2020年1月17日金曜日

スマートコンタクトレンズ「Mojo Lens」がロービジョンの生活を改善する?


2020年1月16日、米国カリフォルニアに拠点を置くスタートアップMojo Visionは同社が開発中のスマートコンタクトレンズ「Mojo Lens」のコンセプトを発表した

Mojo Lensは超小型のディスプレイを搭載したハードタイプのコンタクトレンズ。スマートフォンの画面を見たりxRグラスなどを用いずに、現在見ている視界に重ね合わせてあらゆる情報を得られるという、なんとも未来的なデバイスだ。
同社はこの体験を「インビジブル・コンピューティング」と名付けている。

Mojo Lensには、極小・高密度のダイナミックディスプレイ、電力効率の高いイメージセンサー、視線追跡および画像安定化のためのモーションセンサーなどの先進的で独自の技術が盛り込まれている。
中でも2019年5月に発表された「Mojo Vision 14K PPIディスプレイ」は、14,000ppiを超えるピクセルピッチと200Mppiを超えるピクセル密度を持つ、世界トップクラスの技術を持つという。
現時点ではメインとなる処理やネットワーク接続は手首に装着されたデバイスで実行され、電力とともに独自開発されたワイヤレス技術を用いてコンタクトレンズへ送信される。同様にレンズのセンサーから得られた情報もワイヤレスで伝送される仕組みだ。
このデバイスは10年もの間秘密裏に開発が進められていたという。

発表会では実際にレンズを装着することはできなかったようだが、視線追跡機能を搭載したVRヘッドセットを用いたデモンストレーションが行われた。デモでは視野の中に出現する情報や視線の動きを用いたユーザーインターフェイスが説明された。
たとえばスマートフォンからの通知を受けたり、天気やスケジュールの確認、現在地のさまざまな情報などを、現在見ている風景にオーバーレイして表示してくれるという。表示やアプリのコントロールは視線の動きで行う。地図アプリと連携すれば、進むべき方向を矢印で示したりできるようだ。医療現場や製造工場、メンテナンス業務などにおけるスマートグラスの置き換えも想定されている。
まあ、これをどこまで便利に思うのかは人それぞれだとは思うが、画期的なデバイスであることは間違いないだろう。アイデア次第では、スマホやコンピューターの使い方を根本から帰る可能性を秘めている(かもしれない)。

そしてMojo Lensがまず実現させようとしているのが、網膜色素変性症や黄斑変性などの眼病が要因で視力が低下し、日常生活に不便を感じているロービジョンの人々の支援だ。
レンズに搭載されたイメージセンサーで撮影した映像のコントラストやカラーを調整したり、物体の輪郭を強調、拡大縮小処理などを施すことで、そのような人々の「見え方」を改善しようというわけだ。
たとえば夜盲の人が暗い場所で自由に移動できたり、視野が狭い人が残された部分を拡大縮小させて視力をコントロールする、といったことが特別なデバイスを用いずに実現するかもしれない。
このようなデバイスはすでにメガネ型の製品が実用化されているが、価格はともかくお世辞にもスタイリッシュなものとは言い難い。コンタクトレンズによる視覚補整が実現すれば、ニーズは確実にあるだろう。
同社はカリフォルニア州パロアルトにある視覚リハビリテーション施設「Vista Center for the Blind and Visually Impaired」と提携し、視覚障害当事者の協力を得ながらレンズの開発とテストを行なっている。

Mojo Visionがロービジョン支援を優先させるのには理由がある。
このレンズを市場投入するにはFDA(アメリカ食品医薬品局)による承認が不可欠。そこで同社は「FDA breakthrough Program」の認定を受け、FDAと連携することで、このプロセスを加速させようとしているようだ。これは医療・健康に関わる重要な技術開発の促進を目的としたプログラムで、製品審査や臨床試験において優先的なやりとりが行われるという。ロービジョン市場の規模は小さいが、目先の利益よりもまずより早い市場投入を目指しているということのようだ。

Mojo Lensはまだ研究開発段階であり、リリース時期は未定。先述のような状況から考えると、まず米国でロービジョン向けのデバイスとして実用化され、それに続いて一般向けにリリースされるという順番になるだろう。

ある意味、究極のウェアラブルディスプレイといえる「Mojo Lens」。
日の目を見るのはいつになることだろうか。


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