2020年9月30日水曜日

「Assassin's Creed」最新作の予告編でYouTubeの音声切り替え機能が明らかに。

Ubisoftは積極的にアクセシビリティ向上に取り組んでいるゲームメーカーの一つ。

同社はこれまでもいくつかのゲーム予告編ムービーに、視覚障害者へ向けた音声解説を加えている。しかしそれはあくまでも通常の予告ムービーとは別に音声解説付きのバージョンを制作したものに過ぎなかった。

だがゲームアクセシビリティスペシャリストであるIan Hamilton氏のツイートによると、2020年9月29日に公開された「Assassin's Creed Valhalla Story」の予告ムービーは、これまでとは少し様子が違っているのだという。


Assassin’s Creed Valhalla: Story Trailer | Ubisoft [NA] - YouTube


このムービーを開き、YouTubeプレーヤーの「設定」を開いてみよう。

そのメニューの中に「音声トラック」という項目があることに気が付くはずだ。

そう、いつの間にかYouTubeは音声切り替えに対応していたらしい。

このムービーでは「英語(解説)」と「英語(オリジナル)」という二種類のトラックから音声を選択することができる。「解説」を選択すると画面に何が映っているかを説明するナレーションが加えられた音声に切り替わる。

テレビやDVDソフトでは当たり前の機能なのだが、ようやくYouTubeで音声切り替えができるようになったのだ。これは嬉しい。


YouTubeにはアクセシビリティ機能として既に自動書き起こしに対応したマルチ字幕が提供されている。しかしこと音声に関してはこれまで一つのトラックしか扱うことができず、複数の音声トラックを含んだコンテンツを公開することはできなかった。

音声切り替えに対応したことで、視覚障害者向けの音声解説はもちろん、多言語音声やオーディオコメンタリーなどを含むコンテンツも提供できるようになると考えられる。まだ現実的ではないが、将来的に自動書き起こし字幕のようなAIを用いた自動音声解説なんてのも実現するかもしれない。


対応するトラック数は? オーサリングツールへの対応は? そもそも今後広く公開されるの? などまだ不明な点は多いが、YouTubeのアクセシビリティを大きく向上させる機能であることは間違いないだろう。

ひとつでも多く、視覚障害者でも楽しめる作品が増えることを望みたい。


参考:Assassin's Creed Valhalla Trailer Debuts New YouTube Accessibility Tools - GameSpot


2020年9月28日月曜日

A11Y Topics #009。英国公的機関でWebアクセシビリティが義務化、TGAにアクセシビリティ部門を新設など。

※一週間で見つけた支援技術、主に視覚リハに関する記事のメモ書き。基本月曜更新。努力義務。

※乱文・誤変換ご容赦です。

※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。

※bloggerの仕様変更で見出しタグが付けられてません。「○」で検索してジャンプしてください。


○英国。9月23日から公的機関に対しWebアクセシビリティの準拠を全面的に義務化。

Digital accessibility: Transforming government


2020年9月23日、英国の公的機関は2018年9月23日に施行されたPublic Sector Bodies Accessibility Regulations 2018に基づき、そのWebをアクセシブルにする義務を負うことになる。対象は中央政府と地方自治体および一部の慈善団体と非政府組織。公的放送局など一部例外もある。

対象となる組織は所有するWebサイトをWCAG 2.1 Level AAに準拠させ、同時にアクセシビリティステートメントの公開とアクセシビリティの問題に対処するための窓口を設けなければならない。そして政府機関であるGovernment Digital Service(GDS)はこれら組織のWebを監視し、必要に応じて改善を指導する義務を負う。

2018年9月23日以降に公開されたWebは、GDSの定めたアクセシビリティルールに従う義務を持っていたが、これに加え2018年9月23日以前に作成されたWebに関しても、新しいルールに準拠させなければならない。なお同法は2021年6月までにモバイルアプリケーションのアクセシビリティのルール準拠も義務付けている。

一方で民間の調査によると、2年間という準備機関が設けられていたにもかかわらずいまだに多くの公的機関のWebには代償さまざまなアクセシビリティの問題があるという(参考調査)。英国の視覚障害者支援組織RNIBは、アクセスできないWebに対しユーザーから改善を求めるためのツールキットを公開している。情報発信側のアクセシビリティに対する意識向上とともに、この新しいルールに基づいたユーザーからの声も積極的に伝える必要があるのだろう。


○AIRAとWayAroundが提携。電視タグへの情報登録をAIRAエージェントが支援。

Aira + WayAround


WayAroundは、WayTagsと呼ばれる電子タグに情報を書き込み、衣服や書類ケース、調味料いれなどに貼り付けることで視覚障害者の生活を便利にしてくれるサービス。ユーザーはスマートフォンを用いてWayTagsをスキャンすれば、書き込まれた情報を音声で確認することができる。日本でも同様のサービスとして「Tag of Things ものタグ」がある。

ただこのようなサービスは、タグに情報を書き込むためにどうしても晴眼者のサポートが必要だった。この問題を解決するため、WayAroundは遠隔サポートサービスであるAIRAとパートナーシップを締結。タグへの情報登録をAIRAのエージェントの助けを借りて行えるようにした。

ユーザーはタグに登録したい物をカメラを通じて見てもらい、エージェントはそれをもとにタグに登録する内容を記述してメールで送信する。あとは受け取った内容をタグにコピペして識別したい物に貼り付ければ完了だ。一人暮らしなどすぐに誰かに見てもらえない視覚障害者でも、使いたい時すぐにタグを登録できるのはQOLを向上させるしWayAroundにとってもその利便性を大きくアピールできるだろう。

電子タグは工夫次第で視覚障害者の生活を劇的に便利にしてくれる。情報の登録というハードルを超える仕組みが普及すれば、もっと広く使われるのではないだろうか。あともう少しタグを手軽に入手できるといいな。


○選挙支援団体がBe My Eyesと提携。視覚障害者の投票をサポート。

Vote.org joins Be My Eyes to Support Visually Impaired Americans in 2020


米国で選挙に関するあらゆる情報提供と投票支援を行う非営利団体Vote.orgは、11月に実施される大統領選挙に向け視覚障害者を支援するマイクロボランティアサービスBe My Eyesと提携。アプリのビデオ通話を通じて目の不自由な有権者の投票を支援する。

Be My Eyesに登録している視覚障害者は、スペシャライズドヘルプからVote.orgを呼び出し、有権者登録のサポートや確認のほか、投票に関するさまざまな情報提供を受けることができる。

いまだ沈静化の目処も立たないCovid-19感染拡大の中実施されるこの選挙では、視覚障害者への対応も州によって大きく異なっており、必ずしもアクセシビリティが確保されているわけではないようだ。視覚障害者の安全を保ちつつ選挙権を正当に行使するためにも、このような支援が役立つだろう。


○文化施設をアクセシブルにする取り組み2つ。


The UniDescription Project Breaks Down Common Barriers to Media Accessibility – American Alliance of Museums

The UniDescription Projectは、2014年にハワイ大学マノア校とNational Park Service(NPS)が共同で開始した、自然公園や文化施設に関するメディアのアクセシビリティの向上を支援するプロジェクト。米国の100を超える施設でパンフレットの音声バージョンの製作やWeb上にあるメディアの画像説明文の整備などを行っている。8月には2020 Gold Media & Technology MUSE Award for Research & Innovationを受賞している

近年、AIを用いて画像説明文を生成するSNSなどが登場しているが、The UniDescription Projectはあくまでも人の力によるオーディオ記述にこだわっている。そして5年間の活動で蓄積されたノウハウをもとに、オーディオ記述の製作と普及を促進するためのオンラインツールを公開している。公園や文化施設のアクセシビリティ向上だけでなく、広く視覚障害者に対する情報保証を目指す人々にとっても貴重な情報源となるかもしれない。


Tunisian Museums Develop Special Apps For The Visually-Impaired | Al Bawaba

チュニジア、チュニスにあるバルド国立博物館は、施設や展示品を視覚障害者にもアクセス可能にする総合的なイニシアチブを発表した。これらには点字に翻訳されたパンフレットや展示物の音声解説を提供するモバイルアプリケーションと専用デバイス、さらに一部の展示品を3D印刷したレプリカなどの製作が含まれる。加えて博物館のWebサイトのアクセシビリティ改善も行う。最近任命され、自らも視覚障害者であるチュニジア文化大臣は、国内の他の文化施設に対しても同様の取り組みを行うよう要請している。


○今週見つけた視覚障害者支援デバイス。


UAE invention wins James Dyson Award 2020

UAEの学生によって開発された「Touch」は、視覚障害者の生活をサポートするスマートリング。この指輪型デバイスには「色の識別」と「テキスト読み上げ」という2つの機能が搭載されている。識別した色の名前や認識されたテキストは振動やBluetooth接続したイヤホンを介して装着者に伝達される仕組みだ。このデバイスはUAEとしては初めてJames Dyson Awardを受賞している。将来的にはこのリングを中心に、リストバンドやネックレスといったウェアラブルデバイスと連携させるアイデアもあるようだ。


This Indian startup is giving an artificial vision to visually impaired people using AI and Deep Learning | SME Futures:

インドのスタートアップNexartは、「Eyewey」と名付けられた視覚障害者向け学習型AI画像認識フレームワークを開発している。物体を識別したりテキストを読み上げることで視覚障害者を支援するほか、様々な用途への応用も考えられているようだ。同社はEyeweyソリューションの一環として、識別した物体や障害物を振動で伝えるスマートグローブも合わせて開発中。同社はこれらの製品をできる限り手に入りやすい価格で提供することを目指しているという。


This Smart Contact Lens Is Already In Clinical Trials At Ghent University In Belgium

ベルギーのゲント大学では、視覚障害者を対象とした医療用スマートコンタクトレンズの臨床試験が始まっている。このレンズには超小型のバッテリーと各種センサー、液晶ディスプレイが内蔵されており、レンズに入り込む光の量を自動的に調節することで光過敏を持つユーザーの見えにくさを改善する。ディスプレイは濃淡を変化させるだけのシンプルなものだが、将来的に光を感じられる視覚障害者に対し矢印などを表示させ、ナビゲーションや障害物の警告などにも応用する計画もあるという。


○今週のゲーム関連トピックス。


The Game Awards arrives December 10 with new accessibility honor | VentureBeat

The Game Awards(TGA)は毎年12月に米国で開催される、その年における各ゲームジャンルにおいて最も功績のあった作品や人物・団体を表彰する年次イベント。今年はCovid-19感染拡大防止のため12月10日にオンラインで開催されることが決定している。

そしてTGAの主催者でありイベントの進行役を務めるジェフ・キーリー氏は、今年新たにゲームアクセシビリティに焦点を当てた賞が設けられることを明らかにした。

「TLOU2」を筆頭に、近年ではゲームに包括的なアクセシビリティオプションを導入する作品が見られるようになってきた。またMicrosoftのXbox Adaptive Controllerのようなユニバーサルな周辺機器の開発や障害者ゲーマー支援団体との連携の動きも活発かしてきている。ただゲーム業界全体から見れば、これらはまだごく一部の動きであることも否めない。

TGAではおそらくTLOU2もしくはその関係者が初の受賞者となる可能性が高いが、実際にどのような雰囲気になるのか注目したい。アクセシビリティが特別なものではなく、全ての開発者が取り組むべき課題であ理、障害当事者にとって切実な問題であるというメッセージが発疹されて欲しいものだ。

TGAのようなメジャーイベントがアクセシビリティを扱うことで、このムーブメントを一過性のものにせず、未来に向け定着させる効果を期待したい。願わくば他のイベントやゲームメディアへの波及も望まれるところだ。


All-Digital PS5 And Xbox Series S Pose Unique Accessibility Challenges - GameSpot

視覚障害を持つゲーマーであり、ゲームアクセシビリティ情報サイト「Can I Play That?」の執筆者の一人であるSteve Saylor氏のGameSpotによるインタビュー。PS5やXbox Series Sで広がるメディアレス時代におけるアクセシビリティの問題が提起されている。

根本にあるのは、ゲームのアクセシビリティに関する情報がメーカーやゲームメディアからほとんど公開されていないという問題。障害を持つゲーマーは、購入前にそのゲームが自分にプレイ可能かどうかを判断できず、ギャンブル覚悟で購入するか、もしくは諦めるかの2択を迫られているという。従来の物理メディアの場合は購入店のキャンセルポリシーに従い返品することができたが、ダウンロード購入したゲームの場合プラットホームにより返品が不可能なケースもある。情報も得られず返品も制限されるとなると、障害を持つゲーマーにとってはより障壁が高まる懸念が出てくる。

アクセシビリティ不備による返品という問題は複雑な要素を孕んでおり、すぐには解決しないかもしれない。だが少なくともメーカーやゲーム媒体から詳細なアクセシビリティ情報が提供され、障害を持つゲーマーが購入を判断できる環境が整えば、トラブルはゼロにはならなくとも減少はするだろう。個人的にはとにかく情報不足が最大の問題と思う。これ、AppStoreなどのアプリストアでも同じことが言えるよね。


2020年9月26日土曜日

iPhone向け物体認識アプリ「Vhista」でちょっとだけ未来を感じたかも。

視覚障害者にとって、周囲にある物言わぬオブジェクトを認識するのは難易度の高いクエストだ。

手探りで恐る恐る触れてみるか、誰かに教えてもらわなければそのオブジェクトは存在しないも同じ。でもこのご時世、ぺたぺた者に触れるのもはばかられるし、常に新設な人がそばにいてくれるとは限らないのが現実。

そんな悩みを解消してくれるかもしれないときたいされているのが、コンピュータビジョン(CV)すなわちAIによる画像認識技術。

スマートフォンで周囲をぐるりと撮影すれば、周りにある者を目で見たように教えてくれる………視覚障害者が待ち望んでいる未来だ。


「Vhista」はコロンビアのエンジニアであるJuan David Cruz氏。によって開発された、iPhone用物体認識アプリ。現在App Storeから無料でダウンロードできる。

このアプリは、リアルタイムに物体を解析するARモードと、撮影した写真やフォトライブラリの画像をじっくり解析する「クラウドモード」の2つのモードを搭載している。いずれもiPhoneノカメラが捉えた映像をCVを用いて解析し、画像に含まれる物体の名前を音声で読み上げてくれる。


アプリを起動すると「ARモード」になり、iPhoneをかざした先の物体をリアルタイムに検出し読み上げる。解析処理はiPhone内で行っているようでオフラインでも動作する。

このモードではオブジェクトの名前だけでなく、物体までのおおよその距離も教えてくれるので、周囲の環境をイメージする助けにもなる。


また「Take Picture」で写真を撮影するか「Choose from Photo library」から写真をインポートすると、クラウドを利用した、より高精度な解析が実行される(インターネット接続が必要)。

ARモードと比べ処理時間はかかるが得られる情報量は圧倒的に多い。このモードでは解析結果の精度がパーセントで表示されるのも特徴。個人的には画像解析中の効果音が可愛くて好みだ。

解析結果から前の画面に戻った時「Take Picture」ボタンが「Cancel recognition」と読み上げられてしまうのはBugかな? 筆者だけかも。


インターフェイスや音声は全て英語だが、認識精度はSeeing AIやiOS 14の物体検知と比較しても、正確さや詳細度において遜色ない。まあ得手不得手はあると思うが、少なくとも少し前までのこの手のアプリのような明らかに的外れな結果は少ない気がする。

なによりリアルタイムでもそこそこ的確な情報が得られるのは、従来のアプリではあまり経験できなかったように思う。


とはいえVhistaはまだ情報量もレスポンス的にも目で見渡すようにはいかず、理想のアプリにはまだ力不足なのは否めない。だがCVの進化を実感できるとともに今後に期待を持たせてくれるアプリでもあると感じた。今後AIへの学習が進み、端末の性能がアップしていけば結構良い線まで到達するのではないか。そんなワクワク感がある。

インターフェイスは非常にシンプルでVoiceoverでの操作も全く問題ない。リアルタイムとクラウドで認識を使い分けられるのも理にかなっているし、英語さえ苦にならなければ体験して見るのも面白いと思う。過剰な期待は禁物だけど。


このジャンルはまだまだ発展途上。実用的になるにはまだ時間が必要だろう。

でも「Vhista」でちょっとだけ未来を垣間見た気がするな。


参考:Vhista App Helps Blind People Move Around the World | Digital Trends


2020年9月21日月曜日

A11Y Topics #008。LiDArを応用したナビシステム、Appleの触覚時計バンドの特許など。


※一週間で見つけた支援技術、主に視覚リハに関する記事のメモ書き。基本月曜更新。たぶん。

※乱文・誤変換ご容赦です。

※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。

※bloggerの仕様変更で見出しタグが付けられてません。「○」で検索してジャンプしてください。

※困ったな。


○LiDArを応用した視覚障害者向け屋内ナビゲーションシステム。

GoodMaps announces breakthrough indoor positioning technology to power accessible navigation application - GoodMaps


米国American Printing House(APH)の関連スタートアップであるGoodMapsは、スマートフォンアプリとマッピングツールをバンドルした視覚障害者向けの統合屋内ナビゲーションシステム「GoodMaps Explore」を発表した。このシステムはこれまでAPHが提供していたナビゲーションアプリ「ACCESS EXPLORER」をベースに開発されたもので、すでにiPhone向けアプリがダウンロード可能となっている(日本のAppStoreでは利用不可)。

一般的に屋内ナビゲーションシステムを構築するためにはまずフロア内のマップデータを作成する必要があり、これが非常に手間と時間がかかる作業だった。同社が提供するLiDArスキャナベースのマッピングプラットホーム「GoodMaps Studio」は、この工程を大幅に効率化したという。GoodMaps StudioではLiDArスキャナによりフロア内のさまざまな構造物やオブジェクトを立体的に記録し、屋内のマップデータを構築する。このマップデータとスマートフォンアプリ「GoodMaps Explore」のカメラが捉えた画像をマッチングすることでユーザーの位置を推測し、ナビゲーションを提供する仕組みだ。誤差は最大で1.5メートル程度とのこと。

これまで広く利用されてきたBLEビーコンを用いる方法と比較し、このシステムは測位精度が高く、導入・運用コストも大幅に軽減できると同社は語る。LiDArスキャナを視覚障害者ナビに応用する試みはいくつか見られたが、なるほどこの手があったかといった印象。これならスマホにLiDArが搭載されてなくても使えるもんね。


○Apple、スマートウォッチのバンドにアクティブな凹凸を生成し情報を伝達する特許。

Apple researching Apple Watch bands that can provide information in Braille | Appleinsider


先日のSeries 6やSEの発表で一掃の注目を集めているApple Watch。様々なセンサーが追加されインプット周りは進化し続けているが、情報のアウトプットに関しては相変わらずディスプレイと音声、シンプルな振動のみで大きな変化はない。だがAppleはこの状況を「触覚」で打破しようとしているのかもしれない。

米国特許商標庁は、Appleが2016年に申請した触覚機構を備えた時計のバンドに関する特許を公開した。Patently Appleの記事によるとこの特許は、スマートウォッチのバンドに仕込まれたソフトアクチュエーターを用いてベルトの表面もしくは内側に凹凸を発生させ、触覚によって時刻や通知などの情報を伝達するというもの。

現行のApple Watchでは振動で時刻を知らせるTaptic Timeという機能があるが、バンドにシンボルや点字を表現することで、より詳細な情報を伝達できるという。会議中や映画館といった画面や音で情報を取得しにくい状況での利用が想定されているが、視覚障害者や盲ろう者への情報伝達にも活用することができる技術だろう。

Appleはこの技術を将来的にリリースする(かもしれない)リングやスマート衣服などのウェアラブルデバイスへ導入する可能性も示唆している。


○バルセロナ。視覚障害者のバス利用を支援するシステムを導入。

Los autobuses de Barcelona ofrecen un asistente virtual para personas ciegas


スペイン、バルセロナ交通局(Transports Metropolitans Barcelona TMB)は、視覚障害者のバス利用をサポートするインテリジェントなシステムの導入を発表した。

バルセロナ市内にある役2,600のバス停留所と役1,080台のバス車両にBluetoothビーコンを設置。ユーザーのスマートフォンにインストールされたTMBアプリと相互通信するシステムを導入した。

視覚に障害を持つ乗客はTMBアプリを用いてバスの時刻や運行状況をリアルタイムに確認できる他、乗りたいバスのドライバーにメッセージを送信することもできる。また「Guide to Step option」機能により乗りたいバスが到着したか、停止しているか、ドアが開いているかなどの情報も提供する。これは複数の路線が混在しあらゆる方向へ向かうバスが集中するターミナル停留所で特に便利だろう。これに加えそれぞれの停留所にはnavilensのコードが導入され、視覚障害者が目的の停留所を見つける手助けをしてくれる。

またこれとは別件で、同じくスペインのサラゴサではバス停留所にnavilensを試験導入することも発表されている

鉄道と比較するとバスの利用は複雑で、障害を持っていなくても乗り間違いなど起こしてしまいがちだ。このようなシステムは視覚障害者に限らず、土地勘の乏しい観光客やビジネスパーソンなどにとっても有益だろう。


○盲導犬団体がBe My Eyesと提携。専門的なサポートを提供開始。

Guide Dogs for the Blind joins Be My Eyes!


北米地域で最大の盲導犬団体であり盲導犬の育成やトレーニングなどを行うGuide Dogs for the Blind(GDB)は、マイクロボランティアサービスBe My Eyesと提携し、同アプリの「スペシャライズド・ヘルプ」を通じたサポートを北米在住の視覚障害者に対し提供することを発表した。盲導犬団体がBe My Eyesとのパートナーシップを結ぶのはこれが初めてとのこと。

盲導犬ユーザーは、パートナーの健康チェックやフードのパッケージの識別、ハーネスの問題に至るまで、盲導犬に関わるあらゆるサポートをスマートフォンのビデオ通話を介して受けることができる。専門知識を持つサポートと迅速に接続できることは、盲導犬ユーザーには心強いだろう。


○リードユーザーとしての障害者。イノベーションは障害者のニーズから生まれる。

Why People With Disabilities Are Powerful Drivers of Innovation | Muse by Clio


どれだけマーケティングを尽くしたとしてもマジョリティのニーズからは世界を変革するようなアイデアはなかなか生まれてこない。市場はマジョリティの枠からはみだすことで斬新なアイデアを捻り出そうとするが、本当に画期的なアイデアは「枠の外」にこそ存在している。これまでも世界を変えた多くの発明は、障害を持つ者のニーズから生み出されている

記事では最近の例としてマルチタッチディスプレイや音声アシスタント、歴史的には歩道の縁石カットやタイプライター、蓄音機などが挙げられている。障害者のための技術が結果としてあらゆる人々に恩恵をもたらすという、いわゆる「カーブカット効果」としては他にもエレベーターや映像のキャプションなども含まれる。

障害者をリードユーザーとしてとらえ、ユニークなニーズを救い出すことが世界を変えるイノベーションに繋がるのではないだろうかというお話。


○ゲーム関連トピックス。


その1. Marvel’s Avengers’ accessibility options are severely limited - Polygon

「Marvel’s Avengers」は、リリース前からそのアクセシビリティオプションの充実についてアナウンスされてきた作品だった。参考記事1参考記事2

だがいざ発売されてみると一部の障害を持つゲーマーは、その前宣伝とのギャップに落胆を隠さない。この記事では、ロービジョンのプレイヤーがキャプションのカラー調整やゲームプレイに直接影響のあるHUDの視認性などに関してアクセシビリティの不足を指摘している。それはリリース前の報道からイメージしたものとは大きくかけ離れていたものだったようだ。

「Gears 5」や「The Last of Us Part II」といった優れたアクセシビリティオプションを持つ作品の後では、求められるハードルが高まっているのは事実。だが一方であのレベルのアクセシビリティを実現するためにはまだ時間もノウハウも不足している。アクセシビリティは一夜にして成らずである。

ゲームのアクセシビリティに注目と期待が集まる中、これからはメーカー自身が作品のアクセシビリティを慎重に評価し、ユーザーに対し正確な情報を誠実に提供することが求められてくるだろう。


その2. 次世代コンソールの没入型サウンドに期待。

PS5もXbox Series Xも発売日や価格がアナウンスされ、いよいよ盛り上がってきた次世代コンソール。アクセシビリティに関する情報はほとんど入ってこないが、期待はしておきたいところ。

視覚障害者としては、次世代コンソールの特徴である「没入感」がアクセシビリティへの扉を開く可能性を秘めていると考えている。以前に取り上げたPS5の触覚技術もその一つ。

そしてもう一つが「音」。PS5ではTempest” 3Dオーディオ、XboxではDolby VisionとAtmosをサポートし、音による空間表現が大きく進化しているようだ。これらの技術により「TLOU2」のようなスクリーンレスでプレイできるゲームがもっと登場して欲しいものだ。


2020年9月14日月曜日

A11Y Topics #007。スペインのアクセスできない接触追跡アプリ、米国ADA訴訟が減少など。

※乱文・誤変換ご容赦です。
※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。

スペイン。接触追跡アプリのアクセシビリティが問題に。


スペイン政府が公式にリリースしたCovid-19感染者接触追跡アプリ「RadarCOVID」が、視覚障害者にとってアクセシブルでないことがわかり問題になっている。このアプリはスマートフォンのスクリーンリーダーに対応しておらず、初回起動時に現れるプライバシーポリシーの確認画面から先へ進むことができない。またアプリのメイン画面にあるボタンやタブにはラベルがつけられておらず音声で使用することが難しいという。
スマホ使いの視覚障害者にとっては日常的に遭遇するガッカリアプリの典型だが、公共性の高いアプリだけに残念な感じは否めない。場合によっては健康や生命を危険に晒す可能性もあり、早急な改善が求められるだろう。
接触追跡アプリは世界各国でリリースされているが、各所でアプリ自体やその関連情報へのアクセシビリティの不備が指摘されている(インドニュージーランドオーストラリア)。今月下旬には英国で同様のアプリがリリース予定だが、果たしてアクセシビリティは確保されているのだろうか。なお日本のCOCOAは今のところ使えている。

米国。Covid-19の影響でADA Title III訴訟数が激減。


いまだCovid-19感染拡大の終息が見通せない米国。そんな中、2020年前半に連邦裁判所に提起されたADA Title III関連の訴訟数が前年と比べ大幅に減少したことが報じられている。
ADA Title III訴訟は米国の中でもカリフォルニア、ニューヨーク、フロリダの3州が吐出して多く、その数は右肩上がりで増加し続けてきた。だが今年の4月、5月にこれらの州で厳しい外出規制が実施されたことで訴訟の数が大幅に減少、その結果が全体の数に影響を及ぼしたようだ。
ただ経済活動が再開されるにつれ訴訟の数は再び増加傾向にある。Covid-19流行に伴い一気に需要が高まったネットショッピングやリモート教育、テレワークなどのデジタルアクセシビリティの問題、マスク問題など新たな火種がくすぶり始めたこともあり2020年後半は急激な増加へ転ずる可能性もある。
Covid-19の影響はこんなところにも現れてくるのだなあ。詳しい数字などは元記事をどうぞ。

Google Playゲーム、視覚アクセシビリティの絞り込み検索に対応。


GoogleがAndroid上のPlay Gameストアアプリに新しい検索フィルタを追加したと報じられている。検索セクションにある「詳細表示」をタップすると、有料/無料、広告の有無、アプリ内購入の有無などの条件を指定して検索結果を絞り込むことができるようになったとのこと。ここで注目したいのがBlind Accessibilityという検索条件。これを使えば視覚アクセシビリティに対応しているゲームを検索結果から絞り込めるようだ。
現在手元にまともなAndroid端末がないためまだ確認はできていないのだが、これがどのレベルのアクセシビリティを指すものなのか、そもそもどれだけヒットするものなのか興味深い。もしこの機能が実用的に動くのだとしたら結構大きな影響をもたらす変更ではないかと思ったりする。
ユーザーがアクセシぶるなゲームの情報を得やすくなると同時に、開発者に対しアクセシビリティを意識させる一つのきっかけになるかもしれない。まあ本当はこんなフィルタしなくても、全部のゲームがアクセシブルであるべきなんだけどね。

触覚を感じられるグローブ型ウェアラブルデバイスを開発。


オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学の研究者は、圧力や振動などの触覚を感じることができる手袋方のウェアラブルデバイスのプロトタイプを開発した。手袋の指先内部には3-Way指向性skin stretch device (SSD)と呼ばれる筋肉を模したアクチュエーターが備えられており、装着者はこれを通じて指先に自然な触覚を感じられるという。従来の類似技術と比べ、ソフトで軽量、薄い素材であるため、より幅広い用途に用いることができると研究者は騙る。
コノデバイスは遠隔医療やVRなどのエンターテイメント分野への応用が考えられているが、視覚リハビリテーションにおいても障害物などの情報伝達や指点字などさまざまな用途が考えられるだろう。
Covid-19感染拡大により人同士の接触が避けられている昨今、このような仮想触覚デバイスが求められているのかもしれない。でも手袋型デバイスって、なかなか実用化されないんだよね。

イタリア。QRコードで視覚障害者の買い物を支援するシステム。


イタリアのスタートアップが開発した「Narrative Label」は、QRコードを用いて視覚障害者のショッピングを支援するシステムだ。商品パッケージに貼付されたQRコードをスマートフォンでスキャンすればその商品の詳しい情報を音声で読み上げてくれる。将来的に食品メーカーと協力し、視覚障害者の利便性向上を目指すという。
小売店における慢性的な人手不足が叫ばれる昨今、テクノロジーによる視覚障害者の買い物支援は喫緊の課題だろう。電子タグからバーコード、QRコード、コンピュータビジョンに至るまで様々なソリューションが検討されているが本命はどれだろう? 全盲でも一人で颯爽と無人コンビニを利用できる日が待ち遠しいね。

eコマースのアクセシビリティはWebに限らないというお話。


Amazonは全ての出品者に対し顧客とのコミュニケーションに関するガイドラインを改定し、連絡メールに絵文字やアニメGIF、Typoを使わないなどアクセシビリティに関する幾つかの規定を追加した。このガイドラインは2020年11月3日より適用される。
これらの規定は顧客からの苦情をもとに制定されたとのこと。確かにマーケットプレースなどから商品を購入した場合、送られてきたメールがスクリーンリーダーでは読みにくい、なんてこともあった記憶がある。このようなメールにはキャンセルポリシーなど重要な情報も含まれているため、アクセシビリティには極力配慮して欲しいものだ。
ネット通販のアクセシビリティというとどうしてもWebだけに目が行きがちだが、メールのアクセスは意外な落とし穴なのかもしれないと思ったのだった。
あと全然関係ないけど最近、かなり頻繁にAmazonを騙るフィッシングメールが届くようになってきた。まあ自分の名前が記載されていないので即ゴミ箱行きなのだが、かなり紛らしいのも事実。皆さんも引っかからないよう、くれぐれもお気をつけください。

iPhone向けOCRアプリ「Voice」がアップデート。


iPhone使いの視覚障害者なら、それぞれお気に入りのOCRアプリを持っているだろう。
定番の「OCR Pro」、無料なら「Seeing AI」や「Google翻訳」、協力なリアルタイムOCRが魅力の「Envision AI」など選択肢はさまざま。そんな中で筆者が常用しているアプリが「Voice」。9月4日にV5.01へアップデートされた。
Voiceはドキュメントの撮影とOCR処理の指示を音声コマンド(Capture、Read)で行えるのが特徴で、画面に触れることなく書類の読み上げができる。他にも書類のエッジ検出や複数ページをまとめて処理するなど、OCRアプリとしてしっかりポイントは押さえてある。インターフェイスは英吾だが日本語の認識も問題ない。
今回のアップデートでは写真をインポートしてテキストを抽出する機能が加わった他、インターフェイスが刷新され、よりVoiceoverユーザーに優しくなった印象だ。価格は610円。アプリ内購入で高精度な読み上げエンジンを組み込むことができる(ただし日本語には非対応)。

そうそう、Seeing AIも V3.6のアップデートでトルコ語に対応し、トルコの通過と商品バーコードのスキャンが可能になった。AIの性能も少しずつ向上しているようで、かこに解析した写真を再分析してみると、以前より明瞭な説明文が生成されることが多いことに気づく。「写真の探索」も体感的にエラーが少なくなったような気がするな。
行きつ戻りつつ、少しでも前へ進んでいることを信じたい。

Apple、音声解説を加えたゲームのプロモーションビデオを公開。


Appleは同社のYouTubeチャンネルにおいて、Apple Arcadeでリリースされるアドベンチャーゲーム「The Last Campfire」のプロモーションビデオを公開した。記事によるとAppleがArcade作品をビデオで紹介するのはこれが初めてのことだという。
注目したいのはこのビデオ、ゲームの内容を逐一ナレーションで解説しているということ。しかも結構フランクだ。もちろん元のゲームにはナレーションはつけられていないのだが、将来、ゲームにこれくらいの音声解説が付くようになれば、全盲ゲーマーでも「TLOU2」を超えたエクスペリエンスが得られるのでは無いか。そんな妄想を掻き立ててくれるビデオだった。それだけのお話。

2020年9月6日日曜日

A11Y Topics #006。OSMベースのルート検索システム、Twitterのアクセシビリティチーム、Google Docsなど。

※乱文・誤変換ご容赦です。
※誤訳・読解力不足多々あると思います。元記事も併せてご覧ください。

OpenStreetMapを活用した視覚障害者専用の歩行ルート検索システムを開発。


イスラエル工科大学の研究者は、OpenStreetMap(OSM)を用いた視覚障害者に特化したルート検索システムの開発を発表した。研究者は当事者や歩行訓練士の協力を得て、視覚障害者が安全に移動するための施設や手がかりを検討しOSMへ登録、このデータを元に最適なルートを算出するアルゴリズムを開発した。
繰り返し実施されたテストによると、このシステムによって生成されたルートは当事者や歩行訓練士が最適と考える経路と同一、もしくはそれに近い結果を示したという。
歩行者の移動ルートを提案するナビゲーションサービスはGoogle Mapsなど数多く存在するが、これらのルート検索で弾き出されるのは基本的に最短距離のルートだ。近年になりスロープやエレベーターなどの施設を優先的にルートに組み込むバリアフリーマップの構築が進められつつあるが、視覚障害者特有の障壁を考慮したものはまだ少ない。
例えば多少遠回りになったとしても、可聴式信号機が設置されている交差点やてんじブロックが敷設されている歩道を選ぶ方が圧倒的に安全に歩行できる。また視覚障害者はそのような地形的な特徴だけでなく、伝え歩きしやすい建築物や障害物の有無、店舗から流れてくる音や飲食店からの匂いに至るまで、独特なランドマークを用いて自ら移動しやすいルートを試行錯誤し構築している。今回のルート検索技術とともにこのようなデータが蓄積されていけば、視覚障害者の移動の障壁は大きく軽減されるだろう。

Twitter、新しい2つのアクセシビリティ専門チームを組織。


2020年6月、Twitterが音声によるツイート機能をリリースした直後、同社はその機能がアクセシブルでないという多くの批判に直面した。クローズドキャプションなど聴覚に障害を持つユーザーのための機能が全く用意されていなかったことが主な要因だ。さらにTwitter社にはアクセシビリティを扱う専門チームが存在していない事実も明らかになり、同社は即座にこれらの問題を改善することを約束した。
そして現地時間9月2日、Twitterは公式ブログを通じて「Accessibility Center of Excellence(ACE)」および「Experience Accessibility Team (EAT)」という新しい2つのアクセシビリティチームを組織したことを発表した。
大まかに言えば前者は企業全体のアクセシビリティ促進に関する業務を、後者は開発した製品や新たに開発する製品のアクセシビリティに関する業務を担う。すでに2021年初頭リリースを目標に、ツイートされたビデオやオーディオにキャプションを加える機能を開発しているという。
専門チームが結成されたことで、今後はユーザーからのフィードバックも反映されやすくなるだろう。今までアクセシビリティチームが無かったという事実は衝撃的だったが、そこからわずか2ヶ月あまりでここまで達成したTwitterのフットワークの軽さにもびっくりだ。

Apple、デバイスの一部分だけに触覚フィードバックを発生させる特許を取得。


米国特許商標庁が2020年9月1日に公表した「Tactile notifications for electronic devices」と題された特許の内容は、Appleがスマートフォンなどのデバイスに、よりきめ細かい触覚フィードバックを実装する可能性を示している。従来の触覚フィードバックはデバイス全体を振動させることでユーザーに通知などの情報を伝達するが、この特許はデバイスの一部分、例えばスクリーンの四隅やトラックパッドのエッジなどを振動させるアイデアを含んでいる。また複数のアクチュエーターなどを用い事なる触覚を表現する事で通知の内容を区別する方法も示されている。
もしこのアイデアが実現すれば、画面を見ることができないVoiceoverユーザーにも大きなメリットがあるだろう。例えばマップの地形や図形、グラフなどのイメージをタッチし、その形状に応じた触覚フィードバックが得られれば、音声だけでは伝わらない情報を理解しやすくなるかもしれない。
スマートデバイスのインターフェイスはどうしても視覚と聴覚に大きく依存している。これに触覚というレイヤーが加わることで、異次元のエクスペリエンスが実現するかもしれない。Appleはこれまでも多くの触覚関連特許を取得しており、その可能性を探っていることだけは間違い無いだろう。

Google Docs、アップデートで視覚アクセシビリティを強化。


源氏時間2020年8月30日、Googleは同社が提供するクラウドオフィススイート「Google Docs」をアップデートし、支援技術を活用する視覚障害者のための新しいショートカットキーの追加と機能の改善を行なった。
公式ブログで明らかにされた変更点は以下の通り。
  • 新しいショートカットキー「Ctrl+Alt+H」、Macでは「CMD+Option+H」を使い、Docs、Sheets、Slidesにおける点字ディスプレイサポートを切り替えられるようになった。
  • ショートカットキーでナビゲートする場合、コメント、見出し、スペルミス、提案などカーソルの移動先が通知されるようになった。
  • 長いドキュメントやリストをナビゲートする際の信頼性が向上した。
  • 画像、スペルミス、文法エラーが直接言語化されるようになった。
  • 表をナビゲートするときやコンテンツを選択するときにセル全体の内容をアナウンスするなど、ナビゲーションと選択の言語化を改善した。
個人的にはGoogle Docs、少なくともMacではスクリーンリーダーでかなり苦戦して挫折した記憶がある。これを機に再チャレンジしてみようと思う。思うだけ。

最近見つけた、視覚障害者向けモビリティデバイスたち。


メキシコのスタートアップが開発している「STRAP」は障害物を検知し振動で通知してくれるウェアラブルデバイス。頭から下半身までの位置にある障害物をカバーし、ハンズフリーで利用できる。スマートフォンとの連携も可能で、緊急時に位置情報を含めたSOS発信機能も持つ。現在プレオーダー受付中で、2021年夏の発売を予定。

ケニアのスタートアップHope Tech +が開発中の「FOURTH EYE」は、超音波を用いた障害物検知デバイス。現在アフリカ各地でユーザーテストを実施している。同社はさらに「THE SIXTH SENSE」と呼ばれる歩行支援デバイスも開発中とのこと。

ドイツのデザインスタジオwerteloberfellが開発したスマート白杖「Sense Five」のプロトタイプ。この白杖は画像認識を用い周囲の情報を解析しユーザーへフィードバックする。白杖のグリップ表面の質感を変化させる仕組みがユニークだ。自動的に点灯するLEDライトも搭載している。

これは新製品では無いが、障害物を検知するリストバンド型デバイス「Sunu Band」が、ソーシャル・ディスタンシングに役立っているという記事。列に並んでいるときや買い物中に周囲との距離を保つことができたといった声が寄せられているという。このデバイスは障害物との距離に応じて振動の強さが変化するが、行列に並ぶ時は一定の振動をキープすることで距離を取りつつ待機できるということのようだ。なるほど。

2020年9月5日土曜日

「eSight 4」発表。ロービジョン補正スマートグラスの最新版。

eSight 4(画像引用元

2020年8月、トロントに本拠地を置くeSightは、視覚障害者向けスマートグラスの新製品である「eSight 4]を発表した。
2017年に発売され米TIME誌の「The 25 Best Inventions of 2017」にも選出された前モデル「eSight 3」に続く第四世代のスマートグラス製品となる。
この製品は限られた視力を最大限に活用することに特化して開発されており、見えないものが見えるようになるデバイスではない。eSightの対象ユーザーは、視野欠損やボヤけた視界に悩まされているいわゆる「ロービジョン」と呼ばれる、視力は残っているが見えにくい人々だ。

eSight 4はメガネ型デバイスの前面に備えたカメラがとらえた映像をデジタル処理し、内側の高解像度OLEDディスプレイへリアルタイムに表示する。ユーザーの見え方に応じてカスタマイズ可能な補正機能、例えば最大24倍のズームやコントラスト調整、カラー反転などをくしし、見たい者の距離に応じて残された視力・視野に最適化された最良のビジョンを提供する。疾患の種類や進行状況にもよるが、視覚障害者のQOLを大きく改善する可能性を秘めている。
eSight 3からの主な改善点は以下の通り。

  • ディスプレイの改善。明るさが2倍に、解像度が1280×960ピクセルに
  • オートフォーカスと画像安定化システムのレスポンスが向上
  • バッテリーへのアクセス方法が改善
  • 違和感の少ないデザイン、装着性の向上

全体的なレスポンスの向上や本体のバランス改善による装着性、バッテリー交換を容易にしたことで、場所を選ばず、より長時間の利用が期待できると同社は語っている。前モデルのゴーグルのようなデザインからカジュアルな見た目になったことも装着のハードルを下げそうだ。(筆者は外観を確認できないのだが)。
そしてeSight 4最大の特徴がスマートフォンとの連携機能。
スマートフォンとeSight 4はワイヤレスで接続され、専用アプリを用いて写真やビデオを転送できる。eSight 4には256GBのストレージと3つのスピーカーが内蔵されており、ユーザーは転送したメディアを見やすく補正して楽しむことができる。逆にeSight 4で写真やビデオを撮影しスマートフォンへ転送することも可能だ。さらに専用のクラウドサービスによるアップデートにも対応し、簡単に機能追加ができるようになった。
なお映像の調整など基本的な操作は本体のタッチパッドで実行できるのは従来通り。

eSight 4の価格は前モデルと同じ5,950ドル。北米ではすでに販売が開始されており、米国退役軍人省のFSS承認を取得した。ヨーロッパでも安全基準CEマークの認証を取得しており、この秋にも発売される予定となっている。
日本国内では前モデルが「eSightマイグラス」として販売中だが、eSight 4については現時点で情報を見つけることはできなかった。



[雑記] 白杖につける「鈴」を求めて。

白杖使いで杖や持ち物に「鈴」をつけている人、たまに見かけます。
鈴を身に付けて周囲への注意喚起、ということはわかるんですけど、あの鈴ってどこで手に入るんだろう? そういえば今まで関係者間でこの話題に触れたことなかった。
筆者も全盲の白杖使いですが一人でヨチヨチ歩いていると結構人にぶつかることが多いので、ちょっと気になるんですよね、あの鈴。

でも見えていた頃を含め半世紀ほど生きてきましたが「鈴が必要」な場面に遭遇したことがなかったのでどこで手に入るのか見当もつきません。所持したことがあるのはせいぜいキーホルダーにくっついてるちっこい鈴くらい。かといって視覚障害者用具で見かけたこともないしなあ。
まだまだ視覚障害者の文化、知らないことが多いです。

鈴など音が鳴るものを身につけるという習慣は各個人の工夫から生まれたものらしく、これといったノウハウは広く共有されていないようです。
いろいろ調べた結果、どうやらこのような鈴、山登りする人がつける「熊よけ」のものを使うことが多いことがわかりました。「熊鈴(ゆうれい)」とも呼ぶようです。
熊鈴は登山用品を販売しているスポーツショップなどで扱ってるみたい。というわけで触って選びたいので通院のついでに行ってきましたよ某石井スポーツ。

お店に行ってみたらまあビックリ、すごく種類が多い。ざっと数十種類はありそうでなぜかテンションアップです。音色や大きさ、カラビナの種類など様々なタイプがあり聞き比べするだけでもちょっと楽しい。
そしてさすが「熊よけ」を謳うだけあり小さいサイズでもしっかり音が響きます。確かにこれなら混んでる場所でも気がついてもらえるかも。
熊ちゃんが気付くんだから、いわんや人間をや。

もちろん「白杖用熊鈴」なんてものはないので、音色や重さなどあれこれお試ししながら選びます。ポイントと思ったのが「消音」機能。これがついていれば鳴らしたい時だけ音を出すことができます。カラビナを引っ張ってロックするタイプや、ケースをスライドさせ固定するタイプなどがありました。
そうそう、小さめのリンゴくらいのサイズのがあって笑えるかなと思ったんですけど白杖が振りにくくなるのでやめました。派手な音はよかったんだけどね。

あれこれ悩んだ末選んだのは、カランカランと鳴るカウベル風の小型熊鈴。個人経営の喫茶店とかスナックの入り口に仕込んでる感じのアレの小さい版です。1,500円くらいでした。
キーチェーンに小さいポーチが付いてて鳴らさない時はこれに鈴を入れておけます。あとはこれを白杖のセンターラバーに取り付ければ多分準備完了。
これで少しは安全に歩けるかな? そもそも鈴って効果あるのかな? 顰蹙買ったりしないかな? いずれにせよ街に出ればわかるはず。山に出れば熊ちゃんも逃げるはず。
ただ残念なことにこのご時世、しばらく出かける予定ってないんですけどね。こいつが活躍してくれるのは、一体いつのことになるのかなあ。

さて今回は個人的な興味で鈴を購入してみたんですけど、そもそも視覚障害当事者の間でこの工夫、どれだけコンセンサスが得られてるのだろう。マナー的な問題もあるし音で周囲の様子がわかりにくくなるかもしれない。でも歩きスマホやうっかり点字ブロックに佇んでいる人へのアピールには役立ちそうとも思ったりする。
あまり評判のよろしくない「白杖SOS」もそうだけど、当事者がアピールすることの難しさも感じてしまいます。ほんとは白杖見たら気をつける、くらいでちょうどいいと思うのだけど見えていた頃の自分のことを思い返してみても、そんなに普段周りの人のこと意識して見てなかったしなあ。
結局のところ本人が考え行動すれば良いとは思うのですが、探求すべきテーマではありますね。
少なくとも私自身は従来通りソロリソロリ歩きつつ、おとで気がついたら回避してね、くらいのスタンスで臨みたいところです。


支援技術関連記事まとめ(2022年11月)※お知らせあり。

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