2020年12月30日水曜日

ゲームアクセシビリティに関する最近の話題(2020年12月)

Can I Play That Accessibility Awards 2020発表

2020 Can I Play That Accessibility Awards ― Winners


ゲームアクセシビリティレビューサイトCan I Play That?において、2020年最もアクセシブルだったゲームおよびハードウェア、加えてゲームアクセシビリティに貢献した団体を表彰する「Can I Play That Accessibility Awards」の受賞者が発表されました。

ゲームアクセシビリティにとって重要な要素を示す16の部門それぞれに3作品もしくは団体がノミネートされ、ユーザーからの投票により受賞作品が決定されています。


最優秀賞に当たるBest Overall Accessible Gameに選ばれたのは「The Last Of Us Part II」。この作品はBest Blind/Low Vision Accessibility(もっとも優れた視覚アクセシビリティ賞)にも選出されています。

受賞者リストを眺めるとアクセシビリティに関する情報公開の姿勢やAssassin’s Creed: Valhallaの予告編動画の取り組みなど、企業としてUbisoftが評価されている点が印象的でした。これを機にノミネートされている作品のアクセシビリティオプションを確認したり団体の取り組みを振り返るのも良いでしょう。


またゲーム情報サイトIGNの米国版ではGame of the Yearの一環としてCan I Play That?のメンバーらによる2020年のアクセシブルゲームの特集記事が掲載されています。こちらでも「The Last of Us Part II」が最優秀賞を獲得。他にもSpider-Man: Miles Morales、HyperDot、Immortals Fenyx Rising、Gears Tacticsがピックアップされています。

Noteworthy Advancement in Accessibility for 2020 - IGN


Cyberpunk 2077の返金対応について


大量のバグと全世代機におけるパフォーマンス不足およびその情報を事前に開示していなかったことが問題視され、とうとう返金対応ダウンロード販売の中止にまで至ったCyberpunk 2077。

PlayStation StoreおよびMicrosoft Storeのキャンセルポリシーにはダウンローど済みもしくは開封済みのゲームは原則返品対象外であると記載されており、今回の対応は異例中の異例ともいえます。


確かに続行不能になるゲームを買わされてしまったら返品を求めるのは当然のこと。

でもこれって、見方を変えると障害を持つゲーマーがアクセスできないゲームを買ってしまったケースにも場合によっては同じようなことが当てはまるようにも感じます。

Can I Play That?の執筆者の一人であるCourtney Craven氏もこの状況を少し皮肉っぽくツイートしています。


"Sooo since both Playstation and Xbox have either refunded or removed Cyberpunk from the store because it's unplayable, they're going to implement that same refund policy when disabled people can't play games, right? RIGHT?"

(PlayStationもXboxも Cyberpunkがプレイできないという理由で返金したり公開停止したんだったら、障害者がゲームをプレイできない時も同じような対応してくれるよね?ねえ?)


もちろんバグによるものとアクセシビリティ不備によるバリアは同一に語ることは無理がありますしアクセスできないことを理由に返品が認められるのはかなり難しいでしょう。

ですが事前のアクセシビリティ情報の公開や体験版の配布などを通じ、障害を持つゲーマーに対し購入の判断材料が与えられれば、経済的・精神的負担はかなり軽減されるはず。情報不足という点においては、今回の騒動と障害ゲーマーを取り巻く現状は似たような構造を持つような気がします。ゲームをアクセス可能にしていくと同時に、より迅速かつ詳細な情報の提供が求められるでしょう。


The New Yorkerによる宮本茂氏インタビュー

Shigeru Miyamoto Wants to Create a Kinder World | The New Yorker


米国The New Yorkerが任天堂の宮本茂氏へインタビューした記事が公開されています。GIGAZINEがその内容を一部抜粋する形で紹介していますが、個人的にはこの記事では省かれている部分に興味を持ちました。


宮本氏はゲームデザイナーとして世界のルールを考えたことがあるか?」という質問に対し「特にない」と答えた上で現実の行動と誇張された虚構をミックスさせることで、これまで人生で経験してきた感情や感覚を再現するようなゲームを作りたいと答えています。

その上で、電車の優先席に座る若者の例を挙げ、人々の利己的な行動を促すゲームデザインがあるのであれば、それを変えたいと語っています。宮本氏はゲームを通じ人々がもっと思いやりと優しさを持った(元記事の表現を借りるなら)「Kinder World」を実現したいと考えているようです。

以下その部分を引用します。


I wish I could make it so that people were more thoughtful and kind toward each other. It’s something that I think about a lot as I move through life. In Japan, for example, we have priority seating on train carriages, for people who are elderly or people with a disability. If the train is relatively empty, sometimes you’ll see young people sit in these seats. If I were to say something, they’d probably tell me: “But the train is empty, what’s the issue?” But if I were a person with a disability and I saw people sitting there, I might not want to ask them to move. I wouldn’t want to be annoying.

I wish we were all a little more compassionate in these small ways. If there was a way to design the world that discouraged selfishness, that would be a change I would make.


ゲームは娯楽であるとともに教育的なメディアでもあります。とかく能力主義に偏りがちなゲームの世界にどのような形で「Kinder World」がもたらされるのか。宮本氏の今後の活動に注目したいと思います。

あと任天堂もそろそろアクセシビリティ向上に取り組んで欲しいですね。これも「Kinder World」の一つの側面と思うのです。


「Pokemon Go」のCovid-19対応とアクセシビリティのお話

Pokémon Go creators say COVID is 'my presence in our game'


位置情報ゲームを開発するNianticのプロダクトマーケティングマネージャーであるVeronica Saron氏が、Covid-19が世界中に拡大する中「Pokemon Go」のサービスをどのように変革してきたのかを語っています。


世界中の人々の外出が制限され続ける中「移動」が軸となるPokemon Goは早急かつグローバルなレベルでStay homeに対応せざるを得なくなりました。記事では緊張感が高まる中、様々な決断が行われてきたことが語られて伊ます。


そして記事の後半では米国で障害を持つゲーマーを支援する非営利団体であるAblegamers charityのSteven Spohn氏によるツイートを受け、ゲームのアクセシビリティに対するNianticの姿勢が語られています。

Spohn氏は「自由に外出できる」ということがこれまでどれだけ特権的であったかがCovid-19により広く認知されたと述べており、Pokemon Goが移動を必要としないシステムを導入するのであればもっとアクセシビリティが考慮されるべきであると主張しています。以下Veronica Saron氏のコメント部分を引用します。


Slimon added that Niantic is “taking accessibility issues seriously,” citing issues such as navigation and color blindness.

“There are accessibility challenges that we take very seriously and want to deal with. But this set of changes is really aimed at focusing on changes in cultural norms for the entire world. Over time, I think we might want to make specific changes that target those kinds of accessibility problems.”


つまり一連の仕様変更はあくまでもパンデミックによる社会文化の変化に対応したものであり、アクセシビリティについてはいつか考えるかも、という感じに読めます。

現状Pokemon Goはアクセシビリティがほとんど考慮されておらず、Spohn氏をはじめコミュニティからは長年改善が求められてきました。この記事ではアクセシビリティの重要性は認めつつも、あまり積極的に対応する雰囲気は感じられません。この消極性はなぜなのか、どのようなアプローチが有効なのか。考えさせられます。


その他、気になった記事


  1. In a Big Year for Video Games, These Players Are Shifting the Culture | 2020年のゲーム業界におけるD&Iをめぐる動きまとめ。

  2. Introducing GI 100 | Game Changers | GamesIndustry.biz |GamesIndustryが世界中からゲームのD&Iに注力する人物および団体のリストを公開。

  3. Developers and Accessibility Consultants Highlight Game Accessibility at Recent Abilities Expo | RPGFan | オンラインで行われたAbilities Expoにおけるゲームアクセシビリティセッションのレポート。

  4. blog.DavidLibeau.fr » Why accessibility should technically be API-based | ブログ。アクセシビリティ機能のAPI化がイノベーションを促進する、という提案。

  5. Accessibility At EA - An Official EA Site | EAがアクセシビリティに関する情報発信やサポートを行う専用ポータルサイトをオープン。

  6. BLIND GAMING MADE POSSIBLE - Tech Crowner | 全盲でもプレイ可能なゲームは現状どのようなものがあるか。

  7. Tobii Promotion - Claim your copy of Assassin's Creed Valhalla or Watch Dogs: Legion - Ubisoft Support | UbisoftがTobiiユーザーにゲームを無償提供するキャンペーンを開催(現在は終了)。

  8. Gaming for everyone: U of T’s Faculty of Information makes video games more accessible | カナダ。ゲーマーと開発者、研究者が協力しゲームアクセシビリティ向上を目指す取り組み「Accessible Arcade」。

  9. Brain-controlled gaming exists, though ethical questions loom over the tech - The Washington Post | 脳波を用いるゲーミングは実用化が近いが依存症やプライバシーなど倫理的問題もある。

  10. No hands, No excuses: One man's quest to make online gaming more accessible | Stuff.co.nz | ニュージーランド。腕を持たないゲームストリーマー。

  11. Autistic ADHD Son Play Pokemon | 自閉スペクトラムの子供のためにPokemonを手伝った親に一部のゲーマーから非難が集中したという話。

2020年12月26日土曜日

[iPhone] 牛や猫も鳴くよ。端末を動かして音楽を演奏する「Waveband Pro」。


Waveband Pro(ウェーブバンドプロ)はデバイスのモーションセンサーを活用したiPhone、iPad、iPod Touch向けの楽器アプリです。端末を左右に動かしたり振ったりすることで、画面に触れることなくさまざまな楽器を演奏して楽しむことができます。

このアプリは障害者の生活向上と障害に対する意識を高める研究活動を行っている、カナダ、ビクトリア大学の組織CanAssistによって開発されました。


主なターゲットはこれまで身体機能の制限で楽器を楽しむことができなかった人々。

細かく指を動かしたり手を大きく振ることが難しい人はもちろん、端末をてで持てない場合でもストラップなどを用い、腕や頭、車椅子に端末を固定することで楽器演奏を手軽に楽しむことができます。つまり体のどこかが動く、もしくは意思伝達装置で車椅子などをコントロールすることが可能であれば工夫次第で楽器が演奏できるというわけです。特別なインターフェイスなどが不要というのもポイントです。

もちろん画面操作が難しい視覚障害者や楽器が苦手な人にも最適。一部ラベルが付いていないボタンはありますが基本的なインターフェイスはVoiceoverで操作可能です。


Waveband Proの基本的な使い方。


使い方はとってもシンプル。

「Play existing instrument」をタップして、演奏したい楽器を選べば、音がなり始めます。端末を左右に動かしたり、前後左右に傾ける、垂直に持って振る、ひねるといった動作に応じて音階が奏でられます。周囲に注意しつついろいろな動きを試してみましょう。


ストリングスから鍵盤楽器、パーカッション、コーラス、動物の鳴き声に至るまで60種類以上の音色が用意されており、音を鳴らすだけでも面白いし、音楽に合わせてセッションするのも楽しそうです。頑張れば単独で曲を演奏することもできる、かも。筆者の環境ではうまく動作しませんでしたが、BGMにアプリ内蔵の曲もしくはミュージックライブラリの音楽を設定する機能もあります。


なおこのアプリは不要いな操作で楽器演奏が中断しないよう、バックグラウンドで動作します。つまりホーム画面に戻ったりスリープしても演奏が続きます。演奏を停止するにはトップ画面に戻るかタスクマネージャからアプリを閉じてください。

これを逆手にとって動かすたびにドラムが鳴ったりニャーニャーモーモー鳴く謎iPhoneが演出できる、かもしれません。バッテリー残量が心配ですがネタにはなるかも。


運動能力に応じたきめ細かいカスタマイズが可能。


カスタマイズ性の高さもWaveband Proの特徴です。

身体機能に合わせ動きの方向や量、反応速度などかなり細かく調整でき、音色に関してもキーやスケールなどを変更することで多様なサウンドを楽しむことができます。これらの設定は「Save」ボタンからプリセットとして保存し、ホーム画面の「My custom instrument]から呼び出すことが可能です。


加えてホーム画面の「customize an instrument」からウィザード形式でプリセットを作成したり、instrument画面からBluetooth経由でMacと接続しGaragebandと連携させたり、他ユーザーとジャムセッションを楽しむこともできるようです。詳しくはヘルプ(三つ目のタブ)を参照してください。

なおいろいろいじってわけがわからなくなったら設定(一つ目のタブ)からデータをリセットすることができます。


シンプルだけど奥が深い、みんなの楽器アプリ。


Waveband Proは一見するとiPhoneのモーションセンサーだけで楽しめるシンプルなトイ系アプリに見えるのですが、かなり奥深い、本格的な楽器アプリです。端末を動かすだけでびしっと演奏をキメられたら相当イカすのではないでしょうか。

聴覚サポート機能を持たないのが残念ですが、これまでさまざまな制約で楽器を楽しめなかった人々に音楽を演奏する経験を提供してくれる、とっても楽しいアプリです。


※iPhone 7,iOS14.3の環境で試しました。アプリ容量が大きいので注意です。


参考:Special Needs App | Waveband Pro


2020年12月24日木曜日

スペイン。目が見えなくてもクリスマスイルミネーションを楽しめるアプリ。(+おまけ付き)

自信ないけどマドリードのイルミネーション(画像引用元


クリスマスといえばイルミネーションですよね。

Covid-19が猛威を奮うこんなご時世ではありますが、やっぱり今年もあらゆる場所がキラキラしているのでしょう。あのキラキラはクリスマスムードを半ば強引に盛り上げてくれる魔力を持っていますが、全盲の視覚障害者に対してはそのパワー、一切無意味というのがちょっとつまらないところです。

目が見えなくてもクリスマスのイルミネーションを楽しみたい。そんなささやかな願いを少しだけ実現させてくれるかもしれない試みがスペイン、マドリードで行われています。


カルロス三世大学マドリード校(UC3M)の研究グループ(Human Language and Accessibility Technologies HULAt)は、目の見えない人々がマドリードのクリスマスイルミネーションを楽しむことができるモバイルアプリ「Navidad」を開発し実証実験を行いました。

このアプリはiOS(日本では利用不可)およびAndroidを搭載したスマートフォンで動作し、位置情報サービスを用いてイルミネーションに関する情報を音声でアナウンスします。

これには光や色、デザインといった視覚的な説明に加え、そのイルミネーションが制作された歴史的背景などのストーリーも含まれています。これは目の見える訪問者にも有益でしょう。


オーディオによるクリスマスツアーは、プエルタ・デル・ソル、マヨール広場、カナレハス広場など20の観光地から構成されており、スポット名を検索することで実際にその場所へ行くことなく説明を楽しむこともできます。

また音声は人間のナレーションによる音声、合成音声、そして若者向けにスラングを用いた音声から選ぶことができるそうで、最後のやつは謎ですがまあクリスマスだから楽しくて良いのでしょう。


研究グループはアプリが利用できる場所をふやすことで、誰もがマドリードのクリスマスを存分に楽しめるようにしたいと考えているとのことです。

個人的にはテキスト情報だけでなく、イルミネーションのキラキラをこのNASAの動画みたいにSonification(音声化)してほしいな。


参考:“Accessible Christmas”, an application that allows blind people to enjoy Christmas lights | UC3M


おまけ。視覚障害者とクリスマスに関するトピックス。


How To Describe A Christmas Tree To Someone Who Is Vision Impaired

目の見えない人にクリスマスツリーを言葉で説明するためのヒントです。どのくらいの高さと幅か、現在地からどのくらいの距離に立っているのか、ツリーは人工的か自然の木か、自然の場合はどのような種類かなど、まずツリー本体の説明をします。それからツリーの天辺にある飾りやランプ、オーナメントの説明をしましょう。光過敏を持つ方の場合は、ツリーを直視しても大丈夫かどうか検討する必要もあるとのことです。上手に説明すれば、視覚障害者の頭の中に鮮やかなクリスマスツリーが浮かび上がることでしょう。説明する側としても、ツリーをしっかり観察することで新しい発見があるかもしれません。


How To Decorate A Vision Impairment Friendly Christmas Tree | Veroniiiica

視覚障害者、主にロービジョンのためのクリスマスツリー飾り付けガイドです。コントラストなどに配慮したオーナメントの選び方や最適なランプの種類、飾りを取り付ける際の注意点などが解説されています。特に光過敏の方にとって激しく点滅するランプは避けた方が良いとのこと。触れて楽しめる様々な手触りの飾りを選ぶのもポイントです。あとプレゼントは間違えて開封しないよう、ラッピングを工夫しましょう。包装紙の触感でプレゼントを当てっこするのも楽しそうです。


Celebrate the Season with Braille Christmas Crafts & Treats

米国で点字関連サービスを提供するBraille Worksのブログから。自宅でクリスマスを祝う視覚障害者向けのアクティビティガイドです。点字をあしらったシュガークッキーのレシピや点字クリスマスカードの作り方、オンラインクリスマスパーティーで自己主張できる点字Tシャツ&スゥエットの作り方などが解説されています。クリスマスを穏やかに過ごすためのヒントもあります。


・英国RNIBのアドベントカレンダー(日付をクリックするとキラリーンって鳴るよ)

・Vision Australiaのクリスマスイベントのお知らせ

・世界各地の支援団体通じたサンタクロースからの点字クリスマスカードはそろそろ子供たちの手元に届けられている頃でしょうか。

・良いクリスマスを。


2020年12月23日水曜日

[iPhone] Seeing AI 4.0リリース。Lidarを活用した物体検知機能を追加。

MicrosoftのAzure Cognitive Servicesを活用し、AIのパワーで視覚障害者を支援するiOS/ipadOS向け画像認識アプリ「Seeing AI」がバージョン4.0にアップデートされました。久々のメジャーバージョンアップということで、大きな機能追加が行われています。

以下はApp Storeからの引用です。


  • iOS 14 を実行している LiDAR スキャナーを搭載したデバイスで使用可能な新しい世界チャンネルは、空間オーディオを使用して、見知らぬ空間を 3D で探索できます。ヘッドホンを装着すると、周囲のオブジェクトが、室内のそのオブジェクトの場所から通知されて聞こえます。音声ビーコンをその上にかざして特定のオブジェクトを見つけることもできます。この新しい分野をコミュニティと共に探索するため、この早期の実験に関するお客様からのフィードバックをお待ちしています。
  • iPhone 12 Pro と Pro Max では、触覚近接センサーにより、LiDAR スキャナーをポイントし、周囲の物までの距離を感じることができます
  • メイン画面は、コントラストを高め、カメラの視野を広げるように、視覚的に再設計されました
  • シーン チャンネルのイメージの説明と、携帯電話で写真を閲覧する場合の改善
  • ドキュメント チャンネルのテキスト認識精度が向上しました
  • Seeing AI は、チェコ語、デンマーク語、フィンランド語、ギリシャ語、ハンガリー語、ポーランド語、スウェーデン語の追加の 7 言語で使用できるようになりました。
  • さらに、内部でさまざまなバグ修正が行われています


今回の目玉はやはりiPhone 12 Proに搭載されたLidarスキャナを活用した「World Channel(世界チャンネル)」の登場でしょう。

Microsoftといえば音声ナビゲーションアプリ「SoundScape」(日本未発売)を開発した実績もあり、3D音響による拡張現実を用いた空間表現に関して、いっぽリードしているというイメージがあります。Seeing AI 4.0でこの技術がどのように生かされているのか、それともいないのか。あとプライバシーの扱いについても気になります。ちなみにLidarを搭載していないiPhoneではWorld Channelは画面上に出現しないようです。


World Channel以外ではドキュメントチャンネルの精度が向上したとのこと。ですが試した範囲ではまだ誤認識も多く見られ大きな改善は感じられませんでした。OCRの精度に関してはまだ他のアプリを置き換える感じではなさそう、といのが現在の印象です。オート撮影とか見出しを付けてくれるとか優れている点も多いのですが。

あとシーンチャンネルの認識というか表現はちょっと自然になったかな?もしかしたら新しいAzure AI技術が導入されたのかもしれませんがよくわかりません。もうちょいいろいろな場所で試してみます。


以下はSeeing AIの産みの親であるMicrosoftのエンジニア、Saqib Shaikh氏の連続ツイートをざっくり翻訳したものです。


  1. Seeing AI 4.0の発表にとても興奮しています。これにはiPhone 12 Pro用の新しいWorld Channel、つまり不慣れな空間の概要を3D音響で知ることができるオーディオ拡張現実体験が含まれています!
  2. カメラを向けると、その方向に何があるのかをアナウンスします。ヘッドフォンを装着していれば物体が存在する位置から音声が聞こえてきます。例えば「ドア」という音声がドアのある方向から聞こえてきます。
  3. 環境の空間サマリーを取得し、周囲に検出されたすべてのものがあなたにアナウンスされます。また、椅子のような特定の物体の位置を見つけるために、オーディオビーコンを椅子の上に置き、音を追いかけることで、その位置を特定することができます。
  4. The haptic proximity sensor(触覚近接センサー)は、LiDARを使用して環境を「感じる」ことができます。スマートフォンを左右に振って家具や壁の開口部を見つけます。あなたが物体に近づくにつれてより強い振動を感じとることができるでしょう。
  5. これは私たちのオーディオ拡張現実実験の始まりに過ぎません。ここには非常に多くのエキサイティングな可能性があります。私たちは、このような次世代の体験を創造するために、コミュニティと密接に協力していきたいと考えています。


iOS14.2ではAppleが拡大鏡アプリにLidarを用いた視覚障害者向けの人物検知機能を追加し話題になりました。先日も画像認識アプリ「Supersence」(日本未発売)の開発者がLidarを活用したアプリ「Super Lidar」を予告しており、iPhone 12 ProのLidarスキャナを視覚支援に応用する動きが活発化しているようです。Apple Glassesや電気自動車の噂も盛り上がっており、来年はLidarを応用した技術に大きな注目が集まるのかもしれません。

あとはホームボタンを搭載した手頃な価格のiPhoneにも、Lidarスキャナが付いてくれると良いのですけどね。


2020年12月14日月曜日

ゲームのアクセシビリティ、The Game Awardsの「TLOU2」と「Cyberpunk 2077」。

「The Last of Us Part II」がThe Game Awardsで7部門を受賞。


現地時間2020年12月10日、この一年間のビデオゲームを総括する年次イベント「The Game Awards」がオンラインで開催された。イベントの模様はYouTubeなどを通じライブ配信され、視覚障害者向けのオーディオ解説付き配信も実施された。


授賞式では「The Last of Us Part II」がGame of the year、そして今年新設されたInnovation in Accessibilityを含む7つの賞を獲得。ストーリー的には賛否両論が渦巻いた作品ではあるが、卓越した技術力と表現力、そして革新的なアクセシビリティが多くの支持を集めた結果となった。

一方TLOU2の開発会社であるNaughty DogのCrunch(開発者の過酷な労働問題)を挙げ、一部の受賞がふさわしくないとの意見も出ている。ゲーム業界の健全化のためには今後このような、作品の裏に隠れている問題にも注目が集まってくるのかもしれない。また受賞作品の選出方法や授賞式より比重が高まっている新作発表の在り方などイベント自体に対する批判もある


とはいえThe Game Awardsがアクセシビリティにスポットを当てた意義は大きい。

Game Awardsでは今回初めてゲームの包括性向上に尽力し続けている人々を称賛する「FUTURE CLASS]を発表。このリストにはアクセシビリティコンサルタント,BRANDON COLE氏、Ubisoftのアクセシビリティマネージャー,CHERRY THOMPSON氏、アクセシビリティ活動家,IAN HAMILTON氏、四肢麻痺を持つゲーマー,RANDY FITZGERALD氏、盲目ゲーマーにしてアクセシビリティコンサルタント,STEVE SAYLOR氏などゲームアクセシビリティに関わる人々も多く含まれている。


今回「TLOU2」が大賞を獲得したことで、今後アクセシビリティがゲームの評価基準の一つとして重要な要素となることを期待したい。そのためにはゲーム開発側だけでなくメディアやゲームレビュアー、一般ユーザーのリテラシーの高まりが欠かせないだろう。アクセシビリティは人権であり特別な追加機能ではないメディアとして備えられなければならない基礎。この意識、ゲーム業界にも浸透して欲しいな。



「Cyberpunk 2077」に噴出する問題とアクセシビリティ。


2020年12月10日、今年最後のAAAタイトルといわれている「Cyberpunk 2077」がリリースされた。CD PROJEKT RED(CDPR)が8年もの開発期間をかけ、度重なるリリース延期を乗り越えようやく登場したこのSF大作には世界中から大きな注目が集まっていた。しかしいざ蓋を開けてみると、ゲームの本編以前でさまざまな問題が噴出している。以下ダイジェストでお送りします。



他にもバグの続出やCrunch問題など話題に事欠かない。

特に女性やトランスに対する攻撃はゲームコミュニティにはびこる根深い問題を露呈している。以前から女性や障害者などマイノリティをターゲットにしたハラスメントが問題視されてきたが、Cyberpunk 2077という注目作がこの事実を思いがけず衆目の前に炙り出したといえるかもしれない。


アクセシビリティに関してはCDPRの技術情報ページでその詳細が公開されている。これによると色覚多様性やクローズドキャプション、カメラやモーション調整、コントロール関連のオプションなどが用意されていることがわかる。残念ながら現時点ではHUDのテキストサイズの変更やナレーションなど視覚障害者むけのオプションは存在しないようだ。

アクセシビリティ・コミュニティからの反応もいくつか出ている。Game Accessibility Nexusによるアクセシビリティレビューはこちら。またCan I Play That?でモビリティレビューを執筆するGrant Stoner氏はTwitterでアクセシビリティの不備を指摘。加えてWindows版において「Joy2Key」などキーレイアウトを変更するアクセシビリティツールが無効化されてしまうという問題も報告されている。認知アクセシビリティに関わる表現(暴力、残虐、性的など)に関する情報はこの記事でCDPRからの警告文を引用する形で解説されている。

さまざまな情報を総合すると、近年のAAA作品として「Cyberpunk 2077」のアクセシビリティはまだ貧弱と言わざるを得ない状況のようだ。


そしてなによりCDPRがリリースの直前までアクセシビリティに関する情報を一切公開しなかったことが批判されている。8年もの間わくわくするような情報が流されていたにもかかわらず、その間障害を持つゲーマーはこの作品が自分にとってプレイ可能なものなのかを判断することができなかった。

同社は度重なるユーザーからの問い合わせにもゼロ回答を貫いたという。この姿勢はアクセシビリティを軽視しているとみなされても仕方がない。もちろん開発会社にとって発売前ゲームの情報はトップシークレットであることは理解できるが、ことアクセシビリティに関する情報はもう少しフレキシブルな対応が求められるだろう。これは開発中から積極的にコミュニティと連携を続けたUbisoftなどとは対照的な感じだ。


とはいえCDPRが全く包括性を無視しているというわけではなさそうだ。同社はMicrosoftとともにLimbitless Solutions社とコラボレーションし、作品内に登場するロボットアームをモチーフとした3Dプリント義手を制作するプロジェクトを進めている。この調子でゲーム本編の包括性向上にも取り組んで欲しいものだ。

Cyberpunk 2077はその期待値に違わず順調なセールスを記録しているという。ゲームメディアからの評価も好意的なものが多く、おそらくゲーム史に名を刻むヒット作品となる可能性は高いだろう。それだけにアクセスを拒まれているゲーマーの心情は察してあまりある。

今後のアップデートでどれだけアクセシビリティが高まるのか。CDPRの情報開示姿勢とともに対応を見守りたい。



支援技術関連記事まとめ(2022年10月)

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