指示に従って歩くだけだ。
途中、わざと間違った方向に進んでみたが、ちゃんと次の警告ブロックでQRコードをスキャンすれば正しいルートが示された。
支持の表現などいくつか気になる点はあったが、おおむねスムーズなシステムであるというのが率直な感想である。

このシステムはあくまでも点字ブロックの整備が前提になっているため、応用範囲は限定的かなと思われるが、BLEビーコンなどの無線技術と比べ圧倒的に導入・管理コストが抑えられるのが利点と感じた。QRコードも歩行の邪魔にはならないし、単純に目的地へ到達するという目的を達成するなら、経済的にも合理性がある。
一方で、iPhoneでQRコードをスキャンしつつ、音声も聞きながら安全に歩くには、それなりの歩行スキルとVoiceover操作の慣れが必要かなとも思う。

なお筆者は11月末に辰巳駅での実験に参加することになったので、詳細は後日改めて報告したい。



「みちびき」時代を先取りするプロジェクト!?


株式会社KOSUGEのブース。このブースを訪問したのは11月1日。話題の準天頂衛星システム「みちびき」のサービスがスタートした記念すべき日である。
当然ながら関連製品やサービスはこれから開発がスタートされるであろうから、みちびき関連の展示はほぼ皆無である。
そのような中で、この「Myみちびき」は、コンセプト展示ではあるが「みちびき」を視覚障害者の誘導に利用するアイデアの一例として、興味を抱かずにはいられまい。

このシステムは、
・専用アプリをインストールしたiPhone
・みちびき受信機、及び受信アンテナ
・両手首に装着するBluetoothリストバンド
で構成される。さらにリモコンのモックアップも見せていただいた。

一般的なナビゲーションとは異なり、まずは晴眼者の協力を得て歩行ルートを記録する。通勤・通学や病院などよく利用スルルートを「みちびき」の位置情報を用いて記録するのである。
以降は、位置情報と記録したルートを比較しながら、iPhoneから音声や振動で道案内するという寸法だ。ルートを外れると、正しいルートをリストバンドの振動で通知してくれる(iPhoneのバイブレーションで代用も可能とのこと)。
画像認識を使って信号を判別する機能も検討中とのことだ。

ここまで読んでピンときた読者諸氏もいると思うが、同じような仕組みのアプリとして、アメディア社の「ナビレコ」がすでに存在している。Myみちびきは、それを「みちびき」の高精度測位で使えるようにしたもの、というイメージだろうか。(あくまでも想像)
記録したルートしか歩けないというのはやや不自由な印象も受けるが、測位精度が向上してもマップデータが整備されていなければ意味がないため、現実的な選択かもしれない。

目標は1メートル以内の精度とのことで、このシステムを実現させるには、最低でもみちびきの「L5」信号を受信可能な受信機の小型化と低価格化が必須(iPhoneなどで受信できるのはL1信号まで)。
現状では自動車や農業機械といった大規模システム向けの高価なものが実用化されているが、今後はドローン需要なども考えられるため、そう遠くない未来には実現するのではないかと、ほのかに期待している。

そしてこのようなコンセプトは、夢があって良い。
なにより説明していただいたKosugeの担当者の熱心さが印象的なブースであった。



視覚障害者が自由に歩ける未来は来るのか


視覚障碍者の歩行ナビゲーションの実現はまだこれから、という段階ではあるが、サイトワールドの展示だけでもさまざまなアプローチが試みられていることがわかる。もちろんこれ以外にも国内外で多数のプロジェクトが進行中だ。
共通しているのは、いずれもスマートフォンがベースとなっている点だろうか。

現状、視覚障害者の歩行ナビゲーションはGPSを使うものが主流でお世辞にも高精度とは言えないが、「みちびき」や画像認識AIなどの技術の登場・普及で、次の段階へ進みつつあるように思えるのは楽観的だろうか。。

もう少し時間は必要かもしれないが、ウェアラブルの次はナビゲーションがくる!と希望的観測を述べさせていただこう。
来年のサイトワールドも要チェックである。

2018年11月10日土曜日

サイトワールド2018見学記 その(1)ウェアラブル編


Orcam my eye 2.0 Photo
Orcam myeye 2.0@アメディア

去る2018年11月1日からの3日間、東京・錦糸町のすみだ産業会館サンライズホールで「サイトワールド2018」が開催された。
今年で13回を数えるこのイベントは、世界的にも珍しい、視覚障碍者関連の講演や展示を専門に扱う総合イベントである。
筆者は11月1日と2日に参加してきた。昨年に続き2回目。

メインである展示スペースでは、視覚障碍者向けの日用品の展示即売や点字ディスプレイ、プリンターなどの点字関連デバイス、拡大読書器やデイジー読書機器といった定番ものの展示が中心になっているが、最新のテクノロジーを採用した機器やサービスを実際に体験できるのも大きな魅力である。

というわけで、今年のサイトワールドで気になった展示について、何回かに分けて感想を書いてみたい。


OrCam MyEye 2.0


おそらく、今回のサイトワールドで最も注目を集めたデバイスは、この「OrCam MyEye 2.0(以下MyEye2)」だろう。
これはイスラエルのスタートアップOrcam社が開発した小型ウェアラブルデバイス。
手持ちのメガネのテンプル(つる)に装着して使う。MyEye2はカメラとスピーカーが搭載されており、カメラでとらえた文字や人物、紙幣、バーコードを認識して音声で読み上げる。100円ライター程度の小型軽量の本体のみで動作し、ネットワーク接続も不要。そして本体側面のタッチセンサーとジェスチャーで多くの操作が行えるのが大きな特徴だ。
たとえば読み上げたいテキスト部分を指で指し示すことでその部分を読み上げたり、手を広げるジェスチャーで読み上げをキャンセル、といった具合。
もちろんカメラに映ったものを自動で片っ端から読み上げさせることも可能だ。

筆者も実際に触れてみた。
テキストや顔認識の精度は正直スマホアプリなどの既存デバイスと大差ない感じだが、デバイスのコンパクトさやジェスチャ操作は技術の高さが感じられるし、何よりオフラインで利用できるのは大きなアドバンテージだろう。
バーコードリーダーがどれくらいのアイテム数をカバーしているか不明だが、それ次第では視覚障碍者のショッピングを一気に便利にしてくれるかもしれない。

イベントスペースでの製品発表会(株式会社システムギアビジョン)や、展示ブースでの体験(アメディア、ケージーエスなど)も盛況で、この驚くべきテクノロジーに対する期待の高さが伺える。ただテクノロジーと同じくらい、価格のインパクトも高かった。
おしなべてMyeye2を体験した来訪者は、その技術に感激し、価格を聞いてため息、といった反応であった。

MyEye2でできることは、すでにスマホなどでも実現されており、必ずしも革命的だったり画期的なデバイスではない。コンパクトさとオフライン利用、ジェスチャ操作にどれ砕いの価値を見いだせるか、60万円という価格をどう考えるかで評価は変わってくるように思える。ただ同じ機能でもスマホアプリとウェアラブルでは活用の幅は段違いなのは明白で、視覚障害者の生活を一変させる可能性を秘めているのは間違いない。
たとえば5年間使えば1ヶ月あたり約10,000円、そう考えると高くない?どうかなあ……。なお、テキストの読み上げに機能を絞ったモデル「OrCam MyReader 2」も用意されている。それでもかなりのいいお値段だが。


スマートグラスが大盛況


今年の展示でかなり目立っていたのが、目に装着するウェアラブルデバイス、いわゆる「スマートグラス」だ。昨年はほとんど見かけなかったジャンルだが、さまざまな見えにくさをサポートする個性的なアイウェアが展示されていた。
2017年のCEATEC、2018年のCESでは、一般向けのスマートグラスが多数出展されていたが、その技術を支援デバイスに応用した成果が一気に登場したという印象。
なお視覚障碍者向けスマートグラスの先駆者である「Oton Glass」はサイトワールドでの展示はなかった。ちょっと残念。
出展されていたスマートグラスを簡単に紹介しよう。

1. RETISSA Display

株式会社QDレーザ。網膜走査型レーザーアイウェア。入力した映像を網膜に直接投影するため、近視はもちろん、矯正が難しい角膜疾患でもくっきりとした映像が体験できるという。
逆に言えば、網膜や視細胞、視神経に障害があるユーザーには不向き。
筆者に代わって体験してもらった同行者はかなりの近眼だが、メガネを外して装着してもしっかりと映像を見ることができたという。映像はカメラではなくHDMIから入力するため用途は屋内での映像鑑賞を想定しているようだが、パソコンと接続して画面拡大機能と併用するといった使い方も考えられる。

見られる映像の視野はあまり広くないが、重度の角膜疾患でものがくっきり見られない患者には福音になるデバイスかもしれない。例えばコンタクトレンズでは矯正できない円錐角膜患者などには効果が期待できるのではないだろうか。
白内障でも状態によっては効果が期待できるということだが、レーザーの照射位置が固定されているため、目の状態に合わせてカスタマイズする、といったことはできないようだ。

2. eSight(イーサイト)マイグラス

FQ Japan株式会社。メガネに内蔵されたカメラで撮影した映像を調整して、
レンズの内側にあるディスプレイに表示し、視野狭窄や混濁などでものが見えにくくなったロービジョンの見え方を改善させるスマートグラス。
視界のズームや明るさ・コントラストの調節といった映像の加工、さらに残存視野に合わせて映像を移動させるなど、ユーザーの見え方に合わせて細かくカスタマイズできるのが特徴とのこと。

すべてのユーザーがこのデバイスの恩恵を受けられるわけではないが、適切にカスタマイズし、トレーニングを行うことで、効果が期待できる可能性はあるという。

3. HOYA MW10 HiKARi

HOYA株式会社 メディカル事業部。夜盲症の不便さを解消することを目的にした、暗所視支援スマートグラス。原理はeSightと同様だが、暗所を明るく見るために特別な好感度カメラを採用している。
ブースでは光を遮断した状態で効果を体験することができ、筆者と同行の体験者の感想では、かなりはっきりと物が見えると驚いていた。

こちらもまだ見える範囲(視野)は狭いようだが、夜盲に悩む人にとっては大きな進歩だろう。

4. Gyoro Glass(参考出品)

有限会社 フィット。魚眼レンズを用いたメガネ「Gyoromegane」を進化させたスマートグラスのプロトタイプを展示。魚眼レンズの特徴を生かし、狭くなった視野に、より多くの情報を伝送する、というコンセプトのようだ。

ロービジョン支援技術の定番となるか

一言でスマートグラスといっても、ターゲットユーザーや、視力補助のアプローチによって、かなり個性的な製品が展示されていた。すでに個人でも購入できるものもある。
現時点ではまだ補正した映像の視野が狭かったり、概観が不自然など改善の余地は感じられた。また、おいそれと手が出せない価格もネックではある。
これらの製品が市場に出回ることで、例えば安全性や耐久性といった課題も見えてくるかもしれない。なにせまだ生まれたてのジャンルゆえ、メーカーも試行錯誤の最中、といった雰囲気。

ロービジョンをサポートするデバイスとしては「遮光メガネ」や「拡大読書器」あたりが久しくメインだったが、今後はこれらのようなスマートグラスがその一端を担うようになるのかもしれない。この流れが一過性のブームに終わらず、継続的な開発に繋がることを願うばかり。そのためにも体験したユーザーがどんどんフィードバックしていくことが重要だろう。スマートグラスが視覚障害者に有用であることが証明されれば、日常生活用具の補助対象に繋がる可能性も十分に考えられる。


ウェアラブルは視覚障害者の「目」とな理うるか


サイトワールドというイベントは、どちらかといえば最新技術の発表というよりも、今すぐに手に入れられる技術を中心に扱っているというイメージがある。そこにこれだけのウェアラブルデバイスが一気に登場したということは、いよいよ技術革新の波が障害当事者のすぐそこにまで近づいているという証拠なのかもしれない。

来年は、どのようなウェアラブル端末が登場するのか?
今年体験した製品がどのような進化を見せるのか?
もうちょっとリーズナブルにならないかな?
今後も要注目のジャンルである。

支援技術関連記事まとめ(2022年11月)※お知らせあり。

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