2021年6月26日土曜日

[粗訳] 障害に関する考え方の根底にある「3つのモデル」。

※このエントリーは「3 Models Underlying Assumptions About Disability | Psychology Today」をざっくり翻訳したものです。

障害に対する考え方として「医学的モデル」と「社会的モデル」が対比されて語られることは多いですが、この記事で指摘されている「道徳的モデル」という視点は見逃してはならないように思います。なにしろ歴史が圧倒的に長いわけですからね、そうそう消えることはないでしょう。ここのところネットで可視化されている障害者に対するネガティブな言説にも、その根底には少なからずこのような考え方があるような気がします。


障害とは、どこから生まれてくるものなのでしょうか?

また、障害にまつわる課題は、どこからきて、どのように解決すれば良いのでしょうか?

専門家は障害についての考え方を、道徳的、医学的、社会的という3つのモデルに分類しています。そして私たちの障害に対する考え方は、メディアの描写に反映され、それによってさらに強化されているのです。


道徳的モデル


このモデルには、障害者やその家族に障害に対する道徳的な責任があるという観念が含まれています。道徳的モデルでは、障害は罪に対する罰、内面的な悪の表現、呪い、あるいはカルマの結果であると考えられています。いまだに障害者が隠匿され、家庭内の秘密にされているという風習があるのはそのためです。

道徳的モデルは時代遅れの考え方のように思われるかもしれませんが、私たちの文化の中にはこのモデルの痕跡が今でもしっかりと残っているのです。


最近では、映画「The Witches」に登場する魔女が、両手に3本の指、両足に1本の指という、四肢に障害のある姿として描かれ、障害者団体から非難されました。魔女の手足は、外反母趾などの手足の不自由さをCGで表現しています。

Roald Dahlの原作では、魔女は「猫のような」爪を持っていると表現されており、1990年の映画では、5本指の手に長く尖った爪を持っている姿として描かれていました。

では、なぜ新しい姿になったのでしょうか?

Warner Brosはその声明の中で、新作を制作するにあたり魔女の外観を再構築するため、デザイナーを招き入れたと語っています。そしてGrand High Witchを演じるAnne Hathawayは、魔女の外見と障害との間に関係はなかったとコメントしました。

映画製作者がこの問題を意識していなかったのは本当かもしれません。 しかし、障害者コミュニティに対するわずかな調査と意見を取り入れれば、これが怠惰で有害な比喩の再生産であることが分かったはずです。David Garcia博士のような四肢に障害のある人々は、「#notawitch」というハッシュタグでこの問題に反応しています。


ハリウッドには、身体的な障害を悪役の象徴として採用してきた長い歴史があります。ワンダーウーマンのドクター・ポイズン、フレディ・クルーガー、ジョーカー、そして007に登場するほとんどの悪役の姿を思い出してみてください。ライオンキングの「スカー」とピーターパンの「フック船長」は、その身体的な違いからその名前がつけられました。

このような描写は、目に見える障害と「悪」との文化的な結びつきのイメージを固定します。障害のある活動家たちはメディアに対し、より現実的な表現をするよう提唱し続けています。


医学的モデル


医学的モデルは、西洋文化における障害に対する最も一般的な考え方です。この考え方は、障害を身体または精神の異常の直接の結果であると見なしており、それを治療することが唯一の目的とされています。医学的モデルは、痛みを伴う症状を治療するための貴重な技術革新を提供します。

しかし、このモデルでは、障害に関する問題を障害者の中に置き、障害を治療する責任は障害者とその家族、そして一部の医療専門家に限定しています。障害者をサポートする責任を一部の人に限定することは、障害が人間の共通の経験ではなく、例外的なものであるという考え方を固定します。

医学的モデルは一歩前進した考え方ではありますが、社会的な要因を考慮しない限り、障害に対する理解は深まりません。


社会的モデル


多くの障害活動家や学者は、ノーマリティを定義し構築する上で、社会の役割を重要視しています。社会的モデルは、障害の主な原因は社会にあり、問題は個人ではなく社会にあると定義しています。

人間の多様性に社会が対応できていないことが、障害体験の原因とみなしているのです。障害が発生するのは、全ての人々が文化的に定義された規範に沿って機能するという前提で社会が設計されているためです。


例えば、近視や遠視といった屈折異常はアメリカ人の半数以上が持っている障害ですが、私たちはそれを「障害」とはみなしません。

矯正レンズを使用することが障害とみなされない理由を学生に尋ねてみると、たいていは「メガネやコンタクトは簡単に作れるから」と答えます。しかし、レンズははじめから簡単に作レたわけではありません。社会がそのためのリソースを割くように変化したためです。実際、メガネは13世紀に開発された最初の支援技術とも言われています。矯正レンズは、一般的で、効果的で、安価であるため、現在では簡単な装備品のように見えます。

私たちの社会は平等を重んじています。一般的であるかそうでないかに関わらず、より多くの人々のバリエーションに対し行動することができますし、そうすべきです。


障害者はそうでない人々と比べ、社会モデル的な視点を持っている可能性が高いと言われています。その理由は、古典的な社会心理学の概念に基づいています。

「アクターオブザーバー効果」とは、状況の力が自分の行動を形成していることを認識できても、他人の同じ行動を観察した場合、環境の役割を認識できず、「その人はそういう人だからそういう行動をとっている」と思い込んでしまう現象を示しています。

例えば、会議に遅刻した人を責める場合、その人の属性(責任感がない、時間にルーズ)を原因として考えてしまいます。一方、あなたが遅刻した場合、状況的な要因(朝に子供が熱を出した、交通事故で足止めされた)を認識できる可能性が高くなります。


障害者についても同様です。

障害者は、社会的・環境的な障壁を容易に認識することができます(例:身体障害者の雇用を妨げる大きな要因は、アクセス可能な職場がないことである)。

しかし観察者である障害のない人は、問題がその人に固有の特徴に起因するものであると思い込んでしまうのです(例:障害者を怠惰もしくは無能者と見なす)。


インクルージョンに向けて


障害に関する私たちの基礎的な捉え方は、障害者に対する私たちの態度や行動の前提となります。

道徳的なモデルの考え方は、障害者に対する恐怖や嫌悪感を永続させ、障害者を社会から隠したり、分離したりする決定(例:保護されたワークショップ、分離された特別支援教育)の根底となっている可能性があります。

医学的モデルは、障害に対する唯一の解決策が「治療」であるという考えを強調します。しかしこの考え方では、障害者もそうでない者も「治療法がないものは失敗である」と捉えてしまいます。

社会的モデルでは、アクセシブルでインクルーシブな世界を実現するため、社会に変革の責任を負わせます。


障がい者は、人口の26%を占める米国最大のマイノリティグループであるにもかかわらず、テレビや映画などのメディア全体では、障害者の存在感が最も薄いと言われています。例えば、2019年から2020年のシーズンでは、テレビの登場人物のうち、障害のある者はわずか3%でした。また障害のあるキャラクターがいても、たいていは障害のない者が脚本や演出を担当するため、不正確でステレオタイプな描写にな離がちです。

しかし、有望な例外もあります。例えば、脳性麻痺のあるRyan O'Connellは、Netflixのドラマシリーズ「スペシャル 理想の人生」の脚本、制作、主演を務めました。メディアで障害者を複雑な人間として表現することは、インクルーシブな社会を形成する上で非常に重要なのです。


[雑記]「爪ヤスリ」を購入してみました。

見えていた頃はなんとなくこなせていた日々の営みも、視覚情報を失うとこまごまとしたところでストレスが発生するわけです。「爪切り」も、以前は漠然とこなしていたんですが、意外と目で見ながらやってたんですね。見えなくなって上手にできなくなりました。

ちゃんと指先で爪の伸びている場所を確認しながら切ってるんですよ。

でもかなりの確率で斜めに切ってしまい爪が凸凹になっちゃいます。これをリカバリーしようとして深爪……。この繰り返し。深爪すると以後数日はテンションが下がります。ひどい時には雑菌が入って腫れたりしてもう最悪です。


そんなモヤモヤした日々の中、小耳に挟んだのが「爪ヤスリ」を使うと良いらしいというお話。半信半疑ではありつつも、ものは試しと某家電量販店に突撃。

その種類の多さに圧倒されながらも購入したのが松本金型の「魔法のつめけずり]。

お値段は800円弱でした。


魔法のつめけずりの製品写真

画像引用元:ヨドバシ.com


さて、円筒形の本体に装着されているキャップを外すと、凹面にステンレスの刃がついているヤスリが出現します。ここに爪を当ててカリカリ削っていくわけですね。

使ってみて気が付いたのが「結構、削れる」。

爪切りの補助的に使えればいいかなくらいに思っていたんですが、これだけで全然大丈夫。ステンレス刃の切れ味も絶妙で、爪は削れるけど多少ゆびに当たってもケガをするほどではない感じ。つまり安全。

確かに爪切りに比べると多少時間はかかりますが、少しずつ削っていくので切りすぎを防げますし何より削った後の爪がびっくりするくらい滑らか。これがヤスリの力ってやつですか。

そして何気に爪切りのように音が出ないのも利点です。夜中の爪切りの音は結構響きますからね、同居人から文句を言われたことある人も少なくないでしょう。爪ヤスリならそんな心配もありません。


ただあまりに気持ちが良いのでついつい夢中になって削ってしまいますが、気をつけないと深爪します。爪切りのように一撃で深爪するようなことはありませんが、何事も程々ですね。見えないとどこまで削って良いのかなかなか判断することができませんが、慣れるまでは爪の長さを指で確認しながら削っていく感じになりそうです。

あと爪の両端がちょっと削りにくい気がしました。刃がうまく当たらずその周辺を深爪しがち。これは個々人の爪の状態にもよると思いますが、ここだけは爪切りを使った方が良いかもしれません。


この爪ヤスリの特徴が、削った爪が本体下部に溜まっていく仕組み。底部のスクリューキャップを外して簡単に捨てることができるので清潔に使えます。また水洗いもできるようです。ただ削った爪は細かい粉状になっているらしく手触りだけではちゃんと溜まっているのかよくわかりませんでした。なので今は念のためゴミ箱の上でカリカリしてます。


総じて、少し時間はかかるものの失敗の少なさ、安全さ、仕上がりの滑らかさ、静かさとなかなか魅力的な製品という印象です。視覚障害者はもちろん、小さなお子さんや介護でも便利に使えるのではないでしょうか。お値段もお手頃ですし、爪切りになんらかのストレスを感じているなら試してみる価値は十分にあるかと思います。


私の50年あまりの爪切り人生に新しい文化がもたらされました。

まだ慣れていないためかちょっと深爪しちゃいましたけど、しばらくは爪切りと併用しつつ使ってみようと思っています。


2021年6月15日火曜日

スペインで実証実験中。デジタルサイネージにnavilensを統合した「iPIS」。

スペインに拠点を置くIcon Multimediaは、同社が開発する旅客情報サイネージ製品Denevaにnavilensテクノロジーを統合し交通機関における視覚障害者のサポートを強化するシステムiPIS(Inclusive Passenger Information System)」を発表しました。

この新しいシステムは、デジタルサイネージのディスプレイ上に表示されたnavilensのddTagsをスマートフォンのカメラを使ってスキャンすることで、視覚に障害のある乗客にさまざまなサービスを提供します。


視覚障害者が一つのddTagsをスキャンすると、構内に設置されている全てのデジタルサイネージがアクティブ化され、それぞれのスクリーンに表示されているddTagsを用いて構内にある各施設へのナビゲーションや列車の運行情報、店舗などのサービス施設の情報などを音声で提供します。加えてよりスムーズなサポートを行う目的で、視覚障害者の訪問情報を駅員や列車の運転手に伝達することも可能とのこと。

iPISは現在すでに、スペイン国内にある複数の鉄道駅で実証実験を行っています。


このシステムは単純にddTagsをスキャンして情報を得るだけでなく、システム全体がユーザーからのアクションに呼応しサービスを提供する仕組みになっている、ように読めました。違ってるかも。もしそうならnavilensの新しい可能性を見た気がします。

また、navilensシステムを導入する場合、あちこちに貼られているddTagsが晴眼者にはどのように見えているのか個人的に気になっていました。要するに景観の問題ですね。デジタルサイネージに必要な時だけddTagsを表示するという仕組みは、そのような懸念に対する一つの解決法のようにも感じました。


参考:DENEVA adapts to facilitate the inclusion of people with visual disability » ICON Multimedia (iconmm.com)


2021年6月13日日曜日

[ゲーム] GAADに合わせ2つのアクセシビリティ・データベースが始動。

どのゲームにどのようなアクセシビリティオプションが含まれているのかといった情報は、障害のあるゲーマーが作品を購入する上での重要な判断材料です。

しかし現状、アクセシビリティに関する情報は一部の先鋭的なメーカーを除きほとんど流通しておらず、Can I Play That?などの専門レビューサイトやSNSなどで流れる口コミくらいしか手がかりがありません。

このような状況を打破するため、アクセシビリティに関する情報を集中的に管理し検索可能にするデータベースサイトを求める声が高まっています。そんな中、2021年5月20日のGlobal Accessibility Awareness Dayでは、これに合わせアクセシビリティ・データベースに関する2つのイニシアチブが発表されました。


VSC rating board expands Family Video Game Database accessibility game search | Internet Matters


英国のゲームレーティング組織VSC Rating Boardと、ゲームデータベースサイトFamily Video Game Database)FVGD)は、ゲームデータベースにおけるアクセシビリティ情報の充実を目指すパートナーシップを発表しました。

FVGDはゲームに関する詳細な情報を収集し提供するデータベースサイト。支援団体などの協力を得て現在1,200以上のタイトルに対し7,500を超える項目が登録されています。今回のパートナーシップにより、アクセシビリティ情報に関する作業が拡充され、まずは500タイトルに対しアクセシビリティ項目が整備されるとのことです。

ユーザーは検索ツールを使って、作品名からそのタイトルのアクセシビリティ情報を調べたり、コントロール方法やビジュアル、サウンド、難易度といった様々なアクセシビリティ要素を指定しニーズに合ったタイトルを見つけることができます。


New Accessibility Database Aids Discovery Of Suitable Video Games (forbes.com)


一方、ゲームアクセシビリティレビューサイト「DAGER System」は、ゲームのアクセシビリティ情報を収集し、障害のあるゲーマーが自分のニーズに合ったゲームを検索できるWebサイト「Accessible Games Database(AGD)」を2021年9月1日にオープンすると発表しました。

DAGER Systemの代表であるJosh Straub氏はFamily Video Game Databaseにも参加しており、その経験を踏まえ、FVGDとは別のアプローチからアクセシブルなゲームのデータベースを設計。現在プロトタイプのAGDにはDAGER Systemが9年間にわたり蓄積してきたデータと70以上のフィルタが含まれているとのことです。

AGDのリリースを読んだ範囲では、FVGDと比べ、より障害のあるゲーマーに特化した性質のものを目指して医るように思えます。どのように共存していくのかも含め、9月のオープンを待ちたいところです。


2021年6月10日木曜日

根の前の風景を指先で「見る」感覚置換デバイス「ASenSub」。

ASenSub

画像引用元:ScienceDirect


イスラエル、ワイツマン科学研究所の神経生物学部門に所属するAmos Arieli博士とEhud Ahissar教授は、インターンであるYael Zilbershtain-Kra博士とともに、視覚情報を触覚に変換し、装着者へ伝達するウェアラブル感覚置換デバイス「ASenSub」のプロトタイプを開発しました。


このデバイスはユーザーの手に取り付けられた小型カメラが捉えた映像を処理し、その情報をもとに、同じ手の三盆の指先に仕込まれた96本のピンを上げ下げします。ピンの高さは映像の明るさに対応して変化し、暗いほど高くなります。

例えばデバイスを装着し、白い紙に描かれた黒い三角形の上で指をなぞるように動かすと、ピンの隆起によりその形を指先に感じ取ることができます。研究者によると、このデバイスで感じられる感覚は、実際にエンボス加工された触図の上で指を動かした時の感覚に近いものであると語っています。

イメージとしては目の前にある風景が瞬間的に触図に変換され、そのまま指を動かしてその形を確かめられるという感じでしょうか。周囲の世界を指先で触れて探索するという感覚は、想像するだけで面白いですね。


ASenSubの目指すところは、Active-Sensingと呼ばれる人間の自然な知覚システムの再現です。例えば人が物を見る時は視線を絶えず細かく動かしみたい対象物を特定しますし、指でものに触れる場合は指先を動かしながら触れているものを確認します。つまり人間の知覚において能動的な運動と得られる感覚の結びつきが重要というわけです。

研究者はASenSubを開発するにあたり、単純に視覚情報を触覚に変換するだけではなく、Active-Sensingの考え方に基づき、「視線を動かしてものを見る」という動きを「指を動かしてものに触れる」という動きに置き換えるアルゴリズムを開発しました。指先や視線を動かし、見たいものを探すというプロセスを仮想的に再現することで、触覚に変換された視覚情報をより直感的に得られるようになるわけです。情報を変換するだけではなく、そこへ情報をえようとする人間の「動き」を加えた点がこの研究の興味深いところです。


なおこのデバイスはあくまでも人間の知覚に関する研究を目的として開発されたものであり、実用化には小型化など越えるべき技術的課題が多いようです。しかしこのActive-Sensingという考え方は他の支援技術、特に感覚置換デバイスを設計する上で、結構重要なヒントを与えてくれるような気がしました。


参考:Active sensory substitution allows fast learning via effective motor-sensory strategies - ScienceDirect

参考:Sight through Touch: Secret Is in Hand Movements | Mirage News



2021年6月7日月曜日

ドイツ発。視覚障害者に「色」の概念を伝える[触覚カラーコンパス」。

Farbkompass von TAKTILES

画像引用元:taktiles.de


「触図」はイラストやグラフなどを立体的に印刷し、それに触れることで視覚的なイメージ情報を視覚障害者へ伝えるものです。しかしこれらは基本的にイメージの「形」は表現できても「色」を伝えることはできません。


ドイツに拠点を置くTaktilesdesignが考案した「Taktile Farbkompass(触覚カラーコンパス)」は、様々な質感の素材を組み合わせることで、色を触感として表現したテンプレートです。

手のひらサイズの丸いディスクの両面には様々なテクスチャによって合計11種類の色が表現されており、点字でその色の説明などを記載したレリーフが添えられています。

表現されている色とテクスチャは以下の通り。


  1. イエロー 堅く織られたリネン生地から太陽の光を連想させる小さな突起が感じ取れます。
  2. オレンジ オレンジの皮の手触りに基づいた、滑らかな肌触りの触感。
  3. レッド シリコンの粒々は、熟したラズベリーに似た手触り。触れた時の抵抗感はベルベットに似ています。
  4. バイオレット レッドを反転させた、窪みが並んでいる表面。
  5. ブルー 空と海をイメージした、金属的で硬くて滑らかな触感。湖上の波を想起させる水平の線が引かれています。
  6. グリーン 風邪に揺れる牧草地の草をイメージした、柔らかい垂直方向の波線。
  7. ブラック 触れると強い抵抗感のある小さな尖った三角形で黒の重厚感と力強さを表現。
  8. ゴールド 価値と永続性を表す、ガラスのような手触りの小さな延べ棒が並んでいます。
  9. ブラウン 革をベースにした柔らかい触感で、大地や生命を表現しています。
  10. シルバー 斜めに粗いヘアライン加工された金属素材を用いて、ニュートラルでクールなイメージを表現しています。
  11. ホワイト 滑らかで硬い磁器のような素材に螺旋状の模様が多数あしらわれています。


テクスチャは単なる幾何学的なものではなく、それぞれの色から想起される自然や物質からイメージされる触感を持っている、つまり触感そのものに意味を持たせてあるところが特徴的です。

Taktilesdesignによると、これらのテクスチャは金属や木材などあらゆる素材に印刷することができ、公共スペースに設置する地図などに適用することで視覚障害者への情報提供に活用できるとのこと。特に教育においてはこのテクスチャを埋め込んだ絵画などの触図を制作することで、効率的に色の概念を理解できるようになるかもしれません。もちろん美術館などの触図に用いれば、視覚障害者の芸術鑑賞をもっと豊かなものにしてくれるでしょう。


色の情報を触覚として伝える方法としては、他にも以前記事に書いた「Scripor Alphabet」があります。これは10種類の色を点字に似た触覚コードに置き換え、これを組み合わせることで様々な色を表現するというものです。Scripor Alphabetが表現する色は「赤、黄、青、オレンジ、緑、紫、茶色、グレー、白、黒」の10色ですが、触覚カラーコンパスと比べてみると、色のチョイスに共通点があるあたり興味深いところです。

触図に関しては共通化も視野に入れた研究が進められつつありますが、触覚による色の表現についても、将来的にはある程度の国際的な規格が考えられても良いのかもしれません。


参考:Neue Verbindung zwischen Tastsinn und Farbwahrnehmung, Taktilesdesign GmbH, Pressemitteilung - lifePR



2021年6月3日木曜日

視覚障害者単独でのブラインドセイリングの実現を目指す「SARA Nav」など。

「ブラインドセイリング」は視覚障害者と晴眼者がチームを組み、力を合わせてヨットを操るという、なかなかに爽快感のあるパラスポーツです。

日本視覚障害者セーリング協会のWebによると、ブラインドセイリングにおいて視覚障害者(ブラインドセイラー)は、晴眼者(サイテッドセイラー)から提供される情報をもとに、舵(ヘルム)と帆(メインセール)の操作を担当するというスタイルが基本となっており、このルールに則って国際的なレースが開催されているとのことです。

また2019年には全盲のブラインドセイラーである岩本光弘氏がサイテッドセイラーとペアを組無寄港太平洋横断に成功したというニュースは記憶に新しいところです。


ブラインドセイリングの魅力の一つとして「視覚障害者と晴眼者とのチームワーク」が挙げられますが、その一方で、できる限り晴眼者のサポートをえることなく視覚障害者だけでセイリングを完結させることを目指す技術も研究されています。


2021年5月7日、フランス視覚障害者連合(UNADEV、Union Nationale des Aveugles et Déficients Visuels)とブレストに拠点を置く支援団体ORIONは、視覚障害者ノ自立したセイリングを支援するためのiPhone向けアプリ「SARA Nav」をリリースしました。

「SARA」はSail and Race Audioguideの略。このアプリはあらかじめ登録しておいた航行ルートに沿って、ブラインドセイラーをナビゲートする機能に加え、ヨットに搭載されているナビゲーションシステムとWi-Fi経由で通信し、風速や水深といったセイリングに必要な情報を音声形式で提供します。

SARAプロジェクトは、障害のあるスキッパーとして初めてヴァンデグローブを完走し、パラリンピックで三個のメダルを獲得したDamien SEGUIN氏がスポンサーとなっています。このアプリのリリースを通じ、ブラインドセイラーを支援するとともに、ブラインドセイリングの普及と啓発を目指すとのことです。


また米国Olin College of Engineeringが2016年に開発した「the Homerus Autonomous Sailing System」は、海上のコースに浮かべた目印やレースに参加しているヨットへ音響装置を設置し、位置情報と組み合わせることでナビゲーションするシステムです。こちらはかなり大掛かりな感じですね。


いずれのシステムでも視覚障害者だけで完全なセイリングが可能な段階には至っておらず、緊急時にサポートするサイテッドセイラーの同乗が必要となっているようです。

確かに素人目で考えてもヨットのナビゲーションは単なる方向指示だけでなく地形や他の船との位置関係、気象状況など必要な情報量が多く、一つ間違うと命に関わる事故にも繋がりかねません。視覚を使わずに完全なセイリングを実現するためには、それこそ自律走行車レベルの技術が必要となってくるのかもしれません。

それでもこれまで晴眼者に頼ってきた情報を一部だけでも自ら取得し、ヨットを操ることができるのであれば、それはより高い自律性へと繋がっていくような気がします。情報が得られることで、ブラインドセイリングにおける視覚障害者の役割にも変化が起こるかもしれませんね。


こんなエントリーを書いていたら、なんだか潮風に吹かれながら船に揺られてみたくなりました。まあ私が乗るのはせいぜい東京湾の水上バスくらいなんですけど。


参考:Navigation des personnes déficientes visuelles : SARA Nav est lancée ! (handirect.fr)


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