2019年12月2日月曜日

SNSのネタ画像「ミーム」をアクセシブルにする技術。


「ミーム(Memes)」とは、主にSNSで共有される、いわば「ネタ画像」のこと。
もしくは「画像大喜利」かな?
インターネット・ミームとも呼ばれ、画像意外にも動画やテキストなども含まれるが、今回は画像ミームに関するお話。

ミームは有名人や動物、赤ちゃんなどの画像に面白い文章を合成する、というのが一般的なパターン。「ミーム・ジェネレーター」と呼ばれるWebサービスを使えば簡単にミームを作成してSNSへ投稿できるため、爆発的に流行することも多い。日本ではさほど多くは見られないが、海外ではネット上の楽しみとして定着している。
あまり役には立たないが老若男女が楽しめるミーム。だがスクリーンリーダーでWebを利用する視覚障害者は、この楽しみから除外され続けてきた。

ミームがリュ痛しているのは主にTwitterやFacebookと言ったSNS。これらのサービスでは投稿された画像に、視覚障害者のための説明文を加える機能が提供されているが、このオプションは非常に見つけにくいため、ほとんど利用されていない。調査によると、SNSに投稿された100万枚のイメージの中で説明文が加えられていたのは、わずか0.1%だったという。

米国カーネギーメロン大学(CMU)のHuman-Computer Interaction Institute(HCII)の準教授であるJeff Bigham氏を中心とした研究チームは、SNS上に流通するミームに視覚障害者向けの代替テキストを追加するプラットホームを開発。ピッツバーグで開催されたACCESS conferenceで発表した。

ミームの面白さは、同じ画像に加えられたテキストのバリエーションにある。そのため単純なオブジェクト認識やOCRだけではそのニュアンスを伝えきれない。
このプラットホームでは、ミームのベースとなる画像に対応したテンプレートをあらかじめ用意しておき、画像認識と光学式文字認識技術を用いて、ミーム画像に自動的に代替テキストを追加する。要するにミームに用いられているイメージの説明と、その画像にオーバーレイされた文字情報を個別に解析し説明テキストを生成する仕組みのようだ。その画像が「ミームである」ことが判別できる、ということが重要だ。

加えて研究者たちは、ミーム画像にオーディオでニュアンスを追加する機能も開発した。説明テキストだけでは面白さを伝えるには不十分、と考えているようだ。
ミーム作成者は画像にオーディオファイルをドラッグ&ドロップすることで、イメージに効果音やメッセージなどのオーディオ説明をつけることができる。

研究チームは次の段階としてこのプラットホームを、ミーム・ジェネレーターやSNSと統合することを考えている。ミーム・ジェネレーターから画像をアップロードするタイミングで代替テキストを生成できれば、視覚障害者はスクリーンリーダーを用いて多くのミームを音声で楽しめるようになるだろう。またCMUは各種ブラウザ用の拡張機能の開発にも着手しているようだ。

CMUのJeff Bigham氏は語る。
「ミームは重要視されるようなものではないのかもしれません。しかし、興味を持つ人々を選別しないことは、アクセシビリティの観点から非常に重要なのです。」

インターネット上には、役に立つもの、下らないもの、笑えるもの、有害なもの。多種多様なコンテンツが流通している。だが情報の内容でアクセシビリティに優先度がつけられるべきではない。すべてのコンテンツがアクセシブルであることが大前提であり、そこからどの情報を受け取るかはあくまでもユーザーに委ねられるべきだろう。
残念ながら現状、障害者はまだ十分な情報の選択肢を与えられてはいない、というのが率直な印象だ。

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2019年11月29日金曜日

そのゲームオプションは誰のためのもの?「ポケモン」最新作の、とあるアイテムが論議を呼ぶ。



先日リリースされた、Nintendo Switch版ポケモン最新作「Pokemon Sword and Shield」。全世界から注目を集めている超人気作品だが、このゲームにまつわる、とある「オプション設定」の扱いに関して、ちょっとした、でもアクセシビリティ的には重要な騒動が巻き起こっている。
そのオプションは、ゲームの中に登場するNPCに話しかけ、「Hi-tech earbuds」というアイテムを入手することでアンロックされ、利用できるようになるという。問題は、そのオプションが「サウンドのバランス調整」であるということだ。


このオプションはBGMや効果音など、サウンド出力のバランスを細かく設定できるもの。本来なら聴覚に障害があったり、音に大して過敏なユーザーのために用意されるオプションだが、それがなぜ初めから利用できないのか?というわけだ。

例えばBGMと効果音が同時に再生されると音の判別が難しかったり、大きな効果音が刺激になるようなユーザーも少なく無い。難易度設定が増えるなどより高度なプレイヤーのための機能がロックされているなら理解できるが、このようなアクセシビリティに関わる設定がロックされているのは、どのような意図があるのだろうか。
場合によってはこのようなサウンドオプションを必要とするユーザーが、このオプションに気づかずに不快な思いをしながらプレイを余儀なくされる可能性もあるだろう。

この話題を目にして思い出した記事がある。2019年3月にGamerevolutionが掲載した、アトラスのリズムゲーム「Persona Dancing: Endless Night」のアクセシビリティ・オプションのロックに関するものだ。


この作品では、少ないボタン数でゲームをプレイできるオプションや、スクラッチ操作をオート化する機能が初期状態でロックされており、標準の設定である程度ゲームを進めなければこれらのオプションへアクセスできない仕様になっている。
このような「ゲームの操作を簡素化する」オプションは、手や指を自由に動かせないプレイヤーが、外部スイッチなどを用いてゲームを楽しめるように用意されるもので、一般プレイヤーの「ご褒美」的な扱いをされるべきではないように思う。一般のゲーマーにとってはゲームを簡単にする「おまけ機能」なのかもしれないが、一部の障害者にとってはプレイに必要不可欠な機能だからだ。

なぜ、このような問題が発生してしまうのだろうか?
もともとは障害を持つゲーマーのために用意されたオプションが、実は一般ゲーマーにも有益だった、ということはよくある。ボタン配置のカスタマイズなどは良い例だろう。
それがやがて「一部の一般ゲーマーのためのオプション」として認識されるるようになり、本来そのオプションが必要なユーザーの存在が忘れられた結果「ポケモン」や「ペルソナダンシング」のような問題を生んでいるのではないだろうか。障害を持つユーザーにとって切実なオプションが、健常者の一方的な価値観で「おまけ」扱いにされているように見える。

もし「障害を持つゲーマーもプレイする」ことが意識されていれば、違った結果になっていただろう。せっかくアクセシビリティを高めるオプションが用意されていても、必要なユーザーがそのオプションへアクセスできなければ何の意味もない。アクセシビリティに関わるオプションは、いつでも誰でも容易にアクセスできるように設計されなければならない。

ゲーム制作側は障害者はゲームをプレイしないと思い込んでいるのかもしれない。だがそれは違う。プレイできるゲームが無いからプレイしないだけなのだ。ニーズは確実に存在するし、この現状を掻い潜って果敢にプレイする障害当事者や、それを支援する人々も少なからず存在する。

ゲーム業界は、少しずつだが確実にインクルージョンを意識しつつある。先日もMicrosoftはXboxのゲーム開発者むけにアクセシビリティのガイドラインをリリースした。この動きが多くのメーカーに浸透し、これまでゲームから排除されていた多くの人々が楽しめるような作品が1本でも多くリリースされることを望みたい。

2019年11月28日木曜日

「脳直インプラント」人工視覚で、盲人は何を「見る」のか?


視覚障害者の体内に埋め込み視力を回復させる「人工視覚」。
この言葉から、どのようなイメージを抱くだろうか。まるでSF小説に出てくるサイボーグのような未来的なものを想像するかもしれない。だが人工視覚は、今現在進行中の技術であり、すでに実用段階に突入した製品もある。

そのような人工視覚技術の一つ、「Orion」は、脳に埋め込まれた電極とスマートグラスを接続し、人工的に視力を回復させる、現在研究中のデバイスである。網膜に電極を埋め込むタイプの人工視覚はすでに実用化されているが、網膜の奥にある視神経などが原因で失明した患者には効果がない。
そこで「orion」は、眼球や視神経を一気にバイパスし、脳の視覚を司る部分を直接刺激することで視覚を実現しようとしている。人間が者を見る仕組みを考えると、最終的には「脳」にたどり着くわけで、ある意味「究極の人工視覚」ともいえる。極端な話、中途失明であれば眼球を摘出した患者でも原理的には同じ高価が得られるという。

現在Orionは、6人の被験者に大して実証実験を行なっており、そのうちの1人、Esterhuizen氏の体験が記事として公開されていた。Orionについては以前、海外記事を翻訳したものをエントリーしたが、実際にどの程度の者が見えるのか?という部分についてはよくわからなかった。
今回の記事では、その謎が少しだけ判明したのでまとめてみよう。

  • 電極は脳の片方にのみ埋め込まれているので、見えるのは片方のめだけ。
  • 60個の電極1つ1つの強さを、被検者ごとに数ヶ月に渡り調整する。
  • 電気刺激によって感じられるのは、光の点。色や形はわからない。動きはわかる。
  • 被検者はカメラの映像と感じる光の関係をトレーニングする。点字を読むのに似ている?
  • 見える点の解釈により、光の強さ、物体の動き、ある程度の奥行きを判別できる。
  • 人物や物体は初め1つの点として感じられ、近づくと複数の点が見える。

という感じのようだ。
これを読む限り現在Orionで見ることができるのは、目で見るような自然なビジョンではなく、人工的に生成された「光の点」に過ぎない。
被検者はカメラからの映像を元に感じ取る光の関連性をトレーニングし、その結果シンプルな光で者や道路の境界線を識別したり、自動車などの障害物を避けたりできるようになる。
つまり全く新しい「視覚の解釈」を学ぶことで、視力を獲得していくということだ。Orionで見る世界は晴眼者のそれとは、風景も機能も全く異なるもののようだ。

「人工視覚」という名前を聞くと、どうしても晴眼者と同じような視力が戻るかのような想像をしてしまいがちだが、そのようなクオリティに到達するには、まだ超えなければならないハードルが数多く存在するという。
まず、脳のどの部分を刺激すると、どのような者が見えるのか?という仕組みがほとんど解明されていない。またインプラントする電極の数も、現在の60個から数十万まで増やし、電極のサイズも小型化する必要がある。脳の視野マッピングが解明され、それに対応する電極が改良されて初めて「者が見える」ようになるという。他にも長期間に渡る安全性の担保や装置の寿命、患者の経済的負担など、課題は多い。
一般的にイメージする「視覚」を実現するには、まだまだ長い時間が必要となるだろう。

だがわずかな点出あっても「自分の目で見る」ことが再び可能になるだけでも革命的だ。過度な期待は禁物だが、技術は着実に進化している。
筆者も緑内障による視神経萎縮で失明したので、Orionには期待しかない。一度、体験してみたいものである。
……まあ、そのためには頭蓋骨をパカっと開かないとならないのだが。

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2019年11月27日水曜日

気になる視覚支援デバイス3種。「Wayband」「Chord Assist」「Galidog」


「Wayband」:視覚障害者を触覚でナビゲートするリストバンド。


ニューヨークを拠点とするスタートアップWearWorks社が開発したウェアラブルデバイス「Wayband」は、視覚障害者を振動でナビゲートするスマートリストバンドだ。

Waybandの使い方はとてもシンプル。デバイスとスマートフォンをペアリングしたら、専用アプリを用いて目的地を設定。アプリは目的地までのルートを作成してナビゲーションを開始する。ユーザーが歩行中にルートから外れると、リストバンドが振動して通知してくれる仕組みだ。
特許技術「Haptic Corridor」テクノロジーを搭載したこのデバイスは、類似の製品よりも性格で直感的なエクスペリエンスを提供する、と同社は語っている。2017年にはWaybandを装着した視覚障害を持つランナーが、NYCマラソンを単独で走破したという。

またデザイン性の高さもWaybandの特徴。ブラックのリストバンドにグリーンのストラップをあしらったWaybandは、ドイツでBauhas賞とWear Sustain賞を受賞している。
支援デバイスといえば見た目は二の次、というイメージが強いが、これなら街歩きでも気兼ねなく装着してお出かけできるかもしれない。

Waybandは2020年2月22日、Kickstarterから購入可能になる予定。価格は249ドルだが、早期購入なら180ドルで入手できる。なお日本で使えるかは不明。

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「Chord Assist」:アクセシブルなギター。


「Chord Assist」は、Google Developer ExpertであるJoe Birch氏によって開発された、視覚・聴覚に障害があってもコードを学ぶことができるスマートギターだ。開発にはGoogle Homeの開発者プラットフォーム「Actions on Google」が用いられている。
ギター愛好家である開発者が、障害を持つ人々がギターを手軽に学べる機会が少ないことをシリ、Chord Assistの開発を思いついたという。彼は2017年に「BrailleBox」と呼ばれる点字電子書籍リーダーも開発している。

彼は中古のアコースティックギターを入手し、それをベースにRaspberry Piと音声入力のためのマイクとスピーカーや小型の液晶ディスプレイ、触覚マーカーなどを取り付け、Chord Assistを完成させた。
演奏者はGoogle Assistantを用いてデバイスの機能をコントロールしながら、さまざまな方法でギターのコードを学び、チューニングをおこない、演奏を楽しむことができる。
視覚障害者むけには点字ディスプレイでコードや譜面の情報を触覚で取得でき、聴覚障害者にはボタンとセグメント表示を用いて学習するコードを指定したり、ディスプレイによる情報表、振動によるフィードバックなどで演奏をサポートしてくれる。
障害者がギターを学び始める場合、これまではどうしても健常者の助けを借りる必要があったが、このデバイスはそのハードルを大きく下げてくれるかもしれない。

Chord Assistは商品化される予定はないが、開発者のWebページから必要な部品のリストや回路図などの情報が入手できる。製作費はおよそ300ポンドとのことだ。

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「Galidog」:革新的な盲導犬ハーネス。


誤解している方も少なく無いと思うが、盲導犬は視覚障害者の「案内役」ではない。障害物や階段など、危険な場所を避けたり、ユーザーに注意を促すというのが主な仕事だ。歩行ルートの決定や信号機の判断などはユーザーが行わなければならない。そのため盲導犬と歩いていても、慣れない場所では道に迷ってしまうことも少なくない。

フランス、Roncq(Nordの盲導犬協会が主体となって、2017年から開発が進められている「Galidog」は、盲導犬とユーザーを振動と音声でナビゲートするスマートハーネスだ。ちなみにGalidogという名前は測位衛星「Galileo」から採られているとのこと。

Galidogとスマートフォンをペアリングし、ナビゲーションを開始すれば、進むべき方向をハーネスの振動と骨伝導ヘッドホンへの音声でフィードバックする仕組み。ハーネスに振動を感じたら盲導犬に指示を出せば目的地へ辿り着ける、という塩梅だ。
これを用いれば、みちに迷うことも少なくなるし、慣れていない場所へも気軽に出かけることができるようになるだろう。安全の確保は盲導犬、道案内はGalidogが担当してくれるので、ユーザーの精神的・体力的な負担も大幅に軽減されるはずだ。

Galidogは現在開発中。ハーネスの振動に対応するよう、盲導犬のトレーニングも必要となる。2020年には最初のGalidog盲導犬がデビューする予定とのことだ。

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2019年11月26日火曜日

盲ろう者とのリアルタイムチャットを低コストで実現する「Orbit Chat Communication System」。


視覚と聴覚、両方に障害を持つ盲ろう者とのコミュニケーションには、多くの制約がある。障害の程度にもよるが、文字を読んだり声で会話することが困難な場合は「触覚」を用いる方法が一般的だ。書類やメールなど時間差のある情報なら点字を用いて読むことができるが、対面してリアルタイムに会話するとなると、ゆびに触れるジェスチャでコミュニケーションする「指点字」が用いられることが多い。そしてその場合、指点字を習得した通訳社を介さなければならないため、盲ろう者にとって大きな負担となる。

米国Orbit Research社は、テキストチャット形式で盲ろう者とのリアルタイムのコミュニケーションを実現する「Orbit Chat Communication System」をリリースした。
このシステムは、同社が販売している点字ディスプレイ「Orbit Reader 20」と、無料で提供される専用アプリを導入したAndroidスマートフォンもしくはタブレットをBluetoothで接続し、メッセージをテキストと点字に相互変換する。Orbit Reader 20と対応スマートフォンもしくはタブレットがあれば、追加のハードウェアは必要なく、低コストで盲ろう者の意思疎通環境を構築できる。

スマートフォンで入力されたテキストメッセージは即座にOrbit Reader 20に点字として表示され、盲ろう者は指先でメッセージを読み取る。一方、盲ろう者はOrbit Reader 20の点字キーボードから点字を用いてメッセージを入力すれば、その内容がリアルタイムでテキスト形式に変換され、相手のスマートフォン上に表示される仕組みだ。点字の読み書きに熟達した盲ろう者なら、スマホユーザーと同等以上のスピードでメッセージのやりとりができるだろう。
またスマートフォン用アプリは音声読み上げに対応しているので、盲ろう者と視覚障害者の間でもスムーズな会話が実現する。もちろん音声操作や音声入力を用いれば、手が不自由な相手ともチャットできる。対応言語は英語だが、ローカライズにより多言語にも対応可能とのことだ。

また1対1のチャットだけでなく、盲ろう者から複数のユーザーに同時にメッセージを送信するブロードキャストモードや、受け取ったメッセージを後でゆっくり参照できる保存モード、ファイルの転送機能なども提供される。アプリはAndroidスマートフォン及びタブレットに対応し、Google Playストアから無料でダウンロード可能。また盲ろう者向けには、Orbit Reader 20とアプリがインストールされたAndroidタブレットのバンドルセットも用意されている。

障害者をサポートする機器はどうしても価格が高くなりがちだ。それは数が生産できないため、ある程度仕方がない面もある。一方、障害者の所得は障害を持たない者と比べて圧倒的に低いのも事実。公的支援を受けられても限界があり、多くの障害者はベストな支援環境を得られずに不便な生活を強いられている。
Orbit Reader 20は、数ある点字ディスプレイの中でも比較的コストパフォーマンスの高い製品。「Orbit Chat Communication System」は、すでに販売されている点字ディスプレイとAndroidスマートフォン、タブレットという汎用製品を組み合わせることで、最小限のコストで盲ろう者の生活を大きく改善させる可能性を秘めている。
このようなデバイスが増えてくれば、障害者の社会参加にも大きく貢献するだろう。

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2019年11月25日月曜日

Microsoftが推し進める、ゲームのアクセシビリティ。


「Xbox Adaptive Controller(XAC)」が象徴するように、Microsoftはゲームをより幅広いユーザーへ届けようとしている。そしてその動きはMicrosoftから周辺機器メーカーへと波及しつつあるようだ。

ゲーミングコントローラーやマウスなどを開発している大手周辺機器メーカーLogitechは、XACに接続して使う、障害を持つゲーマーのためのスイッチやコントローラーをセットにした「logitech Adaptive Gaming Kit」をリリースした。
XACはあくまでもゲーム機及びPCとスイッチ類を接続するための「ハブ」としての機器だ。付属しているスイッチは2つだけなので、XACだけを購入してもゲームをプレイすることはできない。そのためユーザーは身体の状態に合わせた高価なスイッチ類を別途用意する必要があった。
この100ドルのキットには、トリガーを制御するためのさまざまなサイズの12個のボタンと大きなアナログ入力装置が2個、そしてこれらを腕や車椅子などに取り付けるためのベロクロ式のパッドが含まれる。XAC込みでも200ドル程度で一通りのゲーム環境を構築可能だ。プレイヤーの障害の程度にもよるが、多くのユーザーにとって導入コストは大幅に抑えられるだろう。


またこのキットの開発をめぐる、MicrosoftとLogitechのやりとりや開発プロセスが興味深い。2社の連携なくして、このキットの実現はあり得なかっただろう。なお、このキットの利益率は他製品と比べかなり低いそうだ。


だが、いくらハードウェアをアクセシブルにしたところで、ソフトウェアにアクセスできなければ何の意味もない。そこでMicrosoftは、Xboxゲーム開発者向けにアクセシビリティに関するガイドラインをリリースした。これには画面やテキストの読みやすさ、ナレーション、クローズドキャプション、さらには難易度に至るまで幅広い内容が含まれている。
このガイドラインに拘束力は無いようだが、ゲーム開発社にもアクセシビリティの意識を広めようとする同社の意気込みを感じる。
少し前にリリースされた、クロスプラットホームかつアクセシブルなマルチプレイヤー環境を提供するゲーム用ミドルウェア「Azure PlayFab」も、その一環と考えられるだろう。


またサービス提供が開始されたGoogleのゲームストリーミングサービス「Stadia」でも、アクセシビリティに関する話題が伝えられている。米国で障害者のゲーム環境を支援する団体AbleGamersがGoogleと提携し、障害者のゲーム環境の整備を目指すという。Stadiaは様々なデバイスからアクセスできるという特徴から、障害者ゲーマーにとっては、よりアクセシブルな環境を選ぶことができるメリットがある。運動障害がある場合はXACなどの適用ゲームデバイスが使えるPCからの利用がベターと想像できる。
視覚・聴覚障害への対応がどこまでできるのかも気になるところだ。これらを含めストリーミングサービスがゲームのアクセシビリティにどのような影響を与えるのか、注目したい。



2019年11月16日土曜日

「聴く読書」が目で読むよりも理解力が低いってほんと?


近年では情報を得る手段として、オーディオブックやポッドキャストなど「聴くメディア」が注目を集めている。
しかし一般的には、いまだに「紙で読まなければ読書とはいえない」というイメージが根強いようだ。

2016年に英国のインターネット調査会社YouGovが実施した調査によると、回答者のおよそ9割がオーディオブックによる読書は、紙の本を読むよりも、内容の理解度が低いと考えていると言う。
だが視覚障害者や失読症など紙に書かれた文字を読むことが困難な人々にとって、このような認識は教育や就労の面で不利益に作用しかねない。

本当に「耳で聴く読書」は、紙の読書よりも劣っているのだろうか?
英国The Telegraphオンライン版の記事によると、カリフォルニア大学バークレー校の研究者たちによる実験は、この世間のイメージとは異なった結果を示している。

9人のボランティアが参加した実験では、まずBBC Radio4で放送されたポッドキャスト「The Moth Radio Hour」を聴いた後同じ内容の記事を目で読みそれぞれで脳のどの部分が活性化されているかを調べた。
その結果研究者は、リスニングとリーディングでは、実質的に活性化される部分が同一であることを発見した。
つまり、情報を耳で聴く・めで読むにかかわらず、脳は意味情報を同じように処理しており、言葉を理解する上で両者に大きな違いはない、ということだ。これは先述の世間のイメージとは大きく異なる。

また同時に、視覚的、触覚的、数値的、位置的、暴力的、精神的、感情的、社会的など、言葉の意味によって脳の特定の部分が、同様に活性化されることもわかった。

研究者たちはこの実験結果を踏まえ、脳梗塞、てんかん、言語障害、脳障害、失読症などの人々の言語処理を比較するといった臨床応用も考えている。
例えば臨床実験によって失読症の子供がオーディオブックで理解を深めることが証明できれば、将来、教育の場にオーディオブックなどの聴覚教材を導入する後押しになる。
またスクリーンリーダーを利用する視覚障害者にとっても、音声読み上げの利用が仕事のパフォーマンスに不利とならないことがわかれば、就労の機会や職場環境整備の促進、、職域拡大にもつながるかもしれない。

筆者は中と全盲で、普段から音声デイジーやスクリーンリーダーを通じ「耳」から情報を得ているが、かつて「め」で情報を得ていた頃と比較しても、さほど入ってくる情報量に違いを感じていなかった。画像や動画といった視覚的なものは別として。
そう言う意味で、この研究結果は納得のいくものだった。メディアから言葉を受け取り脳で処理するという仕組みで言えば、指先で文字を読み取る点字でも同じことがいえると想像できる。手話や指点字でも同様だろう。

もちろん視覚的な情報と聴覚的なそれとは得られる情報の種類に違いがあり、読み取るスピードも(個人のスキルにもよるが)差がある。完全に代替できるものではないが、少なくともインプットされた言葉の意味を理解する機能が同様であることがわかれば、感覚や学習能力に障害を持つ人々が無駄な劣等感を抱かずに済むはずだ。
新しい技術が登場すると、競合する旧来勢力から根拠のないレッテル貼りが発生することはしばしばみられるが、オーディオブックに対するイメージも、もしかしたらそのような力が働いていたのかもしれない。このような研究がスティグマを払拭し、障害を持つ人々の情報取得や社会参加の障壁を下げてくれることを望みたい。

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支援技術関連記事まとめ(2022年11月)※お知らせあり。

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