視覚障害者にとって「物を識別する」のは非常に難しいクエストだ。
基本的には、置いておく場所を決めておくとか、触った感覚を頼りに判別する。場合によっては重さや香りを頼りにすることもあるだろう。また点字を印刷したラベルを貼ったり、シールに対応した音声を再生するボイスレコーダー「i-Pen(アイペン)」といった便利グッズもあるが、シールの特性上、すべてのシーンで使える訳ではない。
一方「Google Lens」や「Seeing AI」といった人工知能の画像認識エンジンを用いた物体認識も登場してはいるが、判別はまだざっくりで日常の探し物にはまだ実用的とは言い難い。
この「物を簡単・確実に認識したい」というニーズに応えるべく開発された製品が、あらゆるものにタグをつける「WayAround」だ。
まだ日本では利用できないが、興味深い製品なので紹介しよう。
WayAroundは、NFC(Near Field Communication、近距離無線通信規格)を応用した、視覚障害者をターゲットにした製品。「WayTag」と呼ばれるNFCタグを衣服やキッチンの容器などに取り付け、専用アプリをインストールしたスマートフォンをそれにかざすと、事前に登録した情報を読み取ってスクリーンリーダーで読み上げてくれる。
WayAroundを利用するには、NFCが読み取れるAndroidスマートフォン、もしくはiPhone 7以降が必要だが、それ以外の機種でも同社が販売している周辺機器「WayLink Scanner(99.9ドル)」を用いることで、Bluetooth経由で読み取れる。
このシステムの主役ともいえるNFCタグ「WayTag」には、ステッカーやマグネット、クリップ、衣服などに縫い付けられるボタンといったバリエーションが用意されており、防水・耐熱仕様になっているので選択や乾燥機にかけても大丈夫とのこと。
価格も1個あたり1ドル前後と割安で、いろいろなものに気軽に取り付けられそうだ。残念ながら現時点では日本への発送は行なっていない。
WayTagには最大で2,000文字以上を登録できるので、使い方次第では面白い使い方ができそうだ。公式サイトの説明だけでは、登録された情報がWayTag側に保存されるのか、スマホ側に保存されて紐つけされた内容を表示するのかはわからなかった。
ただiPhoneのNFCは一般的なNFCタグの場合、読み出しはできても書き込みはできない仕様なので(Core NFCの制限)、少なくともiPhone単体で利用する場合はスマホ側に情報が保存されると予想される。
もしWayTag側に情報が記録されれば不特定多数のユーザーに情報を伝える手段として利用できそうだが、どうなのだろう。Androidならタグに書き込む仕様になってたりしないかな。
NFCタグというと、小売業など業務用途をイメージするが、視覚障害者が物を識別する方法として応用したのはアイデアの勝利といった印象だ。価格設定も納得できるし、視覚障害者だけでなく、応用次第で幅広いユーザーに訴求できる製品ではないだろうか。
WayAroundのキモはWayTagのバリエーションにあるのは大前提なのだが、原理としてはシンプルそうなので、市販のNFCタグとNFCが読み書きできるAndroidスマホ、汎用アプリを用いれば似たような仕組みは自作できるかもしれない。
機会をみて実験してみたい。
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