2022年3月15日火曜日

韓国Dot Incなど、画像認識AIによる物体識別プラットホーム「Dot Go」発表。認識結果からアクションをトリガーし視覚障害者の行動を支援。

※2022/5/18追記:Dot Go Assistantが正式にリリースされました。



「Dot Watch」などの視覚障害者向け機器の開発で知られる韓国のスタートアップDot Incorporationは、Serviceplan Koreaなどと共に、視覚障害者向けの新しい画像認識プラットホーム「Dot Go」を2021年秋に発表しました。

これは画像認識AIとLidarスキャナにより、スマートフォンで撮影した写真からオブジェクトを識別し、物体までの距離と共に音声で視覚障害者へ伝達するシステムです。

Dot Goが既存の物体識別アプリと異なるのは、認識したオブジェクトに対し様々なアクションを「「if this, then that」のルールに従い実行できるという点にあります。

活用例として、美術品を識別したらWikipediaの該当ページを開いたり、「止まれ」の交通標識を認識したらスマートフォンの振動で注意を促す。バス停を見つけたら時刻表を自動的に読み上げるといった用途が示されています。


これらのアクションは、ユーザー自身で「プリセット」として自由に追加・カスタマイズでき、他のユーザーと簡単に共有することも可能です。

またプリセットはサウンドや振動といったスマートフォン内部での処理だけでなく、スマートホームなどのIOT機器やウェアラブル機器といった外部デバイスの制御も可能とのこと。

つまりこれはDot Goを活用すれば画像認識を応用した家電や歩行ナビゲーションデバイスなどが短時間かつ低コストで開発可能であるということを意味します。


またベータ版アプリのインストラクションによるとDot Goでは「ライブラリ」(画像認識に必要なデータセット)を、ユーザーの地域や使用目的に合わせて組み合わせることが可能であるようです。

従来の画像認識アプリでは、用いられているデータセットが固定されているため、アプリや使用する状況によって認識精度がまちまちでした。

複数のデータセットを組み合わせることができれば、用途に応じた最適な結果を得られる可能性が高まりますし、新しくリリースされたデータセット(例えばWoven Planetらによる屋外ナビ向けデータセット[過去記事])にも比較的容易に対応できると考えられます。


Dot Goについて、Dot社は単なる物体識別アプリではなく、視覚障害者の生活と行動を支援することを目的としたプラットホームとして設計されていると述べています。プリセットやライブラリによるカスタマイズ性と、外部デバイスやサービスとの連携といった拡張性の高さがDot Go最大の特徴と言えるでしょう。あとはいかにして高品質なデータセットが使えるか、ですね。


現在iPhone用アプリをリリースに向けテスト中ですが、並行して世界中の障害者支援組織とのパートナーシップも進められています。

すでに南米ではBorn2Globalセンターと米州開発銀行グループからの資金援助を受け、インクルーシブ旅行サービスWheel the Worldとのコラボレーションによる視覚障害者向け移動サービスを2022年春のローンチをめざして準備中とのことです。


年末にも予定されていた個人向けDot Goアプリのリリースはやや遅れているようですが、動作環境(Lidarを搭載したiPhone)を所有していればTestFlightからテストに参加することもできます。私のiPhone 7はLidar非搭載なのでむりでした残念です。

従来の物体認識アプリでは(精度はともかく)物体の名前や距離は教えてくれるものの、そこから先はユーザーの判断に委ねられることが多く、実用性という意味では物足りない印象でした。

オブジェクト認識からアクションをトリガーするというDot Goのアイデアは、精度が確保され、かつ適切に動作するのであれば視覚障害者の行動を大きく支援する可能性を持っていると言えるでしょう。使い道を想像するだけでも、なかなか夢が広がります。


参考:Dot Go: Serviceplan And Dot Incorporation Develop First Customisable Object-Recognition Platform For The Visually Impaired – Marketing Communication News (marcommnews.com)


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