2021年12月2日、米国に本拠地を置くアクセシビリティ技術プロバイダTPGiは、Windows向けスクリーンリーダーJAWSの開発元であるFreedom Scientificとのコラボレーションによる新サービス「JAWS Connect」を発表しました。
これはJAWSユーザーが、Webやアプリケーションの問題点をスクリーンリーダーから簡単にフィードバックすることができる、世界初のクラウドソーシング型サービスです。
これまで、スクリーンリーダーユーザーがアクセシビリティの問題に遭遇しても、それを具体的に報告する手段はほとんど存在しませんでした。というか元々のコンテンツを把握することが困難な目の見えないユーザーがアクセシビリティの問題を的確に把握し報告すること自体、かなり難しいケースが多いと言えます。
私もメールやメッセージでアクセスできないアプリにフィードバックすることがあるのですが、逆に「具体的にどこがどのようにアクセスできないのか」を聞かれることがよくあるのです。それがわかれば苦労しないと思うんですけどね……。結局のところ見えないユーザーが自身の体験を見える開発者に伝えることは、そう簡単なことではないことがわかります。
JAWS Connectはアクセシビリティの問題が発生している状況をスクリーンリーダー側が取得・送信してくれるため、ユーザーは何か違和感を感じたら即座に不具合を報告でき、開発側はこのフィードバックからどこにどのような問題が発生しているのかを正確に特定できるようになるわけです。
これまでアクセスできないWebやアプリに出会しても諦めるしかない場合がほとんどでしたが、JAWS Connectが広く普及すればフィードバックのハードルは大きく下がることが期待できます。障害のある当事者が自身の体験を手軽に共有できる環境が得られ、これまで一方的だったアクセシビリティ改善にエンドユーザーからコミットできるようになる、これがこのサービスが持つ最も画期的な特徴のように思います。
もちろんJAWS Connectの仕組みが機能する前提として、開発側にユーザーからの意見を真剣に捉える姿勢と、アクセシビリティを改善するという意志が求められるでしょう。そのような開発者にとってはユーザーからの具体的なフィードバックが集まることで、社内チェックでは気がつかない不具合をあぶり出し、アクセシビリティの改善によりきめ細かく対応できるようになる可能性があります。
まさにユーザーにとってもコンテンツ提供者にとってもWIN-WINなサービスと言えるのではないでしょうか。これは普及して欲しいですし、NVDAやVoiceoverなど幅広いスクリーンリーダーへも対応して欲しいところです。もっとこのようなクラウドを活用した当事者を巻き込むようなソリューションが出てくれば、いろいろ幸せに近づくようになる気がしますね。
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