画像引用元:BBC Newsround
2021年7月1日、大手食品メーカー、ケロッグは、navilensテクノロジーの二次元コードであるddTagsを、同社がヨーロッパで販売する全てのシリアル製品のパッケージへ導入し、視覚に障害のある顧客のアクセシビリティ向上を目指す取り組みを発表しました。
同社は2020年10月、英国の支援団体RNIBの協力を得て「Coco Pops」のパッケージにnavilensコードを導入する実証実験を行いました。今回のパッケージ変更はこの実験から得られたフィードバックをもとに、これを幅広い製品と地域に拡大するものです。
2022年1月の「Special K」を皮切りに、順次スーパーマーケットなどの店頭にnavilensコードを印刷したパッケージが並ぶ予定となっています。
参考記事:スペイン発。視覚障害者をカラフルに誘導する「navilens」。
視覚に障害のある買い物客は、navilensアプリを起動したスマートフォンを用い、最大3メートルの距離から商品のパッケージをカメラでとらえ、成分やアレルギー情報などを取得し音声で読み上げたり拡大して読むことができるようになります。
視覚障害者が商品の情報を得る手段としてこれまでもQRコードやバーコードをスキャンする方法がありました。ただこれらの方法はコードが印刷されている場所を正確に特定しなければならず使い勝手は良くありません。
離れた場所や斜めからコードをスキャンできるnavilensなら、商品棚のある方向にスマホをかざすだけでコードを見つけ、陳列している場所まで誘導することもできます。
ソーシャルディスタンシングが叫ばれる中、店員や商品との不必要な接触を最小限に抑えるだけでなく、同時に複数のコードをスキャンすることで視覚障害者が目当ての商品を探しやすくな理、買い物の時間を短縮できるというメリットも考えられます。
特に商品棚までは自力でたどり着くことはできても、パッケージの文字が読めない、ロービジョンの人々にとってはこのパッケージ変更は利便性を大きく向上させるものになるでしょう。また細かい文字で書かれた成分表が読みにくい高齢者にとっても有益かもしれません。
navilensはこれまでもスペインや米国の公共交通機関、美術館などの施設を中心に導入が進められてきましたが、大々的に食品のパッケージへ採用されるのはこれが初めてとのことです。従来と大きく異なるのは、一般に向けnavilensコードの露出が増えるということでしょう。ケロッグのシリアルを置いていない食料品店は少数はでしょうからね。これまでとは比較にならないほど多くの人々の目にこのカラフルなコードが止まるはずです。露出が高まることでnavilensへの関心が高まり、他の食品メーカーへの波及効果にも期待できるかもしれません。利用者の立場としては、できるだけ多くの商品が識別できなければ意味がありません。視覚障害者が食べるのはケロッグのシリアルだけではありませんからね。
今回の取り組みは食品に対するアクセシビリティ向上への第一歩と考えるべきでしょう。そのような意味で、大手メーカーであるケロッグの影響力には注目したいところです。それと同時に、このようなサービスを持続させるためには周知活動やスマートフォンの普及など、視覚障害者側にもやれることは多くあるようにも思います。
私が店員さんのサポートでお買い物をする場合、特に忙しい時間帯などでは並んでいる商品を端から端まで説明してもらうのは気がひけてしまいます。結局自分が思いつく範囲で「○○みたいなのありますか」と商品を探してもらうことが多いんですよね。でもそれだと新しい商品への出会いがなく至極つまらないお買い物になりがちです。スマートフォンをかざして並んでいる商品が一覧できれば、思いがけない商品を見つけられるかもしれません。
近年ではパンデミックの影響もあり、無人店舗やセルフレジの導入など食料品店の環境が大きく変わりつつあります。しかしその一方、新しい技術にアクセスできず疎外されている人々から懸念の声も挙がっています。navilensに限らず、様々なアプローチから食料品店全体のアクセシビリティ向上を進めて欲しいものです。
誰もが商品を自由に選べて買える。そんな未来、いつかきて欲しいものですね。
参考:The codes helping visually-impaired people shop - BBC News
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