2020年9月21日月曜日

A11Y Topics #008。LiDArを応用したナビシステム、Appleの触覚時計バンドの特許など。


※一週間で見つけた支援技術、主に視覚リハに関する記事のメモ書き。基本月曜更新。たぶん。

※乱文・誤変換ご容赦です。

※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。

※bloggerの仕様変更で見出しタグが付けられてません。「○」で検索してジャンプしてください。

※困ったな。


○LiDArを応用した視覚障害者向け屋内ナビゲーションシステム。

GoodMaps announces breakthrough indoor positioning technology to power accessible navigation application - GoodMaps


米国American Printing House(APH)の関連スタートアップであるGoodMapsは、スマートフォンアプリとマッピングツールをバンドルした視覚障害者向けの統合屋内ナビゲーションシステム「GoodMaps Explore」を発表した。このシステムはこれまでAPHが提供していたナビゲーションアプリ「ACCESS EXPLORER」をベースに開発されたもので、すでにiPhone向けアプリがダウンロード可能となっている(日本のAppStoreでは利用不可)。

一般的に屋内ナビゲーションシステムを構築するためにはまずフロア内のマップデータを作成する必要があり、これが非常に手間と時間がかかる作業だった。同社が提供するLiDArスキャナベースのマッピングプラットホーム「GoodMaps Studio」は、この工程を大幅に効率化したという。GoodMaps StudioではLiDArスキャナによりフロア内のさまざまな構造物やオブジェクトを立体的に記録し、屋内のマップデータを構築する。このマップデータとスマートフォンアプリ「GoodMaps Explore」のカメラが捉えた画像をマッチングすることでユーザーの位置を推測し、ナビゲーションを提供する仕組みだ。誤差は最大で1.5メートル程度とのこと。

これまで広く利用されてきたBLEビーコンを用いる方法と比較し、このシステムは測位精度が高く、導入・運用コストも大幅に軽減できると同社は語る。LiDArスキャナを視覚障害者ナビに応用する試みはいくつか見られたが、なるほどこの手があったかといった印象。これならスマホにLiDArが搭載されてなくても使えるもんね。


○Apple、スマートウォッチのバンドにアクティブな凹凸を生成し情報を伝達する特許。

Apple researching Apple Watch bands that can provide information in Braille | Appleinsider


先日のSeries 6やSEの発表で一掃の注目を集めているApple Watch。様々なセンサーが追加されインプット周りは進化し続けているが、情報のアウトプットに関しては相変わらずディスプレイと音声、シンプルな振動のみで大きな変化はない。だがAppleはこの状況を「触覚」で打破しようとしているのかもしれない。

米国特許商標庁は、Appleが2016年に申請した触覚機構を備えた時計のバンドに関する特許を公開した。Patently Appleの記事によるとこの特許は、スマートウォッチのバンドに仕込まれたソフトアクチュエーターを用いてベルトの表面もしくは内側に凹凸を発生させ、触覚によって時刻や通知などの情報を伝達するというもの。

現行のApple Watchでは振動で時刻を知らせるTaptic Timeという機能があるが、バンドにシンボルや点字を表現することで、より詳細な情報を伝達できるという。会議中や映画館といった画面や音で情報を取得しにくい状況での利用が想定されているが、視覚障害者や盲ろう者への情報伝達にも活用することができる技術だろう。

Appleはこの技術を将来的にリリースする(かもしれない)リングやスマート衣服などのウェアラブルデバイスへ導入する可能性も示唆している。


○バルセロナ。視覚障害者のバス利用を支援するシステムを導入。

Los autobuses de Barcelona ofrecen un asistente virtual para personas ciegas


スペイン、バルセロナ交通局(Transports Metropolitans Barcelona TMB)は、視覚障害者のバス利用をサポートするインテリジェントなシステムの導入を発表した。

バルセロナ市内にある役2,600のバス停留所と役1,080台のバス車両にBluetoothビーコンを設置。ユーザーのスマートフォンにインストールされたTMBアプリと相互通信するシステムを導入した。

視覚に障害を持つ乗客はTMBアプリを用いてバスの時刻や運行状況をリアルタイムに確認できる他、乗りたいバスのドライバーにメッセージを送信することもできる。また「Guide to Step option」機能により乗りたいバスが到着したか、停止しているか、ドアが開いているかなどの情報も提供する。これは複数の路線が混在しあらゆる方向へ向かうバスが集中するターミナル停留所で特に便利だろう。これに加えそれぞれの停留所にはnavilensのコードが導入され、視覚障害者が目的の停留所を見つける手助けをしてくれる。

またこれとは別件で、同じくスペインのサラゴサではバス停留所にnavilensを試験導入することも発表されている

鉄道と比較するとバスの利用は複雑で、障害を持っていなくても乗り間違いなど起こしてしまいがちだ。このようなシステムは視覚障害者に限らず、土地勘の乏しい観光客やビジネスパーソンなどにとっても有益だろう。


○盲導犬団体がBe My Eyesと提携。専門的なサポートを提供開始。

Guide Dogs for the Blind joins Be My Eyes!


北米地域で最大の盲導犬団体であり盲導犬の育成やトレーニングなどを行うGuide Dogs for the Blind(GDB)は、マイクロボランティアサービスBe My Eyesと提携し、同アプリの「スペシャライズド・ヘルプ」を通じたサポートを北米在住の視覚障害者に対し提供することを発表した。盲導犬団体がBe My Eyesとのパートナーシップを結ぶのはこれが初めてとのこと。

盲導犬ユーザーは、パートナーの健康チェックやフードのパッケージの識別、ハーネスの問題に至るまで、盲導犬に関わるあらゆるサポートをスマートフォンのビデオ通話を介して受けることができる。専門知識を持つサポートと迅速に接続できることは、盲導犬ユーザーには心強いだろう。


○リードユーザーとしての障害者。イノベーションは障害者のニーズから生まれる。

Why People With Disabilities Are Powerful Drivers of Innovation | Muse by Clio


どれだけマーケティングを尽くしたとしてもマジョリティのニーズからは世界を変革するようなアイデアはなかなか生まれてこない。市場はマジョリティの枠からはみだすことで斬新なアイデアを捻り出そうとするが、本当に画期的なアイデアは「枠の外」にこそ存在している。これまでも世界を変えた多くの発明は、障害を持つ者のニーズから生み出されている

記事では最近の例としてマルチタッチディスプレイや音声アシスタント、歴史的には歩道の縁石カットやタイプライター、蓄音機などが挙げられている。障害者のための技術が結果としてあらゆる人々に恩恵をもたらすという、いわゆる「カーブカット効果」としては他にもエレベーターや映像のキャプションなども含まれる。

障害者をリードユーザーとしてとらえ、ユニークなニーズを救い出すことが世界を変えるイノベーションに繋がるのではないだろうかというお話。


○ゲーム関連トピックス。


その1. Marvel’s Avengers’ accessibility options are severely limited - Polygon

「Marvel’s Avengers」は、リリース前からそのアクセシビリティオプションの充実についてアナウンスされてきた作品だった。参考記事1参考記事2

だがいざ発売されてみると一部の障害を持つゲーマーは、その前宣伝とのギャップに落胆を隠さない。この記事では、ロービジョンのプレイヤーがキャプションのカラー調整やゲームプレイに直接影響のあるHUDの視認性などに関してアクセシビリティの不足を指摘している。それはリリース前の報道からイメージしたものとは大きくかけ離れていたものだったようだ。

「Gears 5」や「The Last of Us Part II」といった優れたアクセシビリティオプションを持つ作品の後では、求められるハードルが高まっているのは事実。だが一方であのレベルのアクセシビリティを実現するためにはまだ時間もノウハウも不足している。アクセシビリティは一夜にして成らずである。

ゲームのアクセシビリティに注目と期待が集まる中、これからはメーカー自身が作品のアクセシビリティを慎重に評価し、ユーザーに対し正確な情報を誠実に提供することが求められてくるだろう。


その2. 次世代コンソールの没入型サウンドに期待。

PS5もXbox Series Xも発売日や価格がアナウンスされ、いよいよ盛り上がってきた次世代コンソール。アクセシビリティに関する情報はほとんど入ってこないが、期待はしておきたいところ。

視覚障害者としては、次世代コンソールの特徴である「没入感」がアクセシビリティへの扉を開く可能性を秘めていると考えている。以前に取り上げたPS5の触覚技術もその一つ。

そしてもう一つが「音」。PS5ではTempest” 3Dオーディオ、XboxではDolby VisionとAtmosをサポートし、音による空間表現が大きく進化しているようだ。これらの技術により「TLOU2」のようなスクリーンレスでプレイできるゲームがもっと登場して欲しいものだ。


2020年9月14日月曜日

A11Y Topics #007。スペインのアクセスできない接触追跡アプリ、米国ADA訴訟が減少など。

※乱文・誤変換ご容赦です。
※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。

スペイン。接触追跡アプリのアクセシビリティが問題に。


スペイン政府が公式にリリースしたCovid-19感染者接触追跡アプリ「RadarCOVID」が、視覚障害者にとってアクセシブルでないことがわかり問題になっている。このアプリはスマートフォンのスクリーンリーダーに対応しておらず、初回起動時に現れるプライバシーポリシーの確認画面から先へ進むことができない。またアプリのメイン画面にあるボタンやタブにはラベルがつけられておらず音声で使用することが難しいという。
スマホ使いの視覚障害者にとっては日常的に遭遇するガッカリアプリの典型だが、公共性の高いアプリだけに残念な感じは否めない。場合によっては健康や生命を危険に晒す可能性もあり、早急な改善が求められるだろう。
接触追跡アプリは世界各国でリリースされているが、各所でアプリ自体やその関連情報へのアクセシビリティの不備が指摘されている(インドニュージーランドオーストラリア)。今月下旬には英国で同様のアプリがリリース予定だが、果たしてアクセシビリティは確保されているのだろうか。なお日本のCOCOAは今のところ使えている。

米国。Covid-19の影響でADA Title III訴訟数が激減。


いまだCovid-19感染拡大の終息が見通せない米国。そんな中、2020年前半に連邦裁判所に提起されたADA Title III関連の訴訟数が前年と比べ大幅に減少したことが報じられている。
ADA Title III訴訟は米国の中でもカリフォルニア、ニューヨーク、フロリダの3州が吐出して多く、その数は右肩上がりで増加し続けてきた。だが今年の4月、5月にこれらの州で厳しい外出規制が実施されたことで訴訟の数が大幅に減少、その結果が全体の数に影響を及ぼしたようだ。
ただ経済活動が再開されるにつれ訴訟の数は再び増加傾向にある。Covid-19流行に伴い一気に需要が高まったネットショッピングやリモート教育、テレワークなどのデジタルアクセシビリティの問題、マスク問題など新たな火種がくすぶり始めたこともあり2020年後半は急激な増加へ転ずる可能性もある。
Covid-19の影響はこんなところにも現れてくるのだなあ。詳しい数字などは元記事をどうぞ。

Google Playゲーム、視覚アクセシビリティの絞り込み検索に対応。


GoogleがAndroid上のPlay Gameストアアプリに新しい検索フィルタを追加したと報じられている。検索セクションにある「詳細表示」をタップすると、有料/無料、広告の有無、アプリ内購入の有無などの条件を指定して検索結果を絞り込むことができるようになったとのこと。ここで注目したいのがBlind Accessibilityという検索条件。これを使えば視覚アクセシビリティに対応しているゲームを検索結果から絞り込めるようだ。
現在手元にまともなAndroid端末がないためまだ確認はできていないのだが、これがどのレベルのアクセシビリティを指すものなのか、そもそもどれだけヒットするものなのか興味深い。もしこの機能が実用的に動くのだとしたら結構大きな影響をもたらす変更ではないかと思ったりする。
ユーザーがアクセシぶるなゲームの情報を得やすくなると同時に、開発者に対しアクセシビリティを意識させる一つのきっかけになるかもしれない。まあ本当はこんなフィルタしなくても、全部のゲームがアクセシブルであるべきなんだけどね。

触覚を感じられるグローブ型ウェアラブルデバイスを開発。


オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学の研究者は、圧力や振動などの触覚を感じることができる手袋方のウェアラブルデバイスのプロトタイプを開発した。手袋の指先内部には3-Way指向性skin stretch device (SSD)と呼ばれる筋肉を模したアクチュエーターが備えられており、装着者はこれを通じて指先に自然な触覚を感じられるという。従来の類似技術と比べ、ソフトで軽量、薄い素材であるため、より幅広い用途に用いることができると研究者は騙る。
コノデバイスは遠隔医療やVRなどのエンターテイメント分野への応用が考えられているが、視覚リハビリテーションにおいても障害物などの情報伝達や指点字などさまざまな用途が考えられるだろう。
Covid-19感染拡大により人同士の接触が避けられている昨今、このような仮想触覚デバイスが求められているのかもしれない。でも手袋型デバイスって、なかなか実用化されないんだよね。

イタリア。QRコードで視覚障害者の買い物を支援するシステム。


イタリアのスタートアップが開発した「Narrative Label」は、QRコードを用いて視覚障害者のショッピングを支援するシステムだ。商品パッケージに貼付されたQRコードをスマートフォンでスキャンすればその商品の詳しい情報を音声で読み上げてくれる。将来的に食品メーカーと協力し、視覚障害者の利便性向上を目指すという。
小売店における慢性的な人手不足が叫ばれる昨今、テクノロジーによる視覚障害者の買い物支援は喫緊の課題だろう。電子タグからバーコード、QRコード、コンピュータビジョンに至るまで様々なソリューションが検討されているが本命はどれだろう? 全盲でも一人で颯爽と無人コンビニを利用できる日が待ち遠しいね。

eコマースのアクセシビリティはWebに限らないというお話。


Amazonは全ての出品者に対し顧客とのコミュニケーションに関するガイドラインを改定し、連絡メールに絵文字やアニメGIF、Typoを使わないなどアクセシビリティに関する幾つかの規定を追加した。このガイドラインは2020年11月3日より適用される。
これらの規定は顧客からの苦情をもとに制定されたとのこと。確かにマーケットプレースなどから商品を購入した場合、送られてきたメールがスクリーンリーダーでは読みにくい、なんてこともあった記憶がある。このようなメールにはキャンセルポリシーなど重要な情報も含まれているため、アクセシビリティには極力配慮して欲しいものだ。
ネット通販のアクセシビリティというとどうしてもWebだけに目が行きがちだが、メールのアクセスは意外な落とし穴なのかもしれないと思ったのだった。
あと全然関係ないけど最近、かなり頻繁にAmazonを騙るフィッシングメールが届くようになってきた。まあ自分の名前が記載されていないので即ゴミ箱行きなのだが、かなり紛らしいのも事実。皆さんも引っかからないよう、くれぐれもお気をつけください。

iPhone向けOCRアプリ「Voice」がアップデート。


iPhone使いの視覚障害者なら、それぞれお気に入りのOCRアプリを持っているだろう。
定番の「OCR Pro」、無料なら「Seeing AI」や「Google翻訳」、協力なリアルタイムOCRが魅力の「Envision AI」など選択肢はさまざま。そんな中で筆者が常用しているアプリが「Voice」。9月4日にV5.01へアップデートされた。
Voiceはドキュメントの撮影とOCR処理の指示を音声コマンド(Capture、Read)で行えるのが特徴で、画面に触れることなく書類の読み上げができる。他にも書類のエッジ検出や複数ページをまとめて処理するなど、OCRアプリとしてしっかりポイントは押さえてある。インターフェイスは英吾だが日本語の認識も問題ない。
今回のアップデートでは写真をインポートしてテキストを抽出する機能が加わった他、インターフェイスが刷新され、よりVoiceoverユーザーに優しくなった印象だ。価格は610円。アプリ内購入で高精度な読み上げエンジンを組み込むことができる(ただし日本語には非対応)。

そうそう、Seeing AIも V3.6のアップデートでトルコ語に対応し、トルコの通過と商品バーコードのスキャンが可能になった。AIの性能も少しずつ向上しているようで、かこに解析した写真を再分析してみると、以前より明瞭な説明文が生成されることが多いことに気づく。「写真の探索」も体感的にエラーが少なくなったような気がするな。
行きつ戻りつつ、少しでも前へ進んでいることを信じたい。

Apple、音声解説を加えたゲームのプロモーションビデオを公開。


Appleは同社のYouTubeチャンネルにおいて、Apple Arcadeでリリースされるアドベンチャーゲーム「The Last Campfire」のプロモーションビデオを公開した。記事によるとAppleがArcade作品をビデオで紹介するのはこれが初めてのことだという。
注目したいのはこのビデオ、ゲームの内容を逐一ナレーションで解説しているということ。しかも結構フランクだ。もちろん元のゲームにはナレーションはつけられていないのだが、将来、ゲームにこれくらいの音声解説が付くようになれば、全盲ゲーマーでも「TLOU2」を超えたエクスペリエンスが得られるのでは無いか。そんな妄想を掻き立ててくれるビデオだった。それだけのお話。

2020年9月6日日曜日

A11Y Topics #006。OSMベースのルート検索システム、Twitterのアクセシビリティチーム、Google Docsなど。

※乱文・誤変換ご容赦です。
※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。

OpenStreetMapを活用した視覚障害者専用の歩行ルート検索システムを開発。


イスラエル工科大学の研究者は、OpenStreetMap(OSM)を用いた視覚障害者に特化したルート検索システムの開発を発表した。研究者は当事者や歩行訓練士の協力を得て、視覚障害者が安全に移動するための施設や手がかりを検討しOSMへ登録、このデータを元に最適なルートを算出するアルゴリズムを開発した。
繰り返し実施されたテストによると、このシステムによって生成されたルートは当事者や歩行訓練士が最適と考える経路と同一、もしくはそれに近い結果を示したという。
歩行者の移動ルートを提案するナビゲーションサービスはGoogle Mapsなど数多く存在するが、これらのルート検索で弾き出されるのは基本的に最短距離のルートだ。近年になりスロープやエレベーターなどの施設を優先的にルートに組み込むバリアフリーマップの構築が進められつつあるが、視覚障害者特有の障壁を考慮したものはまだ少ない。
例えば多少遠回りになったとしても、可聴式信号機が設置されている交差点やてんじブロックが敷設されている歩道を選ぶ方が圧倒的に安全に歩行できる。また視覚障害者はそのような地形的な特徴だけでなく、伝え歩きしやすい建築物や障害物の有無、店舗から流れてくる音や飲食店からの匂いに至るまで、独特なランドマークを用いて自ら移動しやすいルートを試行錯誤し構築している。今回のルート検索技術とともにこのようなデータが蓄積されていけば、視覚障害者の移動の障壁は大きく軽減されるだろう。

Twitter、新しい2つのアクセシビリティ専門チームを組織。


2020年6月、Twitterが音声によるツイート機能をリリースした直後、同社はその機能がアクセシブルでないという多くの批判に直面した。クローズドキャプションなど聴覚に障害を持つユーザーのための機能が全く用意されていなかったことが主な要因だ。さらにTwitter社にはアクセシビリティを扱う専門チームが存在していない事実も明らかになり、同社は即座にこれらの問題を改善することを約束した。
そして現地時間9月2日、Twitterは公式ブログを通じて「Accessibility Center of Excellence(ACE)」および「Experience Accessibility Team (EAT)」という新しい2つのアクセシビリティチームを組織したことを発表した。
大まかに言えば前者は企業全体のアクセシビリティ促進に関する業務を、後者は開発した製品や新たに開発する製品のアクセシビリティに関する業務を担う。すでに2021年初頭リリースを目標に、ツイートされたビデオやオーディオにキャプションを加える機能を開発しているという。
専門チームが結成されたことで、今後はユーザーからのフィードバックも反映されやすくなるだろう。今までアクセシビリティチームが無かったという事実は衝撃的だったが、そこからわずか2ヶ月あまりでここまで達成したTwitterのフットワークの軽さにもびっくりだ。

Apple、デバイスの一部分だけに触覚フィードバックを発生させる特許を取得。


米国特許商標庁が2020年9月1日に公表した「Tactile notifications for electronic devices」と題された特許の内容は、Appleがスマートフォンなどのデバイスに、よりきめ細かい触覚フィードバックを実装する可能性を示している。従来の触覚フィードバックはデバイス全体を振動させることでユーザーに通知などの情報を伝達するが、この特許はデバイスの一部分、例えばスクリーンの四隅やトラックパッドのエッジなどを振動させるアイデアを含んでいる。また複数のアクチュエーターなどを用い事なる触覚を表現する事で通知の内容を区別する方法も示されている。
もしこのアイデアが実現すれば、画面を見ることができないVoiceoverユーザーにも大きなメリットがあるだろう。例えばマップの地形や図形、グラフなどのイメージをタッチし、その形状に応じた触覚フィードバックが得られれば、音声だけでは伝わらない情報を理解しやすくなるかもしれない。
スマートデバイスのインターフェイスはどうしても視覚と聴覚に大きく依存している。これに触覚というレイヤーが加わることで、異次元のエクスペリエンスが実現するかもしれない。Appleはこれまでも多くの触覚関連特許を取得しており、その可能性を探っていることだけは間違い無いだろう。

Google Docs、アップデートで視覚アクセシビリティを強化。


源氏時間2020年8月30日、Googleは同社が提供するクラウドオフィススイート「Google Docs」をアップデートし、支援技術を活用する視覚障害者のための新しいショートカットキーの追加と機能の改善を行なった。
公式ブログで明らかにされた変更点は以下の通り。
  • 新しいショートカットキー「Ctrl+Alt+H」、Macでは「CMD+Option+H」を使い、Docs、Sheets、Slidesにおける点字ディスプレイサポートを切り替えられるようになった。
  • ショートカットキーでナビゲートする場合、コメント、見出し、スペルミス、提案などカーソルの移動先が通知されるようになった。
  • 長いドキュメントやリストをナビゲートする際の信頼性が向上した。
  • 画像、スペルミス、文法エラーが直接言語化されるようになった。
  • 表をナビゲートするときやコンテンツを選択するときにセル全体の内容をアナウンスするなど、ナビゲーションと選択の言語化を改善した。
個人的にはGoogle Docs、少なくともMacではスクリーンリーダーでかなり苦戦して挫折した記憶がある。これを機に再チャレンジしてみようと思う。思うだけ。

最近見つけた、視覚障害者向けモビリティデバイスたち。


メキシコのスタートアップが開発している「STRAP」は障害物を検知し振動で通知してくれるウェアラブルデバイス。頭から下半身までの位置にある障害物をカバーし、ハンズフリーで利用できる。スマートフォンとの連携も可能で、緊急時に位置情報を含めたSOS発信機能も持つ。現在プレオーダー受付中で、2021年夏の発売を予定。

ケニアのスタートアップHope Tech +が開発中の「FOURTH EYE」は、超音波を用いた障害物検知デバイス。現在アフリカ各地でユーザーテストを実施している。同社はさらに「THE SIXTH SENSE」と呼ばれる歩行支援デバイスも開発中とのこと。

ドイツのデザインスタジオwerteloberfellが開発したスマート白杖「Sense Five」のプロトタイプ。この白杖は画像認識を用い周囲の情報を解析しユーザーへフィードバックする。白杖のグリップ表面の質感を変化させる仕組みがユニークだ。自動的に点灯するLEDライトも搭載している。

これは新製品では無いが、障害物を検知するリストバンド型デバイス「Sunu Band」が、ソーシャル・ディスタンシングに役立っているという記事。列に並んでいるときや買い物中に周囲との距離を保つことができたといった声が寄せられているという。このデバイスは障害物との距離に応じて振動の強さが変化するが、行列に並ぶ時は一定の振動をキープすることで距離を取りつつ待機できるということのようだ。なるほど。

2020年9月5日土曜日

「eSight 4」発表。ロービジョン補正スマートグラスの最新版。

eSight 4(画像引用元

2020年8月、トロントに本拠地を置くeSightは、視覚障害者向けスマートグラスの新製品である「eSight 4]を発表した。
2017年に発売され米TIME誌の「The 25 Best Inventions of 2017」にも選出された前モデル「eSight 3」に続く第四世代のスマートグラス製品となる。
この製品は限られた視力を最大限に活用することに特化して開発されており、見えないものが見えるようになるデバイスではない。eSightの対象ユーザーは、視野欠損やボヤけた視界に悩まされているいわゆる「ロービジョン」と呼ばれる、視力は残っているが見えにくい人々だ。

eSight 4はメガネ型デバイスの前面に備えたカメラがとらえた映像をデジタル処理し、内側の高解像度OLEDディスプレイへリアルタイムに表示する。ユーザーの見え方に応じてカスタマイズ可能な補正機能、例えば最大24倍のズームやコントラスト調整、カラー反転などをくしし、見たい者の距離に応じて残された視力・視野に最適化された最良のビジョンを提供する。疾患の種類や進行状況にもよるが、視覚障害者のQOLを大きく改善する可能性を秘めている。
eSight 3からの主な改善点は以下の通り。

  • ディスプレイの改善。明るさが2倍に、解像度が1280×960ピクセルに
  • オートフォーカスと画像安定化システムのレスポンスが向上
  • バッテリーへのアクセス方法が改善
  • 違和感の少ないデザイン、装着性の向上

全体的なレスポンスの向上や本体のバランス改善による装着性、バッテリー交換を容易にしたことで、場所を選ばず、より長時間の利用が期待できると同社は語っている。前モデルのゴーグルのようなデザインからカジュアルな見た目になったことも装着のハードルを下げそうだ。(筆者は外観を確認できないのだが)。
そしてeSight 4最大の特徴がスマートフォンとの連携機能。
スマートフォンとeSight 4はワイヤレスで接続され、専用アプリを用いて写真やビデオを転送できる。eSight 4には256GBのストレージと3つのスピーカーが内蔵されており、ユーザーは転送したメディアを見やすく補正して楽しむことができる。逆にeSight 4で写真やビデオを撮影しスマートフォンへ転送することも可能だ。さらに専用のクラウドサービスによるアップデートにも対応し、簡単に機能追加ができるようになった。
なお映像の調整など基本的な操作は本体のタッチパッドで実行できるのは従来通り。

eSight 4の価格は前モデルと同じ5,950ドル。北米ではすでに販売が開始されており、米国退役軍人省のFSS承認を取得した。ヨーロッパでも安全基準CEマークの認証を取得しており、この秋にも発売される予定となっている。
日本国内では前モデルが「eSightマイグラス」として販売中だが、eSight 4については現時点で情報を見つけることはできなかった。



[雑記] 白杖につける「鈴」を求めて。

白杖使いで杖や持ち物に「鈴」をつけている人、たまに見かけます。
鈴を身に付けて周囲への注意喚起、ということはわかるんですけど、あの鈴ってどこで手に入るんだろう? そういえば今まで関係者間でこの話題に触れたことなかった。
筆者も全盲の白杖使いですが一人でヨチヨチ歩いていると結構人にぶつかることが多いので、ちょっと気になるんですよね、あの鈴。

でも見えていた頃を含め半世紀ほど生きてきましたが「鈴が必要」な場面に遭遇したことがなかったのでどこで手に入るのか見当もつきません。所持したことがあるのはせいぜいキーホルダーにくっついてるちっこい鈴くらい。かといって視覚障害者用具で見かけたこともないしなあ。
まだまだ視覚障害者の文化、知らないことが多いです。

鈴など音が鳴るものを身につけるという習慣は各個人の工夫から生まれたものらしく、これといったノウハウは広く共有されていないようです。
いろいろ調べた結果、どうやらこのような鈴、山登りする人がつける「熊よけ」のものを使うことが多いことがわかりました。「熊鈴(ゆうれい)」とも呼ぶようです。
熊鈴は登山用品を販売しているスポーツショップなどで扱ってるみたい。というわけで触って選びたいので通院のついでに行ってきましたよ某石井スポーツ。

お店に行ってみたらまあビックリ、すごく種類が多い。ざっと数十種類はありそうでなぜかテンションアップです。音色や大きさ、カラビナの種類など様々なタイプがあり聞き比べするだけでもちょっと楽しい。
そしてさすが「熊よけ」を謳うだけあり小さいサイズでもしっかり音が響きます。確かにこれなら混んでる場所でも気がついてもらえるかも。
熊ちゃんが気付くんだから、いわんや人間をや。

もちろん「白杖用熊鈴」なんてものはないので、音色や重さなどあれこれお試ししながら選びます。ポイントと思ったのが「消音」機能。これがついていれば鳴らしたい時だけ音を出すことができます。カラビナを引っ張ってロックするタイプや、ケースをスライドさせ固定するタイプなどがありました。
そうそう、小さめのリンゴくらいのサイズのがあって笑えるかなと思ったんですけど白杖が振りにくくなるのでやめました。派手な音はよかったんだけどね。

あれこれ悩んだ末選んだのは、カランカランと鳴るカウベル風の小型熊鈴。個人経営の喫茶店とかスナックの入り口に仕込んでる感じのアレの小さい版です。1,500円くらいでした。
キーチェーンに小さいポーチが付いてて鳴らさない時はこれに鈴を入れておけます。あとはこれを白杖のセンターラバーに取り付ければ多分準備完了。
これで少しは安全に歩けるかな? そもそも鈴って効果あるのかな? 顰蹙買ったりしないかな? いずれにせよ街に出ればわかるはず。山に出れば熊ちゃんも逃げるはず。
ただ残念なことにこのご時世、しばらく出かける予定ってないんですけどね。こいつが活躍してくれるのは、一体いつのことになるのかなあ。

さて今回は個人的な興味で鈴を購入してみたんですけど、そもそも視覚障害当事者の間でこの工夫、どれだけコンセンサスが得られてるのだろう。マナー的な問題もあるし音で周囲の様子がわかりにくくなるかもしれない。でも歩きスマホやうっかり点字ブロックに佇んでいる人へのアピールには役立ちそうとも思ったりする。
あまり評判のよろしくない「白杖SOS」もそうだけど、当事者がアピールすることの難しさも感じてしまいます。ほんとは白杖見たら気をつける、くらいでちょうどいいと思うのだけど見えていた頃の自分のことを思い返してみても、そんなに普段周りの人のこと意識して見てなかったしなあ。
結局のところ本人が考え行動すれば良いとは思うのですが、探求すべきテーマではありますね。
少なくとも私自身は従来通りソロリソロリ歩きつつ、おとで気がついたら回避してね、くらいのスタンスで臨みたいところです。


2020年8月30日日曜日

A11Y Topics #005。視覚障害者専用スマホ、RNIBの認証制度、ゲーム関連など。

※乱文・誤変換ご容赦です。

音声操作に絞った視覚障害者向けスマートフォン「In Your Pocket」。


英国RealSAM社が開発・販売する「In Your Pocket」は視覚障害者むけのスマートデバイスだ。SAMSUNG社のスマートフォンをベースに独自の音声アシスタントとアプリケーションを組み込み、英国の通信会社O2 Telefonicaのモバイル通信サービスをパッケージし販売している。
この端末は基本的に音声だけで操作するように設計されており、通話やメッセージ送受信、ニュース・電子書籍リーダー、RNIBと提携したオーディオライブラリへのアクセス、拡大鏡やBe My Eyesなどの支援アプリを音声だけで利用することができる。ベースはAndroid OSだが、ストアからアプリを追加することはできない。一方で家族や支援者が端末の更新やアドレス帳の一括登録などを行えるWebポータルが提供される。

視覚障害者がスマートフォンを使いこなすにはジェスチャやキーボード操作などある程度の訓練が必要だ。それが特に高齢者にとって大きなハードルとなっているのも事実。In Your Pocketはセットアップ不要、操作は音声のみという、できる限りシンプルで割り切った設計にすることで、このハードルを下げようとしているようだ。「視覚障害者専用らくらくスマートフォン」とも言えるIn Your Pocket、コンセプトとしては面白い製品と思う。

SAMSUNGのスマートテレビがRNIB認証を取得。


英国の視覚障害者支援組織Royal National Institute of Blind People(RNIB)は、依頼を受けた製品のアクセシビリティをチェックし、それらが視覚障害者にアクセシブルであることを認定する「RNIB Tried and Tested」プログラムを実施している。対象となるのは家電製品からアプリケーション、Webまで多岐にわたる。
このプログラムで認定された製品にはRNIB Approvedのマークの表示が許可され、視覚に障害を持つ消費者への情報提供となるだけでなく企業のインクルーシビティへの姿勢を示すことにもつながる。

SAMSUNGは2013年以来、RNIBと協力しスマートテレビのアクセシビリティ向上に取り組んできた。現在同社のスマートテレビには画面上のテキストやリモコンの情報を音声で読み上げる「Voice guide」やロービジョンむけのテキスト拡大、Galaxyスマートフォンと組み合わせたデジタル拡大鏡などの視覚アクセシビリティ機能が搭載されている。これらの機能が評価されSAMSUNGのスマートテレビ、2020年モデルが先日、RNIB Approvedを取得した。これにより英国の視覚障害者の選択肢が一つ増えたことになる。

家電製品が視覚障害者にとってアクセシブルかどうか、という情報は限られている。結局ほとんどの場合口コミを調べるか店頭で短時間触れてみて判断するしかない。だが使えそうと思って購入しても、すべての機能が使えるとは限らない。企業がアクセシブルな製品やサービス構築を意識し当事者に確実な選択肢を提供するためにはRNIB Approvedのような「お墨付き」的な仕組みが必要なのかもしれない。

オーストラリアNGV、ユニークな絵画の音声解説を提供、など。


オーストラリア、メルボルンにある美術館NGV(ビクトリア国立美術館、National Gallery of Victoria)はCovid-19感染拡大に伴い現在休館しており、オンラインによるイベントや展示を行っている。そのような状況で公開された特設ページ[Audio Descriptions: NGV Collection Highlights」では、視覚障害者のための興味深い試みが行われている。
このページでは葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」などNGV所蔵の6作品をピックアップし、音声による解説がオーディオ形式で聴けるほか、その作品からイメージされた楽曲も聴くことができる。音声解説の制作にはDescription Victoriaが協力している。単なる音声解説だけでなく、音楽からその作品のイメージを膨らませてみよう、というコンセプトのようだ。個人的には曲だけでなく効果音なども欲しかったかな。この辺り探求していくと面白いかもしれない。

Covid-19感染拡大によるロックダウンやソーシャル・ディスタンシングの励行は美術館や博物館にも大きな影響を与えており、財政的な危機に直面している施設も少なくない。一方で環境の変化をアクセシビリティの整備に転換する動きもみられる。
例えば米国オースティンにあるブラントン美術館では、閉館中スタッフの雇用を守るためWebに展示している所蔵品の代替テキストを整備する事業などに人員を組み換えた。またニューヨーク、クーパー・ヒューイット国立デザイン美術館はスタッフのテレワーク化に伴い所蔵作品データベースに代替テキストを書き加えるプロジェクトを立ち上げている
正直視覚障害者にとって、まだまだ美術館はエキサイティングなスポットとは言い難い。オンラインでもリアルでも、少しでも楽しめる場所、行ってよかったと思える場所になって欲しいものだ。

ゲーム関連トピックス、3つ。


その1:「あつ森」に見る任天堂のアクセシビリティに対する姿勢。
視覚障害者の間でも「あつ森」は大人気。足音の変化でマップを探索し、音のデルアイテムを駆使して島をレイアウトしていく。画面に表示されるテキストはOCRソフトを使って読み上げる。一方で音声や振動からヒントが得られない要素も少なくなく、視覚障害者は「あつ森」のすべてを楽しめないのも事実だ。
任天堂はソニーやMicrosoftと比べアクセシビリティへの取り組みが(少なくとも表面的には)遅れていると言わざるを得ない。任天堂に対し多くのユーザーがアクセシビリティの向上を請願しているにもかかわらず反応は鈍い。
任天堂の作品は基本的にユーザーフレンドリーに設計されている。ゆえに工夫すれば障害を持っていてもプレイできる可能性はあるのだがそれにも限界はある。そもそもゲームをプレイする上でユーザーに工夫を強いるってどうなのだろう。任天堂がゲームのアクセシビリティに関しどのような考えを持っているのか、ほとんど見えてこないのは残念な話だ。

その2:PS5の触覚機能の一端が明らかに。
ソニーは2020年のホリデーシーズンに発売を予定しているPlaystation 5の新しい没入型機能について説明する新しいグローバル広告スポットを発表した。
その中でPS5の標準コントローラーDualSenseの振動機能について具体的に触れられている。この新しいコントローラーの振動フィードバックを使えば、例えば敵が迫ってくる方向を感じたり、武器の違いを手の中で体感することができるという。従来の振動と比較し圧倒的な解像度と表現力を持っているようだ。
これを応用すれば、画面上や音声の情報を振動で表現することで視覚・聴覚アクセシビリティを向上させることができるかもしれない。一方、この振動を用いなければゲームが進められない作品が登場すると、手が不自由なプレイヤーには不利となってしまう懸念もある。PS5の大きな特徴の一つとも言えるDualSenseだが、開発においてはアクセシビリティを念頭において欲しいものだ。

その3:「名探偵ピカチュウ」の続編はアクセシブルになる可能性?
「ポケモン」関連ゲームを開発する株式会社クリーチャーズのUI設計責任者であるDave Gibson氏は、現在進行しているSwitch版「名探偵ピカチュウ」の続編の開発に合わせ、ユーザーに向けUIの改善点に関するアンケートを実施した。これまで同社が開発してきた作品で足りないものは?
寄せられた800件以上の回答の中で最も多かったのは、ポケモンゲームにアクセシビリティオプションを追加して欲しい、というものだったという。任天堂の他作品と同様にこれまでのポケモンゲームには、グラフィック、サウンド、コントロールをユーザーの状態に合わせカスタマイズできるオプションはほとんど用意されてこなかった。Dave氏はこの結果を受けアクセシビリティオプションの実装に向け前向きに検討するとコメントしている。

おまけ:インクルージョンが進む娯楽の世界。


その1:タンデムなゴーカート。
STORM DUO KART」は障害者も楽しめるADA準拠ゴーカート。2つの座席にはそれぞれにステアリングとアクセル、ブレーキが供えられており、介助者が同乗することで運転をサポートすることができる。これなら視覚障害者でも安全に運転を体験することができるだろう。

その2:ユニバーサルデザインのメリーゴーランド。
米国ボストン、ローズ・フィッツジェラルド・ケネディ・グリーンウェイに設置されている「 Greenway Carousel」はユニークな設計のメリーゴーランド。全36席のうち4席は車椅子でもアクセスでき、施設周囲の誘導路も全てバリアフリー化。また調節可能な照明と音響設備を備え、感覚に障害を持つ来場者にも対応できる。

その3:チェコ、ブルノ動物園で視覚障害者向け触覚マップを提供。
チェコ第二の都市、ブルノにあるブルノ動物園は国立マサリク大学の特別支援センターと共同で、視覚に障害を持つ来場者のための触覚マップを開発し無料で配布している。動物園や水族館では、イベント的に視覚障害者のためのツアーなどが開催されることがあるが、このような常設サービスはあればもっと気軽に訪問できそう。

その4:ディズニー、アダプティブなハロウィンコスチュームを販売開始。
ディズニー公式ストアShopDisney.comが、初めてアダプティブなハロウィン・コスチュームの販売を開始した。着脱がしやすい衣装やディズニー作品をモチーフにした車椅子カバーなどがラインナップされている。今までは自作するしかなかったため、これは人気を集めそう。

その5:視覚障害者のための多感覚おもちゃコレクション。
Legoのbraille bricksが話題になっているが、このページではそのほかの特に子供のための多感覚、つまり触ったり音を聞いて楽しむおもちゃが多数紹介されている。音が出るブロックやプレイマット、お店ごっこや動物のフィギュア、実物大の犬のぬいぐるみまで、言葉を学び、音楽をかなで、社会性を育む手助けをしてくれる。

その6:Kmartのインクルーシブな人形。
オーストラリアのKmartで販売されているインクルーシブな人形シリーズ。補聴器、車椅子、白杖、松葉杖を持った人形が登場している。海外ではMattelなど複数の大手メーカーから障害者をモチーフにした人形シリーズがリリースされている。車椅子はよく見かけるけど白杖モチーフはまだ少ない印象かな?


2020年8月27日木曜日

音声でデジタルマップを探索する「SAS Graphics Accelerator」を試す。


SAS Instituteが公開している「SAS Graphics Accelerator extension(SGA)」は、Web上のグラフやマップを変換し、聴覚フィードバックによる情報伝達を実現するChrome機能拡張だ。グラフィカルな情報を音声で表現することで、視覚障害者の情報取得を支援する。
先日のエントリーで取り上げたが、試してみたらちょっと興味深かったので、使い方などをもう少し詳しくレポートする。

SGAのインストールとサンプルマップの変換。


SGAを利用するにはGoogle Chromeが必要。情報の読み上げのためにスクリーンリーダーを有効にしておく。またステレオヘッドホンを用意しておくと音声が判別しやすくなるので幸せになれるかも。今回はmacOS Catalina上のGoogle Chrome 85で検証した。
なおマップをSGAで変換するには、一定のルールにそって作成されたGoogleマイマップを用意しておく必要があるが、今回は公開されているサンプルマップを使用した。

  1. このページから、Chrome機能拡張「SAS Graphics Accelerator extension」をインストールする。
  2. Map Libraryを開き、探索したいマップを開く。ここではなんとなく「Perkins School for the Blind 3」を選んでみた。
  3. Googleマイマップが開くので、マップ中にある「Accelerate map]ボタンを押す。
  4. 新しいタブで変換されたマップが開く。スクリーンリーダーのカーソルがマップにフォーカスすると効果音とともに現在表示されている施設数が読み上げられる。マップにフォーカスしない場合はTabキーもしくはShift+Tabキーを数回押してフォーカスする。

音声を使ってマップを探索する。


変換されたマップでは「レンズ」と呼ばれる円形の領域に地図が表示されている。マップは北が常に上で、レンズの中心が現在地となる。現在地からレンズの外周部へ向かって、時計の針のように「バーチャルケーン」と呼ばれる直線が伸びている。
ユーザーは聴覚フィードバックを聞きながら、キーボードやゲームコントローラーを使ってマップ内を移動したりバーチャルケーンで施設を探索していく。

  1. バーチャルケーンはゲームコントローラーで時計の針のように360度グルグル動かすことができる。バーチャルケーンがマップ内の施設に触れるとその名称とともに現在地からの直線距離と方向を読み上げ、そしてSonification(現在地とその施設の位置関係を表現したサウンド)が再生される。例えば「Beechwood Parking Lot、354 yards at 2 o'clock」といった感じ。
  2. Sonificationは、その施設が現在地から遠いほど低く、近いほど高い音になる。また施設が現在地の9時方向にある時は音が左から、3時方向にある時は右方向から再生され、近づくほど音が中心から聴こえてくる。さらに施設が6時方向にある時は、12時方向にある時と比べ金属的なサウンドが再生される。
  3. キーボード操作の場合は「ROLL UP」「ROLL DOWN」キーを押して時計回り/反時計回りでマップ内の施設情報を順番に読み上げる。
  4. 施設名が読み上げられたら、矢印キーを使いその施設へ向かって移動する(マップは現在地を中心にスクロール)。移動するとSonificationとともに移動した方向と距離、現在レンズに表示されている施設の数が読み上げられる。例えば100 yards north、「showing 65 of 65 objects」といった感じ。施設までの距離はスペースを押して確認する。
  5. 移動する方向はSonificationを聴いて判断する。要するに音が最も高く、左右のバランスが取れた場所が目標施設の位置になる。また「Enter」キーを押すと、その施設へ直接ジャンプできる。

使ってみた感想など。


SGAで面白いのは「バーチャルケーン」の存在だろう。ゲームコントローラーを用いることで、レーダー(もしくは魚群探知機?)のように周囲の施設を探索できる。キーボード操作と比べ施設同士の位置関係がわかるので、お手元にコントローラーがあれば試してみるのも一興かと。

SGAマップの使い道として考えられるのは、外出前のメンタルマップ構築だろう。このようなツールである程度施設の位置関係を把握しておくことでスムーズな移動ができるし、迷ってヘルプを依頼する場合にも目的地を指定しやすくなるだろう。
筆者が想定した使い方としては、まずデフォルト状態でマップ内の施設をぐるりと探索し、おおよそのメンタルマップを作成。あとは起点となる施設(ゲートや交通機関(へ移動し、ズームと併用してそこから他の施設の位置関係を細かく調べていく、という感じだろうか。まあ言うは易し、いざやろうとしても結構難しい。Sonificationから的確にメンタルマップへ反映させるにはそれなりに訓練が必要ではと思った。個人的に。

SGAマップで探索できるのは、マップに設置された施設の位置関係のみで、一般的な触地図のように道路や地形などは探索できない。ただ分かれ道や交差点、視覚障害者でも確認できるランドマーク(白杖で気が付くもの、音が出るもの)をマップに登録しておくことである程度、移動ルート情報を提供できるかもしれない。

SGAは機能的にシンプルだが、音声でエリア全体を把握することができる点が面白い。考えてみると視覚障害者にとって、触地図以外で「マップ全体を見渡しどのあたりにどんな施設があるか」をざっくり調べられるソリューションって案外少ない気がする(Blind Squareの「見回す」機能が似てるかな?)。
SGAはSonificationをマップへ応用する実験的な試み(と筆者は受け取っている)が、作成するマップ次第では結構実用的かもしれないと思ったりした。地図、特にデジタルマップのアクセシビリティ技術の一つとして面白かった。今度はグラフのSonificationも試してみたい。

参考:マップで使用できる主なショートカットキー。


SGAのマップで使用できるショートカットキーは以下の通り。
なおゲームコントローラーでの操作方法など詳細はヘルプページを参照のこと。

=:マップ表示を拡大する
-:マップ表示を縮小する
0:マップの拡大率と現在地をデフォルトにリセットする

ROLL DOWN:時計回りにマップ内の施設を探索
ROLL UP:反時計回りにマップ内の施設を探索
矢印キー:マップ内を移動する
スペース:目標施設の情報を読み上げる。
/:現在地の座標など詳細な情報を読み上げる
Enter:目標施設へジャンプする
J:施設の一覧ウィンドウがポップアップしマップに含まれる施設名が一覧される。キーワードを入力し絞り込みも可能。施設名を選びEnterキーでその場所へジャンプする。

I:方向の読み上げ設定を変更(クロックポジション、角度、法学)
U:距離単位を変更(ヤード、メートル)
S:Sonificationのオン/オフ
c:読み上げる情報量を変更
L:ポイント属性を変更



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