画像引用元:swisstech
「biped.ai」は、スイス・ローザンヌに拠点を置くスタートアップbipedによって開発されている自律走行車の技術からインスピレーションを受けた、視覚障害者向けのウェアラブルデバイスです。
ベルトで肩に装着するハーネス型のデバイスには3Dカメラと各種センサーが組み込まれており、前方にある障害物をAIを用いて識別し、その位置と距離を立体音響によって伝達します。またBluetooth経由でスマートフォンと接続し、GPSを使ったナビゲーションやチュートリアルを実行することも可能です。重量はおよそ900グラム、最大で6時間駆動可能なバッテリーを備えています。
biped.aiに搭載されている「Copilot(副操縦士)」と名付けられたAIアルゴリズムは、十数種類の物体をセンチメートル単位で識別し、歩行の妨げになりそうな障害物だけをフィルタリングして追跡する機能を持っています。
ユーザーは骨伝導ヘッドホンから聞こえてくる音声の方向から、数秒先に遭遇する可能性のある障害物を予測し衝突を回避することができるというわけです。サンプルを聞くと、効果音の方向と再生間隔で物体の位置と距離を表現していることがわかります。
搭載されているカメラの視野は170度あり、近づいてくる自転車など左右からとっさに出現する障害物にも対処できます。これは視野に障害のあるユーザーにとっても有用かもしれません。
開発者はこのデバイスの特徴の一つとしてフィードバックのスピードを挙げており、類似のデバイスと比べ最大で10倍の応答速度を持っていると語っています。ただ足元の微妙な凹凸は検出することができないため、歩行中は白杖との併用が推奨されています。
biped.aiはローザンヌの眼科病院the Jules Gonin Eye Hospitalの協力を得て開発が進められており、現在は視覚障害者と関係者を対象にプロトタイプのテスターを募っています。また先日には2022年夏に予定されている正式リリースに向け、150,000スイスフランの資金調達も発表されました。
視覚障害者向け障害物検知デバイスは、これまでにも様々なタイプのプロジェクトが登場しています。しかし残念ながら製品化されず頓挫してしまうことも少なくありません。このブログでも多くのプロジェクトを紹介してきましたが、継続しているプロジェクトは少数派でしょう。持続可能な支援技術を実現することの難しさを感じる今日この頃です。
biped.aiは、肩に装着することで得られるメリットやAIアルゴリズムの性能によっては注目を集める可能性を持っている、かもしれません。当事者はもちろん、出資者を失望させないという意味でも、無事にリリースされることを祈るばかりです。
参考:Helping visually impaired people better navigate daily life | swisstech
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