スマートフォンの普及により、視覚障害者の間でもSNSの利用は特別なことではなくなりました。日常的な風景やスクリーンショットを撮影し共有することも当たり前のように行われています。
しかし視覚障害者、とりわけロービジョンの人々には、撮影した写真の細かい部分を確認することが難しいという問題があります。そのため自分では確認したつもりでも、気付かずに他人には見られたくない物や個人情報が写り込んでしまい、そのまま共有してしまった……なんて経験、視覚障害者には結構あるあるであるような気がします。
カフェのテーブルを撮影したらおいてある名刺が隅っこに写り込んでしまったり、スクリーンショットをキャプチャしたらバックグラウンドで開いていたメールのウィンドウが見切れていたり。とある研究で行われた調査では撮影された写真の65枚に1枚以上の割合で、処方薬や自宅住所、タトゥーなどのプライベートな情報が意図せずに含まれていたとのこと。視覚障害者にとって、画像からの偶発的なプライバシー漏洩は常にそこにあるリスクと言えるでしょう。
当人が気付かないまま個人情報が発信されているこの状況は大きなトラブルの元となるのはもちろん、見せられる側としても戸惑うはず。そして何より恥ずかしい。しかし現状、視覚障害者がこれを独力で防ぐ手段は、ほぼ存在しません。
イリノイ大学情報科学部(The iSchool at Illinois)とパートナー機関の共同研究チームは、視覚障害者が撮影した写真やビデオを解析し、プライバシーに関する部分を特定する新しい画像認識AIアルゴリズムを開発しています。
New project helps people who are blind safeguard private visual content (illinois.edu)
撮影した写真やビデオを共有したい視覚障害者はこのアルゴリズムを導入したアプリを通じ、プライベートなコンテンツが写り込んでいないかをスクリーニングすることができます。もし何かしらセンシティブなコンテンツが発見された場合、その内容を通知し、ユーザーは写真を共有する前に、必要に応じその部分を隠すことができるとのことです。
現時点ではまだアプリもリリースされておらず日本で使えるのかすらも全く不明ではありますが、視覚障害者による情報発信が盛んになる中で、プライバシー保護という問題をAIによって解決するという発想は一つの気づきを与えてくれるものです。
といいますかこれ、視覚障害者にとどまらず、あらゆる人々にとって「うっかり情報漏洩」を防ぐ万人に有益な技術であるように思えます。むしろOS標準のセキュリティ機能として実装していただきたいレベルではないかと。
それにしてもSNSの写真に限らず、視覚障害者が自身のプライバシーをいかにして保護するのかは常に悩みのタネです。ヘルパーや家族にすら見せたくないものも少なからずありますからね(私にはありませんけど)。
この辺り、AIの力に頼らざるを得ない分野なのかもしれません。そうなると何を隠して何を隠さないのかをどのように判断するのかなど、考えることは多そうです。
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