2020年2月3日月曜日

アクセスできないアプリやWebを「Seeing AI」で探索する。

Seeing AIでアプリ画面を解析。

さて全盲の筆者は、普段iPhoneをVoiceover(音声読み上げ機能)を駆使しながら活用している。そのような日々の中で痛感しているのは、音声読み上げ環境で利用できないアプリやWebがあまりにも多いということ。せっかく便利そうなアプリを見つけ、ワクワク気分でインストールしたとしても、その期待はすぐに失望へと変わってしまう。

アプリを起動しても、
  • 画面をタップしようがスワイプしようが、ウンともスンとも言わない。
  • アプリ本編に進むためのボタン(使用許諾の同意ボタンなど)が見つからない。
  • ボタンにラベル(名前)がつけられておらず、音声で機能を把握できない。

こんなことは日常茶飯事。これはアクセシブルでないWebでも同じだ。
メガ見えるそこのあなた、こんなアプリやWebを想像して見て欲しい。
「画面が真っ暗」。「どこをタップしても無反応」。「ボタンに何も書かれていない」。
結構、絶望するでしょ?
Voiceoverユーザーは日常的にこのような「ガッカリ体験」を否応なく浴びせられているのである。それもこれも、多くのアプリやWeb開発者が、Voiceoverなどのスクリーンリーダーを使う人々のアクセシビリティを考慮していないことが原因なのだ。

大抵はこの瞬間テンションが劇さがりし即刻アプリを削除したりWebから立ち去ってしまうものだが(さようなら)、どうしてもそのアプリやWebを使わなければなら無いこともある。いや、使いたいからインストールしたんだけどね。

「今Voiceoverが立ち往生しているこの画面。一体何が映し出されているのだろうか?」
それがわかれば、何か大作を寝ることができる(かもしれない)。
そこで役立つのが「Seeing AI」である。

このアプリの画像認識AIを用いれば「画面に表示されているであろうなにか」を、音声で知ることができる。それを知ったからといって何かがすぐに解決するわけではないかも知れない。だがユーザーをガッカリさせたアプリの姿だけでも拝んでおくことができる。

では実際の手順。
アプリやWebにアクセスしVoiceoverがダンマリを決め込んだら、ここですかさず「スクリーンショット」を撮影しよう。ホームボタンがある機種ならスリープボタンとホームボタンを同時に押す。iPhone X以降ならサイドボタンと音量を上げるボタンを同時に押せばいい。シャッター音が聞こえれば成功だ。スクリーンカーテンはオンのままでもOK。

スクリーンショットが撮れたらSeeing AIを起動し「メニュー」>「写真の参照」をタップ。先ほど撮影したスクリーンショットを開くことでイメージが解析され、画面に写っている文字、場合によってはグラフィックスなどが説明される。ボタン上のテキストや説明文、初回起動時に表示されるインストラクション、何かの警告文、使用許諾画面……Voiceoverではわからなかった様々な情報が得られるだろう。
さらに「写真を探索」をタップし、認識された情報の位置をタッチで確認することで、画面のレイアウトが(大雑把だが)イメージできる。

もしタップできそうなボタンが見つかったら該当アプリへ戻り、Voiceoverをオフにしてその部分をタップしてみる。インストラクション画面なら、画面を何回か左スワイプしてみるのも有効だろう。「ラジオクラウド」は、この方法でアクセスできるようになったアプリの一つだ。(最新バージョンでは未確認)

またVoiceoverで操作はできるものの、ボタンに適切なラベルがつけられていないような場合も、この方法を用いてボタンの機能を把握するヒントが得られるかも知れない。ボタン上のテキストが判別できたら、項目をダブルタップ&ホールドしてカスタムラベルを付けレバいい。
例えば最近リリースされたマクドナルドの「モバイルオーダー」の商品を選ぶ画面を認識させたところ、画面にある読み上げないボタンの位置に「レギュラーメニュー」や「サイドメニュー」といったテキストが見つかった。
これまで見える人に手伝ってもらうしか確認しようがなかった画面を単独で把握できるようになったことは、率直に言って非常に画期的。すごいよSeeing AI。

とは言えこの方法でアクセスできるアプリは少数派だろう。アクセスできないアプリやWebは、首尾貫徹してアクセスできないことが多いためだ。結局のところ、開発者へフィードバックし改善を求めるしかない。ただこの場合でも、Seeing AIで内容を確認し「どこがアクセスできないか」を把握しておけば、より具体的な提案が可能になるはずだ。

まあ、そもそもアプリやWebは、このような工夫をすることなくアクセシブルであるべきである。いかなる理由があろうとも、スクリーンリーダーで使えないのは「不具合」である、という考え方が早く浸透して欲しいものだ。


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