点字は長きにわたり視覚障害者の情報取得を支えてきた重要な伝達手段である。
一般の人々の中には当然のように「視覚障害者は点字を読める」と思っている人も少なくないのではないだろうか。だが実際には、点字が読める視覚障害者の割合は世界的に下がり続けている。
性格な統計データは見つけられなかったが、視覚障害者における点字の識字率は日本や欧米で1割から2割程度。視覚障害者の数が世界で最も多いインドでは、わずか1%未満だという。
いかにして点字の識字率を回復させるか。多くの関係者は頭を悩ませている。
解決策の一つは、やはり点字学習環境の再構築にあるだろう。
インドのスタートアップThinkerbell Labsが開発した「Annie」は、ゲーム感覚で点字を学ぶことができる電子デバイスだ。
Annieの前身は2014年にSanskriti Dawle氏とAman Srivastava氏によって開発された「Project Mudra」と名付けられたRaspberry Piベースの点字学習デバイス。
このイノベーションは視覚に障害を持つ生徒や教師たちから熱狂的に受け入れられ、それを受け2016年、Dilip Ramesh氏とSaif Shaikh氏とともにThinkerbell Labsを設立。Project Mudraを発展させた画期的な点字学習デバイス「Annie」の開発に着手した。
Annieは、触覚と音声を用いて点字を単独学習することを目的とした、スタンドアロンで動作するパッド型の電子デバイスだ。
利用者は内蔵されたアプリケーションを通じて、点字の読み取りと書き込み(入力)方法を楽しく学ぶことができる。
タブレット型の本体には、6セルの点字ディスプレイと点字入力キーボード、ナビゲーション用のボタンとスピーカーを搭載し、Wi-FiとBluetoothによる無線通信機能も備える。universal Braillerをベースにしたキーボードの形状は、テレビゲーム機のコントロールパッドで見られるものとよく似ている。
Annieの目的は、音声ガイドを用いたレッスンと、ゲームやクイズなどの形で提供されるインタラクティブなコンテンツによって、点字を楽しく学習することにある。
例えば「点字テトリス」。
これは点字ディスプレイに表示されるアルファベットを指で読み取り、同じ文字をキーボードから入力することでどんどん文字を消していくというもの。
入力を間違えるとその文字が残り、次の文字が出現する。テトリスというよりは、懐かしの「ゲーム電卓」みたいな感じだろうか。
従来のような紙に印刷された教材でひたすら読み書きをするよりも、明らかにこちらの方が学習意欲は高まるであろうし、なにより教師など晴眼者のサポートなしで進められるのは大きなメリットだろう。
Annieはヒンディー語、英語、カンナダ語、テルグ語、マラーティー語に対応しており、200時間以上のレッスンと語彙を学習するための数千語の辞書も含まれる。レッスンでは地元のアクセントを学ぶメディアも付属し、点字に限定されない幅広い語学学習環境を提供する。
さらにThinkerbell社はAnnieデバイスとローカライズされたコンテンツ、これらを管理する晴眼教師向けのダッシュボードと環境構築を統合した「Anni Smart Classes」も開発。教師はHelios Analytics Suiteを用いて生徒の学習状況を簡単に管理・分析し、新しいコンテンツをダウンロードしてAnnieデバイスへ導入できる。
Annieは今後、インド国内および世界に向けて、より専門的なコンテンツを提供し、英国や中東地域へその事業を拡大したいと考えているようだ。
点字は視覚障害者にとって重要なスキルの一つであることは今後も変わりないだろう。特に就労においては点字の習得が大きな影響を与えているというデータもある。それだけに若年層に対する点字学習環境の改善は大きな課題だ。このようなデバイスが、点字の識字率を向上させるきっかけになるのか。注目したい。
ちなみに筆者も現在、絶賛点字の勉強中。
個人的には、いますぐ使ってみたい。普通に楽しそうだし。
関連リンク:
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。