2022年2月28日月曜日

New York大学とWoven Planet、視覚障害者の移動支援に活用できる屋外画像認識データセットを公開。

downtown NYC street with no cars

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New York大学(NYU)Tandon工学部の研究チームと、トヨタの100%子会社であるデジタルマッピング企業Woven Planetは、イメージベースの高精度な屋外ナビゲーションを実現する新しい機械学習データセットを公開しました。無償で教育・研究などの用途に利用することができるとのことです。


Woven Planetは、NYUのVisualization, Imaging and Data Analytics(VIDA)と提携し、20万枚以上にもおよぶ屋外画像のデータセットを1年かけて構築しました。

このデータセットでは、前方を向いた画像に加え、歩道や店先の横から見た複数視点から撮影された画像も含まれており、従来の単一視点だけから構成されたデータと比べ多くの用途に応用できると研究チームは述べています。

さらに同じ場所の1年間の長期的な変化を捉えているため、雪や木々の生い茂りなど様々な条件においてVPR(Visual Place Recognition、画像による位置認識)の精度を向上させることができるとのことです。


このデータセットは自律走行車といった自動車のナビゲーション用途だけでなく、例えば視覚障害者の単独歩行を支援するナビゲーションシステムや、歩道を走行する自動配達ロボットの制御などへの応用が期待されています。

NYU Tandonの生物医学工学、機械・航空宇宙工学の教授、およびNYU Grossman医学部の副教授であり自らも視覚障害者であるJohn-Ross Rizzo博士が率いる研究チームは、すでにこのデータセットを用いて視覚障害者のナビゲーションを実現するウェアラブル技術の開発を進めているとのことです。


カメラで撮影した物体や風景を、AIによって識別するアプリはいくつかリリースされていますが、視覚障害者にとって実用的なものはあまりありません。このようなアプリの精度を向上させるためには、どうしても汎用性のあるデータではなく視覚障害者の用途に最適化された巨大な機械学習データセットが必要となってくるでしょう。

Woven Planetのデータセットにより、今後視覚障害者にも使える画像認識アプリの登場が期待できるかもしれません。視覚障害者向けのデータトレーニングのプロジェクトとしてはMicrosoftのAI for Accessibilityの支援を受けたORBITが知られていますが、他にももっとこのような動きが出てきて欲しいところです。


参考:NYU team releases open-source database from Woven Planet to help visually impaired pedestrians navigate cities | NYU Tandon School of Engineering


2022年2月25日金曜日

[ゲーム] アクセシビリティ関連記事クリッピング(2022/2/25)

※前回の記事はこちら


GDC最新版「State of the Game Industry」レポートによると、約39%のゲーム開発者が現在のゲームにアクセシビリティ機能を導入しており、導入していない開発者は36%、知らないと回答した開発者は25%という結果が出ています。

Are Game Developers Making Their Games Accessible to Everyone? (dice.com)


ReadSpeakerがUnrealおよび anUnity向けのTTSプラグインをリリースしました。ゲーム開発者はマルチプラットフォームでランタイム TTS ソリューションを活用し、音声読み上げ機能を組み込んだ、よりアクセシブルなゲームを開発することができるようになります。

ReadSpeaker Unveils First-Ever Text-To-Speech Multi-Platform Plugin for Unreal and Unity Game Engines | Business Wire


盲目のストリーマー、Rattlehead氏インタビュー。彼がどのようにして「Mortal Kombat」をプレイするのか、また視覚に障害のあるプレイヤーがどのようなアクセシビリティオプションをゲームに求めているのかなどについて、話しています。

Blind Mortal Kombat Pro Explains How He Plays Using Sound (thegamer.com)


「Can I Play That?」に関する最近の水面下のあれこれが報告されています。一時期は外部サイトとの業務提携や売却なども検討されていたようですが話がつかず断念したという話はやや衝撃的ではあります。今後は現状の活動を続けつつ、Patreonによる支援と、もしかしたら広告とアフィリエイトによる運営になるのかも、とのこと。

また新しい試みとして、ゲーム開発者に関する総合的なデータベースである「Games Codex]も発表されています(多分Patreon限定)。

What's Happening at Can I Play That?


Grant Stoner氏による、アクセシビリティと難易度にまつわる論争に関する考察。

Accessibility Isn't Easy: What 'Easy Mode' Debates Miss About Bringing Games to Everyone - IGN

イージーモードが必ずしもアクセシビリティを改善しないこと、そもそも難易度とは相対的なものであり重要なのは開発者が意図したゲーム体験をより多くのプレイヤーがアクセスできるためのゲームデザインときめ細かいオプションの存在であること、などアクセシビリティ的に評価の高い作品を例に挙げ指摘しています。

またこの記事に関連し、2021年秋開催のGAConfにおけるIan Hamilton氏によるセッションが注目を集めています。ゲームにおける難易度とアクセシビリティの関係、そもそも難易度とは? ゲームにおけるバリアとは?など語られています。難易度とアクセシビリティの問題はとっても難しいですけど熟考に値するテーマではないかと。

Difficulty Vs Accessibility - YouTube


ゲームとはあまり関係ありませんが、米国HBOで制作予定のドラマ「THE LAST OF US」のキャスティング募集がツイートされていました。8から14歳の黒人男性で、ASLまたはBASLに習熟したろう者を探しているとのことです。


「Horizon: Forbidden West」がリリースされました。各サイトからアクセシビリティに関するレビューがでています。CIPTのスコアは5.5/10。効果的に実装されていないオプションが多いようで前評判ほど高くはありませんが今後の改善に期待という感じでしょうか。

Horizon Forbidden West Accessibility Review ― Can I Play That?

Horizon Forbidden West Accessibility ― Menu Deep Dive (caniplaythat.com)

Horizon: Forbidden West: Still Forbidden to the Blind: A Review – BrandonCole.Net

Horizon Forbidden West’s Accessibility Features Are a Step in the Right Direction (gamerant.com)


「Sifu]アップデートによるアクセシビリティオプションと難易度設定の追加に関する続報が出ています。一部のファンからは難易度設定の追加に困惑している声も寄せられているようです。

Accessibility Features To Be Added In Sifu. (theouterhaven.net)

Sifu developer says accessibility features are coming - including difficulty modes | GamesRadar+

Sifu Trophy Data Proves Why Accessibility Options Are Important (gamerant.com)

Sifu Updates To Include Difficulty Setting, Accessibility Options - PSX Extreme

Sifu players outraged as developer reveals difficulty options are coming - Dexerto


「Assassin's Creed Valhalla]アップデート1.5.0で詳細な難易度オプションの追加がアナウンスされています。

Assassin's Creed Valhalla Update Adds Difficulty Options And Improves Stealth (thegamer.com)

Assassin's Creed Valhalla Saga Difficulty Mode Will Make the Game Easier (gamerant.com)


「Cyberpunk 2077」アップデート1.5がリリースされました。アクセシビリティ的には大きな変更は見られないようですがUIのグラフィックスで細かな改善が見られるとのこと。

Cyberpunk 2077 Patch 1.5 includes minor updates for accessibility (caniplaythat.com)


「Marvel's Guardians of the Galaxy」のサウンドデザインについて、アクセシビリティチームによる、詳細な開発経緯とオプションが持つ意味について解説された記事が公開されています。サウンドに関する記事は比較的珍しいので興味深いです。

Accessibility and Audio in Marvel's Guardians of the Galaxy (prosoundeffects.com)

Evolution of Marvel's Guardians of the Galaxy audio accessibility features detailed (caniplaythat.com)


「Vision Buddy」。ロービジョン向けテレビ視聴ゴーグル(拡大鏡とOCR機能付き)。

Vision Buddyの外観写真。

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昨年末くらいから、海外のニュースメディアでちらほら見かけたロービジョンデバイス「Vision Buddy」について、ちょっと気になったので調べてみました。

これは頭に装着するタイプのゴーグル型のデジタル拡大鏡です。

ゴーグルの内側には液晶ディスプレイが内蔵されており、前面にはメガピクセルのカメラが備え付けられています。直販価格は2,995ドル。

搭載されている機能は以下の3つ。


  • デジタル拡大鏡。ゴーグル前面のカメラで捉えた風景を、最大10倍まで拡大してみることができます。
  • OCR。ゴーグル前面のカメラで書類を撮影し、OCR(光学式文字認識)によりテキストを抽出、音声で読み上げます(英語のみ)。処理はオフラインで実行されます。
  • ビデオストリーミング。付属する専用のトランスミッターユニットにHDMI経由で映像を入力。テレビや映画をワイヤレスでストリーミングし、拡大して視聴することができます。


ワイヤレスで映像のストリーミングができること、ネットやスマートフォンとの接続など面倒なセットアップが不要で簡単に使い始められるというのがVision Buddyの特徴のようです。見え方にもよるとは思いますが、接近して視聴するよりも快適にテレビを楽しめるかもしれません。


ただいくらシンプルさが売りとはいえ、ロービジョン向けデバイスを謳う割には、(マニュアルを読む限り)映像補整機能が「ズームのみ」というのは、やや物足りない気が。

私がロービジョンだった頃を思い出してみると、眩しさが顕著だったためどんなにズームしようが画面に顔を貼り付けようが見えないものは見えませんでした。白黒反転とかコントラスト調整とかグレースケールあたりの映像補整ができないと厳しいというか、ユーザーを限定してしまうのでは?と感じます。

映像をストリーミングするゴーグルであればEPSONのMOVERIOなど、ずっと低価格で入手できるHMDデバイスがありますし。もちろんOCRとか操作の音声アナウンスとか特徴はあるのですが、さらに独自性という意味でも、もう少しロービジョンに特化した機能が欲しいところですし、対象ユーザーも広がるのではないかと思うのでした。

プラグ&プレイで使えるロービジョン向けストリーミンググラスというコンセプトはユニークで面白いだけにもったいないような気がします。しかも(おそらく)独自のホームファクタを設計しているようですし。アップデートで改良して欲しいですね。がんばって!~


参考:VisionBuddy | Vision Buddy - Television Watching for Visually Impaired


2022年2月22日火曜日

ドイツ。触覚カラーコンパスを活用した「色に触れる」美術観賞会。

Color Compass by TAKTILES

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ドイツに拠点を置くスタートアップTAKTILESは、キールの美術館Kunsthalle zu Kielで開催されている特別展「Amazons of Pop!」に合わせ、展示作品の中から選ばれた8作品の触覚レプリカを制作し、同社が開発した「Tactile Color Compass(過去記事)」を用いた多感覚による芸術観賞会を実施しました。


展覧会を訪問した視覚障害者には、触覚作品のレプリカが収められた首掛けバッグが渡され、目の見える訪問者と一緒にレプリカに触れ、コミュニケーションをとりながら作品を鑑賞することができます。

触覚レプリカは指先で判別しやすいよう、両手のひらにおさまるサイズに縮小され、最大5色を表現したテクスチャとして再構成されています。また作品の輪郭や描かれているモチーフを説明する音声アナウンスも備えています。


2月20日2は3DプリントされたTactile Color Compassを使い、レプリカのテクスチャから色を読みとる方法を学ぶワークショップが開催されました。

Tactile Color Compassは手のひらサイズの丸い円盤上に、滑らかな面、粗い面、柔らかい面、硬い面、温かい面、冷たい面、尖った面、丸い面、水平な面、垂直な面といった色から想起されたさまざまなテクスチャを配置し、その手触りの違いで11種類の色を表現します。

参加者は触覚レプリカとカラーコンパスのテクスチャを触り比べながら、手触りだけで絵画作品の鮮やかな色彩をイメージし、触覚による絵画鑑賞の体験をより深めることができたとのことです。


この多感覚展示は見える、見えないにかかわらず多くの訪問者から高い評価を得ており、2022年3月6日まで開催されます。4月にはオーストリア、グラーツを巡回する予定で、さらに2022年秋にはドイツ、フレンスブルクで伝統的絵画の多感覚展示が行われる予定とのことです。


参考:Zwei Handvoll Bild erfahren - Ausstellung mit taktilen Bildern eröffnet fühlbaren Zugang zu Kunst (klamm.de)


2022年2月21日月曜日

英国ITV、視聴前にドラマの登場人物の外見を「俳優の声」でチェックできる新しい音声説明サービスを開始。

Picture shows three men and one woman dressed in police uniforms. From left of the image to the right is Tom Stokes, Adrian Lester, Vicky McClure and Eric Shango.

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英国の民間放送局ITV(Independent Television)は、2022年から放送中の新しいドラマシリーズ「Trigger Point」において、従来からの音声ガイドに加え視覚障害者向けの新しい音声説明コンテンツを提供しています。


オンデマンドサービスITV HubおよびYouTubeで公開されている「Meet the Characters - Trigger Point character descriptions(日本からは視聴不可)」と題された短編動画では、主要なキャラクターを演じる5人の俳優が彼ら自身の声で人物の外見に関する説明を行い、同時にキャラクターの静止画とキャプションが提供されています。

ドラマ本編を音声ガイドで視聴する視覚障害者は、この動画を事前に見ることで音声説明の内容を補完・強化することができるというわけです。

加えて俳優自身がナレーションを担当することで、本編の声とキャラクターのメンタルイメージを結びつけやすくなるという効果も期待されます。もちろん本編の音声ガイドは専門のナレーターが担当。俳優と同じ声だとわけわかんなくなっちゃいますからね。これも動画ならではの特徴といえるでしょう。

またロービジョンや感覚過敏など、激しく動いているキャラクターを判別することが難しい視聴者にとっては、静止画で俳優の外見をじっくり確認できるというメリットもあります。


この説明動画は2020年から2021年にかけ、視覚に障害のあるITV視聴者の協力を得て考案されました。説明文は同シリーズのディスクライバーが執筆し、俳優や制作会社の許諾を得た上で制作・公開されています。

このような視覚障害者に向けた事前の情報提供としては、演劇などで舞台装置や衣装に触れながら説明を受けられる「タッチツアー」として実施されている例はありますが、英国においてテレビ放送公式の形で行われるのは今回が初めての取り組みとのことです。


音声ガイドは本編の音声の隙間を縫うようにして挿入されるため、時間的な制約上、加えられる情報量に限りがあります。どうしても映像の動きや情景描写が優先されてしまうため、キャラクターの外見説明にまで手が回らないケースも少なくありません。

本編映像と分けた形で情報を補足する今回の試みは、時間的制約という音声ガイドの弱点を解消する一つのアプローチと言えるでしょう。

近年ではテレビ放送も見逃し配信サービスなどを利用し好きな時間に楽しめるようになってきています。視聴する前にキャラクターや世界観などの呼び的な情報を頭にしっかりインプットすることができれば、音声ガイドによる作品の理解も深まり、より楽しめるものになるのかもしれません。ITVではすでに後続のプロジェクトも進められているようで、視聴者の反応と今後の展開に注目したいところです。


音声ガイドの進化については立体音響など技術的な研究(過去記事)も進められています。これはこれで期待なのですが、ITVの取り組みのように従来の仕組みに一工夫加えることでアクセシビリティを向上させることも可能だし実現性も高いように思うのでした。特に連続ドラマやアニメなどある程度キャラクターのイメージが固定されている作品では結構効果があるような気もしますが、どうでしょう。


参考:Character descriptions on ITV’s Trigger Point – VocalEyes


支援技術関連記事まとめ(2022年10月)

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