2018年12月8日土曜日

見えなくても「見せる」ドキュメントを書きたい。


スクリーンリーダーでWebやドキュメントを読むユーザーにとっては、文書全体のデザインというか体裁を意識することは、ほぼない。
だが見える側にとっては、文書の体裁は結構重要な情報である。同じ内容であっても、フォントの使い方や行間などによって読み手が受ける印象は大きく変わってくる。デザインがコンテンツに多大な影響を与えるという意味においては、見た目に左右されないスクリーンリーダーユーザーは、常にフラットなスタンスでテキストと対峙しているといえなくもない。

それはさておき、視覚障碍者が晴眼者に情報を発信する場合、この「文書の体裁」をいかに整えるかは、結構な悩みどころである。メールやSNSならまだしも、Webやブログ、いわんや印刷物であれば、やはりある程度の体裁を整えておかないと明らかに見劣りしてしまう。
これではせっかくの情報も伝えきれないだろう。見えない立場としては実に面倒だがこれが現実だ。
どんなに素晴らしい人格者だって、素っ裸では変質者扱いである。ドキュメントだって同じことだ。
ああ、例え間違えた。

筆者は長年紙媒体で文章を書いてきたが、出版ライターは、基本原稿をベタ打ちのテキストで書くため、体裁に関してはほとんど意識することがなかった。ラフは描くものの、テキストスタイルや配色はデザイナーにおまかせしていたわけである。
で、視力を失ってからいざブログや企画書などを書くにあたり、それなりに体裁が整ったドキュメントをいかにして書いたらいいか、さっぱりわからない。もちろんタイトルがあって見出しがあって本文に続く、というセオリーはわかるのだが、フォントサイズや書体など、文書のバランスをどうしたものかと考えあぐね、茫然としてしまった。まあ悩んでいても仕方がない。私にはスクリーンリーダーというツールがあるではないか。見えないなら、音声だけで体裁を整える方法を編み出せばいい。


スクリーンリーダーで書式を調べる


体裁の整った文書を作成するには、すでに出来上がっているものを参考にするのが近道だろう。スクリーンリーダーは、ただテキストを読み上げるだけでなく、読み上げたテキストの書式、つまりフォント名やサイズ、スタイルやカラーなどを調べる機能も搭載されている。
まずはこの機能の使い方をおさらい。

・Voiceover(macOS)の場合

「VO+’T’」を押せば、カーソルのテキスト属性を読み上げる。
また、「VO+’F8’」でVoiceoverユーティリティを開き、
「詳細度」>「テキスト」タブを開いて
「テキスト属性が変わったとき」を「属性を読み上げる」に設定する。
もしくは「VO+’V’」で詳細度ローテーションを開き、「テキスト属性」を「読み上げる」に設定する。
すると、連続読みの際に属性の変化を検出したタイミングで書式内容を自動的に読み上げる。

・NVDA(Windows)の場合

「NVDA + ‘F’」を押せば、カーソル位置のテキスト属性を読み上げる。
また、「NVDA + Control + ‘D’」で「書式とドキュメント情報」設定を開き、
読み上げたい書式情報の項目にチェックを入れ「OK」をおす。
これで連続読み時に属性の変化を検出するとその内容が自動的に報告される。
設定プロファイルを作成しておくと切り替えて使いたい時に便利だ。

この機能を用いれば、Webなどで公開されているコンテンツの書式を調べ、コンテンツ全体の「見た目」をある程度イメージすることができる。よく用いられるフォントのスタイル(ゴシック、明朝、セリフ、サンセリフなど)を知識として頭に入れてをけば、よりイメージを具体化できるだろう。

これはというコンテンツ、つまり自分の表現したい内容に近いものが見つかったら、用いられている書式をメモするなりスタイルをコピペしてドキュメントを作成すれば、おそらくそこまで違和感のあるものにはならないはずだ。多分。


セオリーをWebで調べる


またWebを検索すれば、書式設定の基本を解説しているページも数多く見つかる。
例えば「レポート 体裁」や「論文 フォント」などでググレバ、テキストの書式だけでなくページ設定の具体的な数値も明記されているので参考になる。
無難なデザインを目指すのなら既存の書式をそのまま使えば問題ないが、こちらのように、書式のバランスを言語化しているページを参考にすれば、自分の表現に合わせて応用できるようにもなるだろう。

書式のイメージが脳内に出来上がったら、あとはエディタなりWordなりでその書式を適用しつつ文書を作成すればいい。でも一度は見えるひとに確認してもらった方がいいかもね。
ちなみにこのブログは、フォントはメイリオ、見出し16ポイント、本文12ポイントというスタイルで書いている。でも見える読者にとって読みやすいのかは確認できていない。大丈夫かなあ。

てな感じで若干の不安はあるものの、レポートやブログくらいなら見えなくてもそれなりに体裁を整えることはできそうだ。
ここから一歩進め、より複雑なドキュメント作成にもチャレンジしてみたいところ。そうなるとテンプレートのアクセシビリティとか入り組んだ話になりそうなので本稿はこれでおしまい!


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