2020年4月23日木曜日

[粗訳] 希望に満ちた鳥のさえずり、不吉なサイレン。パンデミックで耳に入ってくる無数の音たち。


※本エントリーは「Hopeful birdsong, foreboding sirens: Myriad sounds magnified in pandemic | The Japan Times」をざっくり翻訳したものです。

コロナウイルスの危機は「音」の世界を劇的に変えた。
日常生活の不協和音は影を潜め、残された音に重みを与えた。そしてかつてはありふれていた音の中に、多くの人々が思いがけず慰めと希望と恐怖を見出している。
パンデミックの渦中にあるアメリカで「音」は喜びや悲しみの中、共有された経験となった。「目は魂への窓」といわれるが、孤立が続く中「耳」もまた私たちの心につながっているようだ。

「9.11の後、静かになった通りで、私は救急車の音を聞きたかったことを覚えています。その音は生存者がいることを意味していたからです。それが聞こえないと不安でした。でも今はこの妙に静かになった通りで救急車の音を聞くと、心が痛みます。」
マンハッタンのアッパーイーストサイドに住んでいる元ウォールストリーター、Meg Gifford氏(61歳)は語った。

ヨーロッパのホットスポットでは、夜な夜なベランダから歌声が響く。
ニューヨークでは、午後7時になると家に閉じこめられていた人々が窓から身を乗り出し音をたて、街はひととき歓声と拍手に包まれる。

少しの間だけ外出が許されたニューヨークの通りや公園で、耳に入ってくるゾッとするような言葉の断片。静けさは人々を熟練した盗聴者に変える。

「まだまだ長びきそうね。」
女性が言い聞かせるように呟く。
「お友達に触っちゃダメだよ。どこにも触らないで、覚えておくんだよ。」
父親が注意する。
「ええ、でも今は全然商売にならないんですよ。」
ビジネスマンが、誰かに説明している。
「見てママ、鳥よ。」
女の子が木を見上げて指を差す。

感染流行都市の一つであるサンフランシスコ。
テンダーロイン地区にある、まだ営業しているパン屋の上、そして閉店を命じられたレストランの隣で一人暮らしをしているMarkus Hawkins氏(58歳)は、視覚に障害を持つミュージシャンでありマッサージ・セラピストだ。
彼の生活は音によって導かれていたが、それが劇的に変わった。街の大部分が静けさに包まれている中、彼を取り巻く世界は急激に騒々しいものになった。
「あぁ厄介なことになりました。」彼は言う。
パン屋から響くひっきりなしにドアがバタンと閉まる音。2、3分おきにカチッと音がするフリーザーや冷蔵庫のコンプレッサー。この恐ろしい騒ぎが24時間続く。ロックダウン前には気にも留めなかったのに。

夜になると、彼の心を落ち着かせていたホワイトノイズ、つまりレストランの換気扇の音が聞こえなくなる。彼は会話を聞く。たくさんの会話を。なぜなら
「それらをかき消す音が失われたからです。」

Kamil Spagnoli氏は、小学生2人を持つ42歳の視覚に障害を持つシングルマザーだ。
彼女は杖を使って、マンハッタンの東に位置するストーニー・ブルックを歩く。ウイルスが街を襲い彼女と子供たちを孤立させた時、彼女は毎日頭上に4から5機の医療ヘリの音を聞いた。
「あれは、治療を受けていたのでしょうか?」彼女は首を傾げる。
「今はもう何も聞こえません。」
彼女もまた、普段頼りにしている音を失った状態で暮らしている。通りを横切る時、交通の流れに耳を傾けるが静けさに危険を感じるという。
「今は交通量がとても少ないのです。どこにも行けません。」
彼女は言った。
「目では周りの様子が分かりません。音のフィードバックが必要です。」

アメリカにおける初期のホットスポットの一つ、シアトル。
フェリーの運行本数が少なくなったことで、、これまで時計のように時間を刻んでいたお馴染みの汽笛が少なくなった。ここにも、音と静けさの中で奏でられる不安がある。

遠くから聞こえる消防車は、呼吸困難に陥った人を助けに駆けつけているのだろうか?
今は空っぽになってしまったこの街の人気スポット、スペース・ニードル。週末の賑やかな人混みは、いつもどってくるのだろうか?
アメリカにおける流行初期、ウイルスが陰湿に拡散する前の国内の震源地となっていたシアトル郊外のカークランドにあるライフケアセンターでは129人以上が発症し3ダース以上の人が亡くなった。
救急車が老人ホームに向かう坂道を上るときのサイレンの音は、外に集まった愛する人たちを恐れさせた。数週間後、脅威が過ぎ去った後、救急車の数は少なくなり、他の地域へ向かうようになった。でもどこへ? 事態は緊急かつ大きすぎて正確にはわからない。

心を落ち着かせてくれる音もある。
春がやってくると鳥のさえずりが盛んに聞こえてくる。アメリカンゴールドフィンチの風変わりな鳴き声、フクロウのような鳩の鳴き声、ヒヨドリゲラの鳴き声など、セントラルパークは都市部の熱心なバードウォッチャーに憩いの場を提供している。

ロックダウンされた地域の教会ではイベントや儀式が行われていないにもかかわらず、鐘を鳴り響かせることで、幸福な時も騒乱の時にもほとんど気づかなかった多くの人々の信仰心を高めている。
オハイオ州立大学の准教授Isaac Weiner氏は、この現象に歴史的な皮肉を感じている。彼は2013年に出版した著書「Religion Out Loud: Religious Sound, Public Space, and American Pluralism.」で、教会の鐘が、何世紀にもわたって論争を巻き起こしてきた歴史を研究してきた。
「疫病や伝染病が流行していた頃、多くの教会が自主的に鐘を鳴らさなかったという伝統があ離ました。」Weiner氏は言う。
「鐘の音が回復期の病気を悪化させると恐れられていたのです。」

感染者や重症患者が増え続けている今、鳴り響く鐘は医療従事者への感謝を呼び起こすための確固たる呼びかけとして機能している。耳を傾け続けよう。


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