画像引用元:taktiles.de
「触図」はイラストやグラフなどを立体的に印刷し、それに触れることで視覚的なイメージ情報を視覚障害者へ伝えるものです。しかしこれらは基本的にイメージの「形」は表現できても「色」を伝えることはできません。
ドイツに拠点を置くTaktilesdesignが考案した「Taktile Farbkompass(触覚カラーコンパス)」は、様々な質感の素材を組み合わせることで、色を触感として表現したテンプレートです。
手のひらサイズの丸いディスクの両面には様々なテクスチャによって合計11種類の色が表現されており、点字でその色の説明などを記載したレリーフが添えられています。
表現されている色とテクスチャは以下の通り。
- イエロー 堅く織られたリネン生地から太陽の光を連想させる小さな突起が感じ取れます。
- オレンジ オレンジの皮の手触りに基づいた、滑らかな肌触りの触感。
- レッド シリコンの粒々は、熟したラズベリーに似た手触り。触れた時の抵抗感はベルベットに似ています。
- バイオレット レッドを反転させた、窪みが並んでいる表面。
- ブルー 空と海をイメージした、金属的で硬くて滑らかな触感。湖上の波を想起させる水平の線が引かれています。
- グリーン 風邪に揺れる牧草地の草をイメージした、柔らかい垂直方向の波線。
- ブラック 触れると強い抵抗感のある小さな尖った三角形で黒の重厚感と力強さを表現。
- ゴールド 価値と永続性を表す、ガラスのような手触りの小さな延べ棒が並んでいます。
- ブラウン 革をベースにした柔らかい触感で、大地や生命を表現しています。
- シルバー 斜めに粗いヘアライン加工された金属素材を用いて、ニュートラルでクールなイメージを表現しています。
- ホワイト 滑らかで硬い磁器のような素材に螺旋状の模様が多数あしらわれています。
テクスチャは単なる幾何学的なものではなく、それぞれの色から想起される自然や物質からイメージされる触感を持っている、つまり触感そのものに意味を持たせてあるところが特徴的です。
Taktilesdesignによると、これらのテクスチャは金属や木材などあらゆる素材に印刷することができ、公共スペースに設置する地図などに適用することで視覚障害者への情報提供に活用できるとのこと。特に教育においてはこのテクスチャを埋め込んだ絵画などの触図を制作することで、効率的に色の概念を理解できるようになるかもしれません。もちろん美術館などの触図に用いれば、視覚障害者の芸術鑑賞をもっと豊かなものにしてくれるでしょう。
色の情報を触覚として伝える方法としては、他にも以前記事に書いた「Scripor Alphabet」があります。これは10種類の色を点字に似た触覚コードに置き換え、これを組み合わせることで様々な色を表現するというものです。Scripor Alphabetが表現する色は「赤、黄、青、オレンジ、緑、紫、茶色、グレー、白、黒」の10色ですが、触覚カラーコンパスと比べてみると、色のチョイスに共通点があるあたり興味深いところです。
触図に関しては共通化も視野に入れた研究が進められつつありますが、触覚による色の表現についても、将来的にはある程度の国際的な規格が考えられても良いのかもしれません。
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