今回もスクリーンリーダー使いの立場から、Webアクセシビリティのお話を軽く。
お題は「リンク」問題。
ハイパーリンクはWebのもっとも特徴的な機能の一つ。リンクは一般的に、テキスト中でのカラー変更やアンダーライン、メニューやアイコン、イメージといった要素で視覚的に明示されている。
だが音声を手掛かりにWebbbを探索するスクリーンリーダーユーザーにとっては、リンクを自由自在に扱うにはさまざまな問題が発生する。
そこで、スクリーンリーダー使いの筆者が、最近個人的にちょっと感じたリンクに関するアレコレについて書いて見たい。
「リンク地獄」。そして、地獄から生還する方法
何はともあれ、以下の記事を見ていただきたい。
この記事の本文にある、おびただしいリンク攻撃。
この記事に限らず、ニコニコニュースのオリジナル記事はこういう、とにかく細かく用語ページへリンクが張られているパターンが多いため、芸風というか、そういう編集方針で掲載されていると想像できる。
是非はともかく、というか筆者的にはこのしつこいくらいの徹底ぶりは嫌いではないのだが、デフォルト設定でスクリーンリーダーを使っているユーザーにとっては、この記事はまさに「リンク地獄」以外の表現しか見つからない。
というのも、スクリーンリーダーでWebを読み上げていく道中、リンクを発見すると、初期設定ではアンカーテキストとともに「リンク」と読み上げ、その位置にリンクが存在していることを知らせてくれる。これは、うっかりリンクを見逃してしまうミスを防いでくれる親切設計なのだが、この記事のような本文中にリンクが頻出する記事では、「リンク」という報告音声も頻出してしまい、内容を理解する妨げになってしまう。下手すると、本文よりも「リンク」と読まれた文字数の方が多いなんてことにもなりかねない。
気持ち的には本文中のリンクは程々に……とお願いもしたくなるが、スクリーンリーダーの設定で、このリンク報告を止めることができるので設定方法を記載しておこう。
・iOS(11.4.1)
1.設定を開き、「一般」>「アクセシビリティ」とタップ。
2.「Voiceover」>「詳細度」>「埋め込みリンク」とタップ。
3.「読み上げる」以外に設定する。
・macOS(10.13.6)
1.「VO + F8」を押してVoiceoverユーティリティを開く。
2.カテゴリから「詳細度」を選び「テキスト」タブを洗濯。
3.「リンク/添付ファイルが存在するとき」の設定を「読み上げる」以外に設定する。
・NVDA(2018.2.1jp)
1.「NVDAキー + Control + D」を押して「書式とドキュメント情報」を開く。
2.「要素」グループにある「リンク」のチェックを外す。またはAlt + Kをおす。
これでリンク要素の報告がされなくなる。
もちろん本文だけでなく全てのリンクでこの設定が有効になるため、リンクの場所がわかりにくくなってしまう弊害もある。
音声のトーン変更やサウンドで報告したり、要素ジャンプ機能でナビゲートすることもできるので、聞きやすさと利便性のバランスを考えつつ設定しよう。
アンカーにURLってどうなんだろう…
例えばこんな例。
「HONDA NSX」を忠実に再現 ワイヤレスマウス | ニコニコニュース
またニコニコニュースさんを例にしてしまって申し訳ないが、あくまでも例なので。
このように、URLをアンカーテキストにしているリンクがいまだに結構見られるのだけれど、この長いURLも、スクリーンリーダー使いを苛立たせる要因の一つなのである。
筆者は記事の本文を冒頭から連続読みさせ、ハンズフリーで読むスタイルなのだが、途中で冗長なURLが読み上げられると、それまでの内容が一気に吹っ飛んでしまう。URLそのものには情報が含まれないためだ。ページに1~2箇所くらいなら我慢してスキップさせるが、頻繁に遭遇すると、なかなかのストレスである。晴眼者にとってはURLはサクッと読み飛ばせるが、スクリーンリーダーはそうもいかない。生真面目に記号とアルファベットの羅列を延々と読み上げ続けてしまう。
リンクを張らずにURLを記載する場合は別として、あえてURLをアンカーにする必要は少ないように思うのだけれど、そのあたりのセオリーはよくわからない。
アンカーテキストにはページタイトルが望ましいし、どうしてもURLを明記するのであればならドメインレベルで止めていただきたいというのが、いちスクリーンリーダー使いの本音だ……。
とはいえ、、URLがアンカーになっていないと騙しリンクが不安……という声もあるかもしれない。だが、そもそもリンク先とアンカーテキストが同一であるという保証はないわけで、どちらかといえば、怪しいリンクやページに遭遇したら、こまめに現在アクセスしているURLを調べるクセを身につける方が安全なのではないだろうか。
macOSのVoiceoverなら、リンクにVOカーソルを合わせて「VO + Shift + U」コマンドで、クリックする前にリンク先のURLを調べることができる。
- また各種Webブラウザで、Macなら「Command + L」、Windowsなら「Control + L」もしくは「Alt + D」「F6」でアドレスバーに移動して、現在アクセスしているアドレスを調べられる。
スマートフォンやタブレットなら、アドレスバーへVoiceoverやTalkbackカーソルを移動させるか、直接タップして調べれば良い。
細かい話で恐縮しつつ。
あと最近は減ってはいるものの、音声だけではリンク先が広告なのか判別できなかったり、イメージがアンカーになっている場合に代替テキストが設定されておらずリンク先の情報が得られないなど、リンクにまつわるバリアはまだまだ多い。
スクリーンリーダー側でも外部リンクの通知などの対応が必要かも知れない。
とにかく、リンクはセキュリティにも直結する要素。
視覚障害者の情報生活をより快適かつ安全にするためにも、もっと議論されるべきテーマかもなと思うのだった。
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