画像引用元:National Rail
英国の鉄道事業者は日本と同様、障害があるもしくは怪我や恒例により移動が難しい乗客に向けて、スロープの準備や誘導といった乗降支援サービスを提供しています。これは移動の自由を保障するための重要なサービスですが一方で課題もありました。
英国の旅客鉄道ネットワーク、National Railでは、「Turn Up and Go」と呼ばれる連絡不要で受け付ける乗降支援サービスを利用できる場合もありますが、サポート内容や運営する鉄道会社によっては、原則として事前連絡による予約が推奨されています。
事前連絡を行う場合、決められた時間内に電話するか、電子メールもしくはWebフォームから乗車する24時間前までにリクエストを送信する必要があります。
しかしタイミングによってはリクエストした内容を変更したりキャンセルすることが難しく、必ずしも利用しやすい者ではありませんでした。これは駅スタッフ間の連絡が基本アナログで行われていたことが、要因の一つだったようです。
National Railはこのような問題を解決するため、スマートフォンから簡単にサポートをリクエストできるアプリ「Passenger Assistance」を導入しました。
サービスを依頼したい乗客は、このアプリを用いて24時間いつでも、いつどこからどこまで乗車したいのか、どのような支援が必要であるかをリクエストすることができ、変更やキャンセルもアプリから簡単に行うことができます。
またプロフィールを登録しておけば、連絡のたびに状況を説明する手間が省けるほか、写真を追加(任意)しておくことで駅に到着した際、駅スタッフが依頼者をスムーズに特定することができるようになります。
アプリの開発を担当したTransreportによると、電話によるリクエストでは依頼を完了するために平均30分ほど必要であったのに対し、Passenger Assistanceを使えば5分程度まで短縮することができるようになるとのことです。またアプリは音声読み上げ機能にも対応しており視覚障害者でもストレスなく利用できるよう設計されています。
一方でこのアプリの導入は、利用者だけでなく、鉄道会社にとっても利便性を大きく向上させるものとなりました。
利用者からのリクエストは乗降駅の端末にリアルタイムで共有されます。これによりサポート内容に応じたスムーズな人員配置ができるだけでなく、乗車プランが変更されたりキャンセルされた場合でも即座に対応可能になります。
結果的にリクエストを受付処理するための事務手続きが大幅に簡略化され、キャンセルや連絡の行き違いなどによる無駄な人員配置が軽減されるようになりました。
鉄道を利用する障害者の自由度が向上し、さらに事業者側の業務も効率化される。ICTによる支援技術が効果的に機能した一つの実例といえるでしょう。
Passenger Assistanceは英国在住者を対象に利用可能となっており、また従来からの電話や電子メールを用いたリクエストも引き続き利用できます。
日本の都市部では鉄道会社により多少の対応の違いはありますが、原則事前連絡なしで駅員による乗降サポートが利用できます。
私も初めての駅を利用する場合や乗り換えが複雑な時などに利用しているのですが、人手が少ない時間帯や降車駅と連絡がつかない場合など、タイムロスしてしまうこともあ離、なかなか到着時間が読めないというのが難点です。
もちろん鉄道会社もこのような問題は把握しており、社内的にICTを導入することでタイムロスを軽減する取り組みが行われています(東急電鉄、JR東日本、東京メトロなど)。それでも様々な要因で乗りたい電車に必ずしも乗れるわけではありません。
本来であれば自由なタイミングで健常者と同じサービスが受けられるというのが理想ですが、限られたリソースの中、確実かつスムーズに電車に乗りたい!というニーズに応えるためには、日本でもPassenger Assistanceのような、気軽に使える支援依頼予約の仕組みがあるとありがたいような気がします。
参考:Transreport app improves accessibility for disabled passengers (railway-technology.com)
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