視覚障害者の外出を支援するアイテムとして、古くから利用されているのがコンパス(方位磁針)。視覚障害者が単独で歩行する場合、視力以外の感覚を駆使しながら、脳内の地図と自分の位置を確認しながら目的地を目指す。
だが、さまざまな要因で自分の位置を見失うことが少なくない。其の要因の一つが、方向感覚の喪失である。
方向感覚を取り戻す方法としては、自動車屋歩行しゃの流れる方向、特徴のあるおとや香り、太陽光や風向きなどの自然現象などがあるが、常に其のようなヒントが与えられるケースばかりではない。
そのような時に、自分の向いている方向を客観的に評価できるコンパスが重要となってくる。
クラシックなタイプでは、アナログな方位磁針に点字とフタが付いており、フタを開けると磁針が固定され、指で触って方角を知るものが主流。だが指で針に触れることで故障などが多いためか、現在は音声コンパスや、スマートフォンなどに内蔵されている電子コンパスの利用が多いようだ。
特にスマートフォンでは、コンパスアプリとスクリーンリーダーの組み合わせで音声コンパス代わりとして利用するほか、地図アプリにおけるターンバイターン・ナビゲーション機能などで、電子コンパスが利用されている。
例えばiPhoneに標準でインストールされている「コンパス」アプリは、8つの方角だけでなく、北を0度とした360段階での計測が可能。Voiceoverを使った読み上げにも対応している。
さてコンパスは基本、自分の向いている方向を調べるのが主な用途だが、工夫すればちょっと便利な使い方もできる。
例えば横断歩道を歩くときや、点字ブロックが一部途切れている歩道などで、短い距離を直進したい場合がある。そんな時にコンパスを使えば、ある程度コースをキープした状態で歩くことができる。方法はシンプル。まっすぐ歩きたい方向を決めたら、コンパスの方角を調べながら、同じ方向へ歩けばいい。ただ、アナログコンパスだと磁針が安定するのに時間がかかるし、音声コンパスは場所によっては音声が聞きづらかったり、音声を聞くためにデバイスの向きが変わってしまい、なかなか正確な歩行が難しい。
そこで、音声ではなく振動で方角を調べられるiPhone用コンパスアプリ「振動コンパス」を使った歩行の例を紹介し用。
このアプリはシンプルなコンパスアプリだが、方角を音声で確認しやすいように、画面をダブルタップして計測値をロックしたり、「真北」を向くと、iPhoneが振動するという特色を持っている。
この振動機能を使って、直進歩行する手順を簡単にまとめると、
1.直進したい方向を向く。
2.振動コンパスを起動し、iPhoneをくるくる回して北を探す。
3.iPhoneが振動したら、其の位置でホールドする。
4.振動をキープさせながら歩く。
という感じになる。
神童する範囲にやや幅があるので、完全にまっすぐに歩けるわけでは無いが、横断歩道くらいなら大きくルートをズレることはないだろう。また、人とぶつかって方向を見失った時のリカバリーにも役立つかもしれない。
とにかく、iPhoneをガッチリとホールドするのが肝心だ。もちろん、白杖などで常に安全を確保する必要があるのはいうまでもない。
晴眼者にとっては、あまり意識して使うことは少ないコンパスだが、視覚障害者にとっては非常に貴重な情報ツール。訓練などでもあまりコンパスの使い方を学ぶことはなかったが、使い始めるとなかなか奥深さを感じるアイテムだ。
さまざまな位置情報サービスやナビゲーションアプリが登場している昨今だが、あえてコンパスと脳内地図だけで出歩いて見るのも面白いかもしれない。
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