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音声操作に絞った視覚障害者向けスマートフォン「In Your Pocket」。
英国RealSAM社が開発・販売する「In Your Pocket」は視覚障害者むけのスマートデバイスだ。SAMSUNG社のスマートフォンをベースに独自の音声アシスタントとアプリケーションを組み込み、英国の通信会社O2 Telefonicaのモバイル通信サービスをパッケージし販売している。
この端末は基本的に音声だけで操作するように設計されており、通話やメッセージ送受信、ニュース・電子書籍リーダー、RNIBと提携したオーディオライブラリへのアクセス、拡大鏡やBe My Eyesなどの支援アプリを音声だけで利用することができる。ベースはAndroid OSだが、ストアからアプリを追加することはできない。一方で家族や支援者が端末の更新やアドレス帳の一括登録などを行えるWebポータルが提供される。
視覚障害者がスマートフォンを使いこなすにはジェスチャやキーボード操作などある程度の訓練が必要だ。それが特に高齢者にとって大きなハードルとなっているのも事実。In Your Pocketはセットアップ不要、操作は音声のみという、できる限りシンプルで割り切った設計にすることで、このハードルを下げようとしているようだ。「視覚障害者専用らくらくスマートフォン」とも言えるIn Your Pocket、コンセプトとしては面白い製品と思う。
SAMSUNGのスマートテレビがRNIB認証を取得。
英国の視覚障害者支援組織Royal National Institute of Blind People(RNIB)は、依頼を受けた製品のアクセシビリティをチェックし、それらが視覚障害者にアクセシブルであることを認定する「RNIB Tried and Tested」プログラムを実施している。対象となるのは家電製品からアプリケーション、Webまで多岐にわたる。
このプログラムで認定された製品にはRNIB Approvedのマークの表示が許可され、視覚に障害を持つ消費者への情報提供となるだけでなく企業のインクルーシビティへの姿勢を示すことにもつながる。
SAMSUNGは2013年以来、RNIBと協力しスマートテレビのアクセシビリティ向上に取り組んできた。現在同社のスマートテレビには画面上のテキストやリモコンの情報を音声で読み上げる「Voice guide」やロービジョンむけのテキスト拡大、Galaxyスマートフォンと組み合わせたデジタル拡大鏡などの視覚アクセシビリティ機能が搭載されている。これらの機能が評価されSAMSUNGのスマートテレビ、2020年モデルが先日、RNIB Approvedを取得した。これにより英国の視覚障害者の選択肢が一つ増えたことになる。
家電製品が視覚障害者にとってアクセシブルかどうか、という情報は限られている。結局ほとんどの場合口コミを調べるか店頭で短時間触れてみて判断するしかない。だが使えそうと思って購入しても、すべての機能が使えるとは限らない。企業がアクセシブルな製品やサービス構築を意識し当事者に確実な選択肢を提供するためにはRNIB Approvedのような「お墨付き」的な仕組みが必要なのかもしれない。
オーストラリアNGV、ユニークな絵画の音声解説を提供、など。
オーストラリア、メルボルンにある美術館NGV(ビクトリア国立美術館、National Gallery of Victoria)はCovid-19感染拡大に伴い現在休館しており、オンラインによるイベントや展示を行っている。そのような状況で公開された特設ページ[Audio Descriptions: NGV Collection Highlights」では、視覚障害者のための興味深い試みが行われている。
このページでは葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」などNGV所蔵の6作品をピックアップし、音声による解説がオーディオ形式で聴けるほか、その作品からイメージされた楽曲も聴くことができる。音声解説の制作にはDescription Victoriaが協力している。単なる音声解説だけでなく、音楽からその作品のイメージを膨らませてみよう、というコンセプトのようだ。個人的には曲だけでなく効果音なども欲しかったかな。この辺り探求していくと面白いかもしれない。
Covid-19感染拡大によるロックダウンやソーシャル・ディスタンシングの励行は美術館や博物館にも大きな影響を与えており、財政的な危機に直面している施設も少なくない。一方で環境の変化をアクセシビリティの整備に転換する動きもみられる。
例えば米国オースティンにあるブラントン美術館では、閉館中スタッフの雇用を守るためWebに展示している所蔵品の代替テキストを整備する事業などに人員を組み換えた。またニューヨーク、クーパー・ヒューイット国立デザイン美術館はスタッフのテレワーク化に伴い所蔵作品データベースに代替テキストを書き加えるプロジェクトを立ち上げている。
正直視覚障害者にとって、まだまだ美術館はエキサイティングなスポットとは言い難い。オンラインでもリアルでも、少しでも楽しめる場所、行ってよかったと思える場所になって欲しいものだ。
ゲーム関連トピックス、3つ。
その1:「あつ森」に見る任天堂のアクセシビリティに対する姿勢。
視覚障害者の間でも「あつ森」は大人気。足音の変化でマップを探索し、音のデルアイテムを駆使して島をレイアウトしていく。画面に表示されるテキストはOCRソフトを使って読み上げる。一方で音声や振動からヒントが得られない要素も少なくなく、視覚障害者は「あつ森」のすべてを楽しめないのも事実だ。
任天堂はソニーやMicrosoftと比べアクセシビリティへの取り組みが(少なくとも表面的には)遅れていると言わざるを得ない。任天堂に対し多くのユーザーがアクセシビリティの向上を請願しているにもかかわらず反応は鈍い。
任天堂の作品は基本的にユーザーフレンドリーに設計されている。ゆえに工夫すれば障害を持っていてもプレイできる可能性はあるのだがそれにも限界はある。そもそもゲームをプレイする上でユーザーに工夫を強いるってどうなのだろう。任天堂がゲームのアクセシビリティに関しどのような考えを持っているのか、ほとんど見えてこないのは残念な話だ。
その2:PS5の触覚機能の一端が明らかに。
ソニーは2020年のホリデーシーズンに発売を予定しているPlaystation 5の新しい没入型機能について説明する新しいグローバル広告スポットを発表した。
その中でPS5の標準コントローラーDualSenseの振動機能について具体的に触れられている。この新しいコントローラーの振動フィードバックを使えば、例えば敵が迫ってくる方向を感じたり、武器の違いを手の中で体感することができるという。従来の振動と比較し圧倒的な解像度と表現力を持っているようだ。
これを応用すれば、画面上や音声の情報を振動で表現することで視覚・聴覚アクセシビリティを向上させることができるかもしれない。一方、この振動を用いなければゲームが進められない作品が登場すると、手が不自由なプレイヤーには不利となってしまう懸念もある。PS5の大きな特徴の一つとも言えるDualSenseだが、開発においてはアクセシビリティを念頭において欲しいものだ。
その3:「名探偵ピカチュウ」の続編はアクセシブルになる可能性?
「ポケモン」関連ゲームを開発する株式会社クリーチャーズのUI設計責任者であるDave Gibson氏は、現在進行しているSwitch版「名探偵ピカチュウ」の続編の開発に合わせ、ユーザーに向けUIの改善点に関するアンケートを実施した。これまで同社が開発してきた作品で足りないものは?
寄せられた800件以上の回答の中で最も多かったのは、ポケモンゲームにアクセシビリティオプションを追加して欲しい、というものだったという。任天堂の他作品と同様にこれまでのポケモンゲームには、グラフィック、サウンド、コントロールをユーザーの状態に合わせカスタマイズできるオプションはほとんど用意されてこなかった。Dave氏はこの結果を受けアクセシビリティオプションの実装に向け前向きに検討するとコメントしている。
おまけ:インクルージョンが進む娯楽の世界。
その1:タンデムなゴーカート。
「STORM DUO KART」は障害者も楽しめるADA準拠ゴーカート。2つの座席にはそれぞれにステアリングとアクセル、ブレーキが供えられており、介助者が同乗することで運転をサポートすることができる。これなら視覚障害者でも安全に運転を体験することができるだろう。
その2:ユニバーサルデザインのメリーゴーランド。
米国ボストン、ローズ・フィッツジェラルド・ケネディ・グリーンウェイに設置されている「 Greenway Carousel」はユニークな設計のメリーゴーランド。全36席のうち4席は車椅子でもアクセスでき、施設周囲の誘導路も全てバリアフリー化。また調節可能な照明と音響設備を備え、感覚に障害を持つ来場者にも対応できる。
その3:チェコ、ブルノ動物園で視覚障害者向け触覚マップを提供。
チェコ第二の都市、ブルノにあるブルノ動物園は国立マサリク大学の特別支援センターと共同で、視覚に障害を持つ来場者のための触覚マップを開発し無料で配布している。動物園や水族館では、イベント的に視覚障害者のためのツアーなどが開催されることがあるが、このような常設サービスはあればもっと気軽に訪問できそう。
その4:ディズニー、アダプティブなハロウィンコスチュームを販売開始。
ディズニー公式ストアShopDisney.comが、初めてアダプティブなハロウィン・コスチュームの販売を開始した。着脱がしやすい衣装やディズニー作品をモチーフにした車椅子カバーなどがラインナップされている。今までは自作するしかなかったため、これは人気を集めそう。
その5:視覚障害者のための多感覚おもちゃコレクション。
Legoのbraille bricksが話題になっているが、このページではそのほかの特に子供のための多感覚、つまり触ったり音を聞いて楽しむおもちゃが多数紹介されている。音が出るブロックやプレイマット、お店ごっこや動物のフィギュア、実物大の犬のぬいぐるみまで、言葉を学び、音楽をかなで、社会性を育む手助けをしてくれる。
その6:Kmartのインクルーシブな人形。
オーストラリアのKmartで販売されているインクルーシブな人形シリーズ。補聴器、車椅子、白杖、松葉杖を持った人形が登場している。海外ではMattelなど複数の大手メーカーから障害者をモチーフにした人形シリーズがリリースされている。車椅子はよく見かけるけど白杖モチーフはまだ少ない印象かな?