2019年11月26日火曜日

盲ろう者とのリアルタイムチャットを低コストで実現する「Orbit Chat Communication System」。


視覚と聴覚、両方に障害を持つ盲ろう者とのコミュニケーションには、多くの制約がある。障害の程度にもよるが、文字を読んだり声で会話することが困難な場合は「触覚」を用いる方法が一般的だ。書類やメールなど時間差のある情報なら点字を用いて読むことができるが、対面してリアルタイムに会話するとなると、ゆびに触れるジェスチャでコミュニケーションする「指点字」が用いられることが多い。そしてその場合、指点字を習得した通訳社を介さなければならないため、盲ろう者にとって大きな負担となる。

米国Orbit Research社は、テキストチャット形式で盲ろう者とのリアルタイムのコミュニケーションを実現する「Orbit Chat Communication System」をリリースした。
このシステムは、同社が販売している点字ディスプレイ「Orbit Reader 20」と、無料で提供される専用アプリを導入したAndroidスマートフォンもしくはタブレットをBluetoothで接続し、メッセージをテキストと点字に相互変換する。Orbit Reader 20と対応スマートフォンもしくはタブレットがあれば、追加のハードウェアは必要なく、低コストで盲ろう者の意思疎通環境を構築できる。

スマートフォンで入力されたテキストメッセージは即座にOrbit Reader 20に点字として表示され、盲ろう者は指先でメッセージを読み取る。一方、盲ろう者はOrbit Reader 20の点字キーボードから点字を用いてメッセージを入力すれば、その内容がリアルタイムでテキスト形式に変換され、相手のスマートフォン上に表示される仕組みだ。点字の読み書きに熟達した盲ろう者なら、スマホユーザーと同等以上のスピードでメッセージのやりとりができるだろう。
またスマートフォン用アプリは音声読み上げに対応しているので、盲ろう者と視覚障害者の間でもスムーズな会話が実現する。もちろん音声操作や音声入力を用いれば、手が不自由な相手ともチャットできる。対応言語は英語だが、ローカライズにより多言語にも対応可能とのことだ。

また1対1のチャットだけでなく、盲ろう者から複数のユーザーに同時にメッセージを送信するブロードキャストモードや、受け取ったメッセージを後でゆっくり参照できる保存モード、ファイルの転送機能なども提供される。アプリはAndroidスマートフォン及びタブレットに対応し、Google Playストアから無料でダウンロード可能。また盲ろう者向けには、Orbit Reader 20とアプリがインストールされたAndroidタブレットのバンドルセットも用意されている。

障害者をサポートする機器はどうしても価格が高くなりがちだ。それは数が生産できないため、ある程度仕方がない面もある。一方、障害者の所得は障害を持たない者と比べて圧倒的に低いのも事実。公的支援を受けられても限界があり、多くの障害者はベストな支援環境を得られずに不便な生活を強いられている。
Orbit Reader 20は、数ある点字ディスプレイの中でも比較的コストパフォーマンスの高い製品。「Orbit Chat Communication System」は、すでに販売されている点字ディスプレイとAndroidスマートフォン、タブレットという汎用製品を組み合わせることで、最小限のコストで盲ろう者の生活を大きく改善させる可能性を秘めている。
このようなデバイスが増えてくれば、障害者の社会参加にも大きく貢献するだろう。

関連リンク:


2019年11月25日月曜日

Microsoftが推し進める、ゲームのアクセシビリティ。


「Xbox Adaptive Controller(XAC)」が象徴するように、Microsoftはゲームをより幅広いユーザーへ届けようとしている。そしてその動きはMicrosoftから周辺機器メーカーへと波及しつつあるようだ。

ゲーミングコントローラーやマウスなどを開発している大手周辺機器メーカーLogitechは、XACに接続して使う、障害を持つゲーマーのためのスイッチやコントローラーをセットにした「logitech Adaptive Gaming Kit」をリリースした。
XACはあくまでもゲーム機及びPCとスイッチ類を接続するための「ハブ」としての機器だ。付属しているスイッチは2つだけなので、XACだけを購入してもゲームをプレイすることはできない。そのためユーザーは身体の状態に合わせた高価なスイッチ類を別途用意する必要があった。
この100ドルのキットには、トリガーを制御するためのさまざまなサイズの12個のボタンと大きなアナログ入力装置が2個、そしてこれらを腕や車椅子などに取り付けるためのベロクロ式のパッドが含まれる。XAC込みでも200ドル程度で一通りのゲーム環境を構築可能だ。プレイヤーの障害の程度にもよるが、多くのユーザーにとって導入コストは大幅に抑えられるだろう。


またこのキットの開発をめぐる、MicrosoftとLogitechのやりとりや開発プロセスが興味深い。2社の連携なくして、このキットの実現はあり得なかっただろう。なお、このキットの利益率は他製品と比べかなり低いそうだ。


だが、いくらハードウェアをアクセシブルにしたところで、ソフトウェアにアクセスできなければ何の意味もない。そこでMicrosoftは、Xboxゲーム開発者向けにアクセシビリティに関するガイドラインをリリースした。これには画面やテキストの読みやすさ、ナレーション、クローズドキャプション、さらには難易度に至るまで幅広い内容が含まれている。
このガイドラインに拘束力は無いようだが、ゲーム開発社にもアクセシビリティの意識を広めようとする同社の意気込みを感じる。
少し前にリリースされた、クロスプラットホームかつアクセシブルなマルチプレイヤー環境を提供するゲーム用ミドルウェア「Azure PlayFab」も、その一環と考えられるだろう。


またサービス提供が開始されたGoogleのゲームストリーミングサービス「Stadia」でも、アクセシビリティに関する話題が伝えられている。米国で障害者のゲーム環境を支援する団体AbleGamersがGoogleと提携し、障害者のゲーム環境の整備を目指すという。Stadiaは様々なデバイスからアクセスできるという特徴から、障害者ゲーマーにとっては、よりアクセシブルな環境を選ぶことができるメリットがある。運動障害がある場合はXACなどの適用ゲームデバイスが使えるPCからの利用がベターと想像できる。
視覚・聴覚障害への対応がどこまでできるのかも気になるところだ。これらを含めストリーミングサービスがゲームのアクセシビリティにどのような影響を与えるのか、注目したい。



2019年11月16日土曜日

「聴く読書」が目で読むよりも理解力が低いってほんと?


近年では情報を得る手段として、オーディオブックやポッドキャストなど「聴くメディア」が注目を集めている。
しかし一般的には、いまだに「紙で読まなければ読書とはいえない」というイメージが根強いようだ。

2016年に英国のインターネット調査会社YouGovが実施した調査によると、回答者のおよそ9割がオーディオブックによる読書は、紙の本を読むよりも、内容の理解度が低いと考えていると言う。
だが視覚障害者や失読症など紙に書かれた文字を読むことが困難な人々にとって、このような認識は教育や就労の面で不利益に作用しかねない。

本当に「耳で聴く読書」は、紙の読書よりも劣っているのだろうか?
英国The Telegraphオンライン版の記事によると、カリフォルニア大学バークレー校の研究者たちによる実験は、この世間のイメージとは異なった結果を示している。

9人のボランティアが参加した実験では、まずBBC Radio4で放送されたポッドキャスト「The Moth Radio Hour」を聴いた後同じ内容の記事を目で読みそれぞれで脳のどの部分が活性化されているかを調べた。
その結果研究者は、リスニングとリーディングでは、実質的に活性化される部分が同一であることを発見した。
つまり、情報を耳で聴く・めで読むにかかわらず、脳は意味情報を同じように処理しており、言葉を理解する上で両者に大きな違いはない、ということだ。これは先述の世間のイメージとは大きく異なる。

また同時に、視覚的、触覚的、数値的、位置的、暴力的、精神的、感情的、社会的など、言葉の意味によって脳の特定の部分が、同様に活性化されることもわかった。

研究者たちはこの実験結果を踏まえ、脳梗塞、てんかん、言語障害、脳障害、失読症などの人々の言語処理を比較するといった臨床応用も考えている。
例えば臨床実験によって失読症の子供がオーディオブックで理解を深めることが証明できれば、将来、教育の場にオーディオブックなどの聴覚教材を導入する後押しになる。
またスクリーンリーダーを利用する視覚障害者にとっても、音声読み上げの利用が仕事のパフォーマンスに不利とならないことがわかれば、就労の機会や職場環境整備の促進、、職域拡大にもつながるかもしれない。

筆者は中と全盲で、普段から音声デイジーやスクリーンリーダーを通じ「耳」から情報を得ているが、かつて「め」で情報を得ていた頃と比較しても、さほど入ってくる情報量に違いを感じていなかった。画像や動画といった視覚的なものは別として。
そう言う意味で、この研究結果は納得のいくものだった。メディアから言葉を受け取り脳で処理するという仕組みで言えば、指先で文字を読み取る点字でも同じことがいえると想像できる。手話や指点字でも同様だろう。

もちろん視覚的な情報と聴覚的なそれとは得られる情報の種類に違いがあり、読み取るスピードも(個人のスキルにもよるが)差がある。完全に代替できるものではないが、少なくともインプットされた言葉の意味を理解する機能が同様であることがわかれば、感覚や学習能力に障害を持つ人々が無駄な劣等感を抱かずに済むはずだ。
新しい技術が登場すると、競合する旧来勢力から根拠のないレッテル貼りが発生することはしばしばみられるが、オーディオブックに対するイメージも、もしかしたらそのような力が働いていたのかもしれない。このような研究がスティグマを払拭し、障害を持つ人々の情報取得や社会参加の障壁を下げてくれることを望みたい。

関連リンク:


2019年11月8日金曜日

サイトワールド2019・見学メモ。


今年もサイトワールドの季節がやってきた。
世界的に珍しい、視覚障害を専門に扱う総合イベントである。
2019年も、11/1から11/3までの3日間、東京・錦糸町にある「すみだ産業会館サンライズホール」にて開催された。筆者は11/1と11/2に訪問。これで3回目の参加である。

前回、前々回は、とにかくひたすら展示ブースを必死に回る感じだったが、今年は主にイベントへの出席と、Twitterなどで知り合った方々との交流をメインに据えることで、体力を温存しようという作戦。普段引きこもっているわりにイベントが集中していたので……。
その甲斐あってか、なんとか参加した2日間、乗り切ることができた。体力なさすぎ。

というわけで、サイトワールド2019で印象に残ったイベントと展示について、個人的に思ったことなどをメモ代わりに書いていこう。
記憶を頼りにしているので、若干の間違いはご容赦ください。
若干でない間違いは、ご指摘ください。

ではまず、イベントから。

・ICTを活用した視覚障害者移動支援システムの社会実装

11/1開催。昨年も参加したワークショップ。主にスマートフォンを用いた視覚障害者のナビゲーション技術の最新動向が発表されるとともに、体験もできるという、実に私好みのワークショップである。

今年印象的だったのは、国土交通省の交通バリアフリー関連のガイドラインに、Webアクセシビリティの要件が明記されるという話。確かに近年ではWebやアプリは公共交通機関を利用する上では欠かせない要素になっている一方、Webはともかくアプリのアクセシビリティには不満を感じることも多かった。。アプリを通じた情報提供は視覚障害者にとっても有益だけに、ガイドラインの早期策定に期待したいところ。

他にも、コレド室町で公開された「インクルーシブ・ナビ」を用いた屋内ナビゲーションの話題や、東京メトロで実証実験中の「Shikai」プロジェクトの報告、筑波大によるコンピュータビジョンを用いたナビゲーションシステムなど、さまざまなアプローチから視覚障害者のナビゲーション技術の研究が進められていることがわかる。
また質疑応答の中で、今後これらの技術が社会実装されていく場合、場所によってアプリを使い分けるのは不便なのではないか、という意見があった。これに対し、将来的には統一規格的なものが必要、という認識も示された。まだ先の話ではあると思うが、単一のアプリでシームレスなドアツードアのナビができるようになれば最高ではないだろうか。

面白かったのは、筑波大が開発中のアプリ「オタスケマップ」。
開発メンバーの松尾さん(全盲)にレクチャーしていただきながら体験させてもらった。これはスマートフォン(iPhoneで動作していた)のマップ上に表示された歩行ルートを指で辿りながら、事前に歩く道順を確認できるというアプリ。タッチによる効果音と方向しじ音声、振動の組み合わせで、画面が見えなくても目的地までのルートを脳内にイメージできるようになっている。
歩行ナビアプリを用いて移動する場合でも、このようなアプリで事前にルートを確認することができれば、不慣れな場所でもより確実に目的地まで到達できるかもしれない。道順を知る手段としては、すでに「ことばの道案内」というサービスが提供されているが、マップから道順を生成できれば利用する場所を選ばないし、ルートを指でたどることで、文字情報よりも距離感や方向を直感的にイメージできると感じた。リリースに期待。

・今更ですが歩行訓練を知るシンポジウム

こちらは11/2に開催されたシンポジウム。4人のパネリスト(2人は視覚障害当事者)が登壇し、歩行訓練の体験談や訓練を提供する側の現状などが語られた。

特に中途で見えにくい・見えなくなった視覚障害者が、安全に歩行するためには、白杖の使い方と歩行のセオリーを知ることが重要となってくる。だが歩行訓練を実際に受ける視覚障害者はまだまだ少なく、精度の認知度も低いとのこと。合わせて訓練士の不足や地域による格差など、多くの課題が話し合われた。

個人的な経験を言えば、歩行訓練を受けたことで、外出時の不安が軽減されたし、ガイドヘルパーや駅員の誘導を受ける場合でも、よりスムーズで安全な移動ができるようになったと感じている。また先述のようなICTを用いたナビゲーションが実用化されても「歩く」というアクションが伴う以上、歩行のスキルは必要不可欠だろう。
そのような意味でも、歩行訓練の重要性がもっと知られる必要があるし、それに対応できる訓練システムやセルフトレーニングなど、多角的なアプローチを考える余地もありそうだ。あと「訓練」という言葉のイメージが、何かしらの影響を与えているのかもしれない。
健全なフィジカルがあってこそのテクノロジー、そう思うのだった。

ここからは展示ブースのお話。

・新潟大学 工学部 福祉人間工学科

触地図や立体模型で世界の建築物に触れられる展示を行っていた。
お気に入りは、京都中心部の触地図。国土地理院による3D測量データにより、周囲を囲む山々がリアルにモデリングされ、盆地である京都の地形を感じられた。マグネットで配置されていた寺社や新幹線、京都タワーもキュート。
久しぶりに京都行きたいなあ。人多いんだろうなあ。
また、こちらではオンデマンドでの触地図作成もしてくれるとのこと。

・NextVPU (Shanghai) Co.,Ltd.

メガネのテンプルに装着するタイプのスマートデバイス「AngelEye Smart Reader」を展示。スマートグラスタイプのものもあったようだが見逃してしまった。
一見すると「OrCam MyEye 2」にそっくり(禁句?)。日本語の書類をかざすと読み上げてくれた。基本的にはOCR機能がメインだが、比較的低価格との噂。機能・価格帯的には「Oton Glass」に近いかな? 認識精度はもちろん、サポート体制も気になるところ。
余談だが対応していただいた方が日本語が通じなかったので、あまり突っ込んだ質問は断念したのだった。

・株式会社ドット

韓国発のスタートアップ。世界初の点字表示可能な腕時計「Dot Watch」と、新製品の点字書籍リーダー「Dot mini」を展示。
「Dot mini」は随分前から海外でニュースになっていたが、ようやくお披露目といった感じ。基本的には点字データを読むシンプルなリーダーといったデバイスのようだ。これまでの情報では価格の安さが特徴的だったのだが、その点ではちょっと残念かな?
点字デバイスとしては、位置付けが難しい製品と感じなくもない。

・社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 (旧:日本盲人会連合)

展示は見ることはできなかったが、名称が変わったのでチェック。
略称は「日視連」で良いのかな?

・プログレス・テクノロジーズ株式会社

昨年のサイトワールドと東京メトロ辰巳駅で体験した、点字ブロックとQRコードを用いたナビゲーションシステム「Shikai」を今年も展示。改めて体験してみた。

基本的には大きな変化は感じなかったが、次のポイントまでの指示音声がシンプルになっていたり(誘導ブロックの左右どちらを辿る、みたいな情報が省かれていた)、説明によればQRコードのスキャン精度が向上し、多少早歩きでも認識できるようになったとのこと。全体的にブラッシュアップされているようだ。

「Shikai」は現在、東京メトロ・新木場駅でも実験中。実際に駅の点字ブロックにQRコードが設置されているらしい。まあ、アプリがないから試せないけどね。

・株式会社システムギアビジョン

すっかりおなじみになった「オーカムマイアイ 2」を展示。
ハードウェア的には変化はないが、ファームウェアのバージョンアップでBluetoothイヤホンへの出力対応やレスポンスの向上などが図られている。また認識される商品バーコードも、順調に増えているとのことだった。

・株式会社キザキ

製品名を失念してしまったが、ホールド感の高いグリップの白杖が印象的だった。
独特の形状を持つグリップは手のひらにしっかりと密着するので、白杖からのフィードバックを感じ取る面積が広く、路面の情報をより細かく得られる感じ。試したのは3段折り畳みタイプだったが、直杖ならさらにセンシティブになるのではなかろうか。一方で、手引き中にエンピツ持ちするのはちょっと違和感ありかも。

この白杖にはもう一つ秘密があった。それはストラップ。
一般的に、白杖のグリップから出ているひも(折り畳みならセンターラバーを調節するためのもの)は、手首に通すのは危険と言われている。白杖が電車などのドアに挟まってしまうと、巻き込まれてしまう危険性があるためだ。
だが、うっかり白杖を電車とホームの間に落とさないように、ストラップ代わりにこの紐を手首に通してしまうユーザーも少なくない。

体験した白杖には特別なストラップが装着されている。このストラップは、一定の強さで引っ張られると自動的にロックが外れ、巻き込まれ事故を防ぐ仕組みだ。
介助されたロックを戻すのも簡単。これ、普及して欲しいなあ。

・株式会社KOSUGE

こちらの主力商品は白杖だが、個人的に興味があったのが、スマートフォンを用いたナビゲーションシステム「MYみちびき」。
準天頂衛星「みちびき」を用いた高精度なナビを目指している。
昨年はまだ「みちびき」がサービス開始したばかりでコンセプトを聞いただけだったが、今年はどうだろう。

説明して頂いたのは、KOSUGEの社長さま。昨年同様、熱心に開発状況を話ていただいた。お話によれば、現状はまだ「みちびき」が全記揃っておらず、受診川の機材もサイズやコスト的に未成熟。ただ電波を受信するアンテナの小型化などは進んでおり、開発は進められているとのことだった。実現まではまだ時間がかかりそうだが、ぜひ来年もお話を伺いたい。

そしてもう一つ見せていただいたのは「信号機カメラ」。
これは機械学習を用いて歩行者用信号をiPhoneアプリで判別してくれるというもの。デモしていただいたものでは、赤信号と青信号、それぞれの確率をパーセントで表示していた。今後、明るさなど様々な条件でさらなる学習を進めていき、実用化したいとのことだった。
信号をアクセシブルにする技術には音響装置やビーコンなどいくつかの技術が存在するが、スマホで判別できるように慣れば、低コストで安全を確保できるようになるかもしれない。個人的には信号に向かって真っ直ぐ歩くような機能があるといいなあ。

あとこちらのブースでは「Nail Le Braille」さんの白杖デコレーションも展示されており、スワロフスキーがふんだんに盛られたキラキラ(であろう)デコ白杖に触れることができた。グリップには白杖用リングもひかる。
さすがにここまでデコるのはアラフィフおじさん的にどうかと思うが、ワンポイントでつけるくらいならいいかも、とか思ったりした。。結構、光モノは好きなのだ。

・株式会社マクロス

こちらでは、素材削り出しによる3Dプリンター「MODELA MDX-50」と、UVによる浮き出し印
刷が可能なカラープリンター「Versa UVシリーズ」を展示。

MDX-50で削り出された木製の人物像に触ってみたが、まるで人が削ったような自然な触感。さすがにお値段もそれなりだが、3Dプリンターのイメージを変えてくれる製品だろう。
またVersaUVを用いて、様々な素材に印刷されたサンプルにも触れることができたが、しっかりとした触感を感じられた。これは重ね刷りもできるとのことなので、いろいろな表現が楽しめそう。
こちらの2製品は、視覚障害者向けというよりも、幅広い層、特にクリエイティブな分野に訴える魅力があると思う。

・ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ株式会社

Google アシスタント搭載テレビ「BRAVIA A9Gシリーズ」など、オーディオ&ビジュアル製品を展示していた。
人気のネックスピーカーも試したが、これがなかなか迫力があって良かった。遅延もかなり少ないらしく、スクリーンリーダーの音声用にも使えそう。贅沢かな。

そして、やはり注目はAndroid TVを搭載したテレビ「BRAVIA」。
視覚障害者的には、画面上の文字情報を音声で読み上げてくれるのはもちろん、音声読み上げのオン/オフをリモコンから簡単に切り替えられるのが魅力。リビングのテレビなど、音声読み上げを切って使いたい家族のためにも有用だろう。音声アシスタントによる各種操作も便利そうだった。テレビもしっかりアクセシブルになってきたなあ、としみじみ。これでもっと副音声が充実してくれればね。

余談だが、個人的にテレビに付いて欲しい機能がある。
それは、スピーカーから主音声を出力したまま副音声(もしくは副音声+主音声)を、ヘッドホンまたはBluetoothイヤホンに出力して欲しいのだ。理由は先述と同じで、家族への配慮である。
以前(というか昨年のサイトワールドで)某家電メーカーの説明員にこのことを話たら、半笑いで却下されたが、今回ソニーの説明担当者さんは、しっかり聞いてくれた。これだけでも好印象である。応援してるよソニーさん。PS4に日本語TTS入れてください。

・まとめ

というわけで、サイトワールド2019で印象に残ったイベントと展示の感想でした。

前回はスマートグラスやOrCam Myeye 2といった注目の製品が目白押しで新鮮味があったが、今年はそのような意味では)個人的には)目玉といえるものが少なかったかな? 今後は国産スタートアップの登場にも期待したい。
また聞くところによると、スマートスピーカーのイベントが盛況だったとのこと。音声アシスタントは視覚障害者の間で着実に浸透しつつあるようだ。確かに別のイベントでも、スマートスピーカーに対するリアクションは結構大きかったような。機械に話しかけるなんて、日本人には向かないんじゃない?などと言われていたが、少なくとも視覚障害者の注目度は高いようだ。

そして改めてサイトワールド全体を見てみると、やはりこのイベントは「点字」が基本なのだなあと感じる。点字機器を開発・販売するブースは相変わらず盛況だったし、点字資料を配布するイベントやブースもあった。ただ一方で点字が読める視覚障害者の割合は減少しているという事実があるわけで、このギャップをいかにして埋めていくのか、考える必要がありそう。
その「点字が読めない視覚障害者」の一人である筆者。今回は日本展示図書館のブースで、展示器と点字を打てるテープをゲット。これを使って、少しでも点字が使えるよう努力したい所存である……!

さて、なんやかんやで今年も満喫したサイトワールド。
今年は初めて、ネットで交流のあった方々とお会いし名刺と情報交換できたのが楽しかった。人と会うのって大事だね。
改めて、お世話になった方々に感謝いたします。

来年もまた良い出会いがありますように。

2019年10月8日火曜日

[メモ] 米国ドミノ訴訟の最高裁判決に関するニュースクリッピング。(2019/10/11 Update)


米現地時間2019年10月7日、米最高裁判所は、外食チェーン、ドミノのWebアクセシビリティ訴訟において、ドミノ側の上告を却下し、第9巡回区控訴裁判所の原告(視覚障害者)勝訴の判決が確定した。
…という事でいいのかな。米国の裁判システムについて浅学なので間違えている可能性もあるが、とにかくドミノ側の主張が認められなかった、というのは間違い無いだろう。この最高裁の判断が、今後のWebアクセシビリティ周りの状況に大きな影響を与えるのは確実と見られている。少なくとも米国では。
というわけで、この重要な判決のニュースがbloomberg law:で報じられてから掲載された関連Webニュースを、メモ代わりにまとめておく。
と、チマチマクリッピングしてたら↓のまとめ記事が。これだけで十分かも。

──────────

bloomberg law:
cnbc:
restaurant business online:
usa today:
long-island:
law360:
sky statement:
slate.:
bloomberg.:
pymnts:
zd net:
crains detroit:
ib times:
scoop square 24:
my news LA:
fast company:
grit daily:
LA times:
news journal:
splinter news:
forbes:
forbes:
washington examiner:
reuters:
mashable:
valdo stadaily times:
──────────



2019年10月3日木曜日

全盲的iOS13ファーストインプレ。お気に入りの3大新機能。


Appleユーザーにとって、年に一度のお楽しみ。
iOSのメジャーバージョンアップの季節がやってきた。
2019年も、6月のWWDCで発表された「iOS 13」が、9月20日に無事、リリースされた。ただ今年は立て続けに「13.1」「13.1.1」「13.1.2]とアップデートがリリースされており、少し混乱がおきているのかな?といった印象。まあ新ハードに間に合わせないと行けないからね。

さてこの「iOS13」、見た目的に大きな機能変更はダークモードくらいしかなく、一般ユーザーの間では細かいチューニングがメインのバージョン、といった評価が多いようだ。
だが、ことアクセシビリティに関しては、ここ数年の中でも、最もアグレッシブな変化を遂げているバージョンといっていいだろう。それは設定アプリにおいて「アクセシビリティ」の項目が「一般」からトップレベルのメニュー項目として独立したことからも伺える。例えば音声によるコントロール、Assistive touchのマウスサポートなど、数々の画期的な新機能が登場している。
そして全盲である筆者が普段から活用しているスクリーンリーダー「Voiceover」でも、iOS13では大小様々な機能追加や変更が加えられている。アップデートの詳細はApplevisの記事からどうぞ。


というわけで、1週間ほどiOS13をVoiceoverで使ってみて「良かったポイント。トップ3」を買ってながら発表しよう。ちなみに、なぜ1週間かというと、ちょっとビビって13.1までアップデートを保留していたのである。


1.カスタムコマンドが超快適。


iOS13では、Voiceoverの様々な操作をユーザーが自由にカスタマイズできるようになった。Voiceover設定の「コマンド」を開き、タッチジェスチャ、キーボードショートカット、手書き、点字画面入力の各コマンドを(一部を除き)好みの機能に置き換えることができる。
筆者も早速タッチジェスチャを以下のようにカスタマイズしてみた。

1本指トリプルタップ=エスケープ
1本指4回タップ=最初の項目に移動

このカスタムで、片手での操作時に、前の画面に戻る時や、公式Twitterアプリでアカウントメニューにフォーカスさせる時にいちいち両手を使わずに済む。この2つのカスタムコマンドだけで、両手を使う頻度がかなり減少した。欲を言えば、片手での操作を考えると1本指のジェスチャがもう少し増えてほしいところ。

2本指4回タップ=ステータスバーへ移動
4本指下スワイプ=通知センターを開く
4本指上スワイプ=コントロールセンターを開く

結構ストレスだったステータスバー、通知センター、コントロールセンターの操作。特に筆者は指が太くiPhone 7のコンパクトな画面ではステータスバーにフォーカスするのに四苦八苦することも少なくなかった。
これらの操作も、カスタムコマンドで快適に操作できるようになる。
4本指上下スワイプなど、なぜ標準ジェスチャに採用されていないのかと思うほど違和感がない。ただステータスバーへの移動が、なぜかロック画面やホーム画面ではうまく動作しない。何かアプリを開いている時ならサクッとフォーカスしてくれるのだが。

2本指右スワイプ=次の文字
2本指左スワイプ=前の文字

文字を1文字ずつ読ませ、詳細読みで確認したい場合、従来はローターから「文字」を選んで上下スワイプする必要があった。このカスタムコマンドを用いれば、2本指左右スワイプで、フォーカスされている項目の文字を即座に1文字読みさせることができる。今までは疑問に感じた文字に遭遇しても、面倒で確認しないことも多かったが、これでマメに確認するようになるかもしれない。

ひとまずカスタマイズしたのはこんな感じ。
1本指トリプルタップ以外は、コマンドが割り当てられていないジェスチャをカスタマイズしたので、従来からの操作に対する影響も少ない。今後はジェスチャそのものを作ったり、後述するアクティビティでカスタムコマンドを切り替えられるようになるとさらに便利になるのではないだろうか。
あとこのコマンド設定は、Voiceoverジェスチャやショートカットキーのレファレンスとしても役にたつだろう。一通りのジェスチャを把握しているつもりでも、以外と新しい発見がある。「ダブルタップして抑えてフリック(三本指)」というジェスチャが新しく追加されている事実に、この設定を開いて初めて気が付いたりした。


2.アクティビティでVoiceoverの世界が広がる。


「アクティビティ」はiOS13で追加された新機能。簡単に言えば、Voiceoverの設定を複数用意しておき、好きな時に切り替えられる機能だ。Voiceover設定の「アクティビティ」から設定できる。
macOSではすでに以前から存在していた機能だが、ようやくiOSにもやってきた格好だ。

ただ現時点ではVoiceoverの全ての設定を切り替えられるわけではなく、「声」「詳細度」「点字」など一部の設定の切り替えに限定されている。
アクティビティの切り替えは、ローターに「アクティビティ」を追加し、任意のタイミングで選択する方法の他、指定したアプリを開いた時に自動的に切り替えることもできる。

ではこの機能、どんな使い道があるだろうか。
ちょっと考えてみると、

  • 外国語のアプリを使う時は、ネイティブな音声で読み上げさせたい。
  • 普段はOtoyaに高速読み上げさせているが、Kindleを読む時だけ、Siri女性のゆっくりしたボイスで読みたい。
  • 設定の切り替えが必要な、複数の点字機器を使い分けたい。

といった感じだろうか。
筆者も試しに「メール」だけ普段使わない音声で読み上げるように設定してみたが、これだけでも結構新鮮な気持ちになるものだ。筆者は通常Otoyaの高速音声でiPhoneを操作しているが、Siriの比較的ゆっくりした音声は、メールの内容をじっくり読むのに適しているようにも感じる。
アト、iOS13では、Voiceoverで「絵文字」の読み上げを完全に無効化する設定が加わったのだが、ローターから切り替えることができず、設定を変更するにはいちいちVoiceover設定を開かなければならない。
アクティビティには「絵文字」の読み設定が含まれているので、普段は絵文字読みを無効にしておき、読ませたい時だけ、絵文字読みを有効にしたアクティビティを呼び出す、といった運用もアリだろう。


3.ICカードが読めるようになった。


iOS13では、iPhone 7以降で、SuicaやPasmoなどの交通系ICカードや、Waonなどの電子マネーの情報を読み取れるようになった。これは一般向けの新機能ではあるが、視覚障害ユーザーの生活を確実に便利にしてくれる。

ICカードの読み取りには別途アプリが必要。iOS13のリリース以降、読み取りアプリが続々とリリースされているので、好みのものをインストールして利用しよう。筆者が試してみたのは以下のアプリ。いずれも無料で、Voiceoverで利用できる。


どちらも使い方はほぼ同じで、読み取りボタンを操作したら、ICカードをiPhoneの背面にかざすとiPhoneが軽く振動し、カード残高や利用履歴が表示される。もちろんVoiceoverでその内容を読み上げさせたり、アプリによっては履歴をCSV形式でエクスポートすることも可能だ。
これまでは、視覚障害者がICカードの残高を確認する手段が限られていた。これでいつでもどこでも一人で残高や履歴を確認できる。こりゃ便利。


Voiceoverユーザーにとっての細かい改良点も満載。


他にも、詳細なカスタマイズが可能になった句読点出力や1本指スワイプで操作できるスクロールバー、ロック画面でのパスコード入力フィードバック、「カメラ」アプリのフィードバック、「メモ」アプリの書類スキャンなど、Voiceoverユーザーのための細かい改良点に気づく。個人的に気に入っているのが、アプリのタブなどで「全5個中4個」と読み上げていた項目を「5の4」とシンプルな読み上げになっているあたり。これ、結構、しつこいと思っていたのだ。
ただ一つ気になっているのが、、Voiceoverの新機能であるサウンドと触覚のカスタマイズ。筆者のiPhone 7ではサウンドのオン/オフしか設定できず、振動のフィードバックも感じられない。これは非対応ということでよろしいか。

まだリリースから間もないこともあり、一部のアプリが落ちるなど不安定な部分もあるが、機能やパフォーマンスの面でも、Voiceoverユーザーにとってアップデートする価値は十分にあると感じた。
何より、Voiceoverが忘れられていないことに胸をなでおろした次第。ここ数年、ほぼ放置状態だったからね。この勢いで、macOSのVoiceoverにも大ナタを振るっていただきたいものである。
まあこれを書いている数日後には、Catalinaがリリースされるのだが。
うーん、どうなりますことやら。


2019年9月20日金曜日

「Seeing AI 3.2」リリース。日本語のリアルタイム認識が可能に。


米国Microsoftは現地時間2019年9月19日、視覚に障害を持つユーザーのための画像認識アプリ「Seeing AI」をバージョン3.2へアップデートした。現在App Storeからインストールすることができる。
主な変更点は以下の通り。

  • Siri Shortcutsに対応しました。「what does this say?」などのボイスコマンドを割り当てて、特定のChannelでアプリを起動することができます。
  • iOS 13に対応しました。
  • iOS 13のダークモードをサポートしました。
  • Short Text channelでは、最大で21言語のテキストを認識できるようになりました。ただし認識できる言語の数は、インストールされている音声の数によって異なります。
  • 写真をexplorしてオブジェクトを認識したとき、同じ名前の複数の物体が認識されると、それぞれに番号が付けられます。例えば「Chair 1」など。
  • 加えて、様々な内部的不具合の修正を行いました。

ここで、注目すべき2つの追加機能についてみてみよう。

その1:Siri Shortcuts対応

Siri Shortcutsを使って、音声コマンドからSeeing AIの特定のChannelを直接起動できるようになった。アプリを探して起動してChannelを選んで……といったてまを大幅に軽減できる。もちろん、日本語によるコマンドも登録可能だ。
設定は「Menu」>「Settings」>「Configure Siri Shortcuts」を開き、ショートカットを設定したいChannelをたっぷ、「録音を開始」をタップして音声コマンドを登録する。
これで、SiriからSeiing AIのChannelを即座に起動できるようになる。

その2:Short Textの多言語対応

今回新たにShort Textで認識できる言語の中には、日本語も含まれている。
Seeing AIを起動してShort Text Channelを選択したら、言語選択ボタンをタップして「日本語」を選択する。
これでiPhoneをかざすだけで、日本語のテキストをリアルタイムに認識して読み上げてくれる。
郵便物や商品パッケージなどで試してみたが、一般的なフォントで印刷されたテキストは、おおよその内容を判別できる程度には読み上げてくれた。
どうしても「Envision AI」と比較してしまうが、第一印象としては、レスポンスはSeeing AIが、テキストの認識精度はEnvisionの方が良いイメージを持った(iPhone 7で使用)。この辺りはもう少し時間をかけて比較する必要があるだろう。
とはいえ、日本語をリアルタイムで認識できるようになったことで、Seeing AIの利用シーンは一気に広がりそうだ。特にEnvisionのセールを逃してしまった筆者のようなユーザーにとっては……。

日本語ローカライズは今回もお預け

今回の目玉、Siri ShortcutsとShort textの日本語対応で、さらに実用的になってきたSeeing AI。まだUIは英語のままだし、紙幣やバーコードのChannelもローカライズされていないが、着実に使えるアプリに進化している。

「Seeing AIの進化によって、ライバル?である「Envision AI」の開発にも良い影響が及ぶことを期待したい。

支援技術関連記事まとめ(2022年11月)※お知らせあり。

※以下のリンクをクリックするとDropboxへ接続し、ダウンロードが自動的に始まります。 ※ダウンロードファイルはHTML形式です。ブラウザで開いてください。 ※正常に表示されない場合は別のブラウザで試すか、エンコード設定を変えて見てくださ い。 ダウンロード: 海外記事 / 国...