聴覚を研ぎ澄まそう。
視覚的なメディアに比べ、「音」を楽しむエンターテイメントは地味ではあるが、人間のイマジネーションを広げてくれる。音でなければ表現できない世界は、確実にある。
ということで数ある「音アプリ」の中から、ほぼ全盲の筆者が気になった、iPhone向け3D&VR系の3本をご紹介。
音が頭をぐるんぐるん回るユニークな音世界を体験しよう。
「Travelear」極上の3Dサウンド・トラベルを
開発/Nicholas Culpin 価格/無料
タップ一つで世界中で録音された高品質な3Dサウンドを楽しめるアプリ。
野鳥の囀りを聴きながらセントラルパークを馬車でのんびり観光したり、ニューオリンズでジャズフェスを堪能したり。街の喧騒に疲れたらワイキキビーチでぼんやり波と戯れることだってできる。
ハイクオリティな3Dマイクで収録された立体音響は臨場感抜群。イヤホンを使えば世界の音が脳内に満たされ、あっという間に世界中を旅している気分に浸れる。あえて動画ではなく「音」にフォーカスすることで、聴いている者の想像力を大いに掻き立ててくれる。
目を閉じて、包み込むようなサウンドに身を委ねてみよう。森の中で突然近づいてきた虫の羽音に思わず首をすくめたり、地下鉄で向こうの席のおしゃべりになんとなく耳をそばだててしまいたくなるはずだ。さまざまな事情で旅行や外出が難しくても、イヤホン一つで海外の空気を感じ取れる。素敵。
Travelearは世界中の「本物」のサウンドが楽しめるのが特徴だが、ただ漠然と録音された素材を公開しているわけではない。場所を移動したり細かいイベントが添えられるなど、緻密な編集により飽きさせない工夫が実にさりげなく施されている。脳内に広がるサウンドスケープ=音風景を最大限に盛り上げてくれる演出が、このアプリの最大の魅力だろう。
ゆっくりだが新作も随時追加されているようだ。
これは願望だが日本の音風景、たとえば京都・祇園祭の宵山や山鉾巡行、年越しの除夜の鐘、渋谷のスクランブル交差点なども面白いとおもうな。
「Dear API」イヤホンしてるのに音がiPhoneから聴こえる!?
開発/Dear Reality 価格/無料
指向性音源を制御するVRエンジン「Dear API」の機能を体験できるデモアプリ。特別な機器は不要で、iPhoneのセンサーを用いて音源を制御できるのが特徴。最新のバーチャルサウンド技術を手軽に体験できる。
なにはともあれ体験してみよう。イヤホンは必須だ。
アプリを起動し「calibrate and start」をタップ。ピッカーから体験したいサウンドを11種類から洗濯する。「Play」ボタンを押すとサウンドが再生されるので、iPhoneを正面にホールドした状態で「Reset front direction」ボタンをタップする。
あとはiPhoneをゆっくり上下左右に動かしてみよう。動かしたiPhoneの位置から音が鳴っているように聴こえる。スピーカーから音を鳴らしているなら当たり前の現象だが、イヤホンを装着しているのにiPhoneから音がなっている感じがなんとも不思議である。
まあこのアプリは技術デモなのでそれだけのアプリと言ってしまえばそれまでだが、音で空間を把握する技術をわかりやすく体験できるのは楽しい。
視覚障害者的にはこれを応用して生活を向上する方法を妄想するのも一興。仕組みは異なるが感覚としてはMicrosoftの「Soundscape」やCaltechのナビゲーション研究に近いものも感じなくもない。
街や部屋のあちこちから声が聞こえてくる、そんな未来を予感させてくれるアプリだ。
「Fields」仮想空間で体験する音のインスタレーション
開発/Particle Incorporated 価格/無料
「仮想空間でサウンドと対話する」新感覚の音響VRアプリ。
iPhoneのマイクで録音した3Dサウンドやインポートしたオーディオトラックを組み合わせ、オリジナルのVRサウンド作品を作成できる。仮想空間にさまざまな素材を自由にレイアウトしたり動きを加えることもでき、いわばバーチャル空間上のサウンド・インスタレーションともいうべき音空間を構築できる。
録音・再生には特別な機器は必要なくiPhoneだけで楽しめるのもポイントだ。
肝心の音声編集機能「Create」がVoiceoverではちょっと使いにくく、まだちゃんと試せていないのだが「Discover」から提供されている作品だけでも十分に楽しめる。
個人的にはiPhoneを正面にホールドした状態で、身体の向きを変えるリスニングスタイルがおすすめ。もちろんイヤホンは必須だ。
作品を再生すると、3D仮想空間のあらゆる方向から色々なサウンドが聞こえてくる。右を向けば右から聞こえていた音が正面になったり、音によっては向きを変えても位置が変わらないものもある。と思えば音が勝手に動いたりする。現実ではあり得ない音空間が出現する。
丹念に音を聞き分け、どの音がどこから聞こえてくるのか探求して見るのも面白い。
たとえば「Nils berg cinemascope, oh john」ではサンプリングボイスは仮想空間に固定されており向いている方向によって聞こえてくる場所が変化。真後ろを向けば、ボイスはちゃんと背中方向から聞こえてくる。
「Travelear」にしろ「Dear API」にしろサウンドそのものはリアルなモチーフが使われていたが、Fieldsは自然・人工音がないまぜになったカオスな音響空間に投げ込まれる感覚が魅力。
ちょっと不思議で刺激的なサウンド体験が楽しめる。
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