2019年12月23日月曜日

白杖に抵抗のあるロービジョンに福音?振動で障害物を通知する「LEOベルト」。


視覚障害者が屋外を安全に移動するための補助具としては「白杖や「盲導犬」がよく知られている。だがロービジョン、つまり「見えにくい」人々の中には、これらのような「すぐに視覚障害者とわかる」者を持ちたがらないケースが少なくない。
その理由には世間一般の視覚障害者に対する偏見と、ロービジョンに対する無知がある。

視覚障害者と呼ばれる人々の中で「全盲」は少数派であり、多くは「ロービジョン」と呼ばれる「見えにくい、見える時間が少ない」状態の人々だ。見えにくさは個人によって千差万別だが、視野や視力が残存していても白杖や盲導犬に頼らなければ安全に移動できない人も数多く存在する。視野が狭ければ死角にある障害物に激突してしまうし、昼間は見えていても暗い場所では何も見えなくなってしまう場合もある。

だがこの事実を知らない世間の人々の中には「白杖を持っているのに、見えている」と彼らを攻撃するような輩も、残念ながら見受けられるのも事実。
白杖を持ちたがらないロービジョンがいたとしても、全く不思議ではないのが現状だ。

英国University Hospital Southampton(UHS)の研究者は「Low-vision Enhancement Optoelectronic (LEO)ベルト」と呼ばれるデバイスを用いて、このような移動に困難を抱える人々のための、白杖に変わる新しいソリューションを開発している。

このデバイスは、3つの深度センサーカメラを搭載した「LEOベルト」と、小型のコンピューター、そして胸と両足首に装着する3つの振動ユニットで構成され、それぞれの機器がWi-Fiでワイヤレス接続される。
LEOベルトで撮影された映像はコンピューターに送信され、障害物を探知すると、その位置に応じたユニットを振動させて装着者へ通知する仕組みだ。障害物が近づくにつれ振動する間隔が短くなり、危険が迫っていることを伝えてくれる。
視野が狭かったり、暗い場所で者が見えづらいようなロービジョンでも、振動を感じ取ることで危険を回避することができるとのことだ。

これまでもベルト自体を振動させるタイプのスマートベルトは存在していたが、このデバイスはカメラと振動ユニットを分離させているところが特徴的といえる。カメラをベルトに装着することで安定した撮影を実現するとともに、3つの振動ユニットを用いることで、よりきめ細かいフィードバックを目指しているようだ。確かにベルトの振動は少しわかりにくいような気がするしね。
視覚障害者を支援するデバイスでは、しばしば「振動」によるフィードバックが用いられる。スマホは基本的に手のひらで振動を感じるが、デバイスによっては肩だったり靴底だったり、中には「おでこ」で振動を伝えるものもある。
あらゆる状況で最もわかりやすい振動の配置は、探究の余地がありそうに思える。

少し話が逸れてしまった。

UHSの研究者は網膜色素変性症(RP)の患者と、視野を制限するゴーグルを装着した晴眼者を対象に、LEOベルトを用いて4種類の迷路を突破する実験を行った。その結果、全ての被検者が安全に障害物を回避し迷路をクリアすることができたという。
またLEOベルトを装着しない場合と比較し、障害物に当たるなどのミスが44%軽減された。RP患者は特に、照明が少ない場所での有用性を指摘した。

この研究を実施したUHSの眼科医であるAndrew Lotery教授はこの結果を踏まえ、LEOベルトが次世代の補装具となりうると考えている。このデバイスは衣服の下に装着しても目立つことがなく、白杖を持ちたくないロービジョンでも抵抗なく利用できるだろう、と教授は語る。

このようなデバイスによって、ロービジョンの日常の不便や危険が回避できるようになれば、それはとても素晴らしいことだ。
だが個人的にはロービジョンの人も抵抗なく白杖を持てるような世界になるのがベターではあると思う。見た目で障害者と判断されることが「デメリット」と思われてしまう風潮が、少しでも減ることを切に願うばかりだ。

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