2019年1月、イスラエルのスタートアップRight Hear社は、ファーストフード大手マクドナルドと提携し、イスラエル国内にある180店舗に同社が開発している視覚障害者向けナビゲーションシステム「Right Hear」を導入することを発表した。ファストフード・チェーンでは世界初の試みだという。
これは、ビーコンとスマートフォンの専用アプリを用い、音声による現在地や施設までのターン・バイ・ターン・ナビゲーション、施設情報の取得、緊急通報などを提供するシステム。アプリはiOS、Androidに対応し、無料でダウンロードして利用できる。
Right Hearの仕組みはまず施設の各所に専用のビーコンを設置し、案内情報などを登録しておく。利用者がアプリを起動して店舗の近くに移動すれば案内スタート。カウンターや座席、トイレなど店内のいきたい場所を指定すれば、音声によるナビゲーションでその場所まで安全に案内してくれる。メニューなどの情報も音声で確認できるので、視覚に障害を持っていても単独で自由にサービスを利用できる。
視覚障害者が行き慣れていない外食店を利用するには、店内の移動やメニューの確認など単独では難しい部分が多く、誰かに同伴をお願いしたり、ショップのスタッフの助けを借りるしかなかった。しかし常に同伴を依頼できるとは限らないし、近年では労働者不足で店内を案内してくれるスタッフが常駐していないことも多く、食事をしたくても諦めて退店せざるを得ないケースも少なくなかった。結果単独での外出を躊躇してしまい、視覚障害者の社会参加の障壁の一員にもなりかねない。
Right Hearのようなシステムが導入されることで、視覚障害者が一人でも気兼ねなく外食を楽しめる手段が増えることは間違いない。これはこれまで来店をためらっていた顧客を呼び込み利益を最大化させるだけでなく、テクノロジーによる障害者の自立支援のショーケースとして、社会の包括製を高める効果もあるだろう。
ビーコンを用いて、キャンペーンや観光案内などの情報を提供すれば、幅広い顧客に対するマーケティングへの応用も考えられる。さらにRight Hearは端末の言語設定に合わせた多言語による情報提供にも対応しているので、インバンウンド需要も取り込めるだろう。
Right Hearはすでにイスラエルのほか、米国など世界各国の数百以上の施設に導入が進められている。日本でも同様のシステムに産総研による「NavCog」や小規模なプロジェクトがあり、研究・開発が進められている。コストや安全性など多くの課題は考えられるが、今回のマクドナルドの試みが広がりを見せれば、日本国内への影響も期待できるかもしれない。
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