2020年8月16日日曜日

A11Y Topics #003。ソーシャル・ディスタンシング、Google Lookout、DIYな支援技術など。

※乱文・誤変換ご容赦です。

視覚障害者のソーシャル・ディスタンシングを技術で解決する試み、2つ。



ドイツに本拠地を置くディスカウントストアAldi(アルディ)は、英国RNIBと提携し、英国内の店舗で計画されている入店管理システムに視覚障害者向けの音響装置を導入することを発表した。
これは店内の混雑による密集を避けるため、顧客の入店数と出店数を自動的に管理し店内に滞在する顧客数をスタッフの負担なく一定に保つシステム。今回発表された音響装置により、入店可能を示すシグナルが見えない、見えにくい顧客でも入店するタイミングを簡単に判別できるようになるという。
Covid-19感染拡大を防止する取り組みは随所で進められてはいるものの、それらの多くは視覚障害者にとっては意味をなさないものだった。例えば除菌設備を設置したとしても視覚障害者がその場所を見つけることは難しいし、距離を保ってレジに整列するためのマーカーは目が見えないと確認することはできない。Aldiの取り組みは、このような状況を改善する一つのきっかけとなるかもしれない。新しい生活様式も結構だが、そこから排除される人々が存在する可能性に想像力を働かせる方向に進んで欲しいものだ。


こちらは高度なコンピュータビジョンを手軽に利用できるOpenCV AI Kitを用い、視覚障害者のソーシャルディスタンシングを実現しようとするシステムを試作している。このシステムはIntelが主催するOpenCV Spatial AI Competitionに出展されフェーズ1を通過している。
OAK-Dを用いたこのシステムは、周囲の人々の顔を検出し、その人物がマスクを着用しているかどうか、加えて人物との距離を振動フィードバックを用いて伝達する。5つの振動モーターの位置で人物のいる方向を、振動の強さで距離を、振動パターンの変化でマスク着用の有無を表現する仕組みという。このようなシステムが実用的に働けば、ある程度自らの意思で行動できるケースもあるかもしれない。まあ感染予防だけでなく周囲の人々の様子がわかるのは普通に便利ではあると思う。
OAK-Dはステレオカメラを備え周囲の物体をリアルタイムに認識できる安価なキット。障害物検知やナビゲーションなど、アイデア次第で視覚障害者への支援技術開発に活用できそうだ。今後はこのキットを利用した様々なプロジェクトが出現しそうな予感。


Google、Lookoutをアップデート。食品パッケージの識別などに対応。



Googleは2019年3月にリリースした視覚障害者向け画像認識アプリ「Lookout」を大幅にアップデートした。これまでは同社のAndroid端末「Pixel」シリーズでしか利用できなかったが、今回のアップデートによりAndroid OS 6.0、RAM 2GB以上を搭載した全ての端末で利用できるようになった。
全体的なパフォーマンスの向上に加え、新たに食品のパッケージを識別する機能などが加わり、視覚障害者の日常的なタスクを強力に支援してくれそうだ。こうなるとやはり日本語への対応が待たれるところ。なお筆者所有のAndroid端末は5.0なので試すことは出来なかったのだった。でも触れないのもアレなので。

3Dプリンターと超音波センサーでインタラクティブな触覚地図を作成。



ロシア・モスクワ在住のSergei V. Bogdanov氏は、視覚に障害を持つ学生のために3Dプリンターを用いて触覚地図を作成した。彼が盲学校の寄宿舎を訪問した際、アクセシブルでない印刷された地図教材を見たことが開発のきっかけだったという。、
彼はさらにこの触地図にインタラクティブな仕掛け、つまり音声によるフィードバックを加えることにした。彼が用いたのは超音波距離計測センサーHC-SR04。記事だけでは細かい仕組みはわからないが、生徒がこの地図に一定距離近づくことで、音声による案内が再生される仕組みのようだ。物理ボタンや非接触タグ、コンピュータビジョンを用いた仕組みは知っていたが、超音波を使うのは個人的に目新しかった。
このセンサー、比較的安価だしArduinoなどと組み合わせ色々な音声案内システムを自作するのに使えそうと思ったのでメモ。3Dプリンターが支援技術のDIY化を加速させている一つの例だろう。

インド。視覚障害者向けゲーム機「Vision Beyond」。



インド在住のYashovardhan Kothari、Dev Kapashi、Dhruv Jhaveriという3人の17歳によって設計された「Vision Beyond]は、視覚障害者のためのゲーム機。完成までに2年を費やしたというこのゲーム機はRaspberry PiとPython、3Dプリンターによって構築され、およそ25センチ程度のコンパクトなデザインに仕上がっている。
プレイできるゲームは音声で楽しめるクイズゲーム。音声で出題された問題の選択肢に対応した4つのボタンをプッシュして得点を競うという内容となっている。点字が読めなくてもひとりでプレイできるほか、マルチプレイヤーモードも用意されているので、視覚障害者と見える友人が一緒に楽しむこともできる。
視覚障害者が楽しめるゲームといえばパソコンやスマートフォン向けに多くのオーディオゲームがリリースされているが、インドの視覚障害者にとってこれらの機材はまだ高価であり、目の不自由な子供がゲームを楽しむ手段は限られている。Vision Beyondは寄付を募っており、このゲーム機をより多くの子供達に届けたいと考えているという。

超音波画像を元に視覚障害者が胎児の顔を触れて感じられる3Dモデルを印刷。



産婦人科では超音波( エコー)を用いてお腹の中の赤ちゃんの様子を定期的に検査する。超音波によるスキャン結果は画像として出力され、このデータをUSBメモリで渡してくれるサービスもあるらしい。それだけこの画像が大きな意味を持っているということなのだろう。だが視覚に障害を持つ人々に対してこの画像を確認する手段は、これまでほとんど提供されてこなかった。
米国ボルチモアのジョンズホプキンス病院の医師は、超音波による3Dスキャンデータを元に、胎児の顔を3Dプリンターで出力し、目が見えない親がその3Dモデルに触れることでその姿を確かめるアイデアを思いついた。これは出生前に胎児の背骨を3D超音波スキャンと立体モデルで診断し手術のリスクを軽減させる手法を応用したものとのこと。
現時点では安定して胎児の体全体をスキャンすることは難しく、制作できる3Dモデルは顔部分のみという。だがこれまで生まれる前の赤ちゃんの姿を知る術を持たなかった人々にとって、これは大きな恩恵をもたらす技術となるはずだ。3Dプリンターを用いた情報伝達の良い例の一つといえるだろう。
同様の取り組みは、ブラジルのマタニティ企業Huggies Brasilのキャンペーンやスペイン、マニセス病院のプロジェクト「Mi Bebe 3D」など、世界各地で行われている。超音波スキャンや3Dプリントの技術向上により、このような取り組みがより広がるかもしれない。

ゲーム関連トピックスいろいろ。


米国AbleGamers Charityは、障害や人種、性別などを理由に疎外されているゲーム開発者に対し、Accessible Player Experience (APX) Practitionerコースを無償提供するプログラムDPADイニシアチブを開始すると発表した。これは同団体のD&Iポリシーに基づく取り組みの一つ。
また俳優ライアン・レイノルズがAblegamersの代表Steven Spohnと共にメッセージを発表し障害を持つゲーマーへの支援を呼びかけている。

「The Last of Us Part 2」アップデート内容が発表され、アクセシビリティにも多くの機能追加が施されていることがわかった。難易度に関する新機能やオーディオに関するオプションなど、さらに磨きがかかっている。

UBIsoftが現在開発中の「Watch Dogs: Legion]のアクセシビリティオプションについて解説されている。TLOU2にも匹敵する充実した内容を期待したい。

Switchでも発売予定のビジュアルノベルゲーム「Be Happy」が発表された。詳細は不明だが視覚や聴覚アクセシビリティオプションの搭載が予告されている。このところ新作ゲームのリリースでアクセシビリティへの言及が目立つようになってきたような。

オーディオゲームを開発するPurple Jamが新しい作品「Sounds Of Eden]をリリースした。ちょっとプレイした感じではゲームというより3Dオーディオ空間を歩き回る、みたいな内容となっている。プレイヤーの想像力が試されそうだ。
デモムービーはこちら。パソコン版の購入はこちら

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