現在開発中の「Mars Vision」は、ゲームの画面を見ることができないプレイヤーに対して音声による追加情報を提供するWindows用アプリケーションです。これを使うことで、音声読み上げなどの視覚をサポートするアクセシビリティ機能が搭載されていないゲームであっても、画面を見ることなくプレイすることができるようになるとのこと。
「Mars Visionは対応するゲームの画面をAI技術(ニューラルネットワーク)を用いてリアルタイムに解析。その結果をもとに画面上のテキストを音声で読み上げたりメニューをキーボードから操作したり、さらにゲーム進行のヒントとなるオーディオキュー(効果音)などを追加することで、画面を見ることができないプレイヤーを支援します。
このツールの動作にあたってはプログラムの改変などゲーム本編には一切手を加えないとのこと。デモ動画も公開されています。
視覚に障害のあるゲーマーの間では、ゲーム画面をスマートフォンアプリやスクリーンリーダーのOCR機能を用いてキャプチャして解析し、画面上のテキストを読み上げることでゲームを進める手法が考案されています。Mars Visionはこれを特定のゲームタイトル向けに拡張したものというイメージでしょうか。
DocumentによるとMars Visionはフルスクリーン表示されているゲームのバックグラウンドで動作し、ホットキーを用いてナビゲーションする仕組みのようです。いわばゲーム専用のスクリーンリーダーといった感覚ですね。現時点では英語版ゲームに対応し、読み上げスピードの調節やマウスボタンのクリック操作なども可能です。
Mars Visionは現在Civilization VI、Grand Theft Auto V、The Witcher 3、World of Warcraftなどでテストされており、今後もメジャーなMMORPGやシミュレーション、FPSに至るまで幅広いジャンルのゲームに対応していく予定とのこと。
開発にあたってはゲーム製作会社Super.comとのパートナーシップを締結、テストには多くの視覚障害当事者が参加しており、正式版は2021年後半にリリースされる予定です。
現在クローズドベータテスト中で、公式サイトでは広く視覚障害当事者やコミュニティからの参加を呼びかけています。ただこの公式サイト、ちょっと不安になるレベルでアクセシビリティが弱い。大丈夫なのかな?
さて、AIでゲームをアクセシブルにするという試みは少し前にRetroArchエミュレータにOCR機能が搭載されたという例がありました。ゲームに限らずAIを応用してコンテンツのアクセシビリティを向上させるというアプローチは、一つの手段としては面白いしアリではあると思います。ですが本来であれば開発側がきっちりアクセシビリティを確保する、というのが望ましい状況でしょう。
このようなツールはゲームにアクセシビリティが浸透するまでのつなぎ的、、もしくはレガシーな作品をプレイするための手段と考えるべきかもしれません。
参考:Super.com partners with Mars Vision to improve access for visually impaired gamers | VentureBeat
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