2020年8月30日日曜日

A11Y Topics #005。視覚障害者専用スマホ、RNIBの認証制度、ゲーム関連など。

※乱文・誤変換ご容赦です。

音声操作に絞った視覚障害者向けスマートフォン「In Your Pocket」。


英国RealSAM社が開発・販売する「In Your Pocket」は視覚障害者むけのスマートデバイスだ。SAMSUNG社のスマートフォンをベースに独自の音声アシスタントとアプリケーションを組み込み、英国の通信会社O2 Telefonicaのモバイル通信サービスをパッケージし販売している。
この端末は基本的に音声だけで操作するように設計されており、通話やメッセージ送受信、ニュース・電子書籍リーダー、RNIBと提携したオーディオライブラリへのアクセス、拡大鏡やBe My Eyesなどの支援アプリを音声だけで利用することができる。ベースはAndroid OSだが、ストアからアプリを追加することはできない。一方で家族や支援者が端末の更新やアドレス帳の一括登録などを行えるWebポータルが提供される。

視覚障害者がスマートフォンを使いこなすにはジェスチャやキーボード操作などある程度の訓練が必要だ。それが特に高齢者にとって大きなハードルとなっているのも事実。In Your Pocketはセットアップ不要、操作は音声のみという、できる限りシンプルで割り切った設計にすることで、このハードルを下げようとしているようだ。「視覚障害者専用らくらくスマートフォン」とも言えるIn Your Pocket、コンセプトとしては面白い製品と思う。

SAMSUNGのスマートテレビがRNIB認証を取得。


英国の視覚障害者支援組織Royal National Institute of Blind People(RNIB)は、依頼を受けた製品のアクセシビリティをチェックし、それらが視覚障害者にアクセシブルであることを認定する「RNIB Tried and Tested」プログラムを実施している。対象となるのは家電製品からアプリケーション、Webまで多岐にわたる。
このプログラムで認定された製品にはRNIB Approvedのマークの表示が許可され、視覚に障害を持つ消費者への情報提供となるだけでなく企業のインクルーシビティへの姿勢を示すことにもつながる。

SAMSUNGは2013年以来、RNIBと協力しスマートテレビのアクセシビリティ向上に取り組んできた。現在同社のスマートテレビには画面上のテキストやリモコンの情報を音声で読み上げる「Voice guide」やロービジョンむけのテキスト拡大、Galaxyスマートフォンと組み合わせたデジタル拡大鏡などの視覚アクセシビリティ機能が搭載されている。これらの機能が評価されSAMSUNGのスマートテレビ、2020年モデルが先日、RNIB Approvedを取得した。これにより英国の視覚障害者の選択肢が一つ増えたことになる。

家電製品が視覚障害者にとってアクセシブルかどうか、という情報は限られている。結局ほとんどの場合口コミを調べるか店頭で短時間触れてみて判断するしかない。だが使えそうと思って購入しても、すべての機能が使えるとは限らない。企業がアクセシブルな製品やサービス構築を意識し当事者に確実な選択肢を提供するためにはRNIB Approvedのような「お墨付き」的な仕組みが必要なのかもしれない。

オーストラリアNGV、ユニークな絵画の音声解説を提供、など。


オーストラリア、メルボルンにある美術館NGV(ビクトリア国立美術館、National Gallery of Victoria)はCovid-19感染拡大に伴い現在休館しており、オンラインによるイベントや展示を行っている。そのような状況で公開された特設ページ[Audio Descriptions: NGV Collection Highlights」では、視覚障害者のための興味深い試みが行われている。
このページでは葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」などNGV所蔵の6作品をピックアップし、音声による解説がオーディオ形式で聴けるほか、その作品からイメージされた楽曲も聴くことができる。音声解説の制作にはDescription Victoriaが協力している。単なる音声解説だけでなく、音楽からその作品のイメージを膨らませてみよう、というコンセプトのようだ。個人的には曲だけでなく効果音なども欲しかったかな。この辺り探求していくと面白いかもしれない。

Covid-19感染拡大によるロックダウンやソーシャル・ディスタンシングの励行は美術館や博物館にも大きな影響を与えており、財政的な危機に直面している施設も少なくない。一方で環境の変化をアクセシビリティの整備に転換する動きもみられる。
例えば米国オースティンにあるブラントン美術館では、閉館中スタッフの雇用を守るためWebに展示している所蔵品の代替テキストを整備する事業などに人員を組み換えた。またニューヨーク、クーパー・ヒューイット国立デザイン美術館はスタッフのテレワーク化に伴い所蔵作品データベースに代替テキストを書き加えるプロジェクトを立ち上げている
正直視覚障害者にとって、まだまだ美術館はエキサイティングなスポットとは言い難い。オンラインでもリアルでも、少しでも楽しめる場所、行ってよかったと思える場所になって欲しいものだ。

ゲーム関連トピックス、3つ。


その1:「あつ森」に見る任天堂のアクセシビリティに対する姿勢。
視覚障害者の間でも「あつ森」は大人気。足音の変化でマップを探索し、音のデルアイテムを駆使して島をレイアウトしていく。画面に表示されるテキストはOCRソフトを使って読み上げる。一方で音声や振動からヒントが得られない要素も少なくなく、視覚障害者は「あつ森」のすべてを楽しめないのも事実だ。
任天堂はソニーやMicrosoftと比べアクセシビリティへの取り組みが(少なくとも表面的には)遅れていると言わざるを得ない。任天堂に対し多くのユーザーがアクセシビリティの向上を請願しているにもかかわらず反応は鈍い。
任天堂の作品は基本的にユーザーフレンドリーに設計されている。ゆえに工夫すれば障害を持っていてもプレイできる可能性はあるのだがそれにも限界はある。そもそもゲームをプレイする上でユーザーに工夫を強いるってどうなのだろう。任天堂がゲームのアクセシビリティに関しどのような考えを持っているのか、ほとんど見えてこないのは残念な話だ。

その2:PS5の触覚機能の一端が明らかに。
ソニーは2020年のホリデーシーズンに発売を予定しているPlaystation 5の新しい没入型機能について説明する新しいグローバル広告スポットを発表した。
その中でPS5の標準コントローラーDualSenseの振動機能について具体的に触れられている。この新しいコントローラーの振動フィードバックを使えば、例えば敵が迫ってくる方向を感じたり、武器の違いを手の中で体感することができるという。従来の振動と比較し圧倒的な解像度と表現力を持っているようだ。
これを応用すれば、画面上や音声の情報を振動で表現することで視覚・聴覚アクセシビリティを向上させることができるかもしれない。一方、この振動を用いなければゲームが進められない作品が登場すると、手が不自由なプレイヤーには不利となってしまう懸念もある。PS5の大きな特徴の一つとも言えるDualSenseだが、開発においてはアクセシビリティを念頭において欲しいものだ。

その3:「名探偵ピカチュウ」の続編はアクセシブルになる可能性?
「ポケモン」関連ゲームを開発する株式会社クリーチャーズのUI設計責任者であるDave Gibson氏は、現在進行しているSwitch版「名探偵ピカチュウ」の続編の開発に合わせ、ユーザーに向けUIの改善点に関するアンケートを実施した。これまで同社が開発してきた作品で足りないものは?
寄せられた800件以上の回答の中で最も多かったのは、ポケモンゲームにアクセシビリティオプションを追加して欲しい、というものだったという。任天堂の他作品と同様にこれまでのポケモンゲームには、グラフィック、サウンド、コントロールをユーザーの状態に合わせカスタマイズできるオプションはほとんど用意されてこなかった。Dave氏はこの結果を受けアクセシビリティオプションの実装に向け前向きに検討するとコメントしている。

おまけ:インクルージョンが進む娯楽の世界。


その1:タンデムなゴーカート。
STORM DUO KART」は障害者も楽しめるADA準拠ゴーカート。2つの座席にはそれぞれにステアリングとアクセル、ブレーキが供えられており、介助者が同乗することで運転をサポートすることができる。これなら視覚障害者でも安全に運転を体験することができるだろう。

その2:ユニバーサルデザインのメリーゴーランド。
米国ボストン、ローズ・フィッツジェラルド・ケネディ・グリーンウェイに設置されている「 Greenway Carousel」はユニークな設計のメリーゴーランド。全36席のうち4席は車椅子でもアクセスでき、施設周囲の誘導路も全てバリアフリー化。また調節可能な照明と音響設備を備え、感覚に障害を持つ来場者にも対応できる。

その3:チェコ、ブルノ動物園で視覚障害者向け触覚マップを提供。
チェコ第二の都市、ブルノにあるブルノ動物園は国立マサリク大学の特別支援センターと共同で、視覚に障害を持つ来場者のための触覚マップを開発し無料で配布している。動物園や水族館では、イベント的に視覚障害者のためのツアーなどが開催されることがあるが、このような常設サービスはあればもっと気軽に訪問できそう。

その4:ディズニー、アダプティブなハロウィンコスチュームを販売開始。
ディズニー公式ストアShopDisney.comが、初めてアダプティブなハロウィン・コスチュームの販売を開始した。着脱がしやすい衣装やディズニー作品をモチーフにした車椅子カバーなどがラインナップされている。今までは自作するしかなかったため、これは人気を集めそう。

その5:視覚障害者のための多感覚おもちゃコレクション。
Legoのbraille bricksが話題になっているが、このページではそのほかの特に子供のための多感覚、つまり触ったり音を聞いて楽しむおもちゃが多数紹介されている。音が出るブロックやプレイマット、お店ごっこや動物のフィギュア、実物大の犬のぬいぐるみまで、言葉を学び、音楽をかなで、社会性を育む手助けをしてくれる。

その6:Kmartのインクルーシブな人形。
オーストラリアのKmartで販売されているインクルーシブな人形シリーズ。補聴器、車椅子、白杖、松葉杖を持った人形が登場している。海外ではMattelなど複数の大手メーカーから障害者をモチーフにした人形シリーズがリリースされている。車椅子はよく見かけるけど白杖モチーフはまだ少ない印象かな?


2020年8月27日木曜日

音声でデジタルマップを探索する「SAS Graphics Accelerator」を試す。


SAS Instituteが公開している「SAS Graphics Accelerator extension(SGA)」は、Web上のグラフやマップを変換し、聴覚フィードバックによる情報伝達を実現するChrome機能拡張だ。グラフィカルな情報を音声で表現することで、視覚障害者の情報取得を支援する。
先日のエントリーで取り上げたが、試してみたらちょっと興味深かったので、使い方などをもう少し詳しくレポートする。

SGAのインストールとサンプルマップの変換。


SGAを利用するにはGoogle Chromeが必要。情報の読み上げのためにスクリーンリーダーを有効にしておく。またステレオヘッドホンを用意しておくと音声が判別しやすくなるので幸せになれるかも。今回はmacOS Catalina上のGoogle Chrome 85で検証した。
なおマップをSGAで変換するには、一定のルールにそって作成されたGoogleマイマップを用意しておく必要があるが、今回は公開されているサンプルマップを使用した。

  1. このページから、Chrome機能拡張「SAS Graphics Accelerator extension」をインストールする。
  2. Map Libraryを開き、探索したいマップを開く。ここではなんとなく「Perkins School for the Blind 3」を選んでみた。
  3. Googleマイマップが開くので、マップ中にある「Accelerate map]ボタンを押す。
  4. 新しいタブで変換されたマップが開く。スクリーンリーダーのカーソルがマップにフォーカスすると効果音とともに現在表示されている施設数が読み上げられる。マップにフォーカスしない場合はTabキーもしくはShift+Tabキーを数回押してフォーカスする。

音声を使ってマップを探索する。


変換されたマップでは「レンズ」と呼ばれる円形の領域に地図が表示されている。マップは北が常に上で、レンズの中心が現在地となる。現在地からレンズの外周部へ向かって、時計の針のように「バーチャルケーン」と呼ばれる直線が伸びている。
ユーザーは聴覚フィードバックを聞きながら、キーボードやゲームコントローラーを使ってマップ内を移動したりバーチャルケーンで施設を探索していく。

  1. バーチャルケーンはゲームコントローラーで時計の針のように360度グルグル動かすことができる。バーチャルケーンがマップ内の施設に触れるとその名称とともに現在地からの直線距離と方向を読み上げ、そしてSonification(現在地とその施設の位置関係を表現したサウンド)が再生される。例えば「Beechwood Parking Lot、354 yards at 2 o'clock」といった感じ。
  2. Sonificationは、その施設が現在地から遠いほど低く、近いほど高い音になる。また施設が現在地の9時方向にある時は音が左から、3時方向にある時は右方向から再生され、近づくほど音が中心から聴こえてくる。さらに施設が6時方向にある時は、12時方向にある時と比べ金属的なサウンドが再生される。
  3. キーボード操作の場合は「ROLL UP」「ROLL DOWN」キーを押して時計回り/反時計回りでマップ内の施設情報を順番に読み上げる。
  4. 施設名が読み上げられたら、矢印キーを使いその施設へ向かって移動する(マップは現在地を中心にスクロール)。移動するとSonificationとともに移動した方向と距離、現在レンズに表示されている施設の数が読み上げられる。例えば100 yards north、「showing 65 of 65 objects」といった感じ。施設までの距離はスペースを押して確認する。
  5. 移動する方向はSonificationを聴いて判断する。要するに音が最も高く、左右のバランスが取れた場所が目標施設の位置になる。また「Enter」キーを押すと、その施設へ直接ジャンプできる。

使ってみた感想など。


SGAで面白いのは「バーチャルケーン」の存在だろう。ゲームコントローラーを用いることで、レーダー(もしくは魚群探知機?)のように周囲の施設を探索できる。キーボード操作と比べ施設同士の位置関係がわかるので、お手元にコントローラーがあれば試してみるのも一興かと。

SGAマップの使い道として考えられるのは、外出前のメンタルマップ構築だろう。このようなツールである程度施設の位置関係を把握しておくことでスムーズな移動ができるし、迷ってヘルプを依頼する場合にも目的地を指定しやすくなるだろう。
筆者が想定した使い方としては、まずデフォルト状態でマップ内の施設をぐるりと探索し、おおよそのメンタルマップを作成。あとは起点となる施設(ゲートや交通機関(へ移動し、ズームと併用してそこから他の施設の位置関係を細かく調べていく、という感じだろうか。まあ言うは易し、いざやろうとしても結構難しい。Sonificationから的確にメンタルマップへ反映させるにはそれなりに訓練が必要ではと思った。個人的に。

SGAマップで探索できるのは、マップに設置された施設の位置関係のみで、一般的な触地図のように道路や地形などは探索できない。ただ分かれ道や交差点、視覚障害者でも確認できるランドマーク(白杖で気が付くもの、音が出るもの)をマップに登録しておくことである程度、移動ルート情報を提供できるかもしれない。

SGAは機能的にシンプルだが、音声でエリア全体を把握することができる点が面白い。考えてみると視覚障害者にとって、触地図以外で「マップ全体を見渡しどのあたりにどんな施設があるか」をざっくり調べられるソリューションって案外少ない気がする(Blind Squareの「見回す」機能が似てるかな?)。
SGAはSonificationをマップへ応用する実験的な試み(と筆者は受け取っている)が、作成するマップ次第では結構実用的かもしれないと思ったりした。地図、特にデジタルマップのアクセシビリティ技術の一つとして面白かった。今度はグラフのSonificationも試してみたい。

参考:マップで使用できる主なショートカットキー。


SGAのマップで使用できるショートカットキーは以下の通り。
なおゲームコントローラーでの操作方法など詳細はヘルプページを参照のこと。

=:マップ表示を拡大する
-:マップ表示を縮小する
0:マップの拡大率と現在地をデフォルトにリセットする

ROLL DOWN:時計回りにマップ内の施設を探索
ROLL UP:反時計回りにマップ内の施設を探索
矢印キー:マップ内を移動する
スペース:目標施設の情報を読み上げる。
/:現在地の座標など詳細な情報を読み上げる
Enter:目標施設へジャンプする
J:施設の一覧ウィンドウがポップアップしマップに含まれる施設名が一覧される。キーワードを入力し絞り込みも可能。施設名を選びEnterキーでその場所へジャンプする。

I:方向の読み上げ設定を変更(クロックポジション、角度、法学)
U:距離単位を変更(ヤード、メートル)
S:Sonificationのオン/オフ
c:読み上げる情報量を変更
L:ポイント属性を変更



2020年8月23日日曜日

A11Y Topics #004。Fire TVに「Text Banner」、AIRAの無料サービス、振動スニーカーなど。

※乱文・誤変換ご容赦です。

Amazon、Fire TVの新しい視覚アクセシビリティ機能「Text Banner」。


Amazonは同社が販売するメディアストリーミングデバイス「Fire TV」に、新しい視覚アクセシビリティ機能「Text Banner(テキストバナー)」を提供すると発表した。
これは画面の任意の位置にバナーと呼ばれるボックスを表示しその中にメニューカーソルがフォーカスしたテキストを表示する機能。テキストの大きさやカラー、バナーの配色はカスタマイズ可能で、画面が見えにくいユーザーが最適な方法でFire TVのメニューのテキストを読み操作できるようになる。
特に視野に制限のあるロービジョンユーザーにとっては大画面テレビに表示されるテキストを追いかけるのは非常に難しい。Text Bannerは見えやすい位置にバナーを固定できるため情報が得やすくなる。
Fire TVの視覚アクセシビリティ機能には他にも、音声読み上げ機能「VoiceView」や画面全体をズームする拡大鏡、ハイコントラスト表示(テスト中)が用意されている。これまで拡大鏡でFire TVを使っていいたロービジョンユーザーにとって、画面全体を把握しつつテキストを見やすくするText Bannerは待望の機能だろう。

AIRA、5分間の無料接続サービスを縮小へ。


北米とオーストラリア、ニュージーランド、英国でスマートフォンを用いた視覚障害者の有人遠隔サポートサービスを提供しているAIRAは、昨年8月に開始した5分間の無料アクセスサービスの利用条件を変更すると発表した。
これまではゲストを含む全てのユーザーは回数制限なくいつでも5分間のアクセスが可能だったが、2020年8月25日以降は有料会員は4時間に1回、ゲストユーザーは24時間に1回という回数制限がかかる。
この変更の背後には、無料アクセスユーザーの増加によるAIRAへの財政的負担の増加がある。無料アクセス開始前は空港などからの無料アクセスが全体の5%程度であったが、無制限アクセス開始後はその割合が55%にも達したという。有人エージェントによるサポートを行うAIRAにとって、この状況は今後の事業継続に大きな悪影響を及ぼすと判断したようだ。なお博物館や空港、スーパーマーケットなどAIRAと提携している施設では引き続き無料でAIRAサービスが提供される。
一方でこの変更は無料アクセスで獲得した多くのユーザーに大きな影響を与えることは確実だろう。影響を受けたユーザーがどれだけ有料プランに以降するかは未知数だ。AIRAによって自立を獲得した視覚障害者の中には、経済的な制限のため再び不便な生活に戻ってしまう者が少なからず存在するだろう。Twitterからの反応も様々だ。
障害を持つ人々にとってテクノロジーやそれに伴うサービスへの依存度は今後も大きくなっていくはずだ。AIRAの発表は日本に住む筆者にとって直接影響のある話ではない。だが普段便利に利用しているサービスや機器をどのように持続させていくのか、企業、ユーザー共に考えていく必要があると思った出来事だった。

視覚障害者ナビもできるスマートスニーカー「KEEXS eMotion」がクラファン中。


フットウェア開発を手がけるオランダのスタートアップKEEXは、さまざまな機能を持ったスマートスニーカー「KEEXS eMotion」を発表し、 ― Kickstarterでクラウドファンディングを開始した。すでに目標額を超えた出資を獲得している。
このスニーカーにeMotion PODと呼ばれるスマートチップを装着し、スマートフォンアプリとペアリングすることで歩数や走行距離などのバイタルデータを収集するほか、振動フィードバックを用いたナビゲーションも可能という。同社はこの機能で視覚障害者の運動をサポートできると語っている。なおナビゲーション機能を利用するにはPodを両足に装着する必要がある。他にもランニングのパフォーマンスを最大限に引き出すオリジナルミュージックなどユニークな機能も用意されているようだ。
視覚障害者をナビゲーとするフットウェアとしてはすでに「LeChal」(以前書いた記事)が販売されているし、国内でも色々検討されている模様。どの程度効果があるものか興味深い。振動がくすぐったくないのかな。

デジタルイメージのアクセシビリティを向上する技術、2つ。


SAS Institute Inc.は、Web上のグラフィック情報をSonification(音響化)し視覚障害者へ情報を伝えるChrome用機能拡張「SAS Graphics Accelerator」を無償公開した。
これは一定条件に当てはまるグラフ画像やGoogle Mapsの地図をキーボードやゲームコントローラーで探索できる形式に変換するもの。特にマップでは仮想白杖を用いて地図上のオブジェクトを探したり、音のへんかでオブジェクトの位置関係をイメージしメンタルマップの作成を支援する。ちょっと触った感じでは、ルート探索というより、マップ全体にどのようなスポットが配置されているかを把握することが主な目的のようだ。

視覚障害者のための支援技術を開発する米メイン大学出身のスタートアップUNAR Labsは、国立衛生研究所の中小企業イノベーション研究フェーズIプログラムの下で30万ドルを授与された。同社が開発している「Midlina」と呼ばれる技術は、スマートフォンやタブレット上の写真、グラフ、地図といったグラフィカルな情報を音や振動を組み合わせ視覚障害者へ伝達することを目標としている。まだ具体的な製品はリリースされていないが、この技術を用いて視覚障害者の教育や就労環境の向上を目指すという。

なぜか海外で嫌われているフォント「Comic Sans」。


海外では欧文書体のひとつ「Comic Sans」を嫌う人々が多いらしい。
Comic Sansを揶揄するミームやツイートは広く拡散され、それに止まらずComic Sansを用いている人々を攻撃する言動も見られるという。この書体をコンピューターから削除使用というキャンペーンサイトまである。
反Comic Sans派はこのフォントが幼稚でアンチプロフェッショナルであり、テクニカルではないと主張する。これはこの書体が元々コミック本の文字からインスパイアされデザインされた経緯が少なからず関係しているようだ。
一方でComic Sansは、英国ディスレクシア協会によって、ディスレクシアなどの学習障害を持つ人々のために最適なフォントの1つとしてリストアップされている。文字の形が判別しやすく文字間に適度なスペースが保たれていることがその主な理由だ。アクセシビリティという面からは優秀な書体なのである。そこまで嫌われる謂れはなさそうだが……。
もちろんフォントの好みは十人十色であり、より多くの人々に良い印象をもたれるためにはより好まれやすい書体を選ぶのが合理的だろう。一方で近年では「読みやすさ」を重視したユニバーサルフォントが開発されており、教育現場などで利用され始めている。結局のところ各個人のセンスと目的、アクセシビリティ意識に応じて選べばいいという話な気がする。個人的にはユニバーサルフォントを推奨したいけどね。
Comic Sansをめぐる一連の騒ぎがどこまで本気でどこまで冗談なのかわからないが、一つのフォントを名指しで攻撃するのは差別を助長する可能性もあり問題がありそうだ。好みを主張するのは自由だがフォント自体を排除するのは筋違いであろう。

その他、気になったトピックスとか。


2021年3月に予定されているCSUN支援技術カンファレンスは、完全なバーチャルで開催されることが発表された。先日CES 2021もオンラインによる開催が発表されており、現在の米国におけるCovid-19感染状況を考えると止むを得ない決断だろう。結局、1年では終息しなかったのだなあとしみじみ。

映画「パラサイト 半地下の家族」のアカデミー作品賞受賞で浮き彫りになる、米国における外国語映画の音声解説の不備。現状米国では「パラサイト」の音声解説は制作されておらず、一方で英国では提供されている。故に米国の視覚障害映画ファンは英国版ソフトを待っている状態のようだ。米国では字幕で映画を鑑賞することはまだ一般的ではないらしくアクセシビリティの面からも改善が望まれている。

現在さまざまな機能を持つスマートアイウェアが発売されており、中には「治療」的な謳い文句のものもあるという。果たしてそれは本当なのか?専門家による検証を行なっている記事。効果のある製品についても、どのような目の状態を持つ人々に役立つかを知ることが重要だ。それにしてもいろいろなメガネが販売されているのだなあ。

英国Citizens Adviceの調査によると、このロックダウン中、一週間のうちに、障害者の5人に2人が荷物配達のトラブルに遭遇していたことがわかった。これには置き配した荷物の場所がわからない、配達されたタイミングが知らされないといったトラブルが含まれる。
外出が制限される中、障害者にとって配送サービスは命綱だ。運動に障害を持つ者が手の届かない荷物を前に立ち往生したり、視覚障害者が荷物を探して延々と手探りする状況は決してあってはならない。Citizens Adviceは英国の主要運送会社に対し改善を求めている。

フライトシミュレータファンが待ち望んでいた「Microsoft Flight Simulator」最新版が満を辞してリリースされた。前作から14年ぶりの登場ということで、あらゆる面でパワーアップされているようだ。筆者はまだ見えていた頃、Microsoft Flight Simulator 2004がお気に理で、せっせとアドオンやシーナリーパックを購入していた記憶がある。最新作ではクラウドによる衛星写真のストリーミングとAIによるオブジェクト生成により、格段に高品質でリアルなフライトが楽しめるらしい。技術の進歩って素晴らしい。あー、これは見てみたかった。
さてこの作品のアクセシビリティだが、以前開発者に対する取材でかなり注力されていることが報じられていた。だがいざリリースされてみると、搭載されているアクセシビリティ機能は平均以下のもので、全盲のユーザーがプレイできるようには仕上がっていないようだ。
とりあえず残念だが、今後のアップデートで向上されることを期待したい。風景は見られないかもしれないが、管制官とやりとりし航空機を操るだけでも楽しいと思うのだ。


2020年8月16日日曜日

A11Y Topics #003。ソーシャル・ディスタンシング、Google Lookout、DIYな支援技術など。

※乱文・誤変換ご容赦です。

視覚障害者のソーシャル・ディスタンシングを技術で解決する試み、2つ。



ドイツに本拠地を置くディスカウントストアAldi(アルディ)は、英国RNIBと提携し、英国内の店舗で計画されている入店管理システムに視覚障害者向けの音響装置を導入することを発表した。
これは店内の混雑による密集を避けるため、顧客の入店数と出店数を自動的に管理し店内に滞在する顧客数をスタッフの負担なく一定に保つシステム。今回発表された音響装置により、入店可能を示すシグナルが見えない、見えにくい顧客でも入店するタイミングを簡単に判別できるようになるという。
Covid-19感染拡大を防止する取り組みは随所で進められてはいるものの、それらの多くは視覚障害者にとっては意味をなさないものだった。例えば除菌設備を設置したとしても視覚障害者がその場所を見つけることは難しいし、距離を保ってレジに整列するためのマーカーは目が見えないと確認することはできない。Aldiの取り組みは、このような状況を改善する一つのきっかけとなるかもしれない。新しい生活様式も結構だが、そこから排除される人々が存在する可能性に想像力を働かせる方向に進んで欲しいものだ。


こちらは高度なコンピュータビジョンを手軽に利用できるOpenCV AI Kitを用い、視覚障害者のソーシャルディスタンシングを実現しようとするシステムを試作している。このシステムはIntelが主催するOpenCV Spatial AI Competitionに出展されフェーズ1を通過している。
OAK-Dを用いたこのシステムは、周囲の人々の顔を検出し、その人物がマスクを着用しているかどうか、加えて人物との距離を振動フィードバックを用いて伝達する。5つの振動モーターの位置で人物のいる方向を、振動の強さで距離を、振動パターンの変化でマスク着用の有無を表現する仕組みという。このようなシステムが実用的に働けば、ある程度自らの意思で行動できるケースもあるかもしれない。まあ感染予防だけでなく周囲の人々の様子がわかるのは普通に便利ではあると思う。
OAK-Dはステレオカメラを備え周囲の物体をリアルタイムに認識できる安価なキット。障害物検知やナビゲーションなど、アイデア次第で視覚障害者への支援技術開発に活用できそうだ。今後はこのキットを利用した様々なプロジェクトが出現しそうな予感。


Google、Lookoutをアップデート。食品パッケージの識別などに対応。



Googleは2019年3月にリリースした視覚障害者向け画像認識アプリ「Lookout」を大幅にアップデートした。これまでは同社のAndroid端末「Pixel」シリーズでしか利用できなかったが、今回のアップデートによりAndroid OS 6.0、RAM 2GB以上を搭載した全ての端末で利用できるようになった。
全体的なパフォーマンスの向上に加え、新たに食品のパッケージを識別する機能などが加わり、視覚障害者の日常的なタスクを強力に支援してくれそうだ。こうなるとやはり日本語への対応が待たれるところ。なお筆者所有のAndroid端末は5.0なので試すことは出来なかったのだった。でも触れないのもアレなので。

3Dプリンターと超音波センサーでインタラクティブな触覚地図を作成。



ロシア・モスクワ在住のSergei V. Bogdanov氏は、視覚に障害を持つ学生のために3Dプリンターを用いて触覚地図を作成した。彼が盲学校の寄宿舎を訪問した際、アクセシブルでない印刷された地図教材を見たことが開発のきっかけだったという。、
彼はさらにこの触地図にインタラクティブな仕掛け、つまり音声によるフィードバックを加えることにした。彼が用いたのは超音波距離計測センサーHC-SR04。記事だけでは細かい仕組みはわからないが、生徒がこの地図に一定距離近づくことで、音声による案内が再生される仕組みのようだ。物理ボタンや非接触タグ、コンピュータビジョンを用いた仕組みは知っていたが、超音波を使うのは個人的に目新しかった。
このセンサー、比較的安価だしArduinoなどと組み合わせ色々な音声案内システムを自作するのに使えそうと思ったのでメモ。3Dプリンターが支援技術のDIY化を加速させている一つの例だろう。

インド。視覚障害者向けゲーム機「Vision Beyond」。



インド在住のYashovardhan Kothari、Dev Kapashi、Dhruv Jhaveriという3人の17歳によって設計された「Vision Beyond]は、視覚障害者のためのゲーム機。完成までに2年を費やしたというこのゲーム機はRaspberry PiとPython、3Dプリンターによって構築され、およそ25センチ程度のコンパクトなデザインに仕上がっている。
プレイできるゲームは音声で楽しめるクイズゲーム。音声で出題された問題の選択肢に対応した4つのボタンをプッシュして得点を競うという内容となっている。点字が読めなくてもひとりでプレイできるほか、マルチプレイヤーモードも用意されているので、視覚障害者と見える友人が一緒に楽しむこともできる。
視覚障害者が楽しめるゲームといえばパソコンやスマートフォン向けに多くのオーディオゲームがリリースされているが、インドの視覚障害者にとってこれらの機材はまだ高価であり、目の不自由な子供がゲームを楽しむ手段は限られている。Vision Beyondは寄付を募っており、このゲーム機をより多くの子供達に届けたいと考えているという。

超音波画像を元に視覚障害者が胎児の顔を触れて感じられる3Dモデルを印刷。



産婦人科では超音波( エコー)を用いてお腹の中の赤ちゃんの様子を定期的に検査する。超音波によるスキャン結果は画像として出力され、このデータをUSBメモリで渡してくれるサービスもあるらしい。それだけこの画像が大きな意味を持っているということなのだろう。だが視覚に障害を持つ人々に対してこの画像を確認する手段は、これまでほとんど提供されてこなかった。
米国ボルチモアのジョンズホプキンス病院の医師は、超音波による3Dスキャンデータを元に、胎児の顔を3Dプリンターで出力し、目が見えない親がその3Dモデルに触れることでその姿を確かめるアイデアを思いついた。これは出生前に胎児の背骨を3D超音波スキャンと立体モデルで診断し手術のリスクを軽減させる手法を応用したものとのこと。
現時点では安定して胎児の体全体をスキャンすることは難しく、制作できる3Dモデルは顔部分のみという。だがこれまで生まれる前の赤ちゃんの姿を知る術を持たなかった人々にとって、これは大きな恩恵をもたらす技術となるはずだ。3Dプリンターを用いた情報伝達の良い例の一つといえるだろう。
同様の取り組みは、ブラジルのマタニティ企業Huggies Brasilのキャンペーンやスペイン、マニセス病院のプロジェクト「Mi Bebe 3D」など、世界各地で行われている。超音波スキャンや3Dプリントの技術向上により、このような取り組みがより広がるかもしれない。

ゲーム関連トピックスいろいろ。


米国AbleGamers Charityは、障害や人種、性別などを理由に疎外されているゲーム開発者に対し、Accessible Player Experience (APX) Practitionerコースを無償提供するプログラムDPADイニシアチブを開始すると発表した。これは同団体のD&Iポリシーに基づく取り組みの一つ。
また俳優ライアン・レイノルズがAblegamersの代表Steven Spohnと共にメッセージを発表し障害を持つゲーマーへの支援を呼びかけている。

「The Last of Us Part 2」アップデート内容が発表され、アクセシビリティにも多くの機能追加が施されていることがわかった。難易度に関する新機能やオーディオに関するオプションなど、さらに磨きがかかっている。

UBIsoftが現在開発中の「Watch Dogs: Legion]のアクセシビリティオプションについて解説されている。TLOU2にも匹敵する充実した内容を期待したい。

Switchでも発売予定のビジュアルノベルゲーム「Be Happy」が発表された。詳細は不明だが視覚や聴覚アクセシビリティオプションの搭載が予告されている。このところ新作ゲームのリリースでアクセシビリティへの言及が目立つようになってきたような。

オーディオゲームを開発するPurple Jamが新しい作品「Sounds Of Eden]をリリースした。ちょっとプレイした感じではゲームというより3Dオーディオ空間を歩き回る、みたいな内容となっている。プレイヤーの想像力が試されそうだ。
デモムービーはこちら。パソコン版の購入はこちら

2020年8月11日火曜日

「NaviLens」を使ってナビゲーションを体験してみました。


NaviLens(ナビレンズ)」は、二次元コードとスマートフォンを使って視覚障害者への情報提供と移動支援を行うスペイン発のシステムです。
昨年当ブログでも紹介記事をエントリーしていますので詳しい特徴はそちらをお読みいただくとして(手抜き)、いつの間にかアプリやヘルプも日本語訳されかなり馴染みやすくなってきました。5月に開催された「アクセシビリティ の祭典」ではNPO法人アイ・コラボレーション神戸さんが国内向けに実用化を目指しているというお話もあったりします。
とても期待しているシステムなのですが、なんとなくぼんやりしていたら試すタイミングを逸したまま幾星霜。思い立ったのでNaviLensが提供しているテストタグを入手し体験してみることにしました。
なおアプリの設定や使い方はVoice of iさんの記事がとても詳しいのでそちらをご参照ください(さらに手抜き)。テスト用のパーソナルタグはアプリ内からリクエストできます。

さてアプリをセットアップしタグをゲット、プリントアウトも済ませて準備万端です。NaviLensには様々な使い道がありますが今回はナビゲーションの使い勝手に絞って体験してみることにしました。ということでタグはA4サイズのものを使います。
お部屋の壁にタグをぺたりと貼り付け、できるだけ離れた位置(とは言え室内なので5メートルくらいですけど)からNaviLensアプリでタグを見つけ、その場所まで辿り着けるかが今回のミッションです。なお設定は全てデフォルトです。ではやってみましょう。

  1. スマホのカメラがタグをキャッチすると「カチッ」と音が鳴りタグの内容と距離が読み上げられます。複数のタグが見つかった場合は、最後に「カチッ」と鳴ったタグがロックされます。他のタグにロックしたい場合はスマホを動かして目的のタグをロックします。
  2. タグをロックした直後、「ポコッ ポコッ」と連続したサウンドが鳴り始めます。このサウンドはタグが正面にある場合は音が中心から、左右にずれている場合はその方向から聞こえてきます(イヤホンを使用)。
  3. サウンドが中心から聞こえてくるようにスマホの方向を調節したら、タグの方向へ向かって歩き始めます。
  4. あとは足元や障害物に注意しながら、サウンドが中心から聞こえるように方向を調節しながら歩きます。
  5. サウンドの音程や速度はタグまでの距離と向かっている法学により変化します。ヘルプによると、画面で捉えているタグの位置が上にズレていたら高音、下が低音、左が弱い音、右が強い音に変化するとのこと。
  6. タグまでの距離は定期的に音声で報告されます。距離が近くなる程サウンドの間隔が短くなり、50センチメートル以内に近づくと金属音(カチ、カチ、カチ……)に変化します。もう目的地は目の前です。

というわけで、難なくタグの場所までたどり着けました。5メートルですが。
とにかく良いと思ったのはコードの見つけやすさ。かなり雑にスマホを動かしても、しっかりタグをロックオンしてくれます。あとはサウンドの方向に従って歩くだけなのでとっても簡単。ただタグに向かって一直線に歩くことになるため、途中の障害物や段差などには十分注意する必要がありそうです。実際私はゴミ箱を蹴っ飛ばしてしまいました。

サウンドによる方向調節がキモと思われるので、イヤホン使用がおすすめです。できれば骨伝導のものがあると安全でしょう。サウンドの音量は結構大きく、筆者が使っている骨伝導イヤホンでは音の振動がビシビシ感じられました。
なお設定の「位置情報モード」から「音声ガイダンス」を有効にすると、向かうべき法学を音声(左、右など)で教えてくれます。イヤホンが使えなかったりステレオサウンドが苦手ならこちらを使うこともできます。
今回は試せませんでしたが、タグがたくさんある場所では、ある程度コードの場所を絞ったら「ズーム」をオンにしてキャプチャ範囲を狭くした方が混乱しないかもしれません。

さて結論。高速化つリアルタイムにタグをスキャンすることで、NaviLensはナビゲーションシステムとしても十分に実用的と感じました。タグまでの方向を常に補正しながら歩けるので、全盲ビギナーの筆者でもまず迷うことはなさそう。物理的なガイドなしで真っ直ぐ歩けるって素晴らしい。
基本一直線の誘導になるため、複雑なルート案内には工夫が必要になりそうですが、通路から屋内施設の入り口やインフォメーションまでの数メートルの誘導には威力を発揮するでしょう。点字ブロックが繋がっていないショップの入り口や自動販売機などをNaviLensで見つけられれば、外出が一気に楽しくなりそうです。点字ブロックである程度大まかな移動はできますが、その周囲にどのような施設があるのか、わからな移ことが多いですからね。お店の人をキャッチできればもうこっちのもんです。
タグには色々な情報を登録できますから、多機能トイレの案内や空いている座席を見つけるなど、アイデア次第で視覚障害者へ様々な情報を提供できるでしょう。なんといってもビーコンやRFIDなどに比べ導入コストが圧倒的に低いのが魅力です。
スマホが必要という条件はありますが、視覚障害者の支援技術としてかなり筋の良いシステムではないかと感じました。


2020年8月9日日曜日

A11Y Topics #002。LEGO点字ブロック、Sight Tech Global、ゲーム関連など。

※乱文・誤変換ご容赦です。

LEGO、APHと提携し米国てBraille Bricksを無償提供開始。


American Printing House for the Blind(APH)はthe LEGO Foundationと提携し、点字アルファベットや数字などをあしらったブロック「LEGO Braille Bricks」を米国の支援教育機関などへ無償配布することを発表した。
これはブロックのスタット(ジョイント部分の凹凸)で点字を表現したLEGO互換ブロック。視覚に障害のある子供が点字に親しみ学習できるよう設計されている。発表時に本ブログにエントリーした記事はこちら
近年視覚障害者の情報取得の主流は音声が中心になりつつある。それに伴い点字の読み書きができる子供の数は減少し続けており、調査によるとその割合は10%にも満たないという。展示の習得は視覚障害者の就労においても有利に働くことがわかっており、広く親しまれているLEGOを用いることで、展示リテラシーの向上を目指す。
APHは製品を供給する他、製品の詳細と活用法をレクチャーするウェビナーも開催予定だ。LEGO Braille Bricksの詳細は公式Webで確認できる。このサイトでは、この製品を用いた様々なアクティビティ(遊び方)が掲載されており、少し読んだらちょっと遊んでみたくなった。でも日本語対応は未定なんだよね。

英国の支援団体、視覚障害者のソーシャル・ディスタンシングを支援するツールを考案。


Covid-19感染予防策の一つとして「ソーシャル・ディスタンシング」の徹底が繰り返し伝えられている。特に厳格なロックダウンが行われたヨーロッパ諸国などでは、ソーシャル・ディスタンシングはマナーではなく「ルール」としてとらえられており、他人との距離を確認しづらい視覚障害者にとって大きな問題となっている。
食料品店でヘルプを依頼しても断られてしまったり、うっかり他人に近づいてしまい怒鳴られてしまうといったトラブルも起こっているようだ。特に普段白杖を持たないロービジョンの人々は外見だけですぐに配慮の必要性を判断できないため問題は深刻だ。
そこで各国の支援団体は、周囲に視覚障害を持っていることを知らせるツールを考案し始めている。英国RNIBは視覚障害者のソーシャル・ディスタンシングへの配慮を象徴するマーク「Please give me space」を考案。現在Webで印刷用のデータを公開しており、当事者はこれを目立つ場所に身に着けて利用できる。RNIBは同時にCovid-19における視覚障害者の現状を伝える「World Upside Down」キャンペーンも実施している。
また同じく英国イングランド、ハンプシャーの視覚障害者支援団体Open Sightは、ソーシャル・ディスタンシングへの配慮をアピールする黄色のネックストラップを考案。受け取った当事者からの反応は概ねポジティブとのことだ。
もちろん生涯を周囲に知られたくないなどの理由でこれらのようなツールを積極的に使いたくない当事者も少なくない。あくまでも選択肢の一つとして用意しておき、基本的には社会全体に大して理解を広げ、他者に対する想像力を育てていく努力が求められるだろう。

新しい視覚障害者支援技術イベント「Sight Tech Global」発表。


3月のCSUN支援技術カンファレンスはかろうじて開催されたものの、それ以降に予定されていたイベントはCovid-19感染拡大の影響でことごとく中止もしくはオンライン開催に変更された。日本でも11月に開催予定だったサイトワールドの中止が決まっている。とても残念だ。
そんな状況の中、視覚障害者の支援技術に特化した新しいイベント「Sight Tech Global」の開催が発表された。このイベントは米国時間2020年12月2日から3日までの2日間完全オンラインで実施され、世界中から誰でもセッションへ参加できる。
テーマは「視覚障害者のためのAIとアクセシビリティの未来」。MicrosoftやIntelなどの大手企業からスタートアップまで、数多くのセッションが予定されており、「Nothing about us without us」の精神のもと原則的に全てのセッションに視覚障害当事者が登壇する点も特徴的だ。エントリー受付は公式Webで近日開始予定とのこと。

視覚障害者向けに開発されたiPhone/iPadアプリのリスト。


最近大幅なリニューアルが行われたApplevisに「iOS & iPadOS Apps Developed Specifically for Blind or Low Vision Users」なる記事がエントリーされていた。ここには視覚障害者向けに開発されているiPhone/iPadアプリが105本紹介されている。
ちなみにこのリストにはゲームや視覚障害者にも便利な一般向けアプリ(OCRアプリなど)は含まれていない。それでもこれだけの支援アプリがリリースされているのは心強い。基本英語のアプリだが一部は日本語でも利用できるものもある。

ゲームのアクセシビリティに関するトピックス。


その1. ホリデーシーズンに発売が予定されているPlaystation 5について、ソニーはPS5専用ソフトではDualshock 4などのPS4向け周辺機器は動作しないことを明らかにした。この発表を受け、生涯を持つゲーマーの間に懸念の声が上がっている
運動障害、特にての動きが制限されるゲーマーにとって、使い慣れたコントローラーや独自にカスタマイズしたデバイスが動作しないということはゲームのアクセシビリティに大きな影響を与えかねない。この反応に対するソニーからのアナウンスはまだ聞こえてこないが、Xboxはこのニュースが発表された直後、TwitterにPS5と同時期にリリース予定の次世代機「Series X」は周辺機器の後方互換性を持っていることをツイートしている

その2. PS4本体の音声読み上げについて、Twitterで興味深いやりとりがあった。スレッドは英国のPS4ユーザーが、音声読み上げオプションが設定に現れないという質問を、ソニー英国の公式アカウント@AskPS_UKに問い合わせたことから始まる。
サポートからの回答は要領を得ないもので、業を煮やした@ianhamilton氏の横レスにより、PS4本体の音声読み上げはリージョンが北米のPS4でなければ利用できないことが指摘された。さらに読み上げに対応しないメニューも数多くあるという返信も投稿されている。
「The Last of US Part II」で全盲ゲーマーに希望を与えたソニーだが、一方で本体側のアクセシビリティはまだ十分とは言えないようだ。せっかく向こう側に楽しそうな風景が広がっていても、そこへたどり着くための道が全く整備されていないのでは意味がない。北米以外の全盲ユーザーは「TLOU2」を購入しても、一人ではスムーズにゲームを始めることができない状態となっている。またTwitterのやりとりから推測すると、ユーザーサポートにアクセシビリティの情報が共有されていない可能性もある。
「TLOU2」は皮肉にもソニーのアクセシビリティに対するいびつさを浮き上がらせた。ほんきでゲームのインクルージョンを考えているのであれば、根本的な意識向上が求められるだろう。

その3. いくらゲームに豊富なアクセシビリティオプションが用意されていたとしても、そのオプションにアクセスできなければそれは存在しないことと同じだ。任天堂は「Paper Mario: The Origami King]で画面の明るさ、Joy-Conの振動、モーションコントロールのオン/オフという3つのオプションをゲーム中の特定条件でアンロックする「隠し要素」として実装していることがわかった
これらのオプションが実際にどれだけアクセシビリティを向上するものかはわからないが、このような仕様は開発者のアクセシビリティに対する姿勢が問われかねない。任天堂はこれまでも「Pokemon」などで同様の隠しオプションを実装した前例がある。

2020年8月7日金曜日

OrCamの新機能「Smart Reading」はOCRの利便性を大きく向上させる。


イスラエルのスタートアップOrCam Technologiesは2020年7月末、同社が販売中の視覚障害者向けウェアラブルデバイス「OrCam MyEye2」およびポータブル読書支援デバイス「OrCam Read」に、新機能「Smart Reading」を提供すると発表した。まずは米国からアップデートが配信され、数週間以内に日本を含む世界各国で利用できるようになる。

これは2020年1月に開催されたCES 2020で予告されていた機能。
MyEye2およびReadには、印刷されている文字をカメラで撮影し、OCR(光学式文字認識)を用いテキストを抽出、その内容を音声で読み上げることで視覚障害者やディスレクシアの人々の読書を支援する機能が搭載されている。Smart Readingは、音声認識と自然言語処理(natural language understanding)によりこれをさらに進化させたものだ。

目でテキストを読むことができない視覚障害者にとって、OCRはとても有用な技術だ。近年はカメラ性能の向上やコンピュータビジョンの進化により認識精度も高くなっており、読書を初め郵便物や商品パッケージの確認、パソコンやゲーム機に表示されているテキストの認識に至るまで、視覚障害者の情報取得を支えている。OrCamのデバイスだけでなく、スマートフォン向けにも多くのOCRアプリがリリースされている。
ただ従来のOCRでは、認識されたテキストを先頭から末尾まで順番に音声で読み上げる必要があり、知りたい情報をピンポイントでピックアップすることは難しかった。
例えばイベントの告知チラシがあったとしよう。目が見えていれば開催日時や場所が書かれている場所を即座に見つけることができる。だがOCRで抽出したテキストを音声で読み上げる場合、それらの情報が書かれた部分まで待たなければならず、とても効率が悪い。
Smart Readingは、この「知りたい情報」を即座にピックアップして読み上げてくれる機能だ。テキスト全体の構造をAIにより解析しタグ付けすることで、音声コマンドによる情報のコントロールを実現している。


Smart Readingのチュートリアル動画によると、使い方は以下の通り。
タッチバーをダブルタップし「interactive reading」と告げるとデバイスのカメラが原稿を撮影し、音声コマンド待機状態になる。引き続き読み上げたい情報を音声コマンドでリクエストすれば、デバイスがその情報を抽出し読み上げる。例えばこのようなコマンドが使えるようだ。

read the dates(日付を読んで)
read the phone numbers(電話番号を読んで)
read the headlines(見出しを読んで)

他にも請求書の金額や飲食メニューから特定のカテゴリだけをピックアップするなど様々な情報に対応。複数の情報がある場合はその項目数とともに各項目をナンバリングする。文章を解析しセンテンスやアーティクル単位で読み上げを制御したり、リピートや全文読み上げなども音声でコントロールできるようだ。音声での操作になるため、デジタル機器に不慣れなユーザーでも簡単に使いこなせるだろう。
どこまで細かいコマンドが使えるかは不明だが、使いこなすことができれば、かなり効率的に情報を取得できるようになるだろう。もしかしたら目で読む時よりも素早く必要な情報にたどり着けるようになるかもしれない。健常者以上のパフォーマンスが得られるとしたら、これはなかなか痛快な話だ。

AIをOCRに応用するというと、手書き文字の認識や書式の判別といった、より正確さを追求するアプローチに向きがちだ。だがさすがOrCam、視覚障害者のニーズを常に探求している同社だからこそ、Smart Readingのアイデアが生まれたのではないだろうか。
願わくばこんな機能が他のOCRアプリにも採用されて欲しいな。MyEye2はなかなか手が出ないから……。


2020年8月4日火曜日

視覚障害者をソフトタッチで誘導するスマートベスト「Foresight」。

Foresight(画像引用元

目が見えない人々にとって、自由に一人で外出するのは非常に難易度の高いミッションだ。どんなに訓練や経験を積み上げていたとしても、やっぱり迷う時は迷うし、イレギュラーな障害物に激突することもある。視覚からの情報が得られないという事実は安全かつスムーズな移動の大きな障壁となる。
そんな迷える視覚障害者のため、世界中で歩行を支援する様々なイノベーションが生み出されている。視覚障害者の歩行を支援する技術は、大きく分けると道案内を行うナビゲーションと、目の前の危険を通知する障害物検知にわけられるだろう。いずれもカメラやセンサー、GPSなどを用い、移動に必要な情報を視覚以外の手段で補足する技術だ。
ここで紹介する「Foresight」は後者に分類されるウェアラブルなデバイス。白杖と併用し、目の前にあるかつ杖では見つけにくい物体を検出することで衝突を回避したり、逆にオープンスペースを見つけて安全なルートを見つけるときなどに役立つ。

Foresightを開発したのは、米ハーバード大学の学生チームが設立した同名スタートアップ。上半身に着用するベスト型のデバイスとスマートフォンを組み合わせて使用する。特徴はコンピュータビジョン(cv)を応用したオブジェクト認識と、ソフトな触感を採用したフィードバックだ。

Foresightを着用した視覚障害者はスマートフォンを首から下げ、Bluetoothでベストと接続した状態で歩行する。
スマートフォンのカメラがユーザーの前方の様子を撮影し、CVを用いてオブジェクトの形状や動きを検出。オブジェクトの位置と距離を元に触覚を発生させるポイントと強度を計算し即座にベスト側に送信する。
なお解析に使用されるCVはオープンソースのYOLOのカスタムバージョンとのこと。

ベストの内側には複数のソフトアクチュエーターが仕込まれており、CVの解析データに従ってアクチュエーターを動作させる。そこで生み出された圧力によって障害物などの存在を着用者にリアルタイムで伝達するという仕組みだ。
ベストを着用した視覚障害者は、感じた圧力の場所と強さで前方にある壁や開けた道、通行人などを判別することができるという。

既存の障害物検知デバイスの多くは、周囲のオブジェクトの存在を「点」で通知するのに対しForesightは前方の様子を「面」で知らせてくれるため、 直感的に情報を得ることが可能になる。またバイブレーションや警告音と比べ、ソフトな圧力によるフィードバックは不快感も少なく利用者の負担を軽減する効果も期待できる。気になるのは暑さと見た目だろうか? 見た目はともかく、圧力を漏らさず感じるには体にある程度密着させる必要がありそうだ。

Foresightが採用している技術は、必ずしも最先端のものではなく、むしろローテクでシンプルな構成になっていると開発チームは語る。使用している部品は低コストで入手性も高く、故障してもパーツごとに交換が可能とのこと。技術専攻ではなくユーザーの尊厳と実用性のバランスを考慮し、目立たず直感的、かつ手ごろな価格で手に入るデバイスを目指しているという。
現在、Foresightチームはソフトウェアとハードウェアの改善に取り組んでいる。デバイスのリリース日と価格はまだ不明だが、開発者たちは2021年までに開発を完了したいと考えている。

そういえば、Foresightで思い出した。
アプローチはかなり異なるが、国内ではオーデコと呼ばれる、カメラからの映像を解析し「おでこ」で情報を伝達するデバイスが既に実用化されている。カメラで捉えた情報を複数のポイントで伝達するという点で共通する部分も多いように思える。
コンピュータビジョンやセンサー、レーダーの進化により、目の代わりとなるオブジェクト認識はかなり実用的になりつつある。あとはその情報を目の見えない人々にどのような手段で伝達するのがベストなのか。今後の研究開発に期待したいところだ。



2020年8月2日日曜日

A11Y Topics #001。Facebook、Chrome、Appleなど。


(できるだけ)定期的に、気になった支援技術関連トピックスを速報的にエントリーしていこうと思います。
あまり推敲してないので乱文・誤変換ご容赦です。

Facebook、アクセシビリティを考慮した新UIをリリース。


Facebookはthe Americans with Disabilities Act(障害を持つアメリカ人法)の署名30年となる2020年7月26日、新しいサイトデザインをリリースした。
この変更では細かいアクセシビリティの改善が施されており、スケーラブルなフォントの採用による視認性の向上とサイト構造を改善することで、スクリーンリーダーユーザーが見出しジャンプを用いてコンテンツを見つけやすくなったという。
久々にログインしてみたらこれらの変更に加え、ダークモードへの切り替え設定についてもアナウンスされていた。これはもう少し前から実装されてたのかな?
で、新しいインターフェイスを軽く試してみたのだけど、確かにニュースフィードの構造が分かりやすくなっている、ような気がする。Facebookは写真の自動代替テキストなどアクセシビリティへのいくつかの取り組みを発表しており、今後もキーボードナビゲーションの改善などを考えているようだ。
でもやっぱり個人的にはFacebook苦手だな。

Chrome、バージョン85でタグ付きPDFエクスポートに対応。


Googleは同社が開発するWebブラウザChromeの次期バージョン85で、エクスポートするPDFに見出しや代替テキストなどのタグを含める機能を追加することを発表した。安定版は8月下旬にリリース予定。
これで印刷機能を用いてPDFファイルを出力すると、元のWebページに含まれるタグがPDFファイルに反映されるようになる。この機能はバージョン84では実験的機能として「chrome://flags/」にある「Export Tagged PDF」から有効にできるが、これがデフォルトで有効になるという形だ。
これでPDFのアクセシビリティが少しは向上されると良いのだけど、現在国内で流通している非アクセシブルなPDFの多く派Wordで作成されていることを考えると影響は限定的かもしれない。それ以前にいまだWebもそんなにアクセシブルじゃないしね。スクリーンリーダーユーザーにとって、PDFはまだまだ鬼門であり続けるのだろうな。

舌で操作するコントローラー「[In]Brace」。


ドイツ、ケルン国際デザインスクールのDorothee Clasen氏によって開発中の「[In]Brace」は、舌を使ってさまざまな電子機器を制御できるマウスピース型コントローラ。マウスピースは耳に装着した無線送信機と接続され、磁気センサーでキャッチした舌の動きを伝達する。将来的には無線モジュールをマウスピースに内蔵させる計画だ。
手足の動きが不自由な人々のために、これまでは視線やブレス(呼吸)、まばたきなどを用いるスイッチコントローラが開発されてきた。だがこのようなデバイスは操作を習得するのに訓練が必要だったり、複雑な操作を実行するのが難しかったりした。舌で操作するこのデバイスは比較的簡単に使い始められ、ゲームなど複雑な操作にも対応できるという。
また開発者はこのデバイスが障害を持つ人々だけでなく、作業で両手が塞がっているケースにも役立つと考えている。例えばピアニストが楽譜をめくる操作をしたりスキーヤーがハンズフリーでスマホを操作するといった用途にも応用できそうだ。ハンズフリー操作といえば音声アシスタントが普及しているが、声を出せない場所ではこのようなデバイスは有効かもしれない。ちょっと舌が疲れそうだけどね。

インド発。Covid-19対策を施したスマートジャケット「Covest」。


ソーシャル・ディスタンシングが叫ばれる昨今、インドの研究者は、ウイルス感染を防止するためのサマザマナ仕掛けを施したスマートウェア「Covest」を開発した。
この衣服にはセンサーが搭載されており、2メートル以内に人物を検出するとアラームが鳴り周囲に警告する。混雑した場所でこの機能をオンにすると安全と開発者は語る。
さらにポケット内部には紫外線を照射するデバイスが組み込まれており、ポケットに入れたスマートフォンやマスクを素早く殺菌するという。紫外線はポケットを閉じてから30秒間だけ照射され、内部の生地は光線を通さないため人体に影響はないらしい。さらに衣服の襟部分にはビルトイン式のマスク、おまけに体温計も搭載されているという。なかなか盛り沢山なデバイスだ。
面白いのだがなんとなくアイデア商品的な雰囲気も感じないではない。視覚障害を持つ身としてはセンサーでソーシャルディスタンシングがキープできると便利かなとは思うけど、どれだけ実用的なのかな?

Apple Glassは高品質な立体音響を表現?など。


Appleが新しく取得した特許は、Apple Glassに高精度なバイノーラルオーディオ(立体音響)をもたらす可能性を示唆している。
今年中にも発表の噂もあるApple Glassの目玉はやはり拡張現実(AR)と考えられるが、立体音響はそのリアリティを強化する役目を果たすだろう。そして視覚障害者にとっても、このような技術はオーディオによるナビゲーションの可能性を大きく広げるかもしれない。BOSE ARが頓挫してしまっただけに、期待したいところ。まあ普通にリアルな立体音響が楽しめるだけでも面白そうだけどね。

秋リリース予定のiOS 14、Public Betaユーザーによる報告もどんどん聞こえてきている。現在確認されているアクセシビリティに関する変更点はこの記事にまとめられている。
また個人的に楽しみな「写真にコメントをつける」機能のレビュー記事。視覚障害者でも見える人に手伝ってもらって撮影した写真にコメントを加えておけば、後々単独で写真を整理する時も便利そうだ。iCloudでコメント同期できるのも良い。ちょっとした機能だが、視覚障害者には大きな改良点だろう。

ゲームのアクセシビリティに関するトピックス


「The Last of Us Part II」の影響からか、ゲームのアクセシビリティがにわかに脚光を浴びている。注目作品のアクセシビリティに関するニュースもかなり増えてきており、主な記事をクリッピングしておく。


ここでブラウザでプレイできるゲームをひとつ紹介。
このゲームはAccess Jam 2020のために製作された作品。あえてアクセシブルではないゲームを体験することで、ゲームにおけるアクセシビリティの重要性を強調する、というのがコンセプトのようだ。
アクセスできないゲームでイライラしたプレイヤーには、そのバリアを解消するためのヒントが提示され、よりアクセシブルになったバージョンでゲームをリプレイできる。目が見えない筆者にはこのゲームは全くプレイできなかったが、障害を持たないプレイヤーはどのような感想を持つのだろうか。

2020年前半のアクセシビリティトピックスまとめ記事


Microassistが、ADA 30周年を記念し2020年前半のアクセシビリティに関するニュースダイジェスト記事を公開している。とはいえ多くはCovid-19の影響によるトピックス。記事ではこの経験が世界をより包括的に変革することを希望しつつ締めくくっている。

手前味噌ながらADA法署名30年関連の記事クリッピングはこちら。https://bit.ly/3i24WRz
Covid-19と障害者に関する記事クリッピングはこちら。https://bit.ly/2DmteGI
どちらもDropboxからダウンロードしてお使いください。


支援技術関連記事まとめ(2022年11月)※お知らせあり。

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