画像引用元:NaviBlind
Google MapsやApple Mapなどの地図アプリには歩行者むけナビゲーション機能が備えられており、画面が見えない視覚障害者でも音声読み上げを活用して目的地までのルートを確認し、ターンバイターンによるナビゲーションが利用できます。
しかし視覚障害者にとってスマートフォンによるナビゲーションには2つの大きな問題があります。
一つはアプリから指示されるルートが必ずしも視覚障害者には安全とは限らないということ。アプリは基本的に最短距離でルートを計算するため、狭い歩道や段差、障害物といった危険要素はほとんど考慮されません。もう一つはその精度。スマートフォンのGPS測位機能には10メートル程度の誤差があるため、曲がり角や目的地の近くまではたどり着けるものの、そこから正確なポイントを特定することはかなり困難です。
このようにスマートフォンで視覚障害者が自由に移動するためにはまだ技術的な課題が残されています。それを解決している(かもしれない)サービスが北欧デンマークで実用化されているようです。
NaviBlindは、従来のアプリによるナビゲーションの欠点を払拭し高精度かつ最適なルートを実現した、ユニークな視覚障害者向けナビゲーションサービスです。
利用者はまず専用アプリから、訪問したい場所をリクエストします。NaviBlindは出発地から目的地までの歩行ルートを専門スタッフの手によって作成し、72時間以内に送信します。ルート作成にあたってはマップだけでなく高解像度衛星写真を参考にし、モビリティ・インストラクションの原則に従い視覚障害者の歩行に最適なルートを1メートル精度で構築します、これには横断歩道や段差といった気をつけるべきポイントも含まれます。
人力によるルート作成のため、マッピングされていない場所、例えば公園の中や森林の散策道などの移動にも利用できるとのこと。NaviBlindはこのルートを「バーチャルガイドライン」と呼んでいます。
ナビゲーションにあたっては、NaviBlindアプリがインストールされたスマートフォンとキャップ方の専用アクセサリ「NaviCap」をBluetooth接続して利用します。NaviCapには測位衛星からの信号を受信するためのアンテナが内蔵されており、これを頭に装着することでスマートフォン単体と比べ圧倒的な精度のナビゲーションが実現するというわけです。
NaviCapのアンテナには、スイスのu-blox社によるGNSSモジュール「ZED-F9P」が採用されています。これは5種類のGNSS衛星(GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS(みちびき))からの信号を受信できる低消費電力型マルチバンドレシーバーで、受信状況が厳しい都市部でも数秒でセンチメートル級の測位を達成可能とのこと。
歩行中はNaviCapが受信した位置情報とバーチャルガイドラインを称号し、進むべき方向や横断歩道などの情報を音声で通知し安全かつ正確にユーザーを誘導します。最終的には建物の入り口などかなり細かいターゲットまで連れて行ってくれるようです。
またナビゲーション中は、不測の事態やルート変更に対応するためのビデオ通和を用いたライブサポートも提供されます。
NaviBlindは現在デンマーク国内限定で提供されており、年間サブスクリプション(30ルートとライブサポート)で15,000 DKK(約26万円)の料金がかかります。ちょっとお高いような気もしますが、必要な人にはそれだけの価値があるのかもしれません。
キャップを被らなければならない、ルート作成までタイムラグがある、屋外でしか使えないなどデメリットはありますし、ガチガチのルートをたどらされるだけのナビは個人的に窮屈な印象もありますが、本格的にGNSSの高精度測位を採用したナビゲーションシステムがどの程度実用的であるのかは興味深いところです。
気になるのはNaviCapのデザインですね。正確な測位を実現するためにはアンテナが必要であることは納得できるのですが、服装によっては違和感ありそうです。将来的にモジュールが小型化されれば、好みの帽子に取り付けるタイプのようなものが可能になるのかもしれません。
そういえば数年前のサイトワールドで外付けの、QZSSレシーバーを用いたナビゲーションシステムの話を聞いたことがあるのですが、あれからどうなったのでしょうか。QZSSはすでに稼働しているし、レシーバーの状況によっては日本でも同様のサービスが実現可能であるようにも思えます。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。