先日リリースされた、Nintendo Switch版ポケモン最新作「Pokemon Sword and Shield」。全世界から注目を集めている超人気作品だが、このゲームにまつわる、とある「オプション設定」の扱いに関して、ちょっとした、でもアクセシビリティ的には重要な騒動が巻き起こっている。
そのオプションは、ゲームの中に登場するNPCに話しかけ、「Hi-tech earbuds」というアイテムを入手することでアンロックされ、利用できるようになるという。問題は、そのオプションが「サウンドのバランス調整」であるということだ。
このオプションはBGMや効果音など、サウンド出力のバランスを細かく設定できるもの。本来なら聴覚に障害があったり、音に大して過敏なユーザーのために用意されるオプションだが、それがなぜ初めから利用できないのか?というわけだ。
例えばBGMと効果音が同時に再生されると音の判別が難しかったり、大きな効果音が刺激になるようなユーザーも少なく無い。難易度設定が増えるなどより高度なプレイヤーのための機能がロックされているなら理解できるが、このようなアクセシビリティに関わる設定がロックされているのは、どのような意図があるのだろうか。
場合によってはこのようなサウンドオプションを必要とするユーザーが、このオプションに気づかずに不快な思いをしながらプレイを余儀なくされる可能性もあるだろう。
この話題を目にして思い出した記事がある。2019年3月にGamerevolutionが掲載した、アトラスのリズムゲーム「Persona Dancing: Endless Night」のアクセシビリティ・オプションのロックに関するものだ。
この作品では、少ないボタン数でゲームをプレイできるオプションや、スクラッチ操作をオート化する機能が初期状態でロックされており、標準の設定である程度ゲームを進めなければこれらのオプションへアクセスできない仕様になっている。
このような「ゲームの操作を簡素化する」オプションは、手や指を自由に動かせないプレイヤーが、外部スイッチなどを用いてゲームを楽しめるように用意されるもので、一般プレイヤーの「ご褒美」的な扱いをされるべきではないように思う。一般のゲーマーにとってはゲームを簡単にする「おまけ機能」なのかもしれないが、一部の障害者にとってはプレイに必要不可欠な機能だからだ。
なぜ、このような問題が発生してしまうのだろうか?
もともとは障害を持つゲーマーのために用意されたオプションが、実は一般ゲーマーにも有益だった、ということはよくある。ボタン配置のカスタマイズなどは良い例だろう。
それがやがて「一部の一般ゲーマーのためのオプション」として認識されるるようになり、本来そのオプションが必要なユーザーの存在が忘れられた結果「ポケモン」や「ペルソナダンシング」のような問題を生んでいるのではないだろうか。障害を持つユーザーにとって切実なオプションが、健常者の一方的な価値観で「おまけ」扱いにされているように見える。
もし「障害を持つゲーマーもプレイする」ことが意識されていれば、違った結果になっていただろう。せっかくアクセシビリティを高めるオプションが用意されていても、必要なユーザーがそのオプションへアクセスできなければ何の意味もない。アクセシビリティに関わるオプションは、いつでも誰でも容易にアクセスできるように設計されなければならない。
ゲーム制作側は障害者はゲームをプレイしないと思い込んでいるのかもしれない。だがそれは違う。プレイできるゲームが無いからプレイしないだけなのだ。ニーズは確実に存在するし、この現状を掻い潜って果敢にプレイする障害当事者や、それを支援する人々も少なからず存在する。
ゲーム業界は、少しずつだが確実にインクルージョンを意識しつつある。先日もMicrosoftはXboxのゲーム開発者むけにアクセシビリティのガイドラインをリリースした。この動きが多くのメーカーに浸透し、これまでゲームから排除されていた多くの人々が楽しめるような作品が1本でも多くリリースされることを望みたい。
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