2019年12月31日火曜日

全盲的「インクルーシブ・ナビ@コレド室町」体験記(追記メモ)


これまでの記事はこちら。(1)準備編(2)突撃編(3)完結編
本エントリーは、本編では書ききれなかった「インクルーシブ・ナビ」にまつわるメモ。
感想から要望、担当の方から伺った豆情報まで、いろいろあります(順不同)。

1. ナビ中のネット接続について。


インクルーシブ・ナビでは、ルートを検索する時にインターネット接続が必要となる。
これは常に最新の施設情報を利用できるようにするためで、音声検索、ジャンル検索いずれの場合もネット接続は必須とのこと。
なおナビ中は、ビーコンとのBluetooth通信がメインなので、ネット接続は使用しないとのことだった。ナビゲーションの計算も、iPhone端末内部で実行されるようだ。
ネット接続を最小限にすることで、バッテリー消費を抑えられるメリットもある。

2. 現在地」を知る方法はある?


インクルーシブ・ナビでは基本的に「現在地から○○まで」という形でルートを指定する。だが、そもそも今いる場所はどこなのか、私は知りたい。
伺ったところ、音声検索を使って「今どこにいる?」と尋ねることで、大まかな(ビル名とフロアくらい)を教えてくれるとのことだ。
ただ現在、最新のiOSを導入したiPhoneでは音声による検索がうまく動作しないとのことで、実際に試すことはできなかった(現在対応中とのこと)。

3. エスカレーターにはご用心。


ナビの設定によっては、視覚障害者モードでもエスカレーターに誘導されることがある。
コレド施設内は基本的に点字ブロックは敷設されていないが、エスカレーターの直前にはちゃんと設置されているので、しっかり確認して正しく乗り込もう。
なぜこのようなことを書いたのかといえば、私が慌てて反対のベルトを掴んでしまい、周囲を慌てさせたからである。気をつけましょう。

4. エレベーターにまつわるあれこれ。


ナビ中にエレベーターへ誘導されることも多い。
エレベーター前に到着すると、ボタンの場所を教えてくれるのは親切だ。
ただ、設置されているエレベーターによって、視覚障害者向けのバリアフリー設備が結構バラバラだった。ある場所のエレベーターは、到着した時の音が鳴らないものもあったし、行先階のボタンも、数字のエンボスがある場合とない場合があった。なお点字は漏れなく設置されていた。筆者のように点字が苦手な場合、頼める人がいないと難儀するかもしれない。最終手段として、全部のボタンを押すしかないのかも?迷惑かな。

面白かったのは、エレベーターで上下に移動した場合の位置推定方法。
なんと、ビーコンではなくiPhoneの気圧センサーを使っているんだって!

5. ナビで三越前駅へは行き来できる?


コレド室町に最も近い公共交通機関は、東京メトロ銀座線の三越前駅。地下道からそのままコレドの地下一階に直結している。
視覚障害者が単独でコレドを訪問する場合、この部分のアクセスが気になるところだ。

残念ながら駅の周辺は公道であるため、現時点ではインクルーシブ・ナビのエリアから外れているとのこと。地下鉄駅からコレドへ移動するには、駅員などの誘導が必要かもしれない。
一方コレドから駅へ移動するには地下鉄駅を目的地にナビできる。有人改札手前数メートルの場所でナビが終了するが、この場合は音響サインを頼りに改札口へたどり着くことは可能だろう。

6. 多言語にも対応しているのだ。


インクルーシブ・ナビは、端末の言語設定に応じて多言語によるナビゲーションにも対応している。対応言語は日本語、簡体字中国語、英語、韓国語。
訪日外国人観光客には強力な情報源となるはずだ。

7. トイレ内部の情報が知りたいなあ。


インクルーシブ・ナビを利用すれば、各フロアに設置されている多目的トイレにも誘導してくれる。
ただ残念なのが、トイレ内部の様子が、視覚障害者には把握しにくいという点。多目的トイレは広いため、便座や手洗いの位置、水を流すボタンなどを探すのに苦労してしまう。
バリアフリーが整った施設では触図や音声による案内が用意されている場合があるが、大まかな説明でもいいので、スマホから音声案内が聞ければ利用しやすいのではないだろうか。テキストを読み上げるだけでもいいと思うのだけど。

8. 「視覚障害者」以外のモードの使い勝手は?


さて一連の記事では、 全盲の筆者が「視覚障害者」モードでナビを体験してきたが、他のモードの使い勝手はどうなのだろうか。同行いただいたお友達に「車椅子利用者」モードで体験していただいた。

このモードでは画面上に施設内のマップが表示され、現在地とルートが示される。このマップ表示を確認しつつ、ターン・バイ・ターンによるナビゲーション指示に従って目的地を目指す。誘導の内容は視覚障害者モードと基本同じだが、マップと実際の風景を確認しながら歩ける、というのが最大の違いだろう。

施設内の通路が目視できればルートを正確に歩くことができるし、誤差が発生して位置情報がずれていても、次に曲がる場所が推測できるので迷うことなく目的地にたどり着くことができた。
ある程度視覚で進むべきルートを確認できれば、2メートル程度の誤差はあまり気にならないようだ。

車椅子やベビーカーのモードでは、エレベーターやスロープを優先するルートを提示してくれるため、このナビを用いれば知らない施設でも、スタッフの手を借りることなく安全かつ効率的に移動することができるだろう。
全盲(というか筆者)にとってかなり苦戦させられたインクルーシブ・ナビだが、それ以外の人々には、かなり実用的なレベルではないだろうか。視覚障害者でも、進むべき空間を目視できるのであれば、このナビは有効に活用できるかもしれない。

ロービジョンの方の感想もぜひ聞いてみたいところだ。

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