2019年5月29日水曜日

[メモ] 視覚障害者も触覚で映像が楽しめる米国の多感覚シアター。


2019年5月24日、米国ロサンゼルスにある世界有数の水族館Aquarium of the Pacificに併設されている劇場Honda Pacific Visions Theaterがリニューアルオープンし、そのかつてない多感覚の体験とアクセシビリティが話題となっている。

まず目を引くのはその巨大なスクリーン。20,000ルーメンの性能を持つ3台のレーザー・プロジェクターから投射される8K品質の映像は133フィートの湾曲したスクリーンに映し出され、高精細で迫力のある映像を表現。加えて床から立ち上がる直径30フィートのディスクには、別のプロジェクターからの映像が投影され、これらが融合することで他では味わえない体験を提供する。
サウンドシステムも充実しており、スピーカーはスクリーンの後ろに7台、12フィートの支柱に2台、頭上の歩道に9台、劇場の後ろに4台設置されており、サブウーファーを含めると20以上のオーディオチャンネルという豪華版。そして観客はシートを通じてサウンドを振動として体感できると言う。
さらに「香り」を生成するシステムをスクリーン下に設置。映像の重要なシーンでこの機能がどうさし、ファンによって客席に香りを届ける。

そしてこの劇場で最もユニークな仕掛けが、超音波を用いて擬似的な触覚を実現するUltrahaptics社の技術による演出だ。これは座席に設置された専用のスピーカーから、映像や音とシンクロした音波が発せられ、手の中に圧力点を生成。手の中に触感を表現するというもの。

Ultrahapticsの製品マーケティング担当ディレクターであるVince Fung氏によると、この技術が水族館や博物館の映像に使われるのは今回が初めてという。同社はCortinaやAquariumと密接に協力し、映画と同期する触覚体験を作り出した。同劇場のオリジナル作品「Designing Our Future」の作中では、観客の手の中に「泡が弾ける」ような感覚や「波が跳ね返る」ような感覚などが表現されている。

この仕掛けは映像への没入感を高めるとともに、アクセシビリティの観点では視覚や聴覚に障害を持つ観客に音声や字幕以上の情報を与えるという側面もある。視聴覚障害者には触覚を調節するパネルが提供され、最適な触感の強さにカスタマイズできるとのことだ。

この劇場ではさらに携帯端末を用いたキャプションや聴覚ループなどの支援技術もふんだんに提供されている。Aquarium of the Pacificの社長兼CEOであるJerry Schubel博士は、公共施設に障害者への合理的配慮を義務付ける「障害を持つアメリカ人法」が要求するレベルを超えたアクセシビリティの実現に注力してきたと語っている。

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