2018年9月17日月曜日

「Imaginary Soundscape」で「音」で「絵」を見る未来を妄想


「共感覚」という言葉を聞いたことはあるだろうか。
視覚や聴覚といった単一の刺激に対して、通常では感じない別の感覚が発生する能力だ。有名な例としては、特定の文字に色が見えたり、耳にしたメロディーによって色が見えるといったものがある。

これは一部の人々が持つ「特別な能力」と思ってしまうが、もっと広く考えれば、多かれ少なかれ誰もが持っている感覚ではないかと筆者は思っている。例えば写真に写っている風景や色調、明るさなどによって、記憶の奥底にひっそりと保存された「音」が想起された経験は、誰にでもあるだろう。

・真夏のビーチの写真なら波や海水浴客のざわめき
・晩秋の街路樹の写真なら、乾いた枯葉を踏む音
・クリスマスのイルミネーションならそれっぽい音楽

……といったように。風景から音をイメージしたり、匂いから風景を思い出すといった感覚の連鎖は、日常的に行われている。
ここではイメージから音の想起を例に挙げたが、当然ながら逆、つまり音からイメージを連想することも可能だろう。「花火」や「楽器」といった聴覚と視覚がダイレクトにつながるものはもちろん、風景や抽象的なイメージも、特定の「音」をきっかけに脳内に「絵」を浮かび上がらせることも可能かも知れない。
もしそのようなテクノロジーが確立したとしたら、資格に障害を持つ人々にイメージを伝える手段の一つになるだろう。
やっとここでアクセシビリティにつながった!

なぜこのようなことを書いたかというと、非常に興味深いサイトに出会ったからである。
それが「Imaginary Soundscape」である。

これはAIなどのテクノロジーを用いてさまざまな表現活動をおこなうQosmo, Inc.の徳井直生氏が公開しているWeb作品。
Web上の画像やアップロードしたイメージを元に、AIがそれに最もマッチした音を選んでくれるというものだ。なおMacのSafariではうまく音が再生されなかった。Chromeなら問題なく楽しめる。

これまでも画像や色を、何かしらのアルゴリズムで音楽や効果音に変換するようなソフトウェアを見たことがあるが、あくまでもそれらは偶然性やランダム性を楽しむものだった。だがImaginary Soundscapeは、機械学習によりイメージと音楽の「意味」を結びつける。
サイトにはサンプル作品として内外の名画が登録されており、筆者の記憶に残っているものがあったので試して見たが、雨や水音などの環境音が選ばれ、これならスクリーンリーダーと併用しても邪魔にならない。
正直なところ、音からイメージを想像できるか?と言われると、現時点では難しいと言わざるを得ないが、Webのメインイメージが記事全体の雰囲気を的確に表現しているのなら、そのイメージから生成されたサウンドは、記事が伝えたいメッセージを補強する要素になるに違いない。
AIの学習が進めば、その精度はより人間の感覚に近づいていくはずだ。

イメージの情報を視覚障害者に伝えるには、現時点で代替テキストがほぼ唯一の手段だが、もしかしたら「音」が加わる未来がくるのかも知れない。
そんな妄想を掻き立ててくれる作品だった。
ぜひ体験あれ!

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