2019年4月14日日曜日

[雑感]「Orcam Myeye 2」の選挙導入に思う視覚障害者と「投票の秘密」。


先日イスラエルで実施された選挙において、視覚障害者の投票のために「Orcam Myeye 2」が導入されたというニュースが伝えられた。(ロイターの記事

投票所を訪れた視覚障害者はMyeye 2を装着したメガネとイヤホンを身につけ、投票用紙に記載された投票先をMyeye 2で認識、音声で内容を確認して投票用紙を選ぶことができる。あとは選んだ投票用紙を封筒に密封し、投票箱へ入れればおしまい。これで全盲でも単独で秘密投票が可能になるというわけだ。投票所のアクセシビリティについては情報がなかったので不明。
この実験にあたり、複数のソリューションが提示されたようだが、Orcam My eye 2は投票用紙の認識精度の高さはもちろん、オフラインで動作するという特徴からセキュリティの面でも評価されたという。現状の投票システムを改変せずにアクセシビリティを向上させる手段として「Myeye 2」がピッタリはまったという感じだろうか。ただMyeye 2は点字出力に対応していないので盲ろう者はサポートできないという問題は残りそうだ。

一方日本では、世界に先駆けて1925年に点字による投票が認められており、点字の読み書きができれば憲法で規定されている「投票の秘密」が保証されている。
だが点字ができない視覚障害者や様々な理由で文字を書くことが困難な有権者に対しては、原則2名の立会人による代筆投票しか投票手段がなく、秘密投票の側面から、また見えない有権者が代筆された投票用紙を確認する手段が用意されていないなど、長年の問題となっている。それに代筆による投票用紙は手書き文字なのでMyeye 2のような確認方法も難しいだろう。

中途失明者が点字を覚える機会が限られていることに加え、高齢になるほど点字の習得が困難になると言われている。この現状を帰るには、自筆投票が原則という投票システムの改善が必要かもしれない。

海外では紙による投票でも、EVM(でんし投票端末)を用いて音声や点字、スイッチコントローラー操作で投票先を本人が確認・選択し、投票用紙にその内容をプリントアウトする仕組みが導入されている地域もある。これに「Myeye 2」のようなデバイスで投票用紙をチェックする仕組みが加われば、点字が使えなくても単独で秘密投票が確保されるだろう。

筆者も点字の読み書きがおぼつかないので代筆投票を使っているが、晴眼の頃を思い出すとあまりにも格差を感じてしまう。家族にすら教えない投票先を知らない人(それも2人)に知らせなければならないし、いや、むしろ知ってる人の方が嫌かもしれない。もちろん守秘義務はあるのだろうけど、この状態はとても「投票の秘密」が守られているとは思えないなあ。特に地方ではかなりセンシティブな問題だと思う。そしてこれは障害者に限らず、手をケガしたり一時的に見えにくくなる場合など誰にでも起こりうる問題ではなかろうか。
さすがに一足飛びにオンライン投票を、とまでは言わないけど、もう少しテクノロジーで何とかならないものだろうかね。

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