Can I Play That Accessibility Awards 2020発表
2020 Can I Play That Accessibility Awards ― Winners
ゲームアクセシビリティレビューサイトCan I Play That?において、2020年最もアクセシブルだったゲームおよびハードウェア、加えてゲームアクセシビリティに貢献した団体を表彰する「Can I Play That Accessibility Awards」の受賞者が発表されました。
ゲームアクセシビリティにとって重要な要素を示す16の部門それぞれに3作品もしくは団体がノミネートされ、ユーザーからの投票により受賞作品が決定されています。
最優秀賞に当たるBest Overall Accessible Gameに選ばれたのは「The Last Of Us Part II」。この作品はBest Blind/Low Vision Accessibility(もっとも優れた視覚アクセシビリティ賞)にも選出されています。
受賞者リストを眺めるとアクセシビリティに関する情報公開の姿勢やAssassin’s Creed: Valhallaの予告編動画の取り組みなど、企業としてUbisoftが評価されている点が印象的でした。これを機にノミネートされている作品のアクセシビリティオプションを確認したり団体の取り組みを振り返るのも良いでしょう。
またゲーム情報サイトIGNの米国版ではGame of the Yearの一環としてCan I Play That?のメンバーらによる2020年のアクセシブルゲームの特集記事が掲載されています。こちらでも「The Last of Us Part II」が最優秀賞を獲得。他にもSpider-Man: Miles Morales、HyperDot、Immortals Fenyx Rising、Gears Tacticsがピックアップされています。
Noteworthy Advancement in Accessibility for 2020 - IGN
Cyberpunk 2077の返金対応について
大量のバグと全世代機におけるパフォーマンス不足およびその情報を事前に開示していなかったことが問題視され、とうとう返金対応とダウンロード販売の中止にまで至ったCyberpunk 2077。
PlayStation StoreおよびMicrosoft Storeのキャンセルポリシーにはダウンローど済みもしくは開封済みのゲームは原則返品対象外であると記載されており、今回の対応は異例中の異例ともいえます。
確かに続行不能になるゲームを買わされてしまったら返品を求めるのは当然のこと。
でもこれって、見方を変えると障害を持つゲーマーがアクセスできないゲームを買ってしまったケースにも場合によっては同じようなことが当てはまるようにも感じます。
Can I Play That?の執筆者の一人であるCourtney Craven氏もこの状況を少し皮肉っぽくツイートしています。
"Sooo since both Playstation and Xbox have either refunded or removed Cyberpunk from the store because it's unplayable, they're going to implement that same refund policy when disabled people can't play games, right? RIGHT?"
(PlayStationもXboxも Cyberpunkがプレイできないという理由で返金したり公開停止したんだったら、障害者がゲームをプレイできない時も同じような対応してくれるよね?ねえ?)
もちろんバグによるものとアクセシビリティ不備によるバリアは同一に語ることは無理がありますしアクセスできないことを理由に返品が認められるのはかなり難しいでしょう。
ですが事前のアクセシビリティ情報の公開や体験版の配布などを通じ、障害を持つゲーマーに対し購入の判断材料が与えられれば、経済的・精神的負担はかなり軽減されるはず。情報不足という点においては、今回の騒動と障害ゲーマーを取り巻く現状は似たような構造を持つような気がします。ゲームをアクセス可能にしていくと同時に、より迅速かつ詳細な情報の提供が求められるでしょう。
The New Yorkerによる宮本茂氏インタビュー
Shigeru Miyamoto Wants to Create a Kinder World | The New Yorker
米国The New Yorkerが任天堂の宮本茂氏へインタビューした記事が公開されています。GIGAZINEがその内容を一部抜粋する形で紹介していますが、個人的にはこの記事では省かれている部分に興味を持ちました。
宮本氏はゲームデザイナーとして世界のルールを考えたことがあるか?」という質問に対し「特にない」と答えた上で現実の行動と誇張された虚構をミックスさせることで、これまで人生で経験してきた感情や感覚を再現するようなゲームを作りたいと答えています。
その上で、電車の優先席に座る若者の例を挙げ、人々の利己的な行動を促すゲームデザインがあるのであれば、それを変えたいと語っています。宮本氏はゲームを通じ人々がもっと思いやりと優しさを持った(元記事の表現を借りるなら)「Kinder World」を実現したいと考えているようです。
以下その部分を引用します。
I wish I could make it so that people were more thoughtful and kind toward each other. It’s something that I think about a lot as I move through life. In Japan, for example, we have priority seating on train carriages, for people who are elderly or people with a disability. If the train is relatively empty, sometimes you’ll see young people sit in these seats. If I were to say something, they’d probably tell me: “But the train is empty, what’s the issue?” But if I were a person with a disability and I saw people sitting there, I might not want to ask them to move. I wouldn’t want to be annoying.
I wish we were all a little more compassionate in these small ways. If there was a way to design the world that discouraged selfishness, that would be a change I would make.
ゲームは娯楽であるとともに教育的なメディアでもあります。とかく能力主義に偏りがちなゲームの世界にどのような形で「Kinder World」がもたらされるのか。宮本氏の今後の活動に注目したいと思います。
あと任天堂もそろそろアクセシビリティ向上に取り組んで欲しいですね。これも「Kinder World」の一つの側面と思うのです。
「Pokemon Go」のCovid-19対応とアクセシビリティのお話
Pokémon Go creators say COVID is 'my presence in our game'
位置情報ゲームを開発するNianticのプロダクトマーケティングマネージャーであるVeronica Saron氏が、Covid-19が世界中に拡大する中「Pokemon Go」のサービスをどのように変革してきたのかを語っています。
世界中の人々の外出が制限され続ける中「移動」が軸となるPokemon Goは早急かつグローバルなレベルでStay homeに対応せざるを得なくなりました。記事では緊張感が高まる中、様々な決断が行われてきたことが語られて伊ます。
そして記事の後半では米国で障害を持つゲーマーを支援する非営利団体であるAblegamers charityのSteven Spohn氏によるツイートを受け、ゲームのアクセシビリティに対するNianticの姿勢が語られています。
Spohn氏は「自由に外出できる」ということがこれまでどれだけ特権的であったかがCovid-19により広く認知されたと述べており、Pokemon Goが移動を必要としないシステムを導入するのであればもっとアクセシビリティが考慮されるべきであると主張しています。以下Veronica Saron氏のコメント部分を引用します。
Slimon added that Niantic is “taking accessibility issues seriously,” citing issues such as navigation and color blindness.
“There are accessibility challenges that we take very seriously and want to deal with. But this set of changes is really aimed at focusing on changes in cultural norms for the entire world. Over time, I think we might want to make specific changes that target those kinds of accessibility problems.”
つまり一連の仕様変更はあくまでもパンデミックによる社会文化の変化に対応したものであり、アクセシビリティについてはいつか考えるかも、という感じに読めます。
現状Pokemon Goはアクセシビリティがほとんど考慮されておらず、Spohn氏をはじめコミュニティからは長年改善が求められてきました。この記事ではアクセシビリティの重要性は認めつつも、あまり積極的に対応する雰囲気は感じられません。この消極性はなぜなのか、どのようなアプローチが有効なのか。考えさせられます。
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No hands, No excuses: One man's quest to make online gaming more accessible | Stuff.co.nz | ニュージーランド。腕を持たないゲームストリーマー。
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