※一週間で見つけた支援技術、主に視覚リハに関する記事のメモ書き。基本月曜更新。(ギリギリです)
※乱文・誤変換ご容赦です。
※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。
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2020年9月の支援技術関連リンクまとめテキストを公開しました。
ダウンロードはこちらからどうぞ。
○米AFB、Covid-19の視覚障害者に与えた影響の調査レポートを公開。
2020年9月30日、米国において視覚障害者を支援する非営利組織であるAFB(American Foundation for the Blind)は、Covid-19の感染拡大が視覚障害者に及ぼした影響についての調査レポート、およびその結果を踏まえた提言をまとめた文書「Flatten Inaccessibility」を公開した。
このレポートはパンデミック開始直後の4月3日から13日に米国在住の1,921人の視覚障害者(成人)から寄せられたアンケート調査がベースとなっており、報告書は10のセクションにわたってCovid-19が視覚障害者に与えた影響について分析している。この調査にはAIRAやBe My Eyesと言った16の関連団体も協力した。
報告書のPDFダウンロードはここから、調査のサマリーおよびAFBからの提言の要約はここから読むことができる。加えてAFBはこのレポートを踏まえ各機関へ働きかけるためのヒントも公開している。
この調査はインターネット経由で行われており、人種や年齢にもやや偏りが感じられるため必ずしも視覚障害者全体の傾向を示しているとは言い切れないが、移動や買い物、デジタルアクセシビリティ、雇用などCovid-19によって新しい問題が発生し既存の障壁が改めて強調されていることが読み取れる。視覚障害者の個人的な体験による問題提起はこれまでもしばしば語られてきたが、このような大規模な調査によって改めてそのような課題に説得力が与えられたと言えるかもしれない。
○英国、視覚障害者の自宅を訪問した警察官が身分を証明する新しい仕組み。
Blind woman's campaign leads to police ID scheme launch - BBC News
英国ウェストヨークシャー警察は、緊急通報をもとに警察官が視覚障害者の住宅を訪問する際、事前に発行されたパスワードによって身分を証明する新しいシステムを導入した。通報者が緊急通報した際、オペレーターに視覚に障害があることを告げると認証用のパスワードが発行される。その後訪問した警察官がそのパスワードを確認することで警察官であることを証明する仕組みという。このシステムは視覚障害の程度を問わず誰でも無料で利用できる。
このアイデアは視覚に障害を持つ女性の訴えをもとに考案された。これまでも点字IDによる確認方法はあったが、不携帯が多く点字の識字率を考えるとあまり効果的な手段ではなかったという。このような状況は訪問者の姿や身分証を目視できない視覚障害者、特に一人暮らしの女性にとっては大きなセキュリティリスクだ。例えば空き巣被害で通報した後に犯人が戻ってこないとも限らない。
パスワード、要するに「合い言葉」はシンプルだが高齢者にもわかりやすく結構良いアイデアかもしれない。この仕組みを応用すれば警察だけでなく宅配業者や施設点検などを装ったなりすましによるトラブルも未然に防ぐ効果もありそうだ。
○今週のゲーム関連トピックス。
その1. GAConf 2020 Saw Over 1200 Registrations, Talks Now Available Online
ビデオゲームのアクセシビリティについて幅広い分野のスペシャリストが議論するカンファレンス#GAconf(Game Accessibility Conference)が2020年9月28日から29日の2日間オンラインで開催された。このイベントはIGDA Game Accessibilityが主催し、2017年から毎年開催されている。
MicrosoftやNaughty Dog、UBIsoftといったAAAゲームメーカーからインディーゲーム開発者、研究機関、そして障害を持つ当事者ゲーマーに至るまで数多くのセッションがスケジュールされ、ゲームのアクセシビリティの現在とこれからの課題について活発な意見交換が行われた。
今年はオンラインでの開催となったが、イベント登録者数および視聴者数は前回から大幅に増加しゲームのアクセシビリティに対する関心の高まりが感じられたようだ。セッションのアーカイブ動画は公式YouTubeチャンネルから視聴できる。
その2. Share Your Video Game Accessibility If You Can Talk About Customizable Penises
ゲームメーカーにとって発売前の作品に関する情報は最高機密であり、これらの情報はNon-Disclosure Agreements(秘密保持契約)に基づき厳重に保護されている。メーカーのWebやゲーム情報メディアから発信されている、いわゆる「解禁」された情報を除けば、、原則的に一般ゲーマーまで伝わることはない。例えそれがアクセシビリティに関する物だったとしてもだ。
だが障害を持つゲーマーにとってアクセシビリティの情報は、プレイ可能かどうかを判断するための重要なものだ。一般的なゲーマーに置き換えると、どの機種でリリースされるの? 必要なPCスペックは? 年齢制限はあるの? くらい超基本的な情報。秘密にすべきではないし秘密にする合理性もない。だが解禁されていないので外には出せない。結局この状況を変えるには、メーカーが積極的にアクセシビリティに関する情報を公開する意識を持つ必要があるのだろう。「アクセスできない」という情報も含め。
現状はアクセシビリティに積極的に取り組んでいるごく一部のメーカーは率先して情報を出しているように見える。逆に情報を出さないメーカーはアクセシビリティに無関心である可能性が高いといえる。でもユーザーから情報開示をしつこく求めれば意識も変わる可能性はある、かもしれない。
その3. How Do You Audio Transcribe an Entire Video Game?
先日エントリーした記事の裏話的な話題。
「The Last of Us Part II」は、視覚に障害を持つゲーマーにとって画期的なAAA作品だった。豊富に用意されたアクセシビリティオプションを調整すれば、画面をみなくても一人でゲームをクリアすることができる。だが現状では目の見えないプレイヤーが一般ユーザーと「同じ体験」ができるか?といえば、残念ながらまだ改善の余地はある。
そしてその鍵を握るのは音声によるコンテンツ解説かもしれない。これまでNetflixなどで副音声による音声解説を制作してきたDescriptive Video Worksは、そのノウハウをゲームの世界にもたらそうとしている。
とはいえいきなりゲーム本編に音声解説を加えるにはまだ多くの障壁がある。そこでまず注目したのがゲームの予告編ムービーだ。彼らはUbisoftと協力し「Assassin’s Creed Valhalla 」など2020年以降に発売が予定されているいくつかの予告編に音声解説を加えた。
これは数分の短い動画にすぎないが、これまでゲームのビジュアルについてほとんど情報が得られなかった視覚障害者にとっては、ゲームの世界観を感じ登場人物の雰囲気を把握できる貴重なものとなっている。これがあるのとないのとではプレイ中にイメージする内容は大きく違ってくるはずだ。
もちろんこれは始まりに過ぎない。彼らが目指すものは、ゲーム本編全体に音声解説をもたらすことなのだ。だがそれを実現するためには映像とは異なる全く新しい音声解説のアプローチが必要になってくるだろう。
技術の進歩により視覚障害者が楽しめるメディアは広がりつつある。音声解説でテレビや映画が(まだ不完全とはいえ)開放されたように、ゲームもいつのひかバリアなしで楽しめるのが当たり前になるかもしれない。
○その他、今週気になったトピックス。
その1. iPhone用アプリ「Envision AI」。がアップデート。画像やPDFに加えePubおよびWordドキュメントをインポートし解析することができるようになった。
その2. iPhone用アプリ「LetSeeApp」がアップデート。プラスチックカードの識別、明るさ検出、紙幣識別昨日を持つが、今回のアップデートで日本円の識別に対応した。(アプリ内購入で120円)。アプリ自体は日本語かされていないためあくまでも訪日外国人むけかな?
スコットランドにおけるCovid-19関連の数値をまとめたサイトで、視覚障害者向けにsonification,(音響化)したデータが公開されている。このサイトにある「Listen to audio representation of daily cases for Scotland」をクリックすると、選択した統計データの変化を音階で聞くことができる。
なお米国のCovid-19統計データのsonificationについて書いた記事はこちら。
その4. Voice Shopping is now available for over 4 million eCommerce websites - EIN Presswire
オープンソースの eコマースソリューションを提供するWooCommerceは、新たに音声でショッピングを体験できるWordpressプラグインをリリース。カートに商品を入れたり、レジに進むと言った操作を音声で実行できるという。
ウクライナの首都キエフにある世界遺産、聖ソフィア大聖堂で、視覚障害者が建築物を触覚で体験できる3D触覚模型が公開された。この建築物のモデルは、見える訪問者が全体を把握するためにも活用される。
その6. NUIG develops 'JediGlove' to help people with sight problems sense objects - Galway Daily
視覚障害者向けスマート手袋「Jedi-Glove」。超音波と深度センサーを用い、障害物の位置を装着者に伝える。障害物の距離と位置に応じて各指がさまざまな強さで振動する仕組み。ネーミングが良いね。
インド。さまざまな紙に触覚図を描けるツール「Roulette」。専用用紙不要なので低コストで触図を作成できるのが大きな特徴。主に数学の授業など教育げんばでの活用が考えられている。
その8. The journey continues – Journey out of darkness
脳インプラントによる人工視覚「Orion」などをを開発しているSecond Sight社。Covid-19の影響で大幅に経営が悪化し、大規模なレイオフや上場廃止などが伝えられたが、なんとか研究開発や被検者へのサポートは続くようだ。すでにインプラントが埋め込まれた被検者は一安心だろう。世界各地でインプラントの治験が伝えられているが、被検者の安全を第一に考えて欲しいものだ。
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