視覚障害者が抱える大きな問題のひとつに「移動」がある。
ガイドヘルパー(同行援護)サービスや歩行訓練といった支援策は存在するものの、ガイドは利用に制限があったり、外出先が増えるたびに訓練を受けるわけにはいかない。結局、家族や知人に依頼して同行してもらうことになる。
これは万人が持ちうる「移動の自由」とはかけ離れた状態ではないだろうか。
いつでも好きな場所に人りで行ける。
そんな当たり前のことが、目が不自由というだけで制限されるのは悲しいことだ。
だがスマートフォンに代表される電子機器や通信環境の進化により、位置情報をもとに視覚障害者をナビゲートする技術が普及し、その状況は少しずつ改善されつつある。
スマートフォンの位置情報サービスを活用したナビゲーションとしては、ナビアプリを用いて音声や振動で歩行ルートを案内する方式が主流だが、どうしても手が塞がったり、イヤホンを用いなければならず、使用する機器や状況によっては安全面での懸念がある。
そこでスマートフォンと無線接続し、振動などの触覚で安全な誘導を目指す技術が続々と登場している。
例えば方向を振動で伝える「スマート白杖」やスマートブレスレット、ヘルメットやベルト、さらには衣服が振動するものまで、ありとあらゆるウェアラブルデバイスが開発され、すでにいくつかのデバイスは製品としてリリースされている。
その中でも、実感として比較的実用的かな、と思っているデバイスが「足まわり」、つまりスマートフットウェアだ。
「LeChal」は、インドのスタートアップDucere Technologies社が開発したスマートシューズ。好みの靴でも使えるよう、インソールタイプの製品もラインナップされている。
日本でも、国内Amazonで輸入品が購入可能のようだ。
LeChalは振動モーターと各種センサー、通信モジュール、バッテリーなどを内蔵し、BluetoothでペアリングしたスマートフォンとGoogleマップなどの連携アプリを用いて、ユーザーをターン・バイ・ターンでナビゲーションする。交差点などに近づくと目的地の方向を左右の靴が振動して案内してくれる仕組みだ。振動のパターンや強さは好みのものにカスタマイズできるという。
他のデバイスと異なり、靴は自分の歩く方向を常に向いているため、歩行ナビにもっとも向いている。もちろんハンズフリーというのも重要なポイントだ。
視覚障害者にとって、足元は白杖と並びとても重要な情報源。横断歩道や階段の手前にある警告ブロックを確認したり、段差や路面の材質・状況などを感じながら歩行する。歩行中は、白杖と足裏の感覚にかなりの神経を集中させている。そう考えると、ナビゲーションをスマート靴に担当させるのは情報を集中させるという意味でも理にかなっていると言えるのかもしれない。スマホなど手に持つデバイスだと、振動や音声に気をとられ足元の安全確認がおろそかにもなりかねない。
ただなれるまでは足裏の感覚に変化があるため、注意が必要になるかも……。
また測位はスマホの精度に左右されるため、環境によっては数メートル単位で誤差が発生したり、屋内では使えないなどの制限が考えられる。
試してはみたいのだが、貧困ライターには高価なので……。
ちなみにLeChalにはフィットネストラッカー機能も搭載されており、AppleやGoogleのフィットネスアプリと連携して移動距離や歩数なども管理可能らしい。
近年ではウェアラブル市場の盛り上がりに乗り、スマートフットウェアにも注目が集まっているが、多くはフィットネストラッカー用とのもので、ナビゲーション機構を備えたものは見かけない。
だが視覚障害者以外でもスマホのナビは一般的に利用されているし、歩きスマホが問題視されている昨今、むしろ一般向けのデバイスのようにも思えるのだがどうだろうか。
それこそ音声で目的地を伝えたら、あとはくつに案内してもらうことも簡単に実現できるはず。
たしかにLeChalの開発のきっかけは視覚障害者のサポートなのだが、その結果生まれた製品が番人にも便利であることが照明されれば、マーケットが広がり価格も下がるだろう。「障害者向け」というフィルターを外せば、そこに大きな何かが待っているかも?
新しい製品やサービスのヒントは、このようなところにも隠されていると思うのだが……。
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