DotBook(画像引用元)
インド工科大学(IIT-D)の研究者は、視覚障害者向けの点字ラップトップデバイス「DotBook」を発表した。点字で仕様できるラップトップPCとしては、インド初の製品とのことだが、その特徴ゆえ世界各国の視覚障害コミュニティからも、にわかに注目を集めている。。
このスクリーンを持たないコンピューターは、リアルタイムに更新される点字ディスプレイと音声、そしてビルトインされているキーボードを用いて、内蔵アプリケーションを操作する。電子書籍やメール、Webからの情報を、タッチパッドに浮き上がる点字に触れて読んだり、音声で確認できるので、通常のスクリーンを見ることができない視覚障害者でも容易にさまざまな情報へアクセスできるようになる。
プロジェクトリーダーであるIIT-DのM. Balakrishnan教授を中心に、インドのスタートアップの技術協力と10以上の施設、200名以上のユーザーテストを経て、4年あまりの開発期間の末に完成した。ハードウェア、ソフトウェアの両面で視覚障害者が快適に利用できるよう、徹底的なチューニングが施されたオール・イン・ワンな製品である。
またDotBookは従来の点字デバイスと比較して低価格というのも大きな特徴となっている。Phoenix Medical社が提供する点字ユニットにはIITの特許技術「Shape Memory Alloy Technology」が採用されており、既存の点字ディスプレイと比較して60~70%のコスト削減を実現したという。技術の詳細は明らかではないが、その名称からして形状記憶合金的な技術を応用したものと想像される。点字デバイス最大のネックであるコストを抑えることで、低所得の視覚障害者の情報取得のハードルを大きく下げることが期待されている。
現時点で発表されているDotBookのラインナップは2種類。
40セルの8点式点字ディスプレイとQWERTYキーボードを搭載した「DotBook 40Q」。特徴とも言えるQWERTYキーボードは点字入力にも対応している。
そして「DotBook 20P」は20セルの点字ディスプレイと点字入力に用いるキー、ファンクションキーなどを搭載したコンパクトなモデルだ。
CPUにAM335x ARM Cortex-A8を採用、内蔵バッテリーを搭載し最大8時間の駆動が可能という。
無線機能はBluetoothおよびWi-Fiを装備。そのほかのインターフェイスとしてmicroSDカードスロットとUSBポート、ヘッドホンジャックも搭載されている。
基本はDotBookにインストールされているアプリケーションを点字パッドと音声、キーボードで使用する「スタンドアロンモード」だが、USBケーブルやBluetoothでWindows PCやAndroidスマートフォンと接続して外部、点字ディスプレイ&キーボードとして使用する「PC/Phoneモード」と切り替えて仕様することも可能という。WindowsではNVDA用プラグインが用意されているとのこと。
そして、やはりきになるのが内蔵アプリケーションだろう。報道などを読む限りでは搭載されているOSやストレージなどの情報は得られなかったが、サードパーティーのアプリケーションを追加して利用できることは可能らしい。
こちらのページによると、プリインストールされているアプリケーションは以下の通り(原文ママ)。
- File Manager
- Notepad & Word Processor - Read & Edit Text & Doc Files
- Screen Readers (NVDA: Windows PC & Laptops | Braille Back: Anroid OS)
- Web Browser
- Ebook Manager (Browse, Search, Download & Read eBooks - .brf, .epub, .txt, .pdf files)
うーん、かなり漠然としているような。
このリストにNVDAとあるのでWindowsを採用している可能性はあるが、もしかしたらPCモードでの話なのかもしれない。いずれにせよ発売までは間があるため、細かい仕様はまだ決定していない可能性が高い。今後の情報を待ちたい。
単体で動作し、アプリケーションを追加して使える点字端末としては、現在Androidベースの「ブレイルセンスポラリス」などがあるが、もしWindowsベースならDotBookはさらにビジネスや開発など活用範囲が広がりそうだ。
そして何よりQWERTYキーボードと点字ディスプレイが合体した圧倒的なガジェット感は非常に魅力的に見える。これ一台でオーケーというのもスッキリしていて良さそうだし。ほぼ全盲の筆者はその勇姿を確認することはできないが、一度手に触れてみたいものである。
インドでは2019年3月から予約を受け付け、年内には出荷開始されるという。まだ詳細なスペックや価格も明らかにはされていないが、全世界の視覚障害者にとって「Canute 360」に続いてまた要注目のデバイスが登場したと言えそうだ。
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