2016年、視覚障害者のホーム転落事故が相次いで発生したことをきっかけに、鉄道事業者による視覚障害者のサポートが徹底されるようになった。筆者が駅でサポートを受けるようになったのはそれ以降なのでそれ以前の状況はわからないが、白杖片手に有人改札を通ると、ほぼ例外なく「案内サービス」の利用を聞かれる。
案内サービスとは人力により目的地の駅までリレーで手引き案内してくれるサービスのこと。視覚障害者に限らず、移動が困難な乗客をサポートしてくれる。
そんなこんなで、ほぼ全盲の筆者も度々利用させていただいております。
最寄駅(地下鉄)からJRのターミナル駅までは訓練を受けて単独歩行、それ以降は案内で移動するというパターンが多い。安全に移動できるのも頼もしいし、姿は見えねど案内してくれる人も色々でコミュニケーションが楽しかったりする。
てことで案内される中で気が付いた諸々をつらつらと書いてみたい。なおここでの内容はあくまでも筆者の経験とリサーチによるもの。鉄道各社の公式見解と異なる可能性もあるのでご了承いただければと思いますよ。
不用意に発生。年代当てクイズ。
手引きしてもらい乗車ホームに到着すると、まず案内係が降車駅に連絡する。そこでたまにそのやりとりを目の前できく機会があり、結構面白い。
いろいろな情報をやりとりしているのだが、その中に「利用者の外見」がある。
服装とか持ち物などを案内係の主観で報告するのだが、マスクしてたりすると「30代男性」とか聞こえてきて悪くない気持ちになる。ちなみに筆者はアラフィフである。
なおマスクなしではほぼ「40代」。まさにマスクマジックってやつだね。
にしても人によってはこの突然発生する年齢当てクイズに精神的なダメージを受けてしまうのではと思うのだがどうだろうか。ちょっとデリカシーが欲しいかも。
あと着てた服とかマフラーが思ってたのと違っていたという事実をこのやり取りで気づくことも何回かあった。ずっとブラックと思って使ってたバッグが実はダークブラウンだった、とか。ファッションチェックもしてくれるんだね。
降車駅のアナウンスはお断りできる。
乗る電車が到着すると案内係が校内アナウンスで、案内乗車があることを車掌に伝える。その際、何も言わないと「どの駅で降りるか」もアナウンスするのが通例。
おそらく連絡ミスなどによるトラブルを防ぐためのダブルチェックのためだと想像できるが、利用者によっては自分が降車する駅を代々的に公表されたくない場合もあるだろう。結構なプライバシー情報だと思うしね。
その場合は列車が到着する前に案内係にその旨を伝えればアナウンスを省略してくれるようだ。係員によっては確認されることもあるけど、用心深い人は覚えておくといいかも。
列車が遅延・運転中止した場合は?
先日、月1の通院のため案内サービスを利用したのだが、各所でダイヤが乱れまくり、大幅に到着が遅れた経験をした。乗車した列車の行き先も変更になってしまい、途中駅では他の路線に乗り換えるため多くの乗客が下車し車内はほぼ無人に(たぶん)。
列車は途中駅で停車しいつ動くかもわからない状態だ。実に不安である
だが案内をお願いしているため、むやみに動くのはどうかと思い、じっと動くのを待つ。幸か不幸か、運転を中止するのは降車駅。そして予定より1時間近く遅れて目的地に到着した。
すると、当然のごとく案内係が待っていてくれた。あー、一安心。
ここで疑問がふつふつと湧いてくる。
もし目的地の前で列車が運転を中止してしまったらどうなるのだろう?
別の機会に案内係に質問してみたところ、中止した駅でちゃんと案内係が待機してくれるようになっているらしい。そこで別ルートにリルートするなり引き返すなりできるようだ。なるほど。身を委ねるのが無難なようだ。
体調不良などのトラブルは?
では万一、列車に乗っていて体調が悪くなったりして降車したらどうなるのだろう?
その場合は下車した駅の駅員に連絡してほしいということだった。
ただ視覚障害者的には見知らぬ駅に降りて、すぐさま連絡できる自信はない。周囲に人がいればいいけど寂しい駅でぽつんと取り残される事態も考えられる。
となると電話で駅に連絡する手段しかないだろう。とりあえず筆者がよく案内を利用するJR東日本の連絡手段について調べてみた。
「Googleマップ」には電話番号なし。「JR東日本アプリ」にも掲載なし(ちなみにこのアプリはVoiceoverでは非常に使いにくい)。おかしいなあ、と思っていたら衝撃の事実が発覚。なんとJR東日本は駅の電話番号を公開していないらしい。
なんてことだ。
見知らぬ駅に降り立ち、周囲に誰もいない。
そんな事態を想像すると下手に下車できないではないか。
何か他に連絡手段がないだろうか。歩ける元気があれば知人家族とビデオ通話するか「Be my eyes」で誘導してもらうくらいしか思いつかないし、身動きできないともはや119番するしかないのだろうか。いや落ち着こう。きっと何かあるはずだ。
……調べてみたら、6:00から24:00の間であれば、問い合わせの代表番号「050-2016-1600」から各駅に転送してくれるラシい。これか。たぶん解決。
鉄道会社によって対応や連絡手段は異なるので、不安であればあらかじめ連絡方法を確認しておいた方が良さそう。備えあれば憂いなし、である。
でも本当は鉄道会社にかかわらず位置情報で今いる駅に緊急連絡できる手段があればいいのにと思ったりしなくもない。
歩行スキルの鍛錬もお忘れなく。
ぼんやりとしたリサーチの結果を書いてみたが、どうなんだろう。このようなルールはどこまでマニュアル化されているのか興味がある。鉄道会社によってどれくらいの違いがあるのか、それとも共通したものがあるのだろうか。いつか取材してみたいものである。
案内サービスは視覚障害者が安心して色々な場所に行ける、とてもありがたいサービスだ。友人改札まで辿り着ければ、とりあえず目的地の改札までは安全に移動できる。このサービスがなければ視覚障害者の移動はかなり制限されるのではなかろうか。
とはいえ人手不足が叫ばれる昨今、案内サービスだけに依存してしまうのもリスキーと言えるかもしれない。駅や時間帯によっては思いがけずタイムロスしてしまうことも多いしね。
頻繁に利用するルートであれば、歩行訓練を受けて単独で利用できた方が時間的にも精神的にも余裕がある。それ以前に基礎的な単独歩行スキルを備えておくことは「手引きされやすさ」やトラブルが発生した時に対処するためにも必要と感じる。筆者も今より歩行スキルが未熟だったころ、案内されているのに電車とホームの間に落ちかけて迷惑をおかけしたことがあった。情けなや。
それと、「周囲に頼る。」スキル」も必要かもね。
安全第一は大前提として、TPOに合わせ、歩行訓練やガイドヘルパー、アプリ(将来的には屋内ナビゲーション)などと組み合わせて上手に利用したいものである。
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