Feelif Pro(画像引用元)
スロベニアのスタートアップFeelif社が開発した「Feelif」シリーズは、視覚障害者のためのスマートフォン/タブレット製品だ。従来のタッチ式デジタル端末に「触覚」を加えることで、これまでにはない新しいデジタル体験を提供する。
FeelifはSAMSUNG社のAndroidスマートフォン/タブレット端末をベースに、同社の特許技術である、着脱式の「触覚スクリーン」を追加。これに触覚・音声・振動オ最大限に活用する多感覚アプリケーションと、各種サービスをバンドルした製品である。
透明な触覚スクリーンには、スクリーンに触れた指の位置を検知できるグリッド(格子状の凹凸)や、点字を習得するためのドットなどがあしらわれており、Androidのスクリーンリーダー(Talkback)とバイブレーションを連動させることで、図形や線などを体感できる工夫が施されているという。
画面を目視せずに凹凸のないタッチスクリーンを操作しようとしても、今画面のどの位置に触れているか認識するのは難しい。そのため一般的なスマートフォンやタブレットで利用できるスクリーンリーダー(iOSならVoiceover、AndroidならTalkback)は、画面のどの場所をタッチしてもきちんと操作できるように設計されている。
この「今どこを触れているか」を触感でしる手助けをしてくれるのが、Feelifの触覚スクリーンに備えられているグリッドだ。たとえば画面に表示されている図形を効果音と振動にガイドされながら指でたどる場合、グリッドの触感を頼りにその座標を確認することで、その形をイメージしやすくなる。
Feelifのラインナップ。
Feelifのラインナップはスマートフォンの「Gamer」、廉価タブレットの「Creator」、そしてハイエンドの「Pro」の3モデル。それぞれのスペックを見てみよう。
Feelif Gamer(699€)
スクリーン:5,2型(720 x 1280ピクセル)
メモリ:2GB、ストレージ:内蔵16GB+microSD
Samsung SM-J730F/DSをベースにカスタマイズした視覚障害者向けスマートフォン。SIMカードをベット用意することで通話にも対応する。触覚スクリーンに20x10セルの「Feelif Gamer gridLines」を採用。Feelifの基本アプリケーションを用いて多感覚ブックやゲームなどを楽しめる。
Feelif Creator(1,499€)
スクリーン:9,6型(1980 x 800ピクセル)
メモリ:1.5GB、ストレージ:内蔵8GB+microSD
Samsung SM-T561をベースにしたタブレット端末。点字ドット付きの29x21セルの触覚スクリーン「Feelif Creator gridStandard」を搭載。基本アプリケーションに加えて、教育アプリ「Feelif Education」がプリインストールされる。
Feelif Pro(2,499 €)
スクリーン:9,7型(2048 x 1536ピクセル)
メモリ:4GB、ストレージ:内蔵32GB+microSD
Feelifシリーズ最高峰に位置付けられるタブレット端末。ベースとなるのはSamsung S3 SM-T825。高精細58x42セルの触覚スクリーン「Feelif Pro grid Professional」を搭載。「Feelif Education」に加え、Feelifシリーズで再生できる多感覚ブックを製作できる「FeelBook Maker」(晴眼者向け)がバンドルされる。
Feelifのオリジナル・アプリ。
この多感覚デバイスの特徴を最大限に引き出すのが、プリインストールされているFeelifオリジナルのアプリケーションだ。
これらのアプリはスクリーンノ触覚に最適かさレており、多彩な音(豊富・ユニークな効果音、タッチ位置に対応する音階など)、振動が触感と違和感なく連携するという。ユーザーは音と振動を感じながら、グリッドの触感により指の方向性を感じることで、コンテンツを思い通りに操れる。これはフラットなタッチスクリーンでは体験できないかもしれない。これこそがFeelifのキモといえるだろう。
Feelifアプリは大きく5つのカテゴリに分けられている。
- Feelif Games:多感覚で楽しめるゲームアプリ集。
- FeelBooks:サウンドと触覚で楽しめる電子書籍。
- Feelif Applications:Webブラウザやカメラなどの実用アプリ集。
- Feelif Education:タブレットモデルのみ。図形描画や点字学習ができる教育アプリ集。
- FeelBook Maker:Proのみ。FeelBookを製作できる晴眼者向けアプリ。
これに加え、さらに「Feelif Platform」を通じて新しいアプリや電子書籍が提供される。対応言語は英語、ドイツ語、フランス語、トルコ語、そしてスロベニア語だ。日本から購入できるかは未確認。
現時点のラインナップを見ると、比較的低年齢層をターゲットにした教育・エンターテイメントが主な用途だが、今後もっと高度な教育アプリや音楽などの趣味系アプリが充実すると面白そうだ。
あ、書き忘れていたがFeelifは通常のAndroid端末としても、もちろん活用できる。
視覚障害者にとってスマートフォンやタブレットは情報を取得するための重要な手段だが、それに「触覚」が加わることで、どのような世界が広がるのか、とても興味深い。
市場規模を考えるとどうしても高価になるのは止むを得ないが、それに見合う体験ができるのであれば、多くのユーザーを獲得できるだろう。
今後のコンテンツ拡充に注目したい。
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