2019年12月22日日曜日

全盲的「インクルーシブ・ナビ@コレド室町」体験記(2)突撃編


スマートフォンを用い、音声と振動で視覚障害者を道案内してくれる「インクルーシブ・ナビ」。アプリのインストールとイメージトレーニングを終え、いよいよ現地・コレド室町へ乗り込む突撃編。
正直、いきなり行って使えるのか不安もあるが、多分なんとかなるだろう。


インクルーシブ・ナビを利用できる「コレド室町」は、東京都中央区にある商業施設。「コレド1」から「コレド3」まで3つの建物に分かれており、それぞれが連絡通路によって接続されている。
全盲の筆者は地図で確認することはできないが、周囲の様子や同行いただいたお友達のお話を総合すると、日本橋三越本館から中央通りを挟んで向かい側くらいに鎮座しているようだ。最寄りの公共交通機関は東京メトロ・銀座線の三越前駅、または半蔵門線の三越前駅、JR総武快速線の新日本橋駅。ただ半蔵門線、総武快速線の駅からは5分ほど歩く。

インクルーシブ・ナビでは、コレド1からコレド3の建物内と地下道にある近辺の施設をカバーしている。地下道からコレドの地下一階へは直結しており、ここからナビを試してみることにした。
なお訪問は平日のお昼すぎ。施設内は一部を除き、さほど混雑していない状況だった。筆者が使用したのはiOS13のiPhone 7だ。

※ご注意:本記事の内容は、あくまでも筆者が試行錯誤しつつ経験した者です。必ずしもインクルーシブ・ナビの正しい使い方を表現しているものではありません。ご参考程度にお読みください!


インクルーシブ・ナビを試す。


コレドの地下入り口から入り周囲に邪魔にならない場所を見つけたら、、アプリを起動し「日本橋室町地区」を選ぶ。モードは「視覚障害者」を選択……というかVoiceoverを有効にするとこれ以外は選べない。
ここで自宅でイメトレした時に表示されていた「位置情報が利用可能ではありません」のメッセージが表示されないことに気づく。つまり、いまエリア内にいるよ、ということ。
試すのを忘れていたが、もしかしたら三越前駅の改札口から利用できたりするのだろうか。であれば全盲でも改札まで駅員の誘導で移動し、単独で優雅にショッピングを楽しめるかもね?
期待は膨らむばかりだ。

さて、データがロードされたら適当な場所を検索し、目的地を設定。「開始」ボタンをタップし、ナビゲーションをスタートさせる。
ちなみに姿勢はiPhoneを左手にもち、体の正面に構える。右手には白杖。多分こんな感じだろう。そんなに大きく間違ってないと思うけど。とにかくやってみることが大事だ。

さて、いきなりここで難問発生。
ナビを始める前に、まず5メートルほど歩きなさいとアプリがおっしゃるのである。
想像だが、BLEビーコンとスマホの位置を調整する必要があるのかもしれない。いきなり知らない場所、しかも屋内を5メートルあるくのは全盲としては少々抵抗があるが、言われたからには、おっしゃる通りに歩きますとも。はい。
白杖で障害物がないか、歩行者がいないか注意しつつ、慎重に5メートルくらい歩くと端末が振動し、いよいよここからナビゲーションの本番だ。


ターン・バイ・ターンのナビときめ細かい情報提供。


移動の指示は基本的に「○メートル歩き、○に曲がる」という形式。いわゆる「ターン・バイ・ターン」と呼ばれるナビ方式だ。一般的なカーナビをイメージしてもらえればわかりやすいだろう。
どの方向へ歩けばいいかは、指示されたタイミングで立ち止まってクルクル周り、振動した方向がたぶん正解、のようだ。
向かう方向がわかったら、障害物や歩行者に注意しながら真っ直ぐ進む。
指示された場所に到達すると通知音とともにiPhoneが振動し、次の指示がアナウンスされるので、またクルクル回って方向を見つけ、さらに歩く
これを目的地まで繰り返すのが基本だ、と思う。
(すみません、憶測が多くて)

指示通りに歩いていくと、結構色々な情報が耳に入ってくる。
たとえば目的地や分岐点に近づくと残りの距離を教えてくれたり、到着直前には「そろそろです」とアナウンスされる。
また自動ドアや点字ブロック、スロープを通過する時はその情報、通路が狭くなっている場所に近づけば注意してくれる。さらに通過中にあるお店や施設の情報もすべてではないが、たまに教えてくれるのも面白い。ナビゲーションに目的地へ向かうだけではない「寄り道」の楽しさが加わっているのは画期的だと感じた。ただお店の名前だけだと、なんのお店かわかりにくいかな?店名、お洒落すぎて中年男性にはさっぱりわからないのである。

エレベーターの前に到着すれば、ボタンの位置も教えてくれるのが親切だ。ただエレベーター内のボタン横には点字は付いているものの、それ以外の情報がなく点字が読めないとボタンを押すのに難儀するかもしれない。この辺りはナビゲーション側の問題では無いので解決は難しいかもしれないが。

目的地に到着すると、振動と共にアナウンスされナビが終了する。
大きなお店、例えば無印良品だと、明らかにもう到着してるのにナビが継続していたりする。これは多分目的地がレジなどにピンポイントで設定されているのだろう。お店の人に超えをかけやすい場所に設定されていることを信じたい。
ナビゲーションと人力支援をシームレスに接続することで、はじめてこのようなシステムの効力が発揮できるはずだ。そのためにはこのシステムが店舗スタッフに周知されている必要もあるだろう。

一つ気になった点。
コレド1からコレド2のお店へ、といった建物をまたぐルートを検索すると、例え1Fから1Fへの移動であっても連絡通路のあるフロアまで移動するルートになってしまい、かなりの遠回り感がある。屋内限定なので仕方がないと思うが、将来的に屋外にビーコンが設置されれば解決するのだろうか。もちろん安全性や雨に濡れないなどを考えての仕様かもしれないが、選択肢が増えてくれる方が望ましいと思ったりする。


「まっすぐ歩けない」問題。


全盲ユーザーとして「インクルーシブ・ナビ」を体験し最も困ったのは、ルートに剃って歩こうにも、なかなか真っ直ぐ歩くのが難しいということだった。
これは筆者の歩行スキルの未熟さも大きな要因と思うが、距離が長くなるとどうしても左右どちらかに曲がってしまいルートを外れてしまう。コレドの施設内には点字ブロックは基本敷設されておらず、通路の左右は店舗があるため壁を伝ってあるくこともできない。お店の方へ曲がってしまい、立て看板に当たりそうになったこともあった。
また、他の買い物客やにもつを運ぶ台車などに注意し、時にそれらを回避しながら歩いていると、進むべき方向を見失うこともある。

そしてナビではルートを外れても、すぐにそれを通知してくれず、歩いても歩いてもアナウンスがない……といった状況にしばしば陥った。つまり今自分が正しい方向に歩いているのかどうか、わからなくなる。で、忘れた頃にルートを外れていることを教えてくれたりする。こうなると結構パニックになってしまい、焦る。
後でヘルプを確認すると、迷ったら画面を1回タップするといいらしいが、すっかり頭から抜け落ちていたのだった。

一度迷ってしまうと同じ所をうろうろしたり、進む方向を見つけようとクルクル回ったり、もう大変なことになる。落ち着けとあの時の自分に言いたい。
東京の中心にある商業施設でクルクル回る全盲中年。
端から見たら、結構怪しい。知らない人が見たら、ぎょっとするのではなかろうか。

また(多分)スムーズに歩けている場合でも、分岐点を通知する前に突き当たりの壁に当たってしまうこともあった。つまり指示されている方向に空間が存在しない、と言う状況である。この時はiPhoneを2回シェイクすることで、分岐点の指示がアナウンスされた。ヘルプによるとこのジェスチャは位置推定のリセットらしいのだが、これをうまく使う方法があるのかもしれない。

ちなみに点字ブロックに沿って歩いている時は、ナビゲーションはかなり正確だった。
足元に渓谷ブロックを感じた瞬間に分岐点の指示が出されたのにはびっくり。またエレベーターの乗り降りのタイミングでのアナウンスも完璧だった。
それを考えると、ナビにしたがって「真っ直ぐ」歩句ことができれば、迷わず正確なナビをしてくれるのではないかと想像できる。
だが視覚障害者、特に筆者のような歩行スキルが未熟な全盲だと、目印の無い場所を常にルート通りに移動するのは難しい場合が少なく無い。現状では単独で優雅にショッピング、という雰囲気とはかけ離れた、くるくる挙動不審な行動になってしまった。
残念無念。

歩行スキルが高ければスムーズにナビできるかもしれないが、「全盲3歳児」の筆者のような盲人ビギナーでも安全かつ正確に歩ける方法があると思うんだけどなあ。
そんなことを考えつつ、今回はタイムアップ。
ちょっとしたモヤモヤとともに、帰途についたのだった。


今回の感想。そしてまさかの次回へ続く。


さてイメートレだけで飛び込んだインクルーシブ・ナビ。
感想としては「ちゃんとナビしてくれる。真っ直ぐ歩ければ。」と言ったところ。

ナビゲーションの内容は情報も多く、きめ細かい。特に通過中に周囲の情報を教えてくれるのは、視覚障害者にとっては嬉しい機能と感じた。単純に目的地へ行くだけになりがちな移動がちょっと楽しくなる。まあこの辺りは人によると思うけどね。ちなみにこのアナウンスは設定から無効にできるようだ。

ただ目的地までスムーズに到達できることもあれば、ルートを外れてしまい迷ったり同じ場所をウロウロしてしまうこともあり、ちょっとナビに翻弄された印象だった。
だがこれは正しい使い方をしていなかったことに起因する可能性もある。ルートを外れてしまうのはある程度仕方がないと思うが、リカバリーに何かしらのコツがあるのであれば、それを会得することでもっと快適に、慌てずに利用できるようになるかもしれない。
そもそもiPhoneを持つ姿勢とか、ただし買ったのかも怪しいところ。
これはもう一度チャレンジせねばなるまい。

というわけで、今回の体験を踏まえた上で近日インクルーシブ・ナビのリベンジ体験を決行予定である。もろもろの疑問が、もしかしたら解けるかも?
次回「解決編(仮)」は一週間ほど後になる予定!
あまり期待しすぎない程度におまちください。


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