※このエントリーは「The Curb Cut Effect: How Making Public Spaces Accessible to People With Disabilities Helps Everyone」を、ざっくり翻訳した者です。
カーブカット効果:公共の空間を障害者にとってアクセシブルにすることは、すべての人々に恩恵をもたらす。
「カーブカット」とは、歩道と車道の間を滑らかに通過できるように、高い縁石をくさび状に切断した設備である。
もともとは、公共の道路を車椅子ユーザーが利用できるようにするために考案された。米国最初のカーブカットは、1945年、第二次世界大戦で障害を持った退役軍人のため、ミシガン州に設置された。
現在では、身体障害の有無にかかわらず、誰もが恩恵を受けている。ベビーカーを押したり、重い荷物を運んだり、関節に痛みを感じたり、松葉杖や杖をついて歩いたり、酔っぱらってふらついたりしたことがあるなら、カーブカットが役に立つ。膝の腱炎に悩まされていたとき、階段のようにでこぼこした地面を歩くのが苦痛だったが、カーブカットにより歩きやすくなった。
カーブカットの歴史は、2つの重要な原則を教えてくれる。
1.障害者のために設計された技術は、すべての人を助けることができる。
これは「カーブカット効果」と呼ばれ、障害者を支援する人々によってしばしば語られる。障害を持つ人々を助けるものは誰にでも役立つという考えは、建物や製品が、年齢や能力に関係なく、誰にとっても可能な限り使いやすいように設計されている「ユニバーサルデザイン」の分野に影響を与えた。
2.支援技術が十分に普遍的で広く使われるようになると,もはや支援技術とは考えられなくなり「標準」となる。
カーブカットはどこにでもあるので、もはや「支援技術」というレッテルを貼られることはなくなる。私たちはその起源を障害者のための設備であったことを忘れてしまう。
カーブカットはこれらの原則の最も分かりやすい例だが、適用されるジャンルは多岐に渡っている。、障害者のために設計された製品は障害のある人にとって作業を容易にする可能性があるだけでなく、省力化された製品は一般の人々のタスクを簡単にする。さらに,これらの原理は,身体運動を助ける支援技術だけでなく,感覚処理と認知を助ける支援技術にも当てはまる。
例えば、クローズドキャプションやトランスクリプトは、聴覚障害者がセリフや効果音が聞こえなくても映画を理解できるようにするための技術だ。これらは聴覚に障害のある人だけでなく、おしゃべりしながらテレビを見るのが好きな人や騒がしいバーで人の声を聞く時に役立つことは、簡単に想像できる。しかし、こうした課題を抱えていない人の中には、クローズドキャプションを煩わしく感じオフにする人もいる。
結局のところ、彼らは見逃している。
いかに人々が声高な反キャプションであるかを考えると、障害のない大学生は、クローズドキャプションやトランスクリプトが学習に役立つかどうかにかかわらず、それらを「嫌っている」と予想される。しかし全国的な大規模な調査によると、実際にはほとんどすべての学生が、自分の学習にキャプションが役に立つと考えていることがわかった。
オレゴン州立大学と3Play Mediaは、全米の公立大学と私立大学15校の2,124人の学生を対象に調査を実施した(詳細な調査結果は元記事のリンクを参照)。これらには学部生と大学院生の両方が含まれ、ほとんどが公立の4年制学校に通っていた。
ほとんどの学生(98.6%)が、キャプションは役に立ったと述べている。
ほぼ4分の3の生徒(71%)が、対面式やオンラインの教室でキャプションを使用していると報告し、85%がビデオのトランスクリプトを使用したと述べた。
興味深いことに、キャプションを使う最も一般的な理由は、音声やビデオの質の悪さ(22%)、インストラクターのアクセントの問題(8%)、便利さ(5%)、障害者対応(6%)ではなく、「学習補助」(76%)だった。
具体的には、キャプションによって理解力が向上した(51.9%)、キャプションによって正確性が向上した(33.4%)、エンゲージメントが促進された(20.2%)、授業内容の保持力が向上した(15%)と回答している。
キャプションを使うことを選択した理由は、集中力を高めるため(66.6%)、情報の保持力を高めるため(63%)、難しい語彙を使うため(27%)、)聴覚障害のため(18.8%と回答しており、障害を理由とした利用は少数派だった。
障害の有無にかかわらず,学生は集中力,記憶力,および難しい語彙の理解力を向上させるためにキャプションを使用した。障害の理由より教育的理由の方がはるかに多かった。
驚くことではないが、ESL(第二言語としての英語)を学習する学生の66%がキャプションを「非常に」「極めて」参考にしている。
学生たちはキャプションとは異なる理由でトランスクリプトを使用したが、それでも障害支援よりも教育に役立てている。ほぼ半数(46.3%)が、情報を見つけるため、または情報を保持するため(46.3%)、学習ガイド(47.3%)、3分の1以上が集中力を維持するため、ほぼ5人に1人が難しい語彙を扱うために、これらを使用した。学生は聴覚障害のためにトランスクリプトを使用する傾向がはるかに低かった(12.3%)。
学習ツールとして支援技術を使用したこれらの学生のほとんどは,障害を持っていなかった。これらの学生のうち、障害者サービスの事務所に登録したのはわずか13%であり、学術支援施設を必要としたのは12%未満だった。学生のうち、聴覚(19%)視覚(37%)に問題を報告したが、それでも調査対象の少数派だった。
これらの結果にもかかわらず、学生は必ずしもこれらの支援技術への頻繁で簡単なアクセスを持っていなかった。4分の1以上の参加者がクローズドキャプションが利用可能かどうか、ほぼ20%がビデオトランスクリプトが利用可能かどうかわからなかった。ビデオにキャプションがあるかどうかを見分ける方法がわからない学生も15%いた。連邦政府からの資金援助を受けている大学では、使用されているすべてのビデオをアクセシブルにすることが法的に義務付けられているため、これらの調査結果は課題を示している。
この研究は、ビデオのクローズドキャプションやトランスクリプトが、障害を持つ人も持たない人も支援するという点で「カーブカット」のようであるという小さな証拠を提供している。
(より説得力のある証拠もある。クローズドキャプションやトランスクリプトを使用した学生と使用しなかった学生の成績を検証した。テストの成績が一番簡単だが、たとえば、問題を使って読解力をテストしたり、トピックの短い説明文を採点したところ、これらのテクノロジーを使用した学生の方が成績が良かった。
しかし、この研究はこれらの支援技術とカーブカットの間の重要な違いも示している
それらは支援技術として見なされ、広く利用可能にされるよりむしろ障害を持つ学生にだけ提供される。テクノロジーが「障害を持つ人々のためのもの」と見なされると、ほとんどの者が障害に関わりたくない、またはテクノロジーを使用することで障害者のように見られたくない、というスティグマを生み出す。(視覚障害を持つ作家であるWill Butlerは、支援技術のように見えたことがGoogleグラスの消滅に貢献しているかもしれないと説得力を持って主張している)。
研究者たちは、キャプションとカーブカットの違いを認識しており、それを変えたいと考えている。
「多くの人がクローズドキャプションやトランスクリプトを障害者が使うものとしか考えておらず、それが広く利用されていないことを意味しています」と、本研究の著者でオレゴン州立大学Ecampus Research UnitのディレクターであるKatie Linder氏は述べた。「この研究での1つの望みは、さまざまな学生がこれらのツールをどのように使用しているかを大学管理者に示し、ツールを日常的に使用することで、より多くの学生を支援することでした。」
では、カーブカットのようなクローズドキャプションやトランスクリプトを作るにはどうすればよいのだろうか。
私たちはこれらの技術のハードルを下げ、それらが「障害者のためだけに」ではなく、すべての人のためのものであることを伝え、それらをどこでも簡単に利用できるようにする必要がある。街中にある「カーブカット」がそうであるように。
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